特別企画

2017年はサラリーマンが節税を始めるチャンス? サラリーマンと個人事業主ができる節税を解説

 2月に入りいよいよ確定申告シーズンの到来だ。サラリーマンは確定申告とは無縁という人もいれば、医療費控除の申告を毎年している人もいるだろう。一方、個人事業主は避けては通れない(苦痛な)一大イベントだ。今回は確定申告シーズンらしくサラリーマンと個人事業主の節税について話をしてみたい。

 平成29年(2017年)はサラリーマンが節税を始めるチャンスの年になるかもしれない。キーワードは「セルフメディケーション税制」と「確定拠出年金」。特にセルフメディケーション税制はサラリーマンも個人事業主も恩恵のありそうな税制だ。

 日本のサラリーマンは税金の知識を必要とする機会が少ない。筆者自身、サラリーマン時代の二十数年間は税金の知識は皆無に等しかった。さして不都合もなかったが、今思えば「少しは知っておくべきだった」と反省している。日ごろ税金に関心のない人も、少し知識を得ると累積すれば車が買えるくらいの節税ができるかもしれない。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。

サラリーマンと個人事業主の所得税

 まず簡単にサラリーマンと個人事業主の所得税の算出式を確認しておこう。

サラリーマンの所得税の算出式

1.給与の収入金額(年収)-給与所得控除=給与所得
2.給与所得-各種所得控除=課税所得
3.課税所得×税率=所得税

個人事業主の所得税の算出式

1.売り上げ-経費=所得
2.所得-各種所得控除=課税所得
3.課税所得×税率=所得税

 比較すると1行目はかなり異なるが、2行目はほぼ同じ、3行目は同じ計算式となっている。サラリーマンの算出式の1行目に出てくる給与所得控除は収入から一定額を差し引き、課税対象からなかったことにしてくれるありがたい控除だ。

 年収500万円の人でも、給与所得控除の額は154万円と巨額。給与所得控除についてもっと知りたい人は先日掲載した「マイナンバーで刷新された平成28年分 源泉徴収票の見方を理解しよう」を参照していただきたい。

 この式でサラリーマンが自分の意志でコントロールできるのは各種所得控除だけだ。控除を増やせば課税所得が減り、それに税率を掛けた所得税が減る=節税という図式だ。個人事業主は経費と控除を増やせば課税所得が減り節税となる。サラリーマンと個人事業主に共通する控除を増やす方法について紹介して行こう。

薬局で買った市販薬が節税になる

 控除の代表的なものとしては基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除などがある。この中ですぐに節税につながりそうなのは扶養控除(老人扶養親族)、生命保険料控除、医療費控除の3つだ。

 3つの中で今年注目されるのは医療費控除だ。従来の医療費控除は年間に支払った医療費が10万円(年収200万円未満では所得の5%)を超えた場合が対象で、かなりハードルが高かった。

 2017年1月からスタートしたセルフメディケーション税制は、薬局で購入した市販薬を対象とするもので、年間1万2000円(税込)を超えた部分の金額(上限金額:8万8000円)が控除の対象となる。月平均なら1000円、1200円の風邪薬、目薬、湿布薬なら年間10個を超えて買えば節税となるのでハードルは低めだ。生計を一とする親族の購入費なので、奥さんや子どもはもちろん、実家の親を扶養控除の対象としていれば、別居の親が買った医薬品も対象となる。

 セルフメディケーション税制にはいくつか条件がある。1つ目は対象となる医薬品が定められていること。すべての市販薬が対象ではなく「スイッチOTC医薬品」なるものが対象となる。「スイッチOTC医薬品って何?」と思うのが普通なので、厚生労働省のWebサイトに掲載されているリストから具体的な医薬品名をあげると、エージーノーズ、エスタックイブ、ガスター10、コルゲンコーワIB錠、コンタック600ファースト、サロンパスEX、ダマリンS、ナボリンS、バファリンルナi、パブロンS、バンテリンコーワゲルEX、ベンザブロックIP、ボルタレンEXゲル、メンソレータム メディクイックH、ユンケルB12、ロキソニンSといった風邪薬、胃腸薬、頭痛薬、目薬、湿布など1600品目ほどが対象となっている。

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html(「2 セルフメディケーション税制対象品目一覧」参照)

 実際に数店舗のドラッグストア・薬局を見てきたが「お店によっては対象商品を見つけるのは難しい」印象だ。セルフメディケーション税制対象薬品などのPOPはなし。製品パッケージにロゴがあるものはごくわずかで、同じ製品でも他店ではロゴなしバージョンも売られている。

 積極的なお店は値札にロゴが印刷されていたが、他店では店員さんに聞くと値札に「◆エスタックイブ」のように印が付いているものが対象製品などと知らされたり、全く表記がなかったりで、お店に行ってから対象商品を見つけるのは難しい店もある。

 レシートにはセルフメディケーション税制対象製品に★や◆などの印が付く。市販薬を頻繁に購入する人は、レシートを捨てないようにすることが節税の第一歩となりそうだ。

値札のイメージ。お店によってはこのようにロゴの印刷された値札を使用している
製品パッケージにロゴがあるものを見つけるのはレアキャラを見つけるくらい困難
どの薬局もレシートに★、◆などの印が付くことは明記されていた
実際に対象製品を買うと、商品名の前に印が付いていた

 条件の2つ目は「健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組」を行っていること。具体的には、健康保険組合や国保の健康診断、インフルエンザなどの予防接種、市町村が実施するガン検診などを行っていることとなっている。

 この2つの条件を満たし、レシートの原本、一定の取組(健康診断や予防接種)を証明するものの写しを確定申告で税務署に提出すると、控除を受けられる。ネット通販で買った医薬品の領収書を自宅プリンタで印刷したものはNGとか、自費の人間ドックはNGなど細かな注意があるので、控除が受けられそうな人は厚生労働省のセルフメディケーション税制に関するQ&Aを一読していただきたい。

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html(「3 事務連絡等」のQ&A参照)

 セルフメディケーション税制でどれくらい納税額が減るかを確認してみよう。課税所得300万円の人が市販薬を5万2000円購入した場合、控除額は4万円(=5万2000円-1万2000円)となり、課税所得が4万円減り所得税の納税額は4000円(課税所得が195万円を超え330万円以下の部分の税率は10%)減ることになる。翌年の住民税も4000円(住民税の税率はほぼ一律10%)減るので、合計8000円の節税だ。
(※所得税には0.21%の復興特別税が上乗せされるが今回は割愛する=以下同)

 個人で従来の医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできないが、共働きであれば、例えば旦那さんが従来の医療費控除、奥さんがセルフメディケーション税制による医療費控除を受けることは可能だ。

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)について(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html

親の所得を確認しよう

 控除で見落としがちなのは控除対象となる親だ。今一度、親が控除対象となるかを確認しよう。扶養控除対象となるのは年間の所得が38万円以下で生計を一としていること。多くの場合は対象が年金をもらっている親となるが、このご時世なのでリストラで年収が103万円以下(=所得が38万円以下)であれば、50代の親でも対象となる。

 公的年金から控除される額は年齢により異なり、65歳未満は70万円、65歳以上は120万円となっている。なので65歳未満の年金受給者なら公的年金が年間108万円以下であれば所得が38万円以下となり控除対象。65歳以上なら公的年金が年間158万円以下であれば所得が38万円以下となり控除対象となる。仮に63歳の親が150万円の年金を受給している場合、2年後は65歳になるので所得が38万円以下となり扶養親族の対象となるということだ。なお、年齢はその年の12月31日の年齢で判断する。

 年金に関する注意点は、年金の種類だ。現在高齢の女性は専業主婦だった可能性が高い。よってサラリーマンだった父親が亡くなり母親は遺族年金を受給しているケースが多い。遺族年金は課税対象とならないので、年間の受給額が158万円を超えても扶養控除の対象となる。

 もう1つの条件となる「生計を一とする」について、国税庁のWebサイト[https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm]には、以下のように記載されている(要約)。

Q1
「生計を一にする」というためには同居が要件とされていますか。
A1
「生計を一にする」とは、必ずしも同居を要件とするものではありません。別居している場合であっても、余暇には起居(ききょ)を共にすることを常例としている場合や、常に生活費、学資金、療養費等の送金が行われている場合には、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。同一の家屋に起居している場合には、明らかに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、「生計を一にする」ものとして取り扱われます。

 実家に住む親に仕送りなどをしていれば、別居であっても扶養控除の対象となる。金額に関して明確なルールはない。法的に送金の証明書の提出は求められていないが、企業によっては振り込みの写しなどの提出が必要なこともあるので、記録は残しておこう。

 親を扶養控除の対象とした場合の納税額を確認してみよう。親の年齢が70歳未満であれば一般の扶養親族となり控除額は38万円。70歳以上は同居であれば控除額は58万円、別居であれば控除額は48万円となっている。仮に課税所得300万円の人が実家に住む70歳の母親を扶養控除の対象とすれば、課税所得が48万円減り所得税の納税額は4万8000円減ることになる。

 住民税は控除額が異なり70歳未満の控除額は33万円。70歳以上は同居であれば控除額は45万円、別居であれば控除額は38万円だ。この例では翌年の住民税は3万8000円減り、所得税と住民税を合わせた節税額は8万6000円となる。日本は長寿の国。仮に90歳まで生きれば20年間で172万円の節税となる。

所得税と住民税の扶養控除額と年齢の関係

生命保険は医療保険を再確認しよう

 生命保険は節税のために加入するものではないが、同じ保険料を支払うなら少しでも節税になった方がよいだろう。生命保険料控除は平成23年以前の契約(旧制度)と平成24年以降の契約(新制度)に分かれている。平成23年以前に契約した生命保険は、死亡保険金などを対象とする一般生命保険と、入院給付金などを対象とする医療保険が同じ区分となっている。再確認したいのは旧制度の医療保険だ。

 旧制度の一般生命保険+医療保険で年間18万円の生命保険料を支払っていても、控除額は上限の5万円だ。この保険の生命保険の部分はそのまま残し、医療保険の部分を新制度の介護医療保険に変更すると控除額を増やすことができる。

 仮に一般生命保険の部分の年間の支払額が10万円、医療保険の部分の支払額が8万円だったとしよう。旧制度の一般生命保険の部分をそのまま残せば控除額は減ることなく限度額の5万円となる。医療保険は新たに8万円の保険を契約すれば、新制度の介護医療保険として4万円の控除を増やすことが可能だ。同じ18万円の保険料で控除額を5万円から9万円に増やすことができる。

 ただし、保険は若いときに入った方が条件がよいことが多い。同じ保険料では条件が悪くなるか、同じ条件を希望すると保険料が高くなる可能性があるので注意したい。

まずは保険の種類をよく確認しよう

 この先は保険会社によって可否があるので、旧制度の医療保険になんらかの特約を付加すると、その部分だけ新制度の介護医療保険に変更できるかを保険会社に確認したい。もし可能であれば特約分の追加はあるが、条件をキープしたまま介護医療保険料控除の4万円を上乗せできる。

 この方法を教えてくれたのは保険会社の知人で「奥川さんの医療保険に入院初期給付特約という入院初日から給付金を受け取れる特約を付加すると、保険料が340円/月で新制度の介護医療保険に分類される」とのことだった。

 さらに、付加した特約を半年~1年後に解約した場合、そのまま新制度の介護医療保険として継続できるかも確認したい。もし可能であれば、一番安い特約を短期間付加して解約すれば、旧制度の医療保険をほぼ掛け金そのままで新制度の介護医療保険に変更できるかもしれない。

 保険の条件や付加特約の追加保険料などは無視して、医療保険を見直して新制度の介護医療保険料控除が4万円増えたとしよう。課税所得300万円の人であれば所得税で4000円の節税となる。住民税の介護医療保険料控除の上限は2万8000円なので住民税の節税は2800円だ。合計しても6800円だが生命保険は支払期間が長いので40年であれば27万円の節税となる。

所得税と住民税の生命保険料控除の算出方法

 ここまでの節税額の確認は課税所得300万円を例としてきたが、サラリーマンなら出世して、個人事業主なら事業を拡大(法人化も)して課税所得が500万円、800万円、1000万円と増えるかもしれない。そうなれば所得税の税率も10%から20%、23%、33%と上がっていくので、同じ控除額でも節税効果は数倍となる。

確定拠出年金

 セルフメディケーション税制と並び、サラリーマンの節税策として注目されているのが確定拠出年金だ。これまでは確定拠出年金に加入できたのは個人事業主(自営業者)と、企業年金や企業型確定拠出年金のない会社に勤めるサラリーマンに限定されていたが、法改正により2017年からは、企業年金や企業型確定拠出年金のある会社に勤めるサラリーマン、公務員、主婦など、基本的にすべての人が加入できるようになった。

 従来は個人事業主と一部のサラリーマンに限定されていた確定拠出年金が、間口を広げたことでサラリーマンの節税に大きく影響しそうだ。

確定拠出年金のWebサイト

 節税効果の高い確定拠出年金だが、いざ加入しようと思うと分かりづらいのが正直な印象だ。分かりづらい理由は選択肢が豊富なこと。手数料や選択できる投資商品が異なるので金融機関を選ぶときに迷う。さらに1つの金融機関が多くの投資商品をラインアップしているので、元本保証(=ローリスクローリターン)の商品や元本保証のない国内株式、国際株式、国内債券、国際債券、不動産投信などの商品をどの比率で組み合わせるかを、自分自身で決めなければならない。

 日ごろから投資に興味がある人は問題ないと思われるが、興味がない人や知識のない人はある程度お勉強が必要となる。筆者は小規模企業共済と確定拠出年金に加入しているが、基本的に選択肢のない小規模企業共済に比べ、確定拠出年金は10倍分かりづらい印象だった。

 確定拠出年金のメリットは、その年に払い込みした掛け金の全額が控除されることだ。例えば毎月1万円を定期預金感覚で確定拠出年金に払い込みをすると年額12万円の控除が受けられる。課税所得300万円であれば所得税と住民税で2万4000円の節税となる。銀行口座に12万円を入れておいても利子で2万4000円を得ることはできないので資金にゆとりがある人には大きなメリットとなる。

 確定拠出年金の上限額は以下のようになっている。

1.個人事業主(自営業者) 6万8000円
2.企業年金等に加入していないサラリーマン 2万3000円
3.企業型確定拠出年金以外の企業年金に加入しているサラリーマン 1万2000円
4.公務員・私学共済加入者 1万2000円
5.専業主婦 2万3000円
6.3、4以外で企業型確定拠出年金に加入しているサラリーマン※ 2万円
※企業型確定拠出年金規約で個人型同時加入を認められていること

 実に複雑で分かりにくい。これを理解するには年金の仕組みを理解しなければならない。年金を理解することは、確定拠出年金に加入するよりも多くのお勉強が必要となる……無理。

 ザックリとした説明だけしておこう。個人事業主は国民年金。サラリーマンは厚生年金(国民年金に相当する基礎年金を含む)に加入している。国民年金は20歳の大学生もガッツリ稼いでいる事業主も毎月同額(1万6260円)となっている。厚生年金は給与が増えると天引きされる年金額が増え、さらに同額を会社が負担するので納める額は国民年金の数倍となる。当然だが将来もらえる年金額に大きな差が出る。

 ガッツリ稼いでいるなら、個人事業主は自分で毎月数万円を貯蓄して将来に備えるしかない。しかし、銀行に貯蓄しても控除額はゼロ円、税制面の優遇はない。サラリーマンの厚生年金は社会保険料控除として全額が控除されるので数万~数十万円の節税となる。個人事業主はメッチャ損、となる。

 ならば、国民年金基金、付加年金、確定拠出年金に払い込みした全額を控除の対象とするから自分の意志で年金を増やしてね。でも上限額は3つ合わせて月額6万8000円。もし国民年金基金が3万円なら確定拠出年金の枠は残り3万8000円ですよ、と言うことで個人事業主の上限額は6万8000円となっている。

 サラリーマンは厚生年金にさらに上乗せとして企業年金に加入している人もいる。例えばトヨタ自動車企業年金基金[http://www.toyotakikin.jp/]のような大手企業独自の企業年金、業界団体で独自の年金制度を持つこともある。そのため企業年金に加入しているサラリーマンは上限額が低く抑えられている。

国民年金、厚生年金、企業年金と上限額のイメージ図

 法改正により誰でも確定拠出年金に加入できるようになったメリットはポータビリティだ。INTERNET Watchの読者なら携帯電話のナンバーポータビリティの説明は不要だろう。今ではキャリアを変更しても同じ電話番号が使えるのは当たり前だ。

 例えば東京の企業に勤め、会社の企業型確定拠出年金に加入していた人が介護などの理由で実家に戻り公務員になったとしよう。従来は公務員は確定拠出年金に加入できなかったので継続することができなかった。法改正により誰でも加入できる=転職しても確定拠出年金を継続できるようになったことは大きなメリットと言えよう。

 デメリットもある。最大のデメリットは60歳以降まで途中解約ができないことだ。定期預金のように突発的に資金が必要になったときに現金化することはできない。それは国民年金や厚生年金と同じだ。なので節税効果を期待して無理な金額を設定することは避けたい。資金にゆとりのあるサラリーマンは、節税の選択肢として確定拠出年金を検討することをお勧めしたい。

個人事業主は小規模企業共済を優先したい

 確定拠出年金の個人事業主の上限額は月額6万8000円。年額にすると81万6000円となる。課税所得が300万円なら所得税で16万3200円、住民税で8万1600円、合計24万4800円の節税となる。これが20年続くと500万円近い節税だ。だが個人事業主には小規模企業共済という選択肢もある。筆者の個人的な意見としては1stチョイスは小規模企業共済、2ndチョイスが確定拠出年金だ。

 小規模企業共済の掛け金の上限は月額7万円なので、節税できる金額はほぼ同じ。小規模企業共済は年払いが選択できるため、もうかった年の年末の節税対策に有効だ。掛け金の増減も随時可能。年齢制限もないので定年退職のない自営業に合っている。手数料も不要だし、途中解約や掛け金を担保とした貸し付けもある。まずは小規模企業共済に加入して、さらに資金にゆとりができたら確定拠出年金というのが王道だろう。

小規模企業共済と確定拠出年金の比較
小規模企業共済確定拠出年金
掛け金の上限7万円/月6万8000円/月
掛け金の下限1000円/月5000円/月
掛け金の増減随時可年1回可
払込方法月/半年/年/前納
払込年齢制限なし60歳まで
手数料なしあり
途中解約不可
運用方法選択不可選択可

 参考までに小規模企業共済の加入者は125万人。確定拠出年金の自営業者の加入者は7万人と圧倒的な差がある。筆者自身も小規模企業共済は起業した翌年に加入したが、確定拠出年金はそれから7年後だった。ちなみに投資などの知識がない筆者は手数料の安さでスルガ銀行を選択。運用もローリスクローリターンの商品を主に選択したので投資と言うよりは控除のある定期預金に近いイメージだ。

 個人事業主は確定申告という一大イベントが間近だ。まずは確定申告を乗り切り、その後で節税について考えいただきたい。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。