BIGLOBEが描く、モバイルWiMAX+FTTHの活用ビジョン

画像で見る“パーソナルクラウド”

 大手ISPとしていち早く、モバイルWiMAXをサービスメニューに追加したNECビッグローブ(BIGLOBE)。同社がこれからのサービスのビジョンとして掲げた“パーソナルクラウド”は、モバイルWiMAXに加えて、既存のFTTH固定回線や無線LAN、携帯電話も含むあらゆる回線・端末から、クラウド上のさまざまなサービスをシームレスに利用できるようにするものだという――。

 前回、BIGLOBEの飯塚久夫代表取締役執行役員社長に同ビジョンにかける思いを聞いたのに引き続き、今回は“パーソナルクラウド”ではどんな機能やサービスが実現するのか、同社が想定するシナリオに沿って画面写真イメージとともに紹介する。

“インターネット・サービス・パートナー”の3つの役割

 BIGLOBEが“パーソナルクラウド”を提供するにあたり、今後の事業のスタンスとして示したのが、インターネット・サービス・プロバイダーならぬ“インターネット・サービス・パートナー”という言葉だ。

 “インターネット・サービス・パートナー”が担う役割は、1)いつでも・どこでも使える環境を提供する「ユビキタス」、2)ユーザーごとにサービスを最適化する「パーソナライズ」、3)サービスと機器の連携により新たな価値を創出する「クロスアプライアンス」――の3つ。そして、これらを束ねる「パーソナルクラウドゲートウェイ」という機能を提供するという。

 まずは、これら3つの役割を受けて提供予定または提供中の機能・サービスの一部を、BIGLOBEが想定した利用シナリオに沿って順に見ていこう。


“パーソナルクラウド”の活用イメージ1:イラストレーターの取材旅行のシナリオ

 このシナリオは、BIGLOBEユーザーのイラストレーターが取材旅行に出かけるというもの。まずは自宅において、BIGLOBEの検索サービスで取材先の情報を検索。外出先では、「BIGLOBEオートコネクト」を使って新幹線やホテルからそれぞれ最適な回線に自動的に接続し、リモートデスクトップサービス「LogMeIn」で自宅PCにアクセスしての作業も行う。

 さらに携帯電話で撮影した写真を、画像共有サービス「フォトポケ」にアップロードして同僚と共有したり、帰宅後にはデジタルカメラで撮影した画像もアップロードし、各種行動履歴を「BIGLOBEライフログ」というサービスで管理・閲覧するという流れだ。

ユビキタスを実現する「BIGLOBEオートコネクト」と「LogMeIn」


1)「BIGLOBEオートコネクト」は、同社が提供する複数のアクセス回線サービスを、利用している場所に応じて最適なものに切り替えて接続するPC用ユーティリティソフト2)「BIGLOBEオートコネクト」の画面イメージ。当初はWi-Fi(自宅・公衆無線LAN)とイー・モバイルに対応しており、順次対応を拡大する

3)旅行に持ち出したノートPCから、リモートデスクトップサービス「LogMeIn」で自宅PCにアクセスする様子4)ノートPCのWebブラウザ内に、自宅PCのデスクトップ画面が表示される。自宅PC内のメールソフトを起動して、同PC内に保存してあるファイルを送信する様子

「BIGLOBEライフログ」によるパーソナライズサービスの例


1)「BIGLOBEライフログ」にアップロードしたデジカメ写真やGPSのログなど、の行動履歴は、「カレンダービュー」で日付ごとに確認可能2)「マップビュー&ログビュー」では、選択した日の行動履歴を閲覧可能。地図上に経路やアイコンが表示される

3)地図をズームすることで詳細な経路が確認でき、写真のサムネイルもポップアップ表示される4)写真のスライドショー表示も可能。将来的には、行動履歴に基づいた行動支援サービスも想定しているという

クラウドへのパーソナルゲートウェイ「BIGLOBEゲート」

 「ユビキタス」「パーソナライズ」「クロスアプライアンス」という3つの役割を担う各種サービスを束ねるのが、「パーソナルクラウドゲートウェイ」だ。

 「パーソナルクラウドゲートウェイ」では、ユーザーのアカウント情報やブックマーク、閲覧履歴、アドレス帳など、ユーザーのさまざまなデータをクラウド上で保持し、自宅や外出先などの異なるシーンにおいて、PCや携帯電話をはじめとするさまざまな機器から、統一した操作感で連携利用できるようにするものだ。その第1弾として計画しているのが、「BIGLOBEゲート」だ。


“パーソナルクラウド”の活用イメージ2:父親への誕生日プレゼントを購入する娘のシナリオ

 「BIGLOBEゲート」とはどんなものか、同社では、ひとり暮らしの娘が父親に誕生日のプレゼントを購入するまでを想定したシナリオを紹介している。このシナリオでは、外出中は携帯電話から「BIGLOBEゲート」にアクセスしてプレゼントする商品の候補を検索、その後、自宅などのPCに検索を自動的に引き継ぐ。さらに、メールや検索といったサービスの種類の違いを意識することなく、母親にその情報をメールしたり、その商品が売っているショップを検索。最後に、携帯電話でそのショップまでのナビゲーションを受けるという流れだ。


1)「BIGLOBEゲート」では、ユーザーのブックマークや履歴、アドレス帳などにアクセスできる2)ブックマークから、ショッピングサイトにアクセス3)気になった商品のページは、「つんどく」機能によりクラウド上に保管しておける

4)帰宅後、「つんどく」で保存しておいた商品情報に自宅PCからアクセスして、検索を継続。類似商品を探せる機能も想定している5)プレゼント候補の商品のページを、右上の「アドレス帳」にドラッグ&ドロップすることで、母親にメールでその商品を教えることが可能。Webメールサービスなどにわざわざログインし直す必要はない

6)同じ商品を売っているリアル店舗を検索し、その店舗までの地図を「つんどく」に保存7)後日、携帯電話から「BIGLOBEゲート」へアクセスし、保管しておいた地図をもとに店舗までナビゲーションしてもらう

クロスアプライアンスでありとあらゆるモノがBIGLOBEのユーザーに

 このシナリオでは「BIGLOBEゲート(仮)」のクライアントソフトは携帯電話とPCに入っているが、「もしかしたら、デジタルカメラにも入るかもしれないし、ゲーム機でもやりたい。GPSやカーナビ、健康器具、そしてゆくゆくはIPv6が普及したら、膨大な数のセンサーも端末として見立てられる。センサーの先にはもちろん人間がいて、人間にとっても意味のあるものになるのがいちばんいい」と飯塚社長は語る。

NECビッグローブの飯塚久夫代表取締役執行役員社長

 これまでBIGLOBEでは、同社会員が使用する端末としてPCだけを考えていればよかった。しかし、すでに携帯電話やスマートフォンなど多様化が進んでいる。

 「端末が多様化するなら、逆にすべて我々のお客様とみなす。センサーも含め、ありとあらゆるモノがBIGLOBEのお客様になる。回線や機器を意識することなく、ひとりひとりのユーザーが、自分のニーズに合わせ、世界中の膨大な情報にアクセスできるようになる。いろいろなサービスを組み合わせ、さまざま機器から、いつでも・どこでもサービスを利用できるようにすることで、ユーザーに新たな付加価値を提供するのが“パーソナルクラウド”。」(飯塚社長)

 実はこうした活用は現在でも可能だが、使いこなすには高度なITリテラシーが必要なのだという。インターネットへの入り口を提供するという狭義のISPサービスだけでは、一般の利用者は自分の求めるサービスを見つけられないだけでなく、多様化する回線や端末からインターネットに接続することすら難しくなっている――。“インターネット・サービス・パートナー”という言葉には、こうした“パーソナルクラウド”のメリットを誰もが享受できるよう、「利用者視点に立って支援するISP」という意味も込められている。


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(永沢 茂)

2009/10/6 12:00