特別企画

源泉徴収票の見方、知っていますか? 〜税金の計算方法を理解すると節税ができる〜

独立志向のサラリーマンと個人事業主のための確定申告・第1回

 年末恒例の今年の漢字。その年の世相を表す漢字として昨年(2014年)は「税」が選ばれた。17年ぶりの消費税の増税がその主な理由だと思われるが、社会保障の財源不足などを補うため、今後さまざまな増税が予想され、税金が気になる人が増えているように思う。確定申告のシーズンなので、今回は税金の基本的な説明をしてみたい。

【確定申告シリーズ】

・確定申告って何を申告するの? 〜個人事業主の税金の計算方法を理解しよう〜
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20150310_691870.html
・青色申告は白色申告よりお得なの?〜青色申告の特典と節税効果を検証しよう〜
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20150311_691891.html
・個人事業主の税金を理解し節税しよう・前編 税金の計算方法を理解する
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20141218_680399.htmll
・個人事業主の税金を理解し節税しよう・後編 “節税の肝”各種控除を理解する
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20141219_680822.html
・初年度無料、話題のクラウドサービス「やよいの青色申告オンライン」を使ってみる
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/20141226_681659.html

税金の仕組みを知れば得をする?

 筆者の個人的印象だが、日本の教育で税金について実践的な授業はなかったと思う。試験のための勉強としては、直接税や間接税、累進課税といった語句は記憶があるが、所得税や住民税の計算方法など具体的なことは知らないまま社会人となった。

 社会に出ても、日本のサラリーマンは税の知識がなくても困ることは少ない。筆者は22年間サラリーマンを経験したが、その間は税の知識は皆無に等しかった。年末調整は何のために記入しているかを理解することもなく、生命保険の証明書は10万円を超えた1枚を張れば済むこと(当時)に気付かず、何枚も張り付けていた。控除の意味を知らず控除額の5万円は「5万円得するのか」と勘違いをしていた。

 “源泉徴収票”なる小さな紙も最初の金額が年収であることは想像できたが、それ以外は見方が分からず給与明細と一緒にしまい込むだけ。「○○市は住民税が安い」といった都市伝説も「そうなんだ」くらいに思っていて、住民税が基本的に全国一律と知ったのは独立してからだった。

源泉徴収票のサンプル

 旅好きな人が安く旅をする方法を知っていたり、PC好きな人がハードディスクやSSDを自力で安く換装、増設できたり、知識や経験があると得をすることは珍しくない。筆者は独立し必要に迫られ税金や確定申告の本を買って読みそれなりに税金のことを理解した。税金のことを知ると、入籍は年末にした方が11万円お得とか、生命保険を見直すと同じ掛け金で毎年1万円お得とか、知識があれば節税できることに気付いた。一度理解するとほぼ一生お得なのが税の知識だ。この機会に少し税金に興味を持っていただきたい。

サラリーマンの所得税の計算方法は?

 サラリーマンは、12月か1月の給与明細と一緒に「平成26年分 給与所得の源泉徴収票」を受け取っていると思う。そこに書かれた「支払金額」が年収であることは分かるが、その隣の「給与所得控除後の金額」や「所得控除の額の合計額」は算出根拠が分からないのが普通だ。これを理解するために、まずはサラリーマンの所得税の計算方法を確認してみよう。

・給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
・給与所得−各種所得控除=課税所得
・課税所得×税率=所得税

サラリーマンの所得税算出の概念図

サラリーマンの特典、給与所得控除とは

 サラリーマンは、自営業者(個人事業主)の方が税金で得していると思ってはいないだろうか。サラリーマン時代の筆者は根拠なくそう思っていた。いざ独立してみると逆で、税金、年金、健康保険に関してはサラリーマンの方がはるかに優遇されている。年金、健康保険については割愛するが、サラリーマンの特典とも言われる給与所得控除について説明しよう。

 所得税の計算式の1行目に登場する見慣れない言葉が給与所得控除だ。これはサラリーマンの必要経費などとも言われ、「サラリーマン生活もそれなりに経費が掛かるでしょう」と言うことで、一定額を収入から差し引いてくれる仕組みだ。

給与所得控除の計算式
給与等の収入金額(年収) 給与所得控除額
162万5000円以下 65万円
162万5000円超 180万円以下 収入金額×40%
180万円超 360万円以下 収入金額×30%+18万円
360万円超 660万円以下 収入金額×20%+54万円
660万円超 1000万円以下 収入金額×10%+120万円
1000万円超 1500万円以下 収入金額×5%+170万円
1500万円超 245万円(上限)

 控除される(差し引かれる)額は大きい。年収360万円(手取り月17万円くらい)で

360万円×30%+18万円=126万円

が経費とみなされ差し引かれる。毎月約10万円が税金の対象から控除されるということだ。源泉徴収票の小泉さんの場合は年収580万円なので、給与所得控除は170万円となり、年収から170万円を控除した410万円が給与所得となる。

給与所得控除:580万円×20%+54万円=170万円
給与所得  :580万円−170万円=410万円

給与所得控除後の金額を算出

 個人事業主の経費は実際にお金を支払った額だ。例えば城崎温泉に年間100回出張すればかなりの費用が発生する。切手を1000枚買えば財布から現金がごっそりなくなる。これに対しサラリーマンの給与所得控除は1円も使わず、100万円以上が経費とみなされる仕組みだ。個人事業主からすると「カラ出張かよ」「詐欺だろう」と言いたくなるほどうらやましい制度となっている。

 ご自身の源泉徴収票で実際に計算すると少々誤差が発生するはずだ。基本的な計算式は表のとおりだが、実務は「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」という速算表を見て行う。おそらく経理のお姉さんがソロバンで計算した時代のなごりだと思われるが、表の一部を抜粋すると

給与等の金額 給与所得
5,796,000円以上 5,800,000円未満 4,096,800円
5,800,000円以上 5,804,000円未満 4,100,000円
5,804,000円以上 5,808,000円未満 4,103,200円

などとなっていて、580万円の人も580万3950円の人も給与所得は410万円となる。正確に計算したい方は国税庁のホームページにある速算表で確認していただきたい。

平成26年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(PDF)
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/nencho2014/pdf/78-86.pdf

個人個人の事情に考慮する所得控除

 源泉徴収票の580万円(支払金額)から410万円(給与所得控除後の金額)を算出する方法は理解できたと思う。次はその隣の「所得控除の額の合計額」だ。配偶者控除、扶養控除といった言葉は聞いたことがあるだろう。所得控除は個人個人の事情を考慮して所得から一定額を差し引き、結果として納税額を減らすものだ。

 「独身の人より結婚して専業主婦の奥さんがいると生活費が掛かるから税金を減らしましょう」「大学生の子どもがいると出費がかさむから多めに税金を減らしましょう」「生命保険に加入したら少し税金を減らしましょう」といった感じで、個人個人の生活環境により控除額は異なってくる。主な所得控除は以下の表を参照していただきたい。

主な所得控除
控除名 金額 概要
基礎控除 38万円 全員が一律に受けられる控除
配偶者控除 38万円 所得が38万円(年収103万円)以下の奥さん(配偶者)がいると受けられる控除
配偶者特別控除 3〜38万円 所得が38万円を越え76万円未満(年収103〜141万円)の配偶者がいる場合の控除
扶養控除(一般) 38万円 16歳以上の子どもや親を養っていると受けられる控除
扶養控除(特定) 63万円 所得が38万円以下で19歳から22歳の子どもがいると受けられる控除
扶養控除(同居老親) 58万円 公的年金が158万円以下で直系、同居、70歳以上の親を養っていると受けられる控除
扶養控除(同居老親以外) 48万円 公的年金が158万円以下で70歳以上で別居している親を養っていると受けられる控除
寡婦控除 27万円+α 夫と死別または離婚した女性のための控除。条件により増額
寡夫控除 27万円 妻と死別または離婚し子を扶養、所得500万円以下の男性のための控除
社会保険料控除 その年の支払額 年金や健康保険などを納めた分の控除
生命保険料控除(一般生命保険) 旧:〜5万円、新:〜4万円 一般の生命保険の支払いがあると受けられる控除
生命保険料控除(介護医療保険) 新:〜4万円 新制度の介護・医療保険の支払いがあると受けられる控除
生命保険料控除(個人年金保険) 旧:〜5万円、新:〜4万円 個人年金保険の支払いがあると受けられる控除
地震保険料控除 〜5万円 地震保険の支払いがあると受けられる控除
医療費控除 その年の支払額−10万円 年間の医療費の10万円又は所得金額の5%を超えた分に対する控除

 小泉さんは専業主婦の奥さんと高校生の子どもがいて、生命保険にも加入している。該当する所得控除は基礎控除、配偶者控除、扶養控除(一般)、社会保険料控除、生命保険料控除だ。これらの控除は多くの方が該当するので簡単に説明しておこう。

基礎控除

 基礎控除は収入のあるすべての人が受けられる控除で控除額は38万円。基礎控除はサラリーマンだけでなく個人事業主、パート、アルバイトでも同じだ。基礎控除が38万円、先ほどの給与所得控除の最少額が65万円、合計すると103万円となる。給与による収入が103万円以下であれば課税所得が0円になり所得税は0円、所得税を納める必要はなくなる。

配偶者控除・配偶者特別控除

 配偶者控除は専業主婦の奥さんやパート務めの奥さんがいると受けられる控除で控除額は38万円。ただし奥さんの年収が103万円以下という条件がある。配偶者が対象なので奥さんが稼いで夫が家事をしていれば奥さんが配偶者控除を受けることになる。

 奥さんの年収が103万円を超えた場合、141万円未満であれば配偶者特別控除の対象となる。配偶者特別控除は奥さんの年収により段階的に控除額が減っていく。配偶者特別控除には夫の所得が1000万円以下という条件がある。

配偶者特別控除
年収 控除額
103万円超  105万円未満 38万円
105万円以上 110万円未満 36万円
110万円以上 115万円未満 31万円
115万円以上 120万円未満 26万円
120万円以上 125万円未満 21万円
125万円以上 130万円未満 16万円
130万円以上 135万円未満 11万円
135万円以上 140万円未満 6万円
140万円以上 141万円未満 3万円
141万円以上 0円

 昨今、配偶者控除の廃止が検討されている。サラリーマン時代の筆者は意味が分からず「ふーん」くらいにしか思わなかったかもしれない。配偶者控除が廃止されると夫の納税額は増える。増税だ。表向きは「主婦が年収103万円に納まるように仕事をセーブすることが女性の社会進出の妨げとなっているから、配偶者控除を廃止するのが解決策」だとしている。果たして、配偶者控除がなくなると多くのパート主婦が正社員を目指すのだろうか。

 筆者の考えは逆だ。103万円の壁を300万円くらいに引き上げるかいっそなくしてしまい、結婚していれば奥さんの年収に関係なく配偶者控除の対象とすれば、女性の社会進出の妨げにはならないはずだ。少子高齢化の問題を考えると「結婚するとお得。子どもがいるとお得」な税制を実現するべきで、配偶者控除の廃止は増税だけが目的だと感じている。

扶養控除

 扶養控除は「子どもや親など生計を一とする=経済的に面倒をみている」親族がいると受けられる控除だ。扶養親族の年齢などによって控除額は異なる。正確は表現ではないが高校生なら38万円、大学生なら63万円、70歳以上、同居、公的年金が158万円以下なら58万円などとなっている。小泉さんは高校生の子がいるので38万円だ。

 扶養控除の注意点は子どもの誕生日だ。最も控除額が大きい特定扶養親族は「その年の12月31日に年齢が19歳以上23歳未満」というのが正確な条件だ。ストレートで大学に進み誕生日を迎えると19歳になるが、早生まれの子は12月31日にはまだ18歳なので、特定扶養親族の対象にはならない。留年することなく大学を卒業すると4月から社会人となり年収が103万円を超えるので、22歳でも控除の対象外。ようするに早生まれの子は特定扶養親族の控除が受けられるのが1年少なくなる不公平は仕組みとなっている。一般の扶養親族も、早生まれの高校1年生は12月31日には15歳なので、扶養控除の対象外となる。

 特定扶養親族の趣旨は「大学生がいると出費がかさむから税金を減らしましょう」ということだと思われるが、年齢要件なので大学生である必要はない。浪人生でもフリーターでも、年収103万円以下であれば特定扶養親族の控除の対象となる。

社会保険料控除

 社会保険料控除は厚生年金、健康保険、雇用保険など支払った社会保険料の合計額が控除される。毎月の給与から天引きされているこれらの社会保険料の1月から12月の合計額が社会保険料等の金額の欄に記載されている。小泉さんの場合は87万円だ。

生命保険料控除

 生命保険料控除は生命保険に加入していると受けられる控除だ。一般の生命保険、医療保険、介護保険、個人年金保険などが対象となる。年末調整で生命保険会社から送られてきた証明書を張って書類を提出したものがここに反映されている。

 生命保険料控除の控除額は、2011年以前に契約した旧制度の保険と、2012年以降に契約した新制度の保険によって控除額が異なる。控除額の算出方法は旧制度、新制度の組み合わせなど少々複雑。小泉さんのは旧制度の生命保険に10万5000円、旧制度の医療保険に8万円で合計18万5000円が旧生命保険料の金額となっている。10万円を超えているので控除額は一律の5万円だ。

生命保険料控除は旧制度、新制度、保険の種類で控除額が異なる
小泉さんは旧制度の保険で10万円を超えているので控除額は5万円

 小泉さんの控除額を合計すると206万円。この額が「所得控除の額の合計額」に記載されている。

基礎控除    38万円
配偶者控除   38万円
扶養控除    38万円
社会保険料控除 87万円
生命保険料控除 5万円
 合計     206万円

基礎控除、配偶者控除、扶養控除の控除額を知らないと計算ができないが、それが分かれば206万円が算出できる

所得税の納税額を計算しよう

 源泉徴収票の不明な欄は残り1つだ。念のため最初に紹介した計算式をもう一度みてみよう。

・給与の収入金額(年収)−給与所得控除=給与所得
・給与所得−各種所得控除=課税所得
・課税所得×税率=所得税

 2行目の各種所得控除まで進んだので、次は課税所得の算出だ。給与所得の410万円から所得控除の206万円を引くと課税所得の額は204万円となる。

・580万円(年収)−170万円(給与所得控除)=410万円(給与所得)
・410万円(給与所得)−206万円(各種所得控除)=204万円(課税所得)

 この課税所得に税率を掛けると所得税が算出できる。所得税の税率は表のように累進課税となっていて所得が増えると税率が上がっていく仕組みだ。

所得税の税率
課税所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超 330万円以下 10% 9万7500円
330万円超 695万円以下 20% 42万7500円
695万円超 900万円以下 23% 63万6000円
900万円超 1800万円以下 33% 153万6000円
1800万円超 40% 279万6000円

 表を一見すると195万円までは税率が5%でそれを超えると10%、さらに330万円を超えると20%と倍々で上がっていくように思えるが、課税所得全体にその税率が掛かるわけではなく、例えば課税所得が300万円の場合、195万円までの部分は5%、195万円を超えた300万円までの部分に10%を掛け、それらを合計した額が税額となる。

195万円×5%=9万7500円
(300万円−195万円=105万円)×10%=10万5000円
9万7500円+10万5000円=20万2500円

という計算だ。税率ごとに分けて計算するのは面倒なので、表の右側の控除額を差し引くと簡単に計算できる。

300万円×10%−9万7500円=20万2500円

 小泉さんの課税所得は204万円なので所得税額は10万6500円となる。

204万円×10%−9万7500円=10万6500円

 以前はこれで完了だったが、平成25年分(2013年)分からは、東日本大震災の復興特別税が加算される。所得税の復興特別税は所得税額の2.1%となっている。

10万6500円×2.1%=2237円
10万6500円+2237円=10万8737円
100円未満を切り捨て→10万8700円=納税額

 所得税に復興特別税を加算し100円未満を切り捨てた10万8700円が最終的な税額で、すでに徴収済みの税額として「源泉徴収税額」の欄に記載されている。

課税所得の204万円に税率を掛け、復興特別税を加えた10万8700円が源泉徴収税額として記載されている

 図の赤文字や青文字は税の仕組みを知らないと計算できない部分だ。この源泉徴収票や教育から感じるのは、国は国民が税に無関心あることを望んでいて、できるだけ税の仕組みを分かりにくくしたいということだ。先ほど説明した「配偶者控除を廃止し女性の社会進出を促進する」というのも、税の知識があれば「それは詭弁(きべん)だろう」と思う人が多いのだろうが、サラリーマン時代の筆者ならそんなニュースを聞いても意味が分からずスルーしたはずだ。これを機会に少し税金に興味を持っていただきたい。

住民税は所得税よりさらに分かりにくい

 住民税はザックリ計算するなら所得税の課税所得の10%チョット。小泉さんの場合は20万円チョットとなる。ところが住民税を細かく算出する方法まで説明すると、所得税と同じくらい長〜い説明が必要だ。算出方法はお住まいの自治体のホームページに掲載されているので、それを参照していただくとして、ここでは要点だけ説明したい。

・住民税の税率はほぼ全国一律10%。「○○市は住民税が高い」は都市伝説
・所得税と住民税では控除額が異なることが多く分かりにくい
・多くの住民は知らないが7割以上の県が環境税の名目で超過課税を徴収している
・住民税は1年遅れで納税する

 「豊田市はトヨタがあるから住民税が安い」といったたぐい話を聞いたことはないだろうか。これは都市伝説で、住民税の税率はほぼ全国一律10%。10%の内訳は都道府県民税が4%、市町村民税が6%。もちろん豊田市の市民税は6%だ。

 例外は神奈川県の県民税が4.025%、名古屋市の市民税が5.7%、財政破たんした夕張市の市民税が6.5%などがあるが、ごくわずかだ。課税所得200万円の神奈川県民が税率10%の県に引っ越すと住民税は500円(所得割分)少なくなる。10年で5000円なので、生きている間に引っ越し代の元が取れることはない。

 所得税と住民税では控除額が異なることが多い。主なものを一覧にしたので確認していただきたい。

主な控除額の差
控除の種類 所得税の控除額 住民税の控除額
基礎控除 38万円 33万円
配偶者控除 38万円 33万円
配偶者特別控除 3〜38万円 3〜33万円
扶養控除(一般) 38万円 33万円
扶養控除(特定) 63万円 45万円
扶養控除(同居老親) 58万円 45万円
扶養控除(同居老親以外) 48万円 38万円

 これ以外にも障害者控除、寡婦控除、寡夫控除、勤労学生控除、生命保険料控除など多くの控除で住民税の控除額は少なくなっている。扶養控除は多くの方が該当するので所得税と住民税の差を図にしてみた。

所得税と住民税の扶養控除の差

 同じく該当する方が多い生命保険料控除は上限額も異なるが、計算式も異なるので図を参照していただきたい。

所得税と住民税の生命保険料控除の差

 あまり知られていないが7割の県で「みやぎ環境税(1200円)」「ぐんま緑の県民税(700円)」「あいち森と緑づくり税(500円)」などの名称の環境税が、各県独自の超過課税として徴収されている。おそらく税率の差よりもこの環境税の差の方が地域差としては大きいと思われる。いずれにせよ住民税を理由に移転するほどの差はない。

 サラリーマンの方は新入社員を除き、所得税と住民税が毎月の給与から天引きされているはずだ。この所得税と住民税に1年以上の時差があることはご存じだろうか。所得税はその月の支給額からみなしで算出している。「給与所得の源泉徴収税額表」なるものがあり、例えばその月の社会保険料等控除後の給与が30万円の人は独身なら8420円、扶養家族が1人なら6740円、2人なら5130円がその月の納税額となっている。

給与所得の源泉徴収税額表(平成26年分、PDF)
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/gensen/zeigakuhyo2013/data/01.pdf

 1月、2月……と毎月みなしで納税し、12月に生命保険料などを加味して年末調整を行い、その年1年間の所得税(+復興特別税)を最終調整して完納する仕組みだ。ここまでは国税庁の役割。住民税はその結果を地方自治体が受け取り、翌年の6月から翌々年の5月に分割して納税する。2015年の2月に天引きされる住民税は2013年の収入から計算された住民税ということだ。

節税

 長いこの記事の締めくくりは、冒頭に書いた「入籍は年末にした方が11万円お得」「生命保険を見直すと同じ掛け金で毎年1万円お得」の種明かしだ。サラリーマンにできる節税は限られている。給与所得控除は年収に対し一定式で決まるので対策も何もない。最後の税率も一定式なので同様だ。唯一の節税策は控除を抜け目なく積み上げることだ。

 結婚を考えている人は条件が合えば「入籍は年末にした方が11万円お得」となる。奥さんとなる人の年収が103万円以下であれば、籍を入れた年から配偶者控除の対象となる。年末ギリギリに入籍しても日割りなどはなく1年としてカウントされる。

 仮に、夫となる人の課税所得が300万円で税率10%であれば、所得税の控除額が38万円なので、節税額は3万8000円、住民税の控除額は33万円、税率は一律10%で節税額は3万3000円、合計7万1000円の節税だ。夫の課税所得が500万円で税率20%であれば所得税で7万6000円、住民税は変化なく3万3000円で、合計10万9000円の節税となる。奥さんがフルタイムで普通に働いている場合は配偶者控除の対象とはならないので、年末に入籍しようが年始に入籍しようが同じだ。

控除額 節税額:課税所得300万円 節税額:課税所得500万円
所得税:38万円 3万8000円(10%) 7万6000円(20%)
住民税:33万円 3万3000円(10%) 3万3000円(10%)
  7万1000円 10万9000円

 同様な考えで、共働きの夫婦が出産で奥さんが退職する場合も、1月から退職までの収入が103万円以下であれば配偶者控除の対象となる。夫の年収次第で控除額は異なるので、早く退職した方が得か、もう1カ月奥さんが給料をもらった方が得か、配偶者特別控除も含め事前に確認する価値はあるだろう。

 扶養控除は子どもが早生まれだと損をする仕組みだ。2月に小作りをして12月に生まれれば十数年後に得となる。3月から5月に小作りをして翌年の1〜3月に生まれると損をすることになる。ただし、20年近く先に同じ税制が続いている保証はない。

 扶養控除の落とし穴は親の年金だ。父親が受け取る年金は公的年金だが、父が亡くなり母だけの場合は遺族年金を受給しているはずだ。遺族年金は公的年金ではないので所得の対象とはならず、158万円を超える遺族年金を受給していても、老人扶養親族として控除の対象となる。同居以外でも生計を一にしていれば控除の対象となるので、別居している親に仕送りをして養っていれば、控除を受けられる可能性はある。控除額も大きいし、長生きすると10年、20年と期間も長いので、大きな節税になるかもしれない。確認をしていただきたい。

 最後は生命保険料控除だ。源泉徴収票の例に登場した小泉さんは旧制度の生命保険に10万5000円、セットで加入した旧制度の医療保険に8万円で合計18万5000円が旧生命保険料の金額となっている。昔から加入している人はこのパターンが多いと思われる。

 この保険の入院給付金の部分は医療保険に当たり、新しく加入すれば新制度の介護医療保険控除の対象となる。死亡保険の対象となる生命保険の部分はそのまま残し、医療保険の部分を見直してみよう。仮に8万円の旧医療保険を解約し、新規で8万円の医療保険に加入すると旧生命保険料控除は10万5000円なので控除額はそのまま5万円。介護医療保険は8万円なので控除額は4万円となる。保険の見直しで控除額が4万円増えた計算だ。

 住民税の控除額はもともと少なめで3万5000円だが、保険を見直すと旧生命保険料控除はそのまま3万5000円。新制度の介護医療保険の控除は2万8000円となる。小泉さんは所得税の税率が10%なので所得税で4000円、住民税で2800円、計6800円の節税となる。もし税率が20%の人なら所得税で8000円、住民税は変わらず2800円、合計1万800円の節税だ。大きな額ではないが、これから先20年、30年と払い続けるなら累積すればそれなりの節税額となる。

筆者は旧医療保険を解約し新制度の介護医療保険に加入した

 保険に関する注意点は、解約して再加入すると保険料自体が上がる可能性があることだ。仮に解約をしなくても、特約を付ければ新制度の介護医療保険の対象となる場合がある。ある保険会社はその特約を外して元に戻しても新制度の介護医療保険のまま維持できるとのことだ。ご自身の医療保険を新制度の介護医療保険の対象にできないか確認する価値はあるだろう。

*****

 今回はサラリーマンを中心に所得税の説明をした。次回は確定申告の主役である個人事業主の税金について説明したい。

(奥川浩彦@ アイピーアール)