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地震発生から津波襲来まで、犠牲者1326人の行動を3Dマップ上に可視化したアーカイブ公開

 東日本大震災の津波の犠牲者の行動を3Dマップ上に可視化したデジタルアーカイブ「忘れない 震災犠牲者の行動記録」を、岩手日報社が同社ウェブサイトで公開した。

 岩手県の津波の犠牲者が、地震の発生した2011年3月11日14時46分にどこにいたのか、また、津波が襲来した時にどこにいたのかを遺族に取材。居場所が詳細に判明した1326人について、移動の始点・終点を地図上にプロットし、2D/3D地図・航空写真上で時間軸に沿って再生できるようにした。遺族の了承を得た687人については、プロットされた各点をクリックすることで、氏名と行動記録情報も参照できる。

水色の点・線が男性、赤の点・線が女性。長い線は、自動車など短時間で長い距離を移動したことを示す。Google マップの「ストリートビュー」との連携で、被災地の復興の様子も見られる

 「岩手日報社は、生きた証を残そうと震災犠牲者一人一人を紙面で紹介するプロジェクト『忘れない』に2011年から取り組んでいます。現在は、災害から命を守るための連載『てんでんこ未来へ』も展開しています。その集大成として犠牲者がどのような避難行動を取り、どこに集まったのかなどを詳細に分析。これにより犠牲者の声なき声が可視化でき、一人でも貴い命を失わないよう、震災の教訓として後世に残していく形にしました。」

 陸前高田市中心部では、地震発生から津波襲来まで動きがなく、避難せずに自宅にとどまっていて亡くなった方がいること、逆に地震発生後に津波浸水域にある自宅などに戻って亡くなった方がいることが分かる。また、釜石市鵜住居町では、多くの犠牲者が地区の防災センターに向かって移動し、そこで亡くなったという。

陸前高田市中心部
釜石市鵜住居町

 アーカイブを活用して避難行動について分析した岩手日報社では、「避難所を過信せず、少しでも高い場所へ」などの提言を行う記事を制作し、3月5日から同紙に掲載した。ウェブサイトでは、その紙面をPDF化してダウンロード提供している。

 アーカイブは、首都大学東京システムデザイン学部の渡邉英徳研究室と共同で制作したもの。震災犠牲者に特化して行動記録をまとめて可視化したのは初めてだという。

岩手日報3月8日付特集記事のPDFファイル

【お詫びと訂正 19:10】
 記事初出時、記事タイトルおよび本文中において、使用している地図を「Google マップ」としておりましたが、これは誤りです。地図ライブラリはオープンソースソフトウェアの「Cesium」を使用しており、ストリートビューとの連携にのみ、Google Maps APIを使用しています。お詫びして訂正いたします。

(永沢 茂)