「Internet Week 2009」の見所は? JPNICの前村昌紀氏に聞く


 「Internet Week 2009」が11月24日から11月27日までの4日間、例年通り東京・秋葉原の秋葉原コンベンションホールで開催される。今回のInternet Weekのコンセプトや見所などを、日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)インターネット推進部部長の前村昌紀氏に聞いた。

今回のコンセプトは、「インターネットの進化論」

――「Internet Week 2009」が近づいてきました。今年のコンセプトは「インターネットの進化論」ということで、少し抽象的に感じるのですが。

日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)インターネット推進部部長の前村昌紀氏

前村氏:現在、インターネットは大きな変革期を迎えつつあります。いくつか例を示すと、技術的には、IPv4アドレスの在庫枯渇問題、それに伴うIPv6の導入、セキュリティにかかわるDNSSECや電子認証の課題、自律ネットワークを示すAS番号の4オクテット化など、山積みの課題への対応があります。また、非技術的な面からも「安全・安心」にどう対応していくかとか、具体的な政策や規制をどう捉えていくかとか、実に多用な課題に対応していかなくてはいけません。

 これはすなわち、インターネットを取り巻く環境が大きく変わっていくということです。そこで今回は、それらにどのように適応していけばいいのかを議論し、乗り越えていくための何かを見つける機会にしようということで、コンセプトを「インターネットの進化論」としました。

――つまり、大きな環境の変化があって、それにどのように対応していくかが大きなテーマになっているということでしょうか。

前村氏:そうですね。昔のインターネットは、問題を1つずつ確実に解いていくといった雰囲気がありました。しかし、最近ではいろいろな課題が一気に降りかかってきます。今回のプログラムは、そうした今のインターネットの問題意識をよく体現できたと思っています。

「進化」を「進歩」に変えるために

前村氏:生物における「進化」は、まず多様性があり、次に自然選択が起こります。ただし、個々の技術についてはともかく、インターネット全体として見た場合にはそうした生物的な「進化」に従うというわけにはいきません。進化を間違えて衰退するわけにはいきませんから(苦笑)。

「Internet Week 2009」の公式サイト

 インフラと呼ばれるようになってきたインターネットを、どのように環境に適応させていくかは重要な問題です。よく、「重たい」とか「なんで、こんな面倒なことをしなくてはいけないのか」という声を聞きますが、これだけ社会的な広がりを持つようになると責任も大きくなるのです。ですから、言葉としては「進化論」ですが、目的とするところは「さまざまな課題に対する解決への見通しが立つ」ことだとお考えいただいていいと思います。

――そうすると、今回のプログラムの見所はどこになりますでしょうか。

前村氏:いや、これはもう、全部お勧めです。

 ただ、それだと答えになりませんので、個人的な意見ということでご紹介させていただくと、例えば初日の「クラウドの虚像と実像~クラウドの本質を正しく理解する3時間~」や3日目の「仮想化DAY」は今年を象徴するプログラムだと思います。これは、いわゆる「クラウド」をテーマとしたものです。クラウドは今年、大きな注目を浴びましたが、クラウド自体は本来手段であるはずなのに、それを作ることが目的のようになってしまい、正確な実体がつかみきれないところがあります。そこで、「クラウドの虚像と実像」のプログラムでは、クラウドをビジネスとして提供する場合の問題点を明らかにしてきたいと考えています。一方、「仮想化DAY」の方は、仮想化技術の基本的な部分から実際までを網羅的に、また徹底的に扱います。こちらは、技術者向けということですね。

 また、同じ3日目ですが、「インターネットと環境」も新しいテーマでお勧めしたいと思います。あとは、初日の「DNSSECチュートリアル」、2日目の「v4枯渇時代のシステムインテグレーション」や「3時間でわかるこれからの電子認証」もいいのではないでしょうか。

インターネットがもっとよくなるように

――少し話が逸れますが、プログラム委員会の委員長が代わりましたね。それによって、何かが変わるということはあるのでしょうか。

前村氏:去年まで3年間委員長を務めていただいた、東京大学の江崎浩先生に代わり、私が代表を務めることとなりました。

 実は、今まではプログラム委員と事務方を明確に分けていたのです。しかし、もっと一体感を持ってInternet Weekをやっていこうということになり、そこで敷居を外しました。私はもともとプログラム委員で、今年、事務方の責任者を務めることになったので、自然と代表になったというところでしょうか。

 そういう背景なので、今回の委員長の変更によって何かが変わるということはありません。江崎先生もプログラム委員として残っていますし、国内のさまざまな団体が協力してInternet Weekを作っていこうという形も変わりません。

 Internet Weekの目的である、「インターネットがもっとよくなることをやっていこう」という点に変わりはないのです。

インターネットがさらに発展するためにも積極的な参加を

――最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

前村氏:インターネットに対する要求は時代とともに常に変化します。いろいろな情報はインターネット自身からも拾うことはできますが、多くは断片的な情報であったりしますよね。それらを整理し、1つの流れのある形に整理することは容易ではありません。そこで大事になるのは、いろいろな人の意見だと思うのです。

 インターネットの最前線で活躍している人々の豊富な経験から導き出される意見や議論は、とても貴重なものです。単なる情報共有ではなく、さらに進んだ理解を得るようにしていきたい。

 最後に、繰り返しになりますが、Internet Weekにしか出せない色を出すことはもとより、インターネットが乗り越えていかなければいけないことを洗い出し、それを押し進めていく原動力の1つになればと考えています。ぜひとも、Internet Weekに参加して何かの糸口をつかみにきてほしいと思います。

――ありがとうございました。


関連情報


(遠山 孝)

2009/11/10 06:00