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ソニー、ARメガネ端末を2014年度内に開発者向けに発売、SDKは19日公開

目的地を天空から光で照らすナビアプリや、顔認識で名前表示するアプリなど

 ソニー株式会社は19日、スマートフォンと連携して、視界に情報を重ねて表示できるウェアラブルメガネ型デバイス「SmartEyeglass」を開発したと発表した。同日にSDKを一般公開し、2014年度内に開発者向けに同デバイスを発売する。

ウェアラブルメガネ型デバイス「SmartEyeglass」

 SmartEyeglassは、現実世界に情報を重ねる拡張現実(AR)向けのウェアラブルデバイス。Oculus VR社の「Oculus Rift」や、ソニーの「HMZシリーズ」に代表される没入型HMDディスプレイとは180度性質が異なり、あくまでも目の前の視界が主役であり、情報は通常視野を邪魔しないよう下方領域に表示される。

 ソニーは19日に都内で記者会見を行い、ソニーデバイスソリューション事業本部SIG準備室統括部長の武川洋氏が登壇した。武川氏は、エンターテインメントがより楽しく、日常がより便利になるアイウェア端末として、サッカーの試合で目を離さずに選手情報を確認したり、コンサートで歌詞やアーティスト情報を閲覧する、あるいはナビゲーションの表示、SNS投稿の確認、スケジュールの表示といったユースケースを挙げた。

ソニーデバイスソリューション事業本部SIG準備室統括部長の武川洋氏
没入型のHMDと異なり、主役はあくまでも現実世界だという
エンターテインメントがより楽しくなり日常がより便利になるとしている
用途例としてサッカーの試合に関する情報やナビゲーションの表示などを挙げた

 薄型軽量が特徴で、独自のホログラム導光板技術により、ガラス板1mmという薄さで透過率85%の両眼透過式アイウェアディスプレイを開発。光学エンジンには、μディスプレイとバックライトに緑単色LEDを採用。小型化することで違和感の少ないデザインにでき、低消費電力で1000cd/㎡という高輝度を実現している。重さはメガネ部分が約77gでコントローラーが約44g。

独自のホログラム導光板技術によりユニットを薄型化
透過率が85%と高いため、クリアな視界をキープしつつ情報の見やすさを両立しているという

 開発試作品には、メガネ部分にディスプレイのほか、加速度センサー、ジャイロ、電子コンパス、照度センサー、カメラを搭載。SmartEyeglassの操作を行うコントローラーには、入力ボタン、マイク、スピーカー、バッテリーが搭載されている。コントローラーとメガネ部分はケーブルで接続されている。なお、SmartEyeglass単体では動作せず、Androidスマートフォンとの連携が前提となる。

コンシューマー向け製品として「自然な外観」「見やすさ」「掛け心地」を重視したという
SmartEyeglassを利用するにはスマートフォンとの連携が必要

 そのほかのスペックは、無線部分がIEEE 802.11 b/g/nのWi-Fi接続とBluetooth 3.0に対応。ディスプレイの解像度が419×138ピクセルで256階調の緑淡色表示となる。カメラが静止画は300万画素、動画はVGAとしている。バッテリーの駆動時間は、Wi-Fiやカメラ、ディスプレイの輝度によって変動するが、500cd/㎡の明るさでBluetooth接続した場合、2時間半から3時間としている。

SmartEyeglass本体
リモコン本体

19日よりSDKを配布

 また、19日に「Sony Developer World」ウェブサイトにてSDKを一般公開。エミュレーターやサンプルコード、APIリファレンス、チュートリアル、設計マニュアルとガイドラインを内包する。武川氏は、デザイン性やシースルーなど、他社のデバイスとは異なる特性を最大限に活かせるアプリを開発していただけるデベロッパーに参加してもらい、一般販売する際は、数よりもSmartEyeglassを掛けるだけの価値があるアプリを用意したいとした。

 開発者向けに発売するSmartEyeglassの価格は未定としているが、他社の開発者向けプロトタイプと比べて大きく外れることはないという。また、一般向けの商品は、デベロッパーからのフィードバックを得て、民生用のスペックを決めたいとした。

 SmartEyeglassは、2012年3月から北米大手映画館チェーンに導入された、難聴者向けの字幕表示メガネが前身となっている。2014年1月に開催された「2014 International CES」や2月の「Wip-jam」、9月の「IFA」で同様のプロトタイプが展示されており、クリアで見やすい点やデザインが普通のメガネに近い点が好評だったという。

9月19日よりSDKを公開
SmartEyeglassは映画用の字幕表示メガネが元になっている
SmartEyeglassはCESで初公開されている
IFAでは6日間で約5000人が体験した

目的地を天空から光で照らすナビアプリなどユニークなアプリが集合

 記者発表会会場では、SmartEyeglassのパートナー企業が制作したアプリの体験会が催された。

 株式会社ケイ・オプティコムは、株式会社ACCESSと共同で開発した、マラソンランナーへの走行関連情報や応援メッセージ、コース沿道周辺の観光情報を配信するアプリ「グラッソン(Glassthon)」を展示。コースの残りの距離や走行ペースのほか、特定のハッシュタグを付与したツイートを表示する機能や、Beaconを利用して観光情報や周辺のトイレなどを表示する機能がある。

 ケイ・オプティコムが協賛している「大阪マラソン2014」では、タレントの檜垣さゆりさんや神戸大学の塚本昌彦教授など、デモランナー5人がSmartEyeglassを実際に装着して走るという。

マラソンランナー支援アプリ「グラッソン(Glassthon)」
走行情報やSNSの応援メッセージなどを表示する
観光名所やトイレなどの周辺情報の配信のために設置するBeacon送信機
ランナーのお姉さん。SmartEyeglassを装着して走った感想は良好だという。

 株式会社ゼンリンデータコムは、「光で導く新感覚ナビ」として、コンビニやカフェなど、行きたい場所のジャンルを選び最寄りの施設を指定すると、目的地を天空から光で照らすナビアプリ「いつもNAVI for SmartEyeglass」を展示した。矢印と所要時間でナビゲートする通常案内モードにも変更できる。

「光で導く」ナビアプリ「いつもNAVI for SmartEyeglass」
コンビニやカフェなどの行きたい場所のジャンルを選んで指定する

 ユークリッドラボ株式会社は、指定した場所や位置情報に基づいた周囲の情報をリアルタイムで配信するアプリ「loca!ive」を展示。TwitterやFacebookなどSNSから指定の場所や自分の現在地に関する投稿を抽出。その場所や自分の身の回りの出来事をリアルタイムに配信する。なお、場所に関するキーワード以外にも、位置情報が付与されたツイートも取得するという。

指定した場所や自分の周辺に関する情報を表示する「loca!ive」
「ディズニーランド」と指定するとディズニーに関連する投稿をピックアップする

 墺Wikitudeは、自分が向いている方向に合わせて建物名や地名など表示するARナビアプリを展示。デモでは、東京タワーや恵比寿ガーデンプレイスなどの位置と現在地からの距離を表示していた。文章を表示させることもできるという。

 ソニーは、SmartEyeglass内蔵のカメラで取得した画像を元にスマートフォン側で顔を認識し、その顔に紐づく名前や役職などの情報を表示するアプリを展示。アプリはSDKのデモとして制作されており、表示される名前などはスマートフォンにあらかじめ登録された情報だという。

Wikitubeのデモ。写真は恵比寿ガーデンプレイスの方角と距離を表示している
ソニーのデモ。人の顔を認識し、その人に紐づく情報を表示する
SmartEyeglassで取得した画像を元にスマートフォン側で顔を認識
顔を認識すると紐付いた情報をSmartEyeglassで表示する

 また、クックパッドも料理支援アプリ「CookPad for SmartEyeglass」を開発している。

(山川 晶之)