特別企画

もう自宅プリンターは不要? 
住民票の写しも出力できるコンビニ複合機の実力(前編)

~シャープ担当者に聞く、ここまでできる最新型コンビニ複合機

 コンビニエンスストアに設置されているコピー機を利用したことのある人は多いだろう。しかし、このコピー機を使って、各種記憶媒体から写真を読み込んで出力したり、クラウドサービスと連携してネットワーク経由で文書を印刷したり、さらには住民票の写しや戸籍謄本の出力までできることを知っている人は多くないのではないだろうか。

 ローソン、ファミリーマート、サークルKサンクスの各コンビニに導入されている複合機は、2013年以降に入ってシャープの新機種への移行が順次進められ、数多くの新しい機能が利用できるようになりつつある。日本全国で約5万店、今や生活に欠かせないインフラ的存在となっているコンビニの価値向上に、この複合機が一役買っていると言っても過言ではない。

 単純なコピー機から脱却し、トレンドに合わせて進化を続けるコンビニ複合機。この製品の新サービスの企画などを手がけるシャープビジネスソリューション株式会社 CVS推進部ネットワークプリントプロジェクトチームチーフの武田隆一氏にお話を伺い、最新の複合機の魅力に迫った。

シャープの新型複合機「MX-3610DS」
シャープビジネスソリューション株式会社 CVS推進部 ネットワークプリントプロジェクトチーム 武田 隆一氏

出先でのプリントや共有も可能なネットワークプリントサービスを開始

――最新のコンビニ向け複合機では現在どんなことができるのか、機能を簡単にご紹介いただけますか。

 当社がコンビニ各社様に納入している複合機は、コピーとFAX機能が基本ですが、それに加え、ネットワークプリントサービスと写真プリントサービス(一部未実施の店鋪もあり)も提供しています。また、複合機の原稿台に置いた書類や写真を読み取るスキャナーとしても使うことができ、お客様がご自分のUSBメモリーに原稿をPDFとして保存することができます。さらに、後ほど詳しくご紹介しますが、行政サービスやコンテンツプリントサービスにも対応しています。

――今、一番力を入れている複合機のサービスは何ですか?

 6月24日付の全国紙および地方紙20紙の広告で“全国約2万6000店のコンビニエンスストアがあなたのプリンターになる”をキャッチコピーとしてシャープの「コンビニプリントサービス」をPRさせていただきましたが、今一番力を入れているのは、「ネットワークプリントサービス」というクラウド型のプリントサービスです。印刷したいファイルをネットワークプリントサーバー上にあらかじめアップロードしておくことで、全国のローソン、ファミリーマート、サークルKサンクスに設置されたシャープ複合機から出力できるサービスです。

 2年前にサークルKサンクス様の約6000店からスタートしまして、2013年4月にローソン様の1万1000店、7月にファミリーマート様の約9000店へと広げ、現在は合計2万6000店舗で使えるようになりました。日本全国、沖縄を含めた47都道府県をすべてカバーしています。

シャープの新型複合機「MX-3610DS」はローソン、ファミリーマートに設置されており、全国で利用できる。写真はローソン ゲートシティ大崎店
従来型の複合機「MX-4500DS」は現在サークルKサンクス店舗で稼働中。スキャンサービス以外のコピー・FAX・ネットワークプリント・写真プリント(L判のみ)・PDFプリントに対応している。写真はサークルK 晴海センタービル店
新型複合機「MX-3610DS」のお金を入れるコインベンダー部分
コインベンダー部分は写真プリント用の昇華型プリンタと各種メディア類を挿入するデバイスが一体化している
新型複合機のメニュー画面。以下画面はすべて新型の画面
プリントサービスでは、PDFや写真のプリントのほか、ネットワークプリントやコンテンツプリントというメニューが用意されている

――「ネットワークプリントサービス」の概要を教えていただけますか。

 ご利用いただく際には、はじめに「ネットワークプリントサービス」のウェブサイトで無料会員登録をしていただきます。8月1日にサービスをバージョンアップして、印刷ファイルを格納しておくマイボックスの容量を20MBから40MBに増量し、登録できるファイルサイズも2MBから5MBに拡張しました。

 このサービスには大きく分けて「文書プリント」と「画像プリント」の2種類があります。文書の方はPDFとMicrosoft Office文書のプリントに対応し、画像の方はJPEGのプリントに対応しています。これらのファイルをあらかじめ当サービスのウェブサイトまたはスマホ用アプリからアップロードしておいて、出先のコンビニでプリントする、ということが可能になっています。

「ネットワークプリントサービス」は8月1日にサービスをバージョンアップ。保存可能な容量を強化した
「ネットワークプリントサービス」トップページ。新規登録はメールアドレスとパスワードを入力して仮登録し、送付されたURLをクリックして本登録画面へジャンプ。本登録も名前を入力するだけの簡単登録だ

――「ネットワークプリントサービス」の具体的な利用方法は。

 当社サーバーへのファイルアップロードはPCだけでなくスマートフォンにも対応しています。「ネットワークプリント」というiOS用アプリをApp Storeで、Android用アプリをGoogle Playでそれぞれ無料配布しており、アプリからプリントしたいファイルのアップロードが行えます。

 スマートフォンやタブレットを利用されていて、PCやプリンターは自宅でお持ちでない方も多いと思いますので、そういった場合にコンビニの複合機をプリンターとしてお使いいただくと便利です。

 会員登録やファイルのアップロードでは費用は発生せず、プリントするときに料金がかかる仕組みになっています。当面の会員目標は10万人です。

コンビニ複合機のタッチパネル液晶。画面はネットワークプリントサービスのログイン画面
ネットワーク上の“マイボックス”内のファイルを写真プリントする際のメニュー

――クラウドとの連携は、さまざまな応用が考えられそうですね。

 たとえば旅行に行って集合写真を撮ったりしますよね。そういう時、以前は写真を後で焼き増しして送っていたと思うのですが、このネットワークプリントサービスを使えば、アップロードした写真を共有するための10桁の番号を相手に教えるだけで、各自が自宅近くのコンビニでプリントしていただくという使い方もできます。相手が会員登録する必要はなく、プリント代金(A4モノクロで20円/枚~)だけをお支払いいただければOKです。

 ビジネスマンが出先で急に提案資料や見積書が必要になった時にも、自分でノートPCを使って編集したOffice文書を印刷できます。あるいは、会社にいるスタッフに編集してもらってアップロードしてもらえば、あとは共有用の番号を受け取ってコンビニで書類を出力するといった使い方もできます。必要に応じてすぐに出力できるというリアルタイムな使い方ができるのが大きいですね。

――ネットワーク経由で利用するということで、セキュリティも気になりますが。

 弊社サーバーとコンビニ複合機との間は専用線で接続しているため、セキュアな通信環境となっています。また、ファイルの保存期間を8日間に制限していて、その後にデータは自動で消えるようになっています。いわゆる一般的なクラウドストレージサービスとは異なり、出張先で出力する予定があるとか、友達や関係者と共有して使うとか、プリントするまでのファイルの一時保存サービスになります。

 現在、ファイルの保存期間を延長できる法人様向けサービスも検討しています。

Android/iPhone用アプリ「PrintSmash」を使ってWi-Fiで複合機に接続し、スマートフォンやタブレット内の画像をプリントできる機能も備える
表示されたパスワードを入力して複合機とWi-Fi接続する
画像送信の際に、ワンタイムパスワードが表示される
複合機に表示されたワンタイムパスワードをスマートフォンやタブレットで入力する

――ネットワークプリントの他にはどんなプリントサービスがありますか。

 USBメモリーやSDカード、CD/DVDや携帯電話の赤外線通信など、さまざまな種類のメディアに入っている文書や画像を印刷する、普通のプリンターとして使っていただくこともできます。

 自宅のインクジェットプリンターはA4サイズまでの印刷になると思うのですが、コンビニ複合機ですとA3/B4サイズも印刷できます。昇華型プリンターという写真印刷専用のプリンターも内蔵していまして、最新機種ではL判の写真だけでなく、2L判という大きめのサイズの写真までプリントできます。特にコンビニ複合機で2L判写真用紙とA4光沢紙で出力できるのは当社製品だけが実現している機能です。

 また、プリントサービスではありませんが、新型機では「写真コピー」サービスもあります。オリジナルの写真原稿とL判/2L判写真用紙に「写真コピー」したものとでは、見た目の差がほとんどないくらいきれいな仕上がりです。

多彩なメディアから文書や写真を読み込んでプリント可能
指定したメディアの挿入口のランプが光る親切設計
2L判の大きい写真も出力できる
読み込んだ写真のプリント枚数をそれぞれ指定して印刷を実行
写真は一覧画面から拡大表示もできる
メディアを取り出すまで印刷が実行されないため、置き忘れを防げる
プリント中の待ち時間にはちょっとしたお楽しみも
写真は専用の取り出し口に出力される
好みの写真を使ったカレンダーも出力できる
複数枚の用紙にまたがって印刷するポスタープリントにも対応

――写真プリントの利用料金はいくらに設定されているのでしょう。

 料金体系は各コンビニ様がそれぞれ独自に決められていますが、今のところL判プリントは30円、2L判プリントは80円に設定されています。家電量販店の店頭に置いてある写真プリント機でもL判がだいたい30円ですので、同じ料金で、全国どこでも出力できるというのがメリットになりますね。

  

ネットワークプリントサービス・画像プリントのおもな仕様
マイボックスの容量40MB(文書プリントと共用)
ファイル保管期限登録日を含む8日間
1ファイルあたりの上限サイズ5MB
対応画像サイズ240×320ピクセル以上
ファイル形式JPEG(拡張子jpg, jpeg)
上限ファイル数6ファイルまで
用紙サイズL判/2L判 写真用紙、A4 光沢紙、B5/A4/B4/A3 普通紙
印刷面片面
ネットワークプリントサービス・文書プリントのおもな仕様
マイボックスの容量40MB(画像プリントと共用)
ファイル保管期限登録日を含む8日間
1ファイルあたりの上限サイズ2MB
対応ファイル形式Microsoft Word 2003/2007/2010 日本語版(拡張子doc, docx)
Microsoft Excel 2003/2007/2010 日本語版(拡張子xls, xlsx)
Microsoft PowerPoint 2003/2007/2010 日本語版(拡張子ppt, pptx)
PDF Ver.1.3/1.4/1.5/1.6/1.7 (拡張子 pdf)
上限ファイル数100ファイルまで
上限ページ数1ファイル 30ページまで
用紙サイズB5/A4/B4/A3
印刷面片面、両面

(明日の後編で、住基カードを使った住民票の写しや戸籍謄本/抄本がプリントできる行政サービスやコンテンツサービスをご紹介します。どうぞお楽しみに!)

日沼 諭史