待望の登場! 「さくらのVPS」上位プランを試してみた


 人気の仮想専用サーバー(VPS)サービス「さくらのVPS」に、メモリー容量やディスク容量、CPUコア数などを増やした上位プランが登場した。2010年9月の登場以来、ヘビーユーザーやWebアプリケーション開発者などの関心を集めてきたサービスなだけに、余裕のあるスペックのプランの追加は朗報だ。実際に「さくらのVPS 1.5G」プランを試用してみたので、紹介したい。

4つの上位プランが追加

 さくらのVPSが2010年9月のサービス開始に提供したのは、メモリー512MB・ディスク容量20GB・CPU 2コアで、初期費用0円・月額料金980円という1つのプランだけだった。今回、上位4プランが追加され、サービス開始時からの「さくらのVPS 512」プラン(新プラン追加により「さくらのVPS」から「さくらのVPS 512」にプラン名が変更された)と合わせて5プランがラインナップされた。

【4つの上位プランを追加、全5プランに】
プラン名メモリーディスク容量仮想CPU初期費用月額料金
さくらのVPS 512512MB20GB2コア0円980円
さくらのVPS 1G1GB30GB2コア2980円1480円
さくらのVPS 1.5G1.5GB50GB2コア4980円1980円
さくらのVPS 4G4GB120GB4コア9980円3980円
さくらのVPS 8G8GB240GB4コア1万9980円7980円

 同じく人気の他社VPSサービスについて、メモリー1GBのプランを見てみると、ServersMan@VPSがメモリー1GB保証(最大3GB)・ディスク容量50GBで初期費用0円・月額1980円、SaaSes Osukiniサーバーが、メモリー1GB・ディスク容量100GBで初期費用6000円(キャンペーン価格3000円)・月額980円となっている。ユーザーのコスト感としてはほぼ同価格帯といえるだろう。

 

ディスクは2台

 さくらのVPS 1.5Gプランのサーバーにログインしてみると、当然ながら使用感はメモリー512MBプランそのままの快適さだ。Web上のコントロールパネルから仮想サーバーを起動してsshでログインすれば、CPUもインターネット回線も速く、ダウンロードやコンパイルもサクサクと進む。JavaScriptによるWeb上のシリアルコンソールや、VNCのコンソール、OSの再インストールなども便利だ。

 メモリーの量を調べてみると、当たり前だが、1.5GBを搭載していることが表示される。ログイン直後で約30MBが使われていると出たので、残り約1470MBが空いているわけだ。これは心強い。メモリー容量に余裕があるので、ディスクのマウント設定である/etc/fstabファイルを編集し、/tmpディレクトリをtmpfs(仮想メモリベースのファイルシステム)に設定して、mount -aコマンドで反映してみた。

 ディスクのパーティション構成を調べて気付いたのが、1.5Gプランの50GBのディスク容量が、20GBと30GBの2台の(仮想)ハードディスクに分かれて用意されていることだ。1台目の20GBのハードディスクには、システム領域である/bootパーティション(約100MB)と/パーティション(約17GB)、swapパーティション(約2GB)が割り当てられている。そして、2台目の30GBのハードディスクには、ユーザーの設定やデータが置かれる/homeパーティションが割り当てられている。

 さくらのVPSの特徴のひとつに、OSの再インストールや入れ換え替えがWeb上のコントロールパネルから簡単にできることがある。このとき、/homeパーティションがシステムとは別のディスクに置かれていれば、ユーザーの設定やデータをそのまま残し、システムのディスクだけフォーマットとOS再インストールするということが簡単にできるわけだ。実際に、コントロールパネルの再インストールの画面でも、ディスクについて「1台目のみ初期化」「1台目・2台目の両方を初期化」を選べるようになっている。

 また、ディスクが分かれていることで、データが/homeパーティションを圧迫したときにもシステムの動作に影響を与えないというのも、いざというときに安全な点となる。さらに、さくらのVPS 512プランから移行するときに、元の20GBのディスクイメージを1台目のディスクにそのままコピーして移行するという方法もとれそうだ。

コマンドラインでメモリーやディスクの容量などを表示したところ。20GBと30GBの2台のディスクから構成されていることがわかるさくらのVPS 1.5Gプランのコントロールパネル。メモリーとディスクの容量のほか、ディスクが2台から構成されることも表記されている

 

「OS再インストール」では、ディスクについて「1台目のみ初期化」「1台目・2台目の両方を初期化」を選べる。これにより、/homeパーティションのデータや個人設定を残したままシステムだけ入れ換えられる「カスタムインストール」を選ぶと、OSの種類を、CentOS、Ubuntu、FreeBSD、Debian、Fedoraの64bit版と32bit版から選べる

 ベンチマークも取ってみた。ベンチマークソフトのUNIXBENCH 5.1.3を実行した結果は写真のとおり。VPSの性質として、ほかの仮想マシンの動作状況によって負荷が変わるため参考値だが、CPUもディスクアクセスも高い数値が出ている。

UNIXBENCHの結果(1コア)UNIXBENCHの結果(2コア)

 なお、この記事の執筆中にCentOS 5の最新版である5.6がリリースされた。標準のCentOS 5.5 64bit版を再インストールした状態で、ソフトウェアをアップデートするyum updateコマンドを実行したところ、129個のソフトウェアパッケージがアップデートされ、6個のソフトウェアパッケージが追加されて、無事にCentOS 5.6にアップデートされた。

 

テキスト検索のWebアプリケーションを動かしてみる

 上位のプランを選ぶ具体的なケースとしては、Webアプリケーションでの利用が主なものだろう。大容量のデータを保存するディスク容量もそうだが、なによりメモリー容量が必要とされるからだ。

 最近のWebアプリケーションは構成も比較的大がかりになり、ある程度の数のアクセス数が来てもすばやくレスポンスする性能も求められている。そこで、プログラムをメモリー上に常駐させたり、データをオンメモリーで処理したり、データベース検索やインターネットアクセスの結果をメモリー上にキャッシュしたりなどの工夫がなされている。そのぶん、メモリー容量が必要とされるわけだ。

 Webアプリケーションの中でも特に大容量メモリーによって速度を稼ごうとする分野に、テキスト検索エンジンがある。ここでは試しに、プログラミング言語Rubyのリファレンスマニュアルを検索するWebアプリケーション「るりまサーチ」のソースコードを取得し、さくらのVPS上で動かしてみた。

 るりまサーチのソースコードに含まれるセットアップスクリプトなどを見ると、Debian GNU/Linux 64bit版を想定しているようだ。Linuxディストリビューションによる違いはないと思うが、念のためにカスタムOSインストールでOSを入れ換え、るりまサーチのベースとなる全文検索システムgroongaのパッケージリポジトリを追加してインストールした。

 また、るりまサーチは、RubyプログラムとWebサーバーをつなぐRackという仕組みを使っている。そこで、Apache HTTP ServerとPassengerというサーバープログラムを使い、るりまサーチと接続して動作させた。

 起動時に、OS全体で200MB弱のメモリーが使われていたが、1.5GBのメモリー容量があればまったく問題ない。試しに、サーバー内から連続的なアクセスを続け、メモリー使用量が1GB程度になった状態で、インターネット経由でアクセスしてみたが、ほぼ問題なくアクセスできた。なお、これは異常なアクセスパターンであるうえ、設定やチューニングなどを特にせず動かしただけの状態でのデータであることは補足しておく。

 このように、メモリーを使うWebアプリケーションでは、メモリー容量に余裕のあるプランの意義が大きい。

比較的メモリーを使うWebアプリケーションの例として、「るりまサーチ」のソースコードを取得し、さくらのVPS上で動かしてみた

 

Windows 7とのデュアルブートも

 最後に、さくらのVPS 1.5Gのスペックを利用して、LinuxサーバーとWindows 7のデュアルブートを試してみた。

 メモリーが1.5GBあれば、Windows 7をとりあえず不自由なく実行できるスペックだ。また、ディスクが20GBと30GBの2台あれば、それぞれにLinuxサーバーとWindows 7をインストールしてデュアルブート構成にすることもできる。

 そこで試しに、カスタムOSインストールで2台目のディスクにCentOSをインストールし、そのLinuxから1台目のディスク(Windowsから見たC:ドライブ)にWindows 7をインストールしてみた。なお、Windows 7をインストールするにあたっては、Microsoftの「TechNetサブスクリプション」から筆者が購入している評価ライセンスを利用した。

 インストールが完了したあとブートローダーを書き換え、さくらのVPS標準のVNCコンソール機能でインターネット経由でリモート接続してみると、Windows 7が無事実行できた。

 常時起動しておくサーバーをデュアルブートにすることはないだろうし、正直なところ実用性は疑問だ。が、実験環境としても、さまざまなことを試す可能性があるスペックになっているといえるだろう。

デュアルブート構成でWindows 7をインストールし、リモート接続してみた。ソリティアや電卓の表示されているウィンドウが、リモートのWindows 7の画面

 以上、さくらのVPSに登場した上位プランについて見てきた。小規模なサーバーであれば初期費用0円・月額980円という低価格の512プランから利用できるし、それより大きな規模であれば上位のプランを選べるという選択肢ができたことは喜ばしい。現在αテスト中の「さくらのクラウド」も含め、自分の用途を見極めて賢く活用したい。

 


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(高橋 正和)

2011/4/11 00:00