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今年「e-Taxで確定申告」すべき理由とは?

「青色申告特別控除65万円」ゲットへの手順を詳しく解説[前編]

今年「e-Taxで確定申告」すべき理由とは? 「青色申告特別控除65万円」ゲットへの手順を詳しく解説[前編]

 令和2年分(2020年分)の確定申告の時期がやってきた。申告期間は2月16日(火)から4月15日(木)まで。当初の予定では3月15日までとされていたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の緊急事態宣言期間とも重なることを踏まえ、申告会場の混雑回避などの観点から1カ月間延長されたかたちだ。

 今回、大幅な税制改正が行われており、所得のあるほとんどの国民は「基礎控除」が38万円から48万円に改正された。個人事業主に影響するのは「青色申告特別控除」の改正だ。2019年分までは、確定申告書は郵送しても、税務署に持参しても、e-Taxで電子申告しても、青色申告特別控除の額は65万円だった。これが2020年分からは、e-Tax以外の提出方式では55万円、e-Taxで提出すると65万円と、控除額に差が付けられた。これまで“e-Taxスルー”をしていた人も、重い腰を上げてe-Taxによる確定申告に切り替えるときが来た。筆者が“e-Tax元年”と位置付けている2020年分の確定申告について、個人事業主がe-Taxで申告を完了させるまでの詳細な手順を解説する。


今回、青色申告を「e-Tax」に切り換えるべき理由


e-Taxなら「青色申告特別控除」10万円アップ

 令和2年(2020年)の税制改正のうち影響の大きな改正は「基礎控除」だ。2019年分までは、収入のある人は個人事業主、サラリーマン、パート、アルバイトの全てが38万円だったが、2020年分から一部高額所得者を除き48万円となった。

 個人事業主(フリーランス)で、青色申告をしている人が受けられる「青色申告特別控除」は、2019年分までは提出方式に関わらず65万円。2020年分からは、e-Tax提出以外の人は55万円に減るが、基礎控除の10万円増があるのでプラスマイナスゼロだ。ただし、e-Taxで確定申告を提出した人は青色申告特別控除が従来と同じ65万円。基礎控除が48万円になるので、控除額は合計10万円アップし、減税となる。

e-Tax利用の有無による「青色申告特別控除」の控除額の違い
「青色申告特別控除」の改正イメージ。e-Taxで確定申告を行えば控除額が増え、減税となる(国税庁の資料を加工して掲載)

 この改正を控除額がアップしたと見るか、ダウンしたと見るかは微妙だ。基礎控除+青色申告控除(e-Tax)の合計額は103万円から113万円にアップしているが、青色申告控除だけ見るとe-Taxを利用しない人は65万円から55万円にダウンすることになる。

e-Taxでどれだけ節税できる?

 控除額が10万円アップするとどうなるか。次のグラフは国税庁のデータから、昨年、確定申告(令和元年分)した事業所得者の申告納税額のある人の所得階級別人員だ。最も人数が多いのは所得300万円超~400万円以下のゾーンだ。

令和元年(2019年)分、申告納税額のある事業所得者の所得階級別人員グラフ
令和元年(2019年)分、申告納税額のある事業所得者の所得階級別人員

 所得(=売上-経費)300万円台から基礎控除(48万円)、国民年金(20万円弱)、生命保険料控除(推定5~10万円)と個人差のある配偶者控除、扶養控除、国民健康保険(地域差もある)など諸々の控除を引くと、課税所得(所得-控除)は200万円台の人が多いと推測される。

 課税所得が195万円超~330万円以下の人の所得税の税率は10%なので、控除額が10万円アップすると1万円の節税となる。加えて住民税も税率が10%なので1万円の節税、地域差はあるが国民健康保険料も10%弱くらい下がると、税金と国保で3万円弱を減らすことできる。所得や税制が同じなら、これが毎年繰り返されるので控除額10万円アップはうれしい。

「e-Taxで確定申告」を行う2つの方法と注意点


「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」

 e-Taxで確定申告を行う方法は大きく分けて2つ。急速に普及しているマイナンバーカードを利用する方法と、2019年から始まったID・パスワード方式だ。

e-Taxの「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の違い
2019年1月から「ID・パスワード方式」の利用が可能となった。「マイナンバーカード方式」も従来方式より簡易化された(国税庁の資料より)

 聞き慣れないID・パスワード方式はマイナンバーカードが普及するまでの暫定的な方式で、将来的には廃止される可能性があり、e-Taxの本命はマイナンバーカード方式と考えよう。強いて言えばマイナンバーカードを持っていない、申請はしたけどまだ受け取っていないなど、確定申告の期限までにマイナンバーカードの取得ができなかった人の、“e-Taxで確定申告”をする最後の手段がID・パスワード方式となる。

「令和2年の税制改正」はいつ決まったの?

 令和2年は基礎控除、給与所得控除、青色申告特別控除などの税制改正が行われ、サラリーマン、パート、アルバイトなどの給与所得者や個人事業主の税制が大きく変更された年となった。多くの日本人はこれらの改正を知らない。寝耳に水だ。これらの改正はいつ決まったのか?

 さかのぼること3年チョット。平成29年(2017年)12月の「平成30年度の税制改正大綱」でこれらの改正は決まっている。大きな改正だったので、INTERNET Watchでも2019年12月26日に掲載した『大増税が迫ってくる? 自分への影響は? まずは源泉徴収票の見方を理解しよう』の記事の冒頭で紹介している。

 この改正が決まったことで筆者は2020年分の確定申告(←今、目の前に迫ってる)を“e-Tax元年”と位置付け、まず2018年分の確定申告は比較のため「ID・パスワード方式」、続いて2019年分は本命の「マイナンバーカード方式」で申告を行い、今回の記事を執筆するための準備をしてきた。実際に2つの方式を試してみると、マイナンバーカード方式の優位性は歴然だと感じている。


マイナンバーカードの取得はまだ間に合う?

 昨年末に掲載した『【緊急告知】大至急マイナンバーカードを取得して「青色申告特別控除65万円」をゲットしよう』という記事で、確定申告に間に合うように急ぎマイナンバーカードを取得しようと書いた。昨年12月の段階で交付まで3カ月以上となっていた世田谷区は1月22日の案内で「2カ月以上」と少し短縮された。同じく約3カ月から3カ月半だった川崎市も「約2カ月」に短縮されている。

世田谷区におけるマイナンバーカードの申請から交付までの期間
世田谷区は交付までの期間が3カ月以上から2カ月以上に短縮されたが、まだ長い

 交付に時間を要する自治体はあるが、1カ月ほどで交付される自治体は多い。今年も確定申告の期間が当初予定の2月16日~3月15日から、予想どおり(期待どおり?)2月16日~4月15日までに延長された。今からマイナンバーカードを申請しても確定申告期限の4月15日に間に合う自治体がありそうだ。

 マイナンバーカード取得に関する詳細は昨年末の記事を参照いただきたい。ポイントは以下の3点だ。

  • 申請書IDが記載された“紙"を見つけること
  • 顔写真の準備(盛りすぎに注意)
  • 忘れない(無理しない)パスワードを設定

 加えて「QRコード付きマイナンバーカード交付申請書」の送付が全国で開始された。読者の中にすでに受け取っている人もいるだろう。スマホだけで申請が完了できるので、この機会にマイナンバーカードの申請をしていただきたい。

 税金とは関係ないが、マイナンバーカードを2021年3月末までに申請(取得ではない)すれば、2021年9月末に延長されたマイナポイント(=2万円使うと5000円もらえます)も利用できる。今すぐ申請してe-Taxで確定申告すれば、税金+国保+マイナポイントで合計3万5000円弱はお得感があると思う。

マイナポイントのページ
マイナポイント、筆者は5000円獲得済み


コロナ禍での「青色申告」のメリットと注意点


「青色申告」の代表的な4つの特典

 当然ながら、白色申告の人は青色申告特別控除の恩恵はない。白色申告の人には耳にタコだと思うが、今まで以上に青色申告に切り替えるべきかもしれない(ただし、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出していることが前提となる)。

 新型コロナウイルス感染症の影響で収益が大幅に悪化した人はたくさんいるだろう。読者の中にも起業以来初めて赤字決算になった人がいるかもしれない。

 青色申告の代表的な4つの特典の中で、コロナ禍でひそかに注目されているのが「赤字の3年繰り越し」だ。青色申告の代表的な4つ特典を確認しよう

  • 青色申告特別控除
  • 青色事業専従者給与
  • 30万円未満の資産の即時償却
  • 赤字の3年繰り越し


コロナ禍の「赤字対策」にも有効

 注目される「赤字の3年繰り越し」は、赤字になった年から3年間、赤字の繰り越しが可能となる。赤字分を翌年以降の黒字と相殺できるので、黒字の年の納税額を大幅に減らすことができる。

 例えば2020年に500万円の赤字。2021年は100万円の黒字。2022年は200万円の黒字。2023年は500万円の黒字だったとしよう。2020年は赤字なので所得税はゼロ円。2021年、2022年は「赤字の3年繰り越し」で黒字でも所得税はゼロ円。2023年は500万円の黒字から2020年の赤字の残りである200万円を引いた300万円の黒字分に対する納税をすることになる。このように赤字の繰り越しにより大幅な節税が可能となる。白色申告の人は赤字を繰り越すことはできない(※繰戻し還付もあるがここでは割愛する)。

青色申告における「赤字の3年繰り越し」の例

 まだまだ新型コロナウイルス感染症は終息が見えない。先々の不安がつのる中で、今できることの1つが青色申告への切り替えだ。今回の2020年分は白色申告の人も、次回の2021年分から青色申告への切り替えをしよう。手書きで青色申告の決算書や確定申告書を作成するのはハードルが高いが、青色申告ソフトを使用すればINTERNET Watch読者なら越えられないハードルではない。“青色申告スルー”“e-Taxスルー”をしている人はこの機会に1歩、2歩先に進んでいただきたい。

 念のために付け加えると、赤字を繰り越すには一般的な確定申告書の「第一表」「第二表」に加え、「第四表」を作成・提出する必要がある。青色申告ソフトには第四表に対応していない製品・サービスがあるので、コロナの影響を受けやすい業種の人は製品選択の際に注意しよう。

損失の繰り越し画面(やよいの青色申告 オンライン)
「やよいの青色申告 オンライン」の繰り越しの画面
クラウド申告ソフトで出力できる書類の例
クラウド対応の申告ソフトでも「第四表」に対応していない申告ソフトがあるので注意しよう


「特別定額給付金」や「持続化給付金」の扱いは?

 コロナ禍ならではの確定申告で「赤字の3年繰り越し」よりも該当する人が多いのは、受け取った助成金等の記帳だろう。

 1つ目は全ての国民を対象とした10万円の「特別定額給付金」。これは非課税なので記帳する必要はない。非課税ということは配偶者控除、扶養控除の対象者の所得にもならない。例えば大学生の息子のアルバイトの年収が100万円だったとしよう。定額給付金の10万円を足すと年収110万円で、103万円を超えるから63万円の特定扶養親族の控除がなくなる……ことはない。

 2つ目は「持続化給付金」。これは課税対象だ。国税庁の「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」「問9.個人に対して国や地方公共団体から助成金が支給された場合の取扱い〔令和3年1月13日更新〕」の解説や「問9-2.助成金等の収入計上時期の取扱い〔令和3年1月13日追加〕」に掲載された表を見ると、事業所得者の持続化給付金は事業所得、給与所得者は一時所得、雑所得者は雑所得と区分されている。フリーランスなど事業所得を申告している人は事業所得として記帳しよう。

「特別定額給付金」や「持続化給付金」の課税・非課税と計上時期
助成金の非課税、課税と計上時期(国税庁のウェブページから引用)

 計上時期は「支給決定時」となっているので、メールで通知を受けた日か入金日のいずれか早い日で記帳することとなる。支給決定時(=通知または入金)が2021年になった場合は来年の確定申告の対象となる。

 この国税庁のサイトには特別定額給付金、持続化給付金以外の扱いや、事例ごとの説明もあるので、気になる人は参照していただきたい。

「e-Taxで確定申告」完了までの“9つのステップ”とは

 INTERNET Watchの読者で“手書き”で確定申告をしている人は少ないと思うが、申告期限が4月15日まで延長され、たっぷり時間があるので、e-Taxに対応した青色申告ソフトを利用して、簡単かつ最短で確定申告を完了させる方法を習得していただきたい。初めて確定申告をする人や初心者のために作業の流れを確認しておこう。ただし、この順番どおりでなくても確定申告はできるので参考程度に見ていただきたい。

e-Taxで確定申告を完了するまでの9つのステップ

 ①事前準備の経費関係は、領収書・レシートをかき集めることから始めよう。クレジットカードや通帳は、データで取得できるクレジットカード会社のウェブサイトやインターネットバンキングの利用が望ましい。②はソフトの初期設定。「元入金、勘定科目、なんだそれ?」は後述する。③はクレジットカード会社のウェブサイトやインターネットバンキング、モバイルSuica、WAON、LINE Payなどの履歴を青色申告ソフトに取り込む作業。④はデータのない現金取引を手入力する。

領収書の保管方法の例
筆者は領収書を科目ごとに封筒に入れて保管している
インターネットバンキング画面
インターネットバンキングを利用していると確定申告は楽になる

 このあとは決算に向けての作業。⑤は高額な備品などを固定資産として登録し、減価償却の設定をする。「固定資産、減価償却、聞いたことはあるけど意味が分からん」も後述する。⑥の「家事按分」も一般生活では無縁の言葉だと思う。店舗を借りていたり、事業専用のトラックなどは電気代、ガソリン代は全額経費となるが、自宅で作業をする場合の電気代や、仕事の移動も私的買い物も1台のクルマを使用する場合のガソリン代などは事業使用分だけ経費とする。電気代やガソリン代を家庭と事業を分ける作業を家事按分という。⑦は税務署に提出する事業内容の報告書。⑧は納税する税金を算出する確定申告書。⑨は、⑦⑧の書類を郵送でも持参でもなく、e-Taxで送る作業となる。

 念のために言うと、難しくはないが簡単でもない。サクッと終わるかというとそうでもない。強いて言えば、クラウドからデータ取得ができなかった時代と比べるとメッチャ楽になった。例えばSuica(交通マネー)の1年間の履歴を手入力するのは大変な作業だったが、データで取り込むと瞬殺だ。水道光熱費もネット通販もあっと言う間にミスなく記帳ができる。筆者は起業から15年目、確定申告に関しては幸せな時代になったと感じている。

 加えてそもそもこの記事は、ズボラな筆者のように1年分の経費や売上をこの時期にまとめて記帳、申告することが前提となっている。毎月、毎週、毎日キッチリ記帳している人はバンバン読み飛ばしていただきたい。

キッチリ厳密に記帳する? 納税額さえ合っていればザックリでOK?

 確定申告に限ったことではないが、キッチリしたい人もいれば、ザックリでOKな人もいる。確定申告の前段階の記帳は、キッチリやるとかなり大変だ。フリーランスの人は売上の入金がある通帳を見て、事業に関係ない入出金がどれくらいあるか確認して欲しい。生活費、私的な買い物、子どもの塾代、年金、国保、生命保険料……記帳不要な明細が多い人は、キッチリ記帳すると納税額に無縁な作業を大量にしなければならない。

 クレジットカードも、支払った日と引き落とされた日にキッチリ記帳すると作業量は2倍になる。詳細は後述するが「事業主借」という手法で、ザ~ックリ記帳すれば、作業量を激減させることができる。起業直後は意味が分からないと思うが、自分が“キッチリ派”か“ザックリ派”か、確定申告に対するポリシーを決めてから確定申告に臨んでいただきたい。


初めての「e-Taxで確定申告」に、無料で始められるクラウド申告ソフトがお勧め

 ここからは【概要】と【実践】の2段階で説明をしていこう。

 【概要】は、これまで手書きやExcel、クラウドに対応していない申告ソフトを利用している人と、初めて確定申告をする人向けに大まかな説明をしている。確定申告の作業に入る前段階の人は【概要】だけ、ザックリと目を通していただきたい。

 【実践】では、実際の操作を説明。「初期設定で最後に必要な家事按分の準備」「分かりにくい固定資産の登録」などの具体的な手順をお伝えするので、確定申告の作業を始めてからトリセツ的に読んでいただければ幸いだ。

 今回、【実践】のパートで使用する申告ソフトは、MM総研の「クラウド会計ソフトの利用状況調査」で事業者別シェアトップの弥生株式会社が提供する「やよいの青色申告 オンライン」を選択した。

「やよいの青色申告 オンライン」公式ページ
「やよいの青色申告 オンライン」

 「やよいの青色申告 オンライン」は初年度無償キャンペーンを実施中で、「セルフプラン」ならクラウドからデータ取込、申告書作成、e-Taxでの送信まで、全ての機能が使えて1年間無料。この記事を読みながら無料で実際に操作を試すことが可能だ。1年後、そのままデータを引き継いで使用を継続することもできるため、名前、メールアドレス、支払い方法などの登録が必要となる。無償期間が終わる少し前にメールが届き、有償契約を継続するか停止するかが選択できる。1年後に継続使用する場合も年額8000円(税別)と、主要クラウド会計ソフトの中で最安値だ。

「やよいの青色申告 オンライン」料金プラン
「セルフプラン」なら全て機能が使えて1年間無料
契約情報画面(やよいの青色申告 オンライン)
有償契約の継続を停止すれば支払いはなし

 名前やメールアドレス、支払いなどの登録はINTERNET Watch読者には説明不要だろう。登録が完了し、「やよいの青色申告 オンライン」のホーム画面が開いたら“e-Taxで確定申告”を目指して先に進もう。

ホーム画面(やよいの青色申告 オンライン)

 初期設定はデフォルトのままでOKなもの、あとから設定できるもの、設定しておくとあとで楽ができるもの、などがある。銀行口座やクレジットカードは個人個人で差があるし、記帳に対するポリシーによって方法が異なるので、参考程度に見ていただきたい。

初期設定のポイント【概要】

 青色申告ソフトの初期設定で必ず出てくるのは消費税の課税・免税の選択。ところが起業まもない初確定申告の人には「なんだそれ?」だろう。消費税は2年前の売上が1000万円以下なら免税事業者となり、消費税は免除される。起業直後は2年前の売上がないので免税事業者を選択するのが一般的だ。

 銀行口座、クレジットカードなどの登録は任意。あとからでも登録はできるので、事業専用口座、専用カードを持っていない人は登録しなくてよいだろう。

 残高の設定は、厳密に記帳する人は現金、普通預金の開始残高を1円単位まで正確に記帳する。適当でよい人は10万円とか50万円とかザックリとした金額を入力すればよい。

▼次の手順:勘定科目設定のポイント【概要】へジャンプする


初期設定のポイント【実践】

 実際に初期設定をしてみよう。ホーム画面の右側の[設定]をクリックすると4つの設定項目が表示される。①、②、④の順に開いて行こう。①を開き、2つ目の[申告方法の設定]を開いてデフォルトで[青色申告65万円控除(もしくは55万円控除)]になっていることを確認しよう。3つ目の[消費税の設定]は、2年前の売上が1000万円以下であれば免税事業者を選択する。ただし、輸出取引が主な場合は届けをして課税事業者を選択しよう。

初期設定画面(やよいの青色申告 オンライン)
ホーム画面の右側の[設定]をクリック
初期設定手順(やよいの青色申告 オンライン)
4つの設定項目が表示される。①、②、④を見て行こう
申告方法の選択画面(やよいの青色申告 オンライン)
[青色申告65万円控除(もしくは55万円控除)]が選択されていることを確認
消費税の設定画面(やよいの青色申告 オンライン)
消費税はデフォルトで免税事業者になっている

 ②の[口座・カードの設定]を開くと、上段の説明に「事業に使う預金口座、クレジット……登録してください。~個人用の口座・カードをときどき事業に使う場合は……追加する必要はありません」となっている。今回は登録せずに進もう。

支払い設定画面(やよいの青色申告 オンライン)
口座・カードの設定画面。事業専用の銀行口座、クレジットカードがなければスルー

 設定の最後は、④の[残高の設定]。厳密に記帳する人は事業開始にあたり事業用の現金、普通預金の残高を期首残高に記入する。適当でよい人は10万円とか50万円とかザックリとした金額を入力すればよい。開始残高を入力し[登録]を押すと「期首残高の貸借合計金額が一致していません」とアラートが表示される。進むと「元入金を自動計算してよろしいですか?」と聞かれるので[はい]で進めば、「やよいの青色申告 オンライン」が正しく記帳してくれて作業は完了する。

 「元入金って何?」と検索し、「会社の資本金と同じように……」などと調べる必要はない。元入金は初めて記帳するこの瞬間だけで、翌年以降は現金、預金、売掛金などの残高は前年の期末から翌年の期首に自動的に引き継がれる。

残高設定画面(やよいの青色申告 オンライン)
残高の設定。適当でよい人はザックリした金額を入力する
元入金計算画面(やよいの青色申告 オンライン)
「元入金を自動計算してよろしいですか?」と聞かれるので[はい]をクリック

 次は勘定科目の設定だ。会計ソフトにおける勘定科目、補助科目の設定はPCのフォルダー分けをイメージしたい。Word、Excel、PowerPointなどのフォルダーを作成するように、電気代、ガス代、水道代などの補助科目を作成しよう。

勘定科目設定のポイント【概要】

 勘定科目、補助科目の設定は、確定申告の終盤に出てくる「按分」に影響する。あとからリカバリーは可能だが、最初に設定をしておくとかなりの恩恵があるので慎重に設定したい。テレワークで電気代が増えたと話題になっているように、サラリーマンが起業して自宅で仕事をすると電気代が増える。

 仮に3000円だった電気代が1万円に急増したら、7割は仕事で使った電気代と想像される。ガスや水道が微増であれば、電気代は70%が仕事、ガスや水道は10%が仕事と「按分」する作業が必要となる。この計算を楽にするために、水道光熱費の補助科目に電気、水道、ガスを追加して、別々に集計できるようにしておこう。

▼次の手順:取引履歴を自動で取り込む方法【概要】へジャンプする


勘定科目設定のポイント【実践】

 [科目の設定]から[経費]→[水道光熱費]と進み、水道光熱費の補助科目に「電気代」「上下水道代」「ガス代」を追加してみた。

科目設定画面(やよいの青色申告 オンライン)
左側の設定メニューから[科目の設定]を選択
科目設定画面(やよいの青色申告 オンライン)
①[科目の設定]、②[経費]、③[水道光熱費]と進もう
補助科目設定画面(やよいの青色申告 オンライン)
[水道光熱費]を選択して[補助科目を追加]をクリックする
補助科目設定画面(やよいの青色申告 オンライン)
「電気代」「上下水道代」「ガス代」を補助科目として追加する

 水道光熱費以外に按分する可能性が高い勘定科目は、クルマに関する支出(ガソリン、車検、税金、車両購入費など)、電話代、家賃などがある。

ザックリ派なら「事業主借」で記帳を楽にする

 個人事業主の帳簿には「事業主借」「事業主貸」という勘定科目が使われる。意味不明だろう。一応説明すると、個人のお金で仕事に必要な支払いをした際は事業主借(=個人から事業主が借りた)。事業以外の費用を事業用の現金や預金から支払ったときは事業主貸(=事業主が個人に貸した)となる。

 例えばサラリーマンが出張中のホテル代や会食費を現金で払ってもクレジットカードで払っても会社は関係ない。“個人事業主”を“個人”と“事業主”に分け、個人がホテル代や会食費を支払えば(=事業主借)、現金払いもクレジットカード払いも気にする必要はなく、単に経費が支払われたことだけ記帳すればよい。電気代が銀行口座から引き落とされたときも、個人の口座から引き落とされたとすれば事業用の普通預金に記帳する必要はない=残高を合わせる必要もない。

 現金もクレジットカードも引き落としも関係なく、とりあえず経費は個人に払ってもらったと記帳するのが事業主借だ。出費のほとんどの貸方を事業主借にすれば記帳に要する労力はグッと減ることになる。事業主借を使って楽をするために必要なのが、クラウドから取引履歴を取り込む「スマート取引取込」の設定だ。このあと、ジックリ説明したい。


記帳の手間を大幅削減、クラウド申告ソフトのアグリゲーション機能が便利


取引履歴を自動で取り込む方法【概要】

 INTERNET Watchの読者ならインターネットバンキングの利用は当たり前だろう。銀行の取引履歴の取得に関しては、ウェブサイトの表示からデータを取得する従来のスクレイピング方式から、銀行公式のAPIを利用する方式に移行したことで、「銀行のウェブサイトが仕様変更されたので対応までお待ち下さい」というトラブルが減り、より確実な履歴の取得が可能となった。

 クレジットカードも各社のウェブサイトやスマホアプリで利用履歴等にアクセスが可能だ。交通カード系で利用者の多いSuicaは微妙で、カード式のSuicaは履歴の取り込みができない。仕事で電車利用の多い人はモバイルSuicaに切り替えると1年分の履歴が一瞬で取り込みできるので確定申告が楽になる。

 こうした複数のサービスからデータを集約することを「アグリゲーション」と呼ぶが、聞き慣れない言葉なので「クラウド取込」「クラウド対応」などさまざまな呼び方がされている。この機能に対応した申告ソフトを利用すると、記帳作業の効率が劇的に向上する。この記事で使用している「やよいの青色申告 オンライン」はもちろん、「やよいの白色申告 オンライン」、パッケージ版の「やよいの青色申告」もアグリゲーション機能に対応している。


取引履歴を自動で取り込む方法【実践】

 銀行口座、クレジットカード、電子マネー、スマホ決済などは、個人個人で利用する金融機関等が異なる。筆者が利用している金融機関関連は以下の通り。連携する手順や取り込める条件などは参考程度に見ていただきたい。

  • 銀行口座:三菱UFJ銀行(個人)、三菱UFJ銀行(法人)、ジャパンネット銀行(PayPay用)
  • クレジットカード:VIEWカード(メイン)、三菱UFJ-VISA(ETC、ガソリン用)、三井住友カード(事業に無縁)
  • 電子マネー:モバイルSuica(電車用)、WAON(ヤマト運輸専用)
  • スマホ決済:PayPay(ほぼ私用)、他のLINE Pay/au Pay/d払い/メルPay/楽天Payはほぼ休眠中

銀行の個人口座の履歴を取り込む

 銀行口座から取り込みの設定をしていこう。最初は筆者が利用している三菱UFJ銀行の個人口座。[スマート取引取込]をクリックすると「自動取込を設定する」画面が開く。まずは口座連携の設定をしよう。指示に従ってログインすると「新規口座登録」の画面が表示される。[銀行][ミ]と選択すると右側に候補が表示されるので[三菱UFJ銀行]を選択し次へ進む。

「スマート取引取込」設定(やよいの青色申告 オンライン)
[スマート取引取込]をクリック
口座連携設定(やよいの青色申告 オンライン)
自動取込を設定する画面が開いたら口座連携を設定しよう
ログイン画面(弥生シリーズ)
弥生IDを作成した際のメールアドレスとパスワードを入力
「スマート取引取込」の新規口座登録画面(やよいの青色申告 オンライン)
[新規口座登録]をクリック
「スマート取引取込」の金融機関選択画面(やよいの青色申告 オンライン)
金融機関の選択画面。[銀行]→[ミ]→[三菱UFJ銀行]と進む

 三菱UFJ銀行は個人口座と法人口座が選択できるので、まずは個人口座を選択する。三菱UFJ銀行のサイトにジャンプするのでログイン情報を入力し、本人確認が完了すると終了。

三菱UFJ銀行の口座登録
法人口座、個人口座が表示される。まずは個人口座から登録する
三菱UFJ銀行の公式サイトでの本人確認画面
銀行の公式サイトで本人確認を行う
三菱UFJ銀行の取引履歴(やよいの青色申告 オンライン)
「やよいの青色申告 オンライン」の口座連携に戻ると、取引履歴が取り込まれた

 ここで残念なお知らせ。通常、三菱UFJ銀行で取引履歴が取得できるのは前月の1日分まで、すなわち2月に取得できるのは1月1日以降の履歴だ。確定申告で使用する2020年1月~12月の履歴を取得することはできない。

銀行の法人口座の履歴を取り込む

 次は三菱UFJ銀行の法人口座を連携してみよう。個人口座と同じ手順で[[法人]三菱UFJ銀行BizSTATION(証明書)]を選択して進むとエラーが出る。内容は「Internet Explorer(IE)を使え」というもの。「今どきInternet Explorer?」と思う人は多いと思うが、メガバンク3行の法人口座は三菱UFJ銀行のBizSTATIONも、みずほ銀行のビジネスWEBも、三井住友銀行のパソコンバンクWeb21もChrome、Edgeは使用できない。

三菱UFJ銀行「BizSTATION」の口座登録
[[法人]三菱UFJ銀行BizSTATION(証明書)]を選択する
三菱UFJ銀行「BizSTATION」のエラー画面
途中でエラーが発生。Internet Explorerを使えと表示された。Chrome、Edgeは法人口座では使用できない
三菱UFJ銀行「BizSTATION」の非対応ブラウザー画面(Google Chrome)
三菱UFJ銀行の法人口座「BizSTATION」は常にChromeは非対応
三菱UFJ銀行「BizSTATION」の非対応ブラウザー画面(Microsoft Edge)
Edgeも非対応

 ブラウザーをIEに変更すれば問題なく三菱UFJ銀行のBizSTATIONにつながり、弥生との連携画面が表示される。法人口座は毎回ワンタイムパスワードの入力が求められるので、それを入力すると連携が完了する。

三菱UFJ銀行「BizSTATION」と弥生との連携画面(Internet Explorer)
ブラウザーをIEに変更すると、BizSTATIONの弥生との連携画面が表示される
三菱UFJ銀行「BizSTATION」のワンタイムパスワード入力画面
法人口座は毎回ワンタイムパスワードの入力が求められる
「スマート取引取込」で連携した口座(やよいの青色申告 オンライン)
三菱UFJ銀行の個人口座と法人口座が連携できた

 「やよいの青色申告 オンライン」の普段の操作はChromeでもEdgeでも問題はない。ブラウザーから法人口座にアクセスする新規登録や数カ月に一度のAPIの更新のときだけChromeやEdgeは利用できない。付け加えると、筆者は個人事業主であって法人ではないが、三菱UFJ銀行の場合、屋号の口座を開設すると法人口座扱いとなる。

ジャパンネット銀行の個人口座の履歴を取り込む

 銀行口座の連携の最後はジャパンネット銀行。長年休眠状態だったジャパンネット銀行は事業用としては使っていないが、PayPayへのチャージ用に復活した。これまでと同様な手順でジャパンネット銀行を選択するとログイン画面が表示され、[口座連携に同意]クリックすると連携が完了する。

 三菱UFJ銀行は前月の1日までしか取引履歴の取得ができなかったが、ジャパンネット銀行は2019年12月からのデータを取り込むことができた。

ジャパンネット銀行の口座連携
ジャパンネット銀行の個人口座を選択
ジャパンネット銀行のログイン画面
ジャパンネット銀行のサイトにログイン
ジャパンネット銀行の連携同意画面
弥生との連携に同意
ジャパンネット銀行の取引履歴(やよいの青色申告 オンライン)
ジャパンネット銀行は2020年分は全て、2019年12月から取り込むことができた

クレジットカードの履歴を取り込む

 筆者がメインで使用しているVIEWカードを同様な手順で連携すると、2020年3月分までさかのぼって取得できた。3月分というのは1月末締め3月引き落とし分で、確定申告に必要な2020年1月に利用した明細を取り込むことができた。

VIEWカードの取引履歴
VIEWカードは確定申告に必要な2020年1月の明細を取り込める

 事業に無縁な三井住友カードは昨年2月のリニューアルで新調したもの。したがって取り込めた履歴は2020年2月以降分だが、クレカのアプリを開くと2019年12月分まで履歴が追えそうなので、確定申告に必要な取引データは今からでも取得できそうだ。

三井住友カードのアプリ
三井住友カードは2019年12月分まで履歴が取得できそう

 余談だが、三井住友カードを作ったのでMUFGカードを解約した。MUFGカードは30年以上前、昭和の時代に作ったミリオンカード(東海銀行)がUFJカード(三和銀行と合併し、UFJ銀行)→MUFGカード(現:三菱UFJ銀行)と名前を変えたもの。昭和のジジイのかすかな記憶ではミリオンカードや住友VISAカードはブランドカードだったと思う。当時はネット通販もなく、近所のお店は現金支払いが当たり前の時代、現在のようにスーパーでスマホやクレカで支払うことはなく、クレカは滅多に使うことがなかった。確定申告は手書き、支払いは現金の当時と比べると、今の時代に起業したことは幸せだと思う。

家計簿アプリなどの外部サービスと連携する

 「やよいの青色申告 オンライン」は、さまざまなサービスと連携ができる。スマホで撮影したレシートの取り込み、請求書、POSレジ系、スキャナーなどに対応、金融機関の取引履歴も「Money Look」「Zaim」「Moneytree」の3つの外部サービスが用意されている。先ほど銀行口座を設定した弥生標準の口座連携に加え、3社のアグリゲーションサービスが併用できることになる。実際に筆者は数年前からMoneytreeとZaimのスマホアプリを使用している。当然、MoneytreeもZaimも金融機関と連携済みだ。

「やよいの青色申告 オンライン」が連携できるサービスの一覧
「やよいの青色申告 オンライン」が連携できるサービスの一覧
用途に応じてさまざまなサービスからデータを取得できる
「Moneytree」「Zaim」アプリアイコン
「Moneytree」と「Zaim」のスマホアプリを使用中

 サービスの連携で[連絡先を追加する]をクリックしてMoneytreeを連携させてみよう。[連携する]をクリックするとMoneytreeのログイン画面が表示される。ログインして弥生からのアクセスを許可すると連携が完了する。三菱UFJ銀行の取引履歴をMoneytree経由で取り込むと、2020年1月からのデータを取り込むことができた。もし起業する気持ちがある人は家計簿アプリを利用して、金融機関の取引履歴を溜めておくと、起業後の確定申告で幸せになれるだろう。

連携サービス追加画面(やよいの青色申告 オンライン)
サービスの連携で[連絡先を追加する]をクリック
連携サービス追加画面(やよいの青色申告 オンライン)
Moneytreeを連携する
Moneytreeのログイン画面
Moneytreeとの連携画面が開いたら、Moneytreeのアカウントでログインする
Moneytree経由で取り込んだ三菱UFJ銀行の取引履歴
三菱UFJ銀行の取引履歴をMoneytree経由で取り込むと、2020年1月からのデータを取り込むことができた


家計簿アプリと連携するコツ

 外部サービス連携のコツをお伝えしておこう。MoneytreeやZaimを連携させる際、モバイルSuicaだけが抜けてしまうことがある。モバイルSuicaは画像認証が必要で、アプリがバックグラウンドで自動取得できず、都度アプリからモバイルSuicaにアクセスして画像認証をしないと連携ができない。スマホアプリが連携できていない状態で「やよいの青色申告 オンライン」から連携をするとモバイルSuicaだけが抜けてしまう。もし連携後にモバイルSuicaが抜けていたら、いったん連携を解除して、アプリ側で画像認証を済ませてから、再度「やよいの青色申告 オンライン」から連携をすると問題なく連携ができる。

モバイルSuicaと家計簿アプリを連携するコツ
モバイルSuicaが連携されていない
モバイルSuicaと家計簿アプリを連携するコツ
いったん連携を解除する
モバイルSuicaと家計簿アプリを連携するコツ
モバイルSuicaは都度画像認証しないと連携が切れている
モバイルSuicaと家計簿アプリを連携するコツ
画像認証をすると……
モバイルSuicaと家計簿アプリを連携するコツ
モバイルSuicaの連携が更新される
モバイルSuicaと家計簿アプリを連携するコツ
モバイルSuicaがMoneytree経由で連携された

 外部サービスとの連携のメリットはほかにもある。「やよいの青色申告 オンライン」の口座連携MoneytreeZaimも数千件の金融機関と連携しているが、ごくまれに連携できない金融機関がある。筆者がETC、ガソリン用に使用している三菱UFJ-VISAカードは口座連携を含めどこのクラウド会計ソフトとも連携していない。前述の解約したMUFGカード(三菱UFJニコスが発行)は1960年代から続く歴史もあり連携で困ることはなかったが、三菱UFJ-VISAカード(三菱UFJ銀行が発行)は、三菱UFJ銀行のクレジットカードのウェブサイトで一緒に紹介されている割に立場が低い印象だ。

 技術的に連携が難しいのか、三菱UFJ-VISAカード側が連携を避けているのか分からないが、連携できないクレカは事業の支払いに適さない。幸いなことにMoneytreeとZaimは三菱UFJ-VISAカードと連携していて、これらの外部サービスとの連携のお陰で取り込むことができている。

 また、LINE Payの支払い履歴はZaimで取り込むことができる。筆者はLINE Payを常用していないが、LINE Payで経費関係を支払っている人はLINE Pay→Zaim→スマート取引取込というルートで取り込みが可能だ。

Zaimアプリの残高画面
Zaimのアプリ画面。ZaimはLINE Payからデータを取得できる

 複数の連携先から取り込むメリットはほかにもある。Zaimで取り込んだETCの明細は摘要が「カード:ETC利用料」となっているが、Moneytreeは「カード:ETC分 水戸北スマ 普」と降りたインターチェンジが記載されている。当然、利用区間が想像できる表記の方が望ましい。

取り込んだETCの明細の摘要表示例(やよいの青色申告 オンライン)
上のコインのアイコンがZaim、下の象のアイコンがMoneytree。Zaimの摘要は走行区間が分からない

 モバイルSuicaや東京ガス、東京電力も表記が異なっている。個人的にはカタカナの「トウキヨウガス」よりはZaimの「東京ガス」表記が見やすいと思う。このように微妙な違いがあるので、連携先が複数あれば分かりやすい表記をするところから取り込むことが可能だ。組み合わせて連携することができるので、例えばSuicaは口座連携、ETCはMoneytree、水道光熱費はZaimから取得することも可能だ。

モバイルSuicaの明細の摘要表示例(やよいの青色申告 オンライン)
上からZaim、Moneytree、通帳のアイコンが口座連携。モバイルSuicaは微妙に表記が異なる
ガス料金のの明細の摘要表示例(やよいの青色申告 オンライン)
ガス代はZaimが「東京ガス」、Moneytreeがカタカナ+半角でお客様番号、口座連携は全角でお客様番号

事業専用口座以外は個人口座とする

 連携が終わると一覧の画面が表示されるが、赤文字で「取引の取得に必要な準備が完了していません」と警告が出る。各口座の細かな設定に移ろう。設定では各金融機関を「取得しない」「個人用」「事業用」の3種類に分ける。

 事業に関係ない口座はそもそも連携する必要はないが、ここでは「取得しない」に設定する方法を紹介する。右のペンボタンをクリックするとサービス取得の設定が面が開く。デフォルトは補助科目が「ジャパンネット銀行」、主な用途が「事業用」になっている。取得しないので変更不要だが、ここでは主な用途を「個人用」に変更すると補助科目が「(個人用)」となったことを確認して保存する。ペンボタンの右側の「…」をクリックして「取引を取得しない」を選択すると、取得状態が「取得しない」に変更される。

「取引の取得に必要な準備が完了していません」の表示(やよいの青色申告 オンライン)
連携が終わると赤文字で「取引の取得に必要な準備が完了していません」と表示される
サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
デフォルトは補助科目が「ジャパンネット銀行」、主な用途が「事業用」になっている
サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
主な用途を「個人用」に変更すると補助科目が「(個人用)」となったことを確認して保存
サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
「…」をクリックして「取引を取得しない」を選択
サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
取得状態が「取得しない」に変更される

 同様に三菱UFJ銀行の個人口座も事業用を個人用に変更し保存。三菱UFJ銀行の法人口座は事業用のまま保存すると、口座の用途に応じて「取得しない」「個人用」「事業用」の3種類に分けることができた。

サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
三菱UFJ銀行の個人口座も事業用を個人用に変更
サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
用途に応じて「取得しない」「個人用」「事業用」の3種類に分けることができた

「事業主借」設定で楽に記帳する

 銀行口座の場合は入出金があるが、クレジットカードの履歴は通常は出金しかない。前述した事業主借で楽に記帳する設定をしてみよう。VIEWカードの設定を開くとデフォルトは勘定科目が「クレジットカード」、補助科目が「VIEWカード」、主な用途が「事業用」となっている。勘定科目はプルダウンから「事業主借」を選択。主な用途は「個人用」。補助科目はデリートして空欄とする。

サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
勘定科目が「クレジットカード」、補助科目が「VIEWカード」、主な用途が「事業用」となっている
サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
勘定科目はプルダウンから「事業主借」を選択
サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
主な用途は「個人用」
サービス取得の設定(やよいの青色申告 オンライン)
補助科目はデリートして空欄とする

 この設定で取引履歴を「スマート取引取込」に取り込んでみた。「取得しない」に設定したジャパンネット銀行は取引なし。個人用に設定した三菱UFJ銀行は補助科目が「(個人用)」、事業用に設定した三菱UFJ銀行の補助科目は「三菱UFJ銀行 事業用」、事業主借に設定したVIEWカードは勘定科目が「事業主借」補助科目が空欄となった。

口座連携(やよいの青色申告 オンライン)
この設定で取引履歴を「スマート取引取込」に取り込むと……
ジャパンネット銀行(やよいの青色申告 オンライン)
「取得しない」に設定したジャパンネット銀行は取引なし
三菱UFJ銀行(やよいの青色申告 オンライン)
個人用に設定した三菱UFJ銀行は補助科目が「(個人用)」
三菱UFJ銀行(やよいの青色申告 オンライン)
事業用に設定した三菱UFJ銀行の補助科目は「三菱UFJ銀行 事業用」
VIEWカード(やよいの青色申告 オンライン)
事業主借に設定したVIEWカードは勘定科目が「事業主借」、補助科目が空欄

 さらに「スマート取引取込」から「やよいの青色申告 オンライン」に記帳すると、事業用の銀行口座(法人口座)の貸方は勘定科目が「普通預金」、補助科目が「三菱UFJ銀行 事業用」、個人用の銀行口座の貸方は勘定科目が「普通預金」、補助科目が「個人用」、事業主借に設定したクレカの貸方は勘定科目が「事業主借」と正しく記帳されている。

 付け加えると「やよいの青色申告 オンライン」では、普通預金(個人用)は最終的な決算書では「事業主借」と集計される。クレジットカード(個人用)や現金(個人用)も同様だ。普通預金(個人用)やクレジットカード(個人用)の方が事業主借より分かりやすい人はその設定で使用していただきたい。

「スマート取引取込」から「やよいの青色申告 オンライン」への記帳
「スマート取引取込」から「やよいの青色申告 オンライン」に記帳してみた

 「スマート取引取込」から「やよいの青色申告 オンライン」に事業用の銀行口座を記帳すると、自動的に銀行口座が追加される。初期設定でスルーした銀行口座が取引により追加され、紐付けされたことが分かる。

自動的に追加された事業用の銀行口座(やよいの青色申告 オンライン)
事業用の銀行口座が自動的に追加された

 銀行口座、クレジットカード、電子マネーに加え、近年はスマホ決済も急速に利用する人が増えているので、連携の方法は人それぞれだ。いろいろ試してみて自分に合ったやり方を見つけていただきたい。ちなみに最初に消費税の免税事業者を設定したすぐ下に「全データ削除・初期化」の機能がある。口座連携を含め、真っさらな状態に戻すこともできるので、時間にゆとりがあれば納得がいくまで試行錯誤をしていただきたい。

「スマート取引取込」から「やよいの青色申告 オンライン」に記帳する

 各金融機関との連携が完了した状態は、取引履歴を“仮置き”していることとなる。大量の入出金のデータから、要る物と要らない物を見極めて、要る物(事業に関係するもの)だけ記帳することになる。実際に試してみよう。

 お勧めの手順は、記帳しない取引から削除していく方法だ。例えば生命保険、国民年金、国民健康保険などは経費でもないし、証明書が送られてくるので月々の明細を記帳する必要はない。例えば「生命」で数社の保険会社の取引が検索されたら、右端の取引の登録を「しない」に変更して、最下段の[表示されているすべての取引を確定する]をクリックするとまとめて削除できる。

保険会社の取引の検索(やよいの青色申告 オンライン)
「生命」で検索し、まとめて削除する

 水道光熱費は初期設定で補助科目を設定したことがここで生きてくる。「東京ガス」で検索したら、補助科目のプルダウンから1行目の取引だけ[ガス代]を選択する。次に[更新]をクリックすると、残りの取引は学習効果で自動的に補助科目がガス代となる。1つ1つ手直しするよりも圧倒的に早い。「やよいの青色申告 オンライン」はこのように仕訳に学習能力があるので、使い込むとドンドン楽になる。

「東京ガス」の取引の検索(やよいの青色申告 オンライン)
「東京ガス」で検索
補助科目のプルダウン(やよいの青色申告 オンライン)
補助科目のプルダウンから[ガス代]を選択
補助科目の更新(やよいの青色申告 オンライン)
[更新]をクリックすると、2行目以降の取引の補助科目がガス代となる

 右端の取引の登録を「する」に変更して、最下段の[表示されているすべての取引を確定する]をクリックすると、「スマート取引取込」から「やよいの青色申告 オンライン」に移動し記帳が完了する。

入金データを記帳する

 「スマート取引取込」で最後に取り込む例は、売掛金の入金だ。出版社など法人からの入金は月末締めの翌月末振り込みなど“掛け売り”が一般的だ。請求書を発行し、翌月に銀行口座に振り込まれる。請求書をExcelなどで作成している場合は、取引履歴が取り込めるのは入金だけとなる。

 入金のデータを記帳する流れを説明しよう。まず設定メニューの[取引先の設定]で[追加]をクリックする。ここでは「インプレス」と入力した。次に[科目の設定]で[売掛金]を選択し、[補助科目を追加]をクリックする。この設定は取引先名の入力はできない。取引先の設定で追加した取引先をプルダウンから選択する。

取引先の追加(やよいの青色申告 オンライン)
設定メニューの[取引先の設定]で[追加]をクリック
取引先の追加(やよいの青色申告 オンライン)
取引先名を入力して[登録]
補助科目の追加(やよいの青色申告 オンライン)
[科目の設定]で[売掛金]を選択し、[補助科目を追加]をクリック
取引先の選択(やよいの青色申告 オンライン)
取引先をプルダウンから選択する

 「スマート取引取込」で売掛金の入金履歴を検索、表示させたら補助科目のプルダウンから登録済みの取引先を選択する。「スマート取引取込」から「やよいの青色申告 オンライン」に記帳すると、貸方の勘定科目が売掛金、補助科目がインプレスと正しく記帳できたことが分かる。

売掛金の入金履歴の検索・表示(やよいの青色申告 オンライン)
「スマート取引取込」で売掛金の入金履歴を検索、表示させる
取引先の選択(やよいの青色申告 オンライン)
補助科目のプルダウンから登録済みの取引先を選択する
売掛金の記帳例(やよいの青色申告 オンライン)
「やよいの青色申告 オンライン」の貸方の勘定科目が売掛金、補助科目がインプレスと正しく記帳できた

 これでアグリゲーション機能で取り込んだデータの記帳は一通り説明した。銀行口座、クレジットカード、電子マネーの取引履歴の取得は、基本的な部分は同じだが、個人個人の使用している金融機関やポリシーによって好みや違いはあるので、自分に合う方法を見つけ出して欲しい。次回は、e-Taxで確定申告を完結させる方法をお伝えしたい。

(協力:弥生株式会社)