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NICT、ロンドン市街地でホワイトスペースを用いた高速移動・固定地点通信に成功

 独立行政法人情報通信研究機構(NICT)は23日、ロンドン市街地にて、ホワイトスペースを用いた40Mbpsの高速ブロードバンド通信に成功したと発表した。

 ロンドン市街地は、送信電力が非常に大きいテレビ放送塔が近隣に設置されているほか、電波干渉が多く、無線通信にとって過酷な環境とされている。NICTは、英国情報通信庁(Ofcom)が主催するテレビホワイトスペースを用いた通信試験にて、無線通信の需要が多い市街地での移動体通信と固定地点通信の試験を世界で初めて実施した。

NICTが開発した、Ofcom通信試験向け周波数管理ベータベース

 Ofcomからは、高頻度で運用情報が更新されるテレビ放送や、番組制作・演劇などに使用されるラジオマイクと干渉しないよう、不要電波の発射など電波の質に関する基準を満たす無線機と、テレビ放送/ラジオマイクの利用情報を自動的に取り込み、無線機の位置に応じた利用可能周波数を規定時間内に反映するデータベースが求められたという。なお、NICTの開発した周波数管理ベータベースは、Ofcomの半年にわたる審査を経て、本試験の正式なベータベース提供者として認定を受けている。

 移動体通信では、NICT独自開発のホワイトスペース帯LTE通信システムを使用し、1チャンネル(英国では8MHz幅)のみを利用して、TDD方式のLTE通信のほか、離れた2チャンネルを利用したFDD方式のLTE通信を確認した。また、連続した3チャンネル内の20MHz幅の周波数帯を2組利用し、FDD方式で下り40Mbps以上の通信速度を達成した。LTE無線通信装置の一部は、総務省委託の「複数周波数帯の動的利用による周波数有効利用技術の研究開発」の成果とのこと。

 固定地点通信では、NICTが規格策定に携わったIEEE 802.11afを使用し、NICT独自開発で欧州ETSIの基準に沿って不要電波を抑制した小型無線機と、NICTが開発した周波数管理データベースを使用している。ロンドン市街地とデンマーク・ヒルの3.7kmの距離において、データベースの計算により指示された、最大送信電力36dBm(EIRP)を用いて、2Mbps以上の通信を確認した。

固定地点通信の位置と実験の様子

 今回の試験では、テレビ放送や運用する場所・時間が変化するラジオマイクなどの影響で、無線機に許容される最大送信電力が変化した結果、実験中に電力が抑制されたり、利用できないチャンネルが発生するなど市街地特有の問題があることや、実用化に向け無線機に求められる性能がより明確になったという。NICTでは、ホワイトスペースの制度化を検討している世界各国にも条件を合わせることで展開が可能としており、英国をはじめとする世界各国で利用されるよう努めたいとしている。

 ホワイトスペースは、放送などに使用される周波数帯のうち、場所や時間に応じて放送などに影響を与えずに他のシステムに利用することができる周波数帯を指し、急増する無線通信に利用するのが有効と考えられている。NICTでは、以前からホワイトスペース通信の実証実験を行っている。

(山川 晶之)