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特別企画

毎年話題のエイプリルフール企画を生み出す「円谷プロ」インタビュー


 4月1日といえばエイプリルフールの日。日本Web業界ではもはや伝統ともなりつつある行事で、毎年各社が趣向を凝らしてさまざまなエイプリルフール企画を展開している。

 その中でも注目すべき存在が円谷プロダクションだ。ウルトラマンや怪獣の個性を活用しながらネットのトレンドもうまく盛り込んだ企画で、ネットユーザーから毎年高い評価を集めている。2010年はアジャイルメディア・ネットワークが4月1日限定で実施した「エイプリルフール・アワード2010」で、円谷プロの「円谷ッター」が1位に輝いた。

 毎年充実したエイプリルフール企画を展開する背景や体制、エイプリルフールに込める思いなどを、円谷プロの藤瀬理香子氏、公式サイト「円谷ステーション」を運営する制作会社サイバーエデンの円谷洋平氏、吉村尚志氏に伺った(以下敬称略)。

左から円谷プロダクション 総務室 広報宣伝グループの藤瀬理香子氏、サイバーエデン コンテンツ事業部 課長の円谷洋平氏、コンテンツ事業部の吉村尚志氏。円谷氏は円谷プロを設立した円谷英二氏のひ孫にあたるという

「エイプリルフールやりたいね」が最初のきっかけ

――本日はよろしくお願いします。円谷プロと言えば、ネットではもはやエイプリルフール企画の定番的な存在だと思いますが、エイプリルフールの企画はいつ頃から始められたのでしょうか。

円谷:エイプリルフール企画を始めたのは2005年のことで、今年の企画で6回目ですね。最初のきっかけは3月末くらいに「そろそろエイプリルフールだね。いろんなWebサイトでエイプリルフール企画をやっているよね」という雑談です。

吉村:毎年僕らもImpress Watchや他のエイプリルフールサイトを見ていて、「こういうことをやりたいなあ」と思っていたんですよね。

円谷:そこから円谷ステーションをバルタン星人がジャックして「バルタンステーション」になる、という企画を考えました。テキストがすべて「フォッフォッフォッ」というバルタン語に書き換えられているというもので、今と比べるとそれほど大したことない企画でしたね。円谷プロさんに企画提案して、実際にできあがったサイトを監修してもらう、という流れで始めました。

記念すべき第1回目の「バルタンステーション」企画

ネットの話題を盛り込んでいくスタイルは2年目で確立

――第1回目の反応はいかがでしたか。

円谷:今ほどの反響はなかったですね。というのも、1回目の企画は円谷ステーションのモバイルサイト向け企画として制作したものだったので、モバイルユーザーのウルトラファンをターゲットにしていたからなんです。

吉村:ただし、エイプリルフールの企画自体はメディアなどで紹介してもらったりと今までにない注目も集められたので、「次の年も何かエイプリルフール企画をやろう」ということになりました。2回目の頃はmixiがネットで話題になっていたので、「mixiのプロフィールがウルトラマンだったら面白いよね」という話になって、実際に作ってみたらこれが本当におもしろくて。その勢いで作ってみたのが2006年のことです。mixiのユーザー数も数百万くらい存在したので、円谷ファンにもmixiネタは十分わかってもらえるだろう、ということも考えました。

円谷:それでも本当にmixiをネタにして理解してもらえるかは不安だったので、「SNSとは」という紹介も入れたりという配慮もしました。また、mixiをネタにしたことで「mixiに怒られたらどうしよう」という心配もあったので、「mixiさん尊敬しています!」という文章を入れてみたり(笑)

吉村:mixiを使っている人にわかりやすいネタを入れると面白いんじゃないかということで「読み逃げ」などネットよりな話題を盛り込んだのですが、「ネットの話題もあって面白い」という感想をたくさんいただきましたね。それを受けて翌年以降もネットの話題を盛り込んでいくようになりました。

円谷:ただ、2回目の企画は今ほど大がかりなものではなく、どちらかというとプロトタイプ的な位置付けでした。第1回目のバルタン星人によるサイトジャック企画に近い、出落ちに近い感じです。「ウルトラマンがSNSやったらこんな感じになるんじゃない?」という。

――ウルトラマンだけでなく、ネットの話題を盛り込んでいくスタイルは2年目で固まっていたんですね。

円谷:単に僕らがネット好きなだけなんですけどね。

吉村:2人ともウルトラマン以外にも特撮やアニメ、ゲームも好きなので、自然とそういう話題が多くなりますね。

2年目のSNS企画。SNSの解説なども丁寧に書かれている

人気集中でサーバー負荷対策が大きな課題に

――エイプリルフール企画の担当はお2人だけなのでしょうか。

円谷:担当は2人で、もう1人のデザイン担当がグラフィックなどを全部作ってくれています。あとはそれを吉村がそれをベースに全部コーディングする、という流れですね。

――サーバーの負荷対策は毎年大変そうですね。

円谷:2年目の企画からサーバーが落ち始めるようになって困っていました。エイプリルフール企画だけが落ちるのならいいんですが、モバイルサイトや有料課金の部分も全部落ちてしまうんですよ。4月1日は月の課金処理が始まる大事な日なのですが、これではどうしようもないということで、3年目からサーバー環境の増強を行ないました。

円谷:2回目のSNS企画ではサイトが落ちて見られなかった人も多かったので、前回のログに最新版のログやキャラクターを追加したブラッシュアップ企画にしました。「去年見られなかった人ごめんね。今年はサーバー増強したから見られますよ!」というつもりで企画したんですが……。全然だめで。

吉村:開始30分でサーバーが落ちましたね。「あ、もう見れない」って。

円谷:最近はエイプリルフールのためだけにサーバーを増強して、3月から4月頭までそのサーバーに移転するようにしています。

2回目のSNS企画「帰ってきたSNS『エムナナハチ』」

「長年の経験」から生まれる個性的なキャラ設定

――ウルトラマンや怪獣たちのキャラクターが非常に個性的ですが、キャラ設定はどのようにしているのでしょうか。

吉村:長年ウルトラマンの仕事をさせていただいているので、キャラクターや世界観はつかめています。まずはこちらのアイディアで企画を立てて、見てもらう流れですね。

藤瀬:ご相談はいただいてますが、エイプリルフールの企画は基本的にサイバーエデンさんにお任せしていて、円谷プロは最後に監修する、という立場です。

――用意したアイディアが不採用になることもあるのでしょうか。

藤瀬:たまにありますね。私が初めてエイプリル企画に関わったのがまとめブログ企画の時だったのですが、よくわからない言葉が本当にたくさんあって……。ご説明いただきながら時間をかけて監修しました。「餃子の王将ってどこがおもしろいの?」とか(笑)

(※コメント欄で1人が1文字ずつ投稿し、「餃」「子」「の」「王」「将」を完成させるという2ちゃんねるのネタ)

円谷:そういう時は「これはこういう元ネタがあって」って説明するんですけど、そばで聴いてたら全然おもしろくないですよ。完全なネタばらしですからね。「餃子の王将っていうのはこういう意味で……」って。

カネゴンによるまとめブログ。当時2ちゃんねるのまとめブログによるアフィリエイト収入が話題になっていたことから「カネゴンがまとめブログやったら面白い」という発想で生まれた企画という

Twitterは「以前からあたためていた企画」

――今までの企画を見ると、ブログやSNS、今年のTwittterなど人気のサービスを題材にしていることが多く、ネタとしては「王道」を取り上げるイメージがあります。

吉村:ネットで流行しているものを題材にすると、ネットユーザーに興味を持ってもらいやすいですね。mixiにしてもブログにしても、ネットで人気があるものが一番見てもらえますし、ネットに対するリテラシーが高いと思ってもらえる効果もあります。

円谷:実は、2回目のブログ企画の時からすでにTwitterのアイディアはあったんですよ。ただ、その時はまだTwitterを使った表現手法が確立されていない、いうことでお蔵入りになっていましたが、ここ最近になってTwitterのユーザーが激増し、「なう」だったり「フォロー返ししてくれない……」なんてネタにしやすい話題が出てき始めたので、寝かせていたTwitter企画を満を持して投入しました。

――実は以前からTwitter企画はあったのですね。その時から「円谷ッター」という名前だったのでしょうか。

吉村:当時は「デュワッター」という名前だったんですが、それだとわかりにくいということと、「つぶらや」と「つぶやき」が似ていてわかりやすいということで、半ば強引に「円谷ッター」にしました。

――今回は4月2日以降のページも非常に凝っていますよね。あれは元々考えていたのでしょうか。

円谷:Webページへのアクセスを禁止するときに表示される「403 forbidden」のページをネタにしたい、というのは毎年考えていたんですよ。だけどforbiddenページをネタにすると余計重くなるし、そもそもサーバーが安定していてforbiddenが表示されないと見てもらえない。そこで今回はエイプリルフール企画が終わる理由がアクセス過多による「Over Capacity」という設定にして、あのページを表示しました。

――個人的にはあの2日目のネタをしたいためにTwitterを選んだのか、とすら思っていました。

円谷:TwitterのOver Capacity画面を見た時から、ビートルがゴモラを運んでいる絵を思いついていたんですよ。「円谷プロの世界観に当てはめるならこれしかないだろう」と。ただ、実際にイラストを描いてもらったのは円谷プロ監修の直前で、デザインを日曜日に作ってもらい、週明けの29日にチェックを入れてもらって間に合わせたという、実は後付けも後付けの企画です。

2010年はTwitterをテーマにした「円谷ッター」
2日目以降は「Over Capacity」画面を表示。初代ウルトラマンの「怪獣殿下」で、科学特捜隊のビートルが麻酔弾で眠らせた怪獣ゴモラを運ぶというエピソードになぞらえている
「怪獣殿下」で、ゴモラがビートルに運ばれている実際のシーン

エイプリルフールをきっかけにウルトラマンに興味を持ってほしい

――毎年非常に凝った企画なので、1日で消してしまうのはもったいないですね。

円谷:僕たちも作っている当日はそう思ってるんです。特に、「明日はエイプリルフールだけど仕事で見られないな」なんていう声をいただくと、余計に残しておかないと、とは思うんですけどね。

吉村:ただ、4月1日だけしか見られないというのがエイプリルフールサイトの醍醐味でもありますので、4月1日限定の企画にしています。

藤瀬:円谷プロとしては、エイプリルフール1日限定の企画なので、OKしています。初めてアクセスする方にもこの日をきっかけに今後興味をもってもらいたいですね。

円谷:エイプリルフール企画を通じてウルトラマンに興味を持ってくれる人が増えることは大事にしていますね。自分たちが使っているネットをウルトラマンが一緒に使うと親近感を持ってもらえるだろうし、その中で昔ウルトラマンを見たことがある人がいたら、自分の友達がネットしている感覚で面白がって、ウルトラマンに興味を持ってくれるのではないかとは考えています。そういう点ではウルトラマンとネットは非常に親和性が高いと思いますし、エイプリルフール企画でウルトラマンの認知度を高めることが出来ると考えています。

――ありがとうございました。

2010年は「円谷ッター」だけでなく他にもウルトラマン80の30周年を記念した「ウルトラマンナイスの部屋」、まとめブログ「カネゴンの78ちゃんねるまとめブログZ」を同時に展開
「ウルトラマンナイスの部屋」は、2010年で30周年になるウルトラマン80がゲスト登場するが、「エイティ!」というかけ声でしか答えないという企画。4月20日からは携帯公式サイトで、この「エイティ!」という着ボイスや無料の待受画像が配信されている(※着ボイスのダウンロードは有料会員登録が必要)。

 


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(甲斐 祐樹)

2010/4/23 06:00