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国内の大手出版社など16社、“オーディオブック”市場について勉強開始、協議会を設立

 電子書籍の次なる柱だという“オーディオブック”の国内における市場形成を、出版社として推進するための団体「日本オーディオブック協議会」が大手出版社を中心に16社が発起人となって設立された。

 発起人は、株式会社新潮社、株式会社小学館、株式会社講談社、株式会社KADOKAWA、株式会社オトバンク、株式会社集英社、株式会社文藝春秋、株式会社岩崎書店、株式会社金の星社、株式会社福音館書店、株式会社岩波書店、株式会社創元社、株式会社筑摩書房、株式会社ダイヤモンド社、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン、株式会社PHP研究所。「オーディオブックの日」である3月3日に設立準備委員会を発足し、4月6日に設立総会が開催された。

(左から)日本オーディオブック協議会常任理事の上田渉氏(株式会社オトバンク代表取締役会長)、同じく常任理事の相賀昌宏氏(株式会社小学館代表取締役社長)、代表理事の佐藤隆信氏(株式会社新潮社代表取締役社長)、常任理事の野間省伸氏(株式会社講談社代表取締役社長)、常任理事の川金正法氏(株式会社KADOKAWAビジネス生活文化局局長)

 日本オーディオブック協議会常任理事/オトバンク代表取締役会長の上田渉氏によると、“耳で読む本”であるオーディオブックは、満員電車の中や車の運転・家事・ランニングをしながらの“ハンズフリー読書”、老眼の人や目の不自由な人、目が疲れている時の“バリアフリー読書”が可能であるというメリットがあり、高齢者や視覚障害者に限らず、年代・職業を問わず利用されているという。現在のタイトル数は約1万5000タイトルで、ビジネス・自己啓発ジャンルが30%程度を占め、これに文芸・名作の25%、語学の20%などが続く。上田氏は、これが3年後には6万タイトルに増加し、ジャンルも文芸・名作が40%程度を占めるようになる見込みだと説明。米国のオーディオブック市場の文芸7~8割、ノンフィクション2~3割という比率に近づいていくと予測する。国内の年間市場規模も現在はCDなどのパッケージ型が20~30億円、ダウンロード型が数十億で、合計50億円程度にとどまっているが、800~900億円の潜在市場規模があると指摘する。

 その一方で、出版各社は現在もオーディオブックを手掛けてはいるものの、どのようなコンテンツがオーディオブックに向いているのかなど、市場について把握できていないのが現状。「これからの市場なので、我々自身が勉強をして、この市場を育てながら、各社が持っている貴重な資産の有効な利用の仕方を考えていきたい」(日本オーディオブック協議会の代表理事に就任した新潮社代表取締役社長の佐藤隆信氏)としている。

 協議会の設立目的は、以下の通り。

1)オーディオブック市場の分析及び拡大
 オーディオブック市場の規模を調査、分析した上で、オーディオブック市場を拡大するための方法論を模索・実行する。

2)オーディオブックと電子書籍・印刷書籍の共存・共栄
 オーディオブック、電子書籍、印刷書籍、それぞれの持ち味を最大限に活かして、より優れたコンテンツを世の中に提供し、文化の発信源たる出版社の使命を果たす。

3)出版社・著者・読者の利益・権利の確保
 オーディオブックに関する著作権的な処理についての理解を深め、出版社・著者・読者の利益を最大化できる体制を整える。

 また、協議会の活動内容は以下の通り。

  • オーディオブック市場の定期的な計測・分析
  • オーディオブックの出版・制作・流通ビジネスに関する情報共有
  • 出版社・著作者・オーディオブック制作者の権利等に関する研究
  • オーディオブックの発展及び普及に関する活動
  • オーディオブックに関する日本発のビジネスモデルの検討・協議
  • 公共機関・教育機関・図書館等オーディオブックの関連分野に関する情報共有
  • 高齢者・視覚障害者へのオーディオブックの普及に関する協議
  • 出版契約の雛形へのオーディオブック化許諾記載に関する協議

(永沢 茂)