レビュー

初年度無料、話題のクラウドサービス「やよいの青色申告オンライン」を使ってみる

 前回前々回で税金の基本的な知識と節税方法を紹介した。

【確定申告シリーズ】

・個人事業主の税金を理解し節税しよう・前編 税金の計算方法を理解する
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20141218_680399.htmll
・個人事業主の税金を理解し節税しよう・後編 “節税の肝”各種控除を理解する
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20141219_680822.html
・源泉徴収票の見方、知っていますか? ~税金の計算方法を理解すると節税ができる~
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20150304_690747.html
・確定申告って何を申告するの? ~個人事業主の税金の計算方法を理解しよう~
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20150310_691870.html
・青色申告は白色申告よりお得なの?~青色申告の特典と節税効果を検証しよう~
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20150311_691891.html

 今回は実際に青色申告のクラウドサービスを使用して記帳を行ってみたい。使用するのは今年サービスを開始した「やよいの青色申告オンライン」。青色申告ソフト(パッケージ)で圧倒的なシェアを持つ弥生が提供する、新クラウドサービスとして注目されている。

 青色申告のクラウドサービスに注目が集まっているが、パッケージタイプの青色申告ソフトで圧倒的なシェアを獲得しているのは「やよいの青色申告」だ。そのシェアは70%に迫るほどで、3人に2人が使用する業界標準的な存在となっている。クラウド、パッケージを問わず、多くの他メーカーが「やよいの青色申告」に対しインポート、エクスポート機能を搭載していることを見てもシェアの高さが分かる。

 「やよいの青色申告」は初心者向けのインターフェイスを搭載し、初期設定から記帳、申告書作成まで一貫した使いやすさを提供することで、簿記を理解していない人でも複式簿記による記帳を可能とした。またサポートの充実なども評価されている。

 青色申告のクラウドサービスが盛り上がり始めたのは昨年なので、まだまだパッケージソフトを使用する事業者が多いと思われるが、「やよいの青色申告オンライン」の登場で、ますますクラウドサービスへの注目が集まりそうだ。パッケージ版の「やよいの青色申告」はWindowsにしか対応していなかったので、Macユーザーが使用できるという点でも、クラウドサービスに対する期待は高い。

 ただしパッケージ版の「やよいの青色申告」がそのままクラウド化したわけではない。「やよいの青色申告オンライン」は初心者向けという位置づけで、消費税課税事業者の申告には対応していないなど、起業したばかりのフリーランス向けといった印象だ。どちらかと言うと一足先にリリースした「やよいの白色申告オンライン」が青色申告に対応したと考えた方がよいだろう。

無料のセルフプランを申し込む

 ではさっそく、「やよいの青色申告オンライン」を使用してみよう。「やよいの青色申告オンライン(http://www.yayoi-kk.co.jp/products/aoiro_ol/)」にアクセスし「今すぐ無料で申し込む」をクリックすると3つのプランが表示される。

やよいの青色申告オンライン
3つのプランがありセルフプランは最大14カ月無料

 無料体験プラン、セルフプラン、ベーシックプランが用意されているが、2015年3月16日までに申し込みをするとセルフプランは最大14カ月無料、ベーシックプランは半額で使用することができる。2014年の12月に申し込みをすれば2016年の1月まで使用できるということだ。

 今回はセルフプランを選択。メールアドレスを登録すると、そのアドレスにメールが届くので、そこに書かれたURLにアクセスしパスワードや個人情報などを登録するとサービスが利用できる。

メールアドレスを登録
届いたメールに書かれたURLをクリック
パスワードや個人情報を入力する

初期設定

 「やよいの青色申告オンライン」にログインすると、初期設定が表示される。1)口座の設定、2)科目の設定、3)残高の設定と順番に設定を進めていこう。

トップページから初期設定を始めよう

 最初は銀行口座、クレジットカードの登録を行う。ここで登録するのは事業で使用する口座やカードだ。個人用に使用している口座・カードは登録する必要はない。銀行口座やクレジットカードは個人個人の事情によると思うが、これから事業を開始する人は事業専用の口座・カードを用意すると記帳作業が楽になる。

事業用の口座、カードを登録

 次の科目の設定は重要だ。まずは科目と按分(あんぶん)の関係を説明しておこう。経費を例にすると、電気代やガス代は水道光熱費、携帯電話や請求書に張る切手は通信費、電車賃やタクシー代は交通費、といった感じで科目に分類して記帳する。科目の設定は自由なので、事業特有の経費は任意の科目を設定することができる。例えば食レポを仕事としていれば、外食した費用を取材費という科目で記帳することができる。

 科目設定の注意点は按分という考え方だ。個人事業主の場合、経費の中に事業使用と個人(家事)使用が混ざり合うことがある。例えば自宅で仕事をしていると、事業で使用した電気代と個人で使用した電気代をまとめて電力会社に支払うことになる。

 経費として計上できるのは事業で使用した分だけとなるので、支払った電気代を任意の比率で分割し、事業使用分を算出することを按分という。これ以外にも携帯電話や車も事業使用と個人使用が混在することが多い。

 電気代を例に記帳作業の流れを説明しよう。月々は電気代を全額経費として記帳する。例えば1万円/月なら1年間で12万円となる。最後に按分をし、個人使用の部分を経費から差し引くことになる。仮に事業使用が50%であれば12万円から個人使用の6万円を差し引き6万円がその年の経費となる。

 筆者の経験では、自宅で仕事をすると電気代は激増する。独身の人を例にすると、サラリーマン時代は朝出社して夜帰宅するまで自宅にいないので、電気の使用は極小だ。独立して自宅で仕事をすると、PCもエアコンも終日稼働するので、電気代が大幅に増えることになる。これに対し水道代は少し増える程度、ガス代はそれほど増えない。これを按分すると電気代は60%、水道代は20%。ガス代は10%が事業使用となる。

 電気代、ガス代、水道代をデフォルトのまま水道光熱費として1つにまとめていると、それぞれの比率で按分することができない。水道光熱費の科目の下に補助科目として電気代、ガス代、上下水道代と分けて記帳しておけば、確定申告の際にそれぞれの比率で按分が可能となる。必要な科目、補助科目は初期設定で作成しておこう。

 科目設定をしてみよう。標準的な科目は事前に設定されている。使用しない科目は右端のチェックを外すと記帳時に表示されなくなる。まずは水道光熱費に補助科目を追加してみよう。科目名の水道光熱費をクリックし「補助科目を追加」のボタンをクリックする。水道光熱費に下に空欄が表示されるので電気代、ガス代など必要な補助科目を追加する。さらに取材費を科目として追加し登録終了だ。

標準的な科目は事前に設定してある
水道光熱費をクリックし「補助科目を追加」をクリック
補助科目を記入する
取材費という科目も追加した

 科目の次は残高の設定だ。今年事業を始めた人はスタート時点の残高を記入する。前年から引き続き事業を継続している人は期首の残高を記入する。新規で残高を記入し登録ボタンを押すと、「期首残高の賃借合計金額が一致していない」とメッセージが表示される。「? 期首残高の賃借合計金額が一致しない場合(元入金での調整)」をクリックするとアドバイスが表示され、「資本」タブから「元入金」科目の期首残高を設定してくださいと書かれている。「資本」タブの「元入金の自動計算」をクリックして登録を済まそう。

残高の記入画面
確認メッセージが表示される
アドバイスに従い元入金の自動計算をしてから登録する

スマート取引取込

 従来の青色申告ソフトは売り上げ、経費などを1つ1つ手入力する必要があったが、「やよいの青色申告オンライン」では、手入力に加えデータ取り込みが可能となった。多くのデータを取り込めれば記帳の手間を大幅に削減することができる。作業の流れとしては、まずデータ取り込みを行い、足りないところを手入力するのが効率的だ。

 「やよいの青色申告オンライン」では、外部サービスと連携する「YAYOI SMART CONNECT(弥生スマートコネクト)」を使用して、銀行口座、クレジットカードのデータを取り込み自動仕訳をすることができる。口座データの取り込みにはMoneyLookとZaim、請求書などのデータはMisocaとMakeLeaps、POSレジのデータ取り込みにはAirレジ、スマレジを利用することができる。

用途に応じてさまざまな外部サービスからデータを取り込むことができる

 今回はMoneyLookを使用して口座データを取り込んでみた。「外部サービスの連携」からMoneyLookの公式サイトにアクセスし、MoneyLookに利用登録をする。MoneyLookにはポイント管理などさまざまな機能があるが、機能別タブの「口座管理を使う」から口座の登録をしよう。

「外部サービスの連携」からMoneyLookの公式サイトにアクセス。外部サービスの準備ができたら連携で接続する
MoneyLookに利用登録する
メールアドレスを登録しログイン
機能別タブの「口座管理を使う」から口座を登録

 口座一覧を見ると銀行、証券、FX、年金……数多くのデータを管理することができる。銀行、カード会社のサイトにアクセスするIDやパスワードを準備し、銀行口座、クレジットカードを登録すると、ネットバンキングから取引データをMoneyLookに取り込むことができる。

銀行、カードの一覧から自分が使用している口座を選択する
銀行口座とクレジットカードからデータ取り込みが完了した

 外部サービスの準備が完了したら、「外部サービスの連携」の「連携する」をクリックすると、MoneyLook側がアクセス許可を求めてくるので「認証」をクリックする。銀行口座やカードが事業専用でない場合は「外部サービスの取得設定」で個人用に分類しよう。

 MoneyLookから「やよいの青色申告オンライン」に取引データを取り込むと、科目が仕訳された取引と仕訳されなかった取引が円グラフで表示される。今回は66項目中60項目が自動仕訳された。

MoneyLookがアクセス許可を求めてくる
事業専用でない口座は「外部サービスの取得設定」で個人用に分類
66項目中60項目が自動仕訳された。グラフの中の受信箱をクリックすると一覧が表示される

 円グラフ中心の受信箱をクリックすると取り込んだデータの一覧が表示される。ここで科目を変更したり補助科目を設定することができる。事業に関係するものと関係しないものをここで分類し、必要なものだけ申告ソフトに送信する。

補助科目を追加してみた
仕訳されなかった項目は自分で仕訳する
事業に関係ない項目は送信しない
確認作業が済んだら取引の送信を行う
送信されたデータは記帳データとして取り込まれる

かんたん取引入力

 すべての取引を自動取り込みできるのが理想だが、経費を現金で支払うと手入力が必要となる。特に青色申告のクラウドサービスを使用した最初の年は、銀行やカード会社の制約で、1年分の取引データを取り込むことができないケースが多い。ある程度は手入力をしなければならないので、ここでは「かんたん取引入力」による記帳を行ってみよう。

 何から記帳を始めるかという決まりはないが、筆者は売り上げから記帳をすることが多い。まずは売り上げの記帳を説明しよう。飲食系の事業では現金を受け取ることが多いと思われるが、法人相手の事業では請求書を発行し、翌月に銀行振り込みとなるのが一般的だ。この法人相手のやり取りを複式簿記で説明してみたい。

 例えば1月に原稿を出版社に納品し、1月末に出版社に請求書を送り、2月末に原稿料が振り込まれたとしよう。仮に原稿料が税別で1万円、2014年の1月は消費税の税率が5%なので1万500円を請求した。この段階ではお金は受け取っていないので、貸方に売上、借方に売掛金と記帳する。

  •        借方          貸方        摘要
  • 1月31日 売掛金 10500円    売上 10500円    原稿料

 2月末に振り込まれた金額は9479円と、請求額より1021円少ない。1021円の差は源泉徴収によるものだ。その内訳は所得税の源泉徴収が1万円の10%で1000円。東日本大震災の復興特別税が0.21%で21円、合計1021円が差し引かれて振り込まれたということだ。これを記帳すると

  •        借方          貸方        摘要
  • 2月28日 普通預金 9479円    売掛金 9479円   売掛金回収
  • 2月28日 事業主貸 1021円    売掛金 1021円   源泉徴収税

となる。貸方に売掛金、借方は銀行口座に振り込まれたので普通預金となる。事業主貸の説明は割愛する。源泉徴収された1021円は出版社が納税するので、最終的に自分の納税額から差し引かれる。簿記の知識がないとよく分からない方法で記帳するのが複式簿記だ。青色申告ソフトが登場する以前は、このような記帳を手作業で行っていたと思われ、知識のない人が青色申告をするのは難しかった。

 この記帳を「かんたん取引入力」で行ってみよう。科目が分からない人は「よく使う取引」をクリックすると想定された事例がプルダウンメニューに表示される。「原稿料の受け取り」を選択すると科目に売上、摘要に原稿料が自動的に記入され、「うち源泉徴収税額」にチェックが付く。

 取引手段は翌月の回収なので売掛金とする。取引先に出版社名を記入し、税別の売り上げ金額(1万円)を入力すると、源泉徴収税額を自動計算してくれる。その後に消費税の500円を追加し登録する。

「よく使う取引」をクリックすると事例が表示されるので「原稿料の受け取り」を選択
科目に売上、摘要に原稿料、「うち源泉徴収税額」にチェックが付く
源泉徴収税額を計算させるため税別の売り上げを入力する
2014年の1月は税率5%なので500円を上乗せする。同様な記帳を続けるときは左下の「同じ取引を続けて記帳」にチェック
4月以降は消費税の税率が8%なので800円を上乗せする
一度記入すると会社名などはプルダウンに表示される

 2月に原稿料が振り込まれたら、「よく使う取引」の事例から「売掛金の回収」を選択すると科目に売掛金、摘要に売掛金の回収と記入される。取引手段は普通預金、摘要はそのままでも構わないし、分かりやすく原稿料としてもよい。取引先を入力し金額は振り込まれた金額を入力する。「仕訳の入力」画面でこの記帳を確認すると1月に売り上げが1万500円、2月に銀行口座に9479円が振り込まれたと記帳された。

「よく使う取引」の事例から「売掛金の回収」を選択
科目に売掛金、摘要に売掛金の回収と記入される
取引手段に普通預金、取引先、金額を入力する
「仕訳の入力」画面でこの記帳を確認。売り上げた段階で源泉徴収税が記帳されている

 やよいの青色申告オンラインは売り上げの回収を別の方法でも記帳できる。「仕訳の入力」画面で記帳済みの売上を選択すると、「回収取引を入力する」というボタンが表示される。これをクリックすると最上段の入力部分の貸方が自動入力される。入金日の日付、銀行口座、入金額を入力すると回収の記帳が可能だ。

「仕訳の入力」画面で記帳済みの売上を選択すると、「回収取引を入力する」というボタンが表示される
貸方が自動的に記帳されるので借方を自分で入力する

 売り上げの次は経費の記帳だ。荷物を発送し現金で支払いをした場合の記帳は、「よく使う取引」の事例から「宅配便・宅急便の発送」を選択する。事例にはゆうパック、佐川急便、クロネコヤマトなどの選択肢も表示されるが特別な理由がなければ宅配業者名まで記帳する必要はない。科目は荷造運賃と記入されるので、取引手段を現金、支払った金額を入力すれば完了だ。

事例から「宅配便・宅急便の発送」を選択する
取引手段は現金とする

 少し記帳に慣れると「これは消耗品、これは通信費……」と自分で判断できるようになる。「よく使う取引」は初めての人にはとても優しい機能だが、慣れてくると事例が多すぎて探すのが大変。自分で科目を選択した方が早くなるだろう。

 電気代が銀行口座から引き落とされた場合は、科目が水道光熱費で補助科目が電気代とし、取引手段が普通預金となる。口座引き落としは通年でデータ取り込みをすれば手入力の必要はなくなるが、初めての年で1年分のデータが取り込めない場合はこのように手入力で記帳する。

電気代が銀行口座から引き落とされたときは、科目が水道光熱費で補助科目が電気代とする
取引手段は普通預金

 データの取り込みと手入力で売り上げと経費を入力すると、トップ画面の下側の売り上げと経費のグラフが更新される。さらに左側のメニューからレポートを開くと細かなデータを見ることができる。

トップ画面の下側のグラフが更新された
レポート機能では売り上げと経費の数値も表示される
経費の構成比と毎月の金額を表示
取引先ごとの売り上げ構成比と毎月の売り上げ

固定資産の登録

 売り上げと経費の記帳が済めば確定申告の作業は9割完了。残りわずかだ。次は固定資産の登録だ。10万円以上の備品を購入した場合は固定資産の登録が必要となる。いくつか方法があるので代表的な2つの方法を、20万円を超える一眼レフカメラを買った例で紹介しよう。

 1つ目は通常の経費と同じように「かんたん取引入力」から登録する方法。「よく使う取引」から「備品(10万円以上)の購入」を選択する。科目に固定資産と記入されるので、取引手段、摘要、金額を入力し登録をクリックする。確認メッセージがポップアップするので「はい」をクリックし登録作業に入ろう。

事例から「備品(10万円以上)の購入」を選択
取引手段、摘要、金額を入力
固定資産の登録をうながす確認メッセージが表示される

 2つ目はメニュー左下の「高度なメニュー」の中にある「固定資産の登録」を使う方法。「固定資産の登録」をクリックすると固定資産の一覧が表示され、過去に登録した資産があれば減価償却中の資産が表示される。新規登録をクリックすると1つ目の方法と同じく登録作業に入ることができる。

高度なメニューの固定資産の登録をクリック
新規登録

 2つの方法とも同じ画面が表示されるので「固定資産」をクリックする。科目は工具器具備品とする。車の場合は車両運搬具となる。償却方法は耐用年数で償却する場合は定額法を選択。30万円未満の資産を「少額減価償却資産の取得価額の必要経費算入の特例(措置法28の2)」でその年に経費とする場合は即時償却を選択する。

2つの方法とも同じ画面が表示されるので固定資産を選択
カメラの場合、科目は工具器具備品を選択

 償却情報では耐用年数を入力する。カメラは耐用年数が5年となっている。本年中の償却期間は購入日から自動計算されている。ちなみに減価償却は月単位で日割りはない。10月1日に買っても10月31日に買っても10月~12月の3カ月となる。

 本年分の普通償却費は空欄となっているが、下段の「本年分の普通償却費の計算」をクリックすると自動入力される。この例では5年=60カ月で償却されるので本年分は3カ月/60カ月となり、来年は12カ月/60カ月が経費となる。

耐用年数を入力し「本年分の普通償却費の計算」をクリック
本年分の普通償却費が自動計算される
固定資産に登録された
完了すると本年分が経費として算入される

確定申告

 いよいよ確定申告の作業だ。執筆時点では確定申告の入力作業はほぼ最後まで可能だが青色申告決算書と確定申告書の出力は対応していない。国税庁が確定申告書のフォーマットを公開するのは12月下旬で、パッケージソフトもクラウドも1月にならないと最終フォーマットによる出力に対応できない。パッケージソフトは購入段階では対応していないので必ずアップデートが必要となり、クラウドはアップデートされると出力が可能となる。

 メニューの確定申告をクリックすると3ステップの作業が表示される。まずは減価償却の計算、次に決算書、最後が確定申告書だ。減価償却は新規の登録がなくても過去に登録した固定資産の減価償却をする必要があるので画面を開いて完了まで進み経費計上を行う。

2014(平成26)年分を選択。ステップ1から3まで順番に進めよう

 ステップ2から説明しよう。ここで行うのは貸借対照表、損益計算書などを作成する作業だ。基本情報は自分自身、配偶者、扶養家族などを登録する。扶養家族は生年月日により納税額が変わることがあるので間違わないように入力しよう。

基本情報は生年月日を間違わないように

 売り上げの確認をしたら経費の家事按分を入力しよう。科目設定で説明したように事業使用と個人(家事)使用が混在する科目は任意の比率で按分しなければならない。補助科目が設定してある科目は補助科目ごとに按分することができる。按分作業を終え地代家賃の内訳を入力すると決算書の作業は終了だ。

売り上げの確認
水道光熱費は補助科目を設定したので右側に「補助科目ことに事業割合を設定する」にチェック
電気、ガス、水道をそれぞれの値で按分する。必要に応じて通信費、車両費なども按分する
地代家賃の内訳を入力

 最後の最後は確定申告書。ここでは所得控除を入力する。医療費控除、社会保険料控除、配偶者控除、扶養控除など自分に該当する控除の「はい」に印を付けよう。

提出先は管轄の税務署
該当する控除の「はい」に印を付けよう

 「はい」に印を付けた控除の入力画面に移るので内容をよく確認して入力を行う。社会保険料の証明書、生命保険の証明書、配偶者の源泉徴収票などを手元に用意すると作業がはかどる。生命保険は支払った保険料を入力すると控除額を自動計算してくれる。配偶者の所得も年収から65万円を引いた(所得控除された)金額を入力すれば、配偶者控除、配偶者特別控除の金額が自動的に計算される。扶養控除は事前に入力した子供の誕生日から年齢を計算し控除額が算出されるので、自分で控除額を調べる必要はない。

生命保険は新制度、旧制度を証明書どおりに入力すると控除額が計算される。子供の誕生日から特定扶養親族と判断され控除額は63万円となった

 これですべての作業が完了。この例では所得(売り上げ-経費)が308万2884円。所得控除が210万4000円。課税所得が97万8000円となり所得税額は4万8000円となった。源泉徴収の税額の方が多いので19万7156円が還付(税務署から振り込まれる)される。

所得、控除、課税所得、所得税額などが表示される

 これで一連の確定申告の作業は終了だ。「やよいの青色申告オンライン」は事例などを見るとフリーランス系で起業したばかりの個人事業主を意識した作りとなっている印象だ。随所にガイダンスが表示されるなど、初めて確定申告をする人には役立つ機能も多い。14カ月無料で使えるというのも、これまで躊躇していた人にはありがたい。

 初めて確定申告を行う人はつまずくことがあると思うが、科目などの仕分け方法もインターネットを使って調べれば答えが見つかることは多い。確定申告の受け付けは2月16日からなので、今のうちから準備をして確定申告に備えよう。

奥川浩彦@ アイピーアール