特別企画

インディーズマガジン「月刊群雛 (GunSu)」ができるまで(後編)

発行元「日本独立作家同盟」呼びかけ人の鷹野 凌氏が語る、創刊までの経緯

  •  検索からお越しになった方は、前編からご覧ください。

同盟の定期刊行物を創ろう!

「月刊群雛 (GunSu) 〜インディーズ作家を応援するマガジン〜」創刊号表紙

 実は、同盟の初期段階から、いつか雑誌を創りたいという構想だけはありました。しかし当初は「告知」より前にまず、「制作」や「登録」のハードルを下げなければならないだろうと考えていました。また、とにかく人が集まらないことには話にならないとも思っていました。何もないところから「雑誌を創ります!」と言っても、手を挙げてくれる人はなかなかいないでしょう。だからまず、同盟の参加者を100人にする目標を設定しました。参加者が100人いれば、そのうち2割くらいは手を挙げてくれるだろうという想定です。

 しかし、新刊情報やキャンペーン情報配信希望者があまりに多いので、最も力を入れるべきなのは「作家の告知活動を手伝うこと」だと考えを改めました。大勢で一斉に告知をすると、一人でやるより注目されやすくなる事例は既にあります。であればいっそ、多くの作家の作品が掲載された雑誌を創ればいいと考えました。こういうのは出し続けることに意味があると思ったので、月刊誌と決めました。幸い、隔週や週刊の媒体経験はあるので、月刊ならさほど大きな負荷なくできると思ったのです。

 商業出版における雑誌は、印刷・製本・流通といった面で大きな初期コストが必要となるため、費用回収が非常に重要なポイントになります。しかし、電子出版・電子流通であれば飛躍的に初期コストを小さくできます。もちろん参加者が多いほど制作面ではそれなりに手間がかかりますが、実費がそれほどかかるわけではありません。「それほど儲からなくてもいい」という割り切りができると、比較的自由にやれます。

 また、同盟にはインディーズ作家だけではなく、編集者の方々も参加をしています。「何かお手伝いをしたい」と、集まってくれています。そういった方々の手を借りれば、なんとかできるのではないか? と考えました。実際のところ、創刊号は表記の統一や誤字脱字のチェックだけでもそれなりに時間と労力をかけていますが、編集を協力してくれた方がいたことでかなり負荷は軽減できました。

「年明けから雑誌を出す」と言ってしまったからには、やるしかない

 同盟の参加者が徐々に増えていく中、たまたま縁あってインプレスR&Dの「OnDeck」編集部からインタビューの打診があり、井芹昌信編集長へ同盟の目指すことや今後の方針について話をする機会をいただきました。ちなみにこちらは顔出しなしの記事でもOKでした。

 インタビューの中で今後の活動方針を尋ねられ、このままのペースで参加者が増えていけば年内には100人を超えそうだったので、思わず「年明けから雑誌を出そうと思っている」と口走ってしまいました。言ってしまったからには、そのインタビューが公開されるまでには、具体的なアクションをしなければなりません。

 まず、雑誌の目的を「参加作家の知名度向上と、作品の紹介および販売促進」と決めました。だから、掲載する作家数はなるべく多くしたい。では、1作品あたりのボリュームは、どの程度が適切か。月刊でやっていくことを考えると、毎回全て新作というのは厳しいだろう。であれば、既刊のサンプルを載せよう。作家のことを知ってもらうために、インタビューも載せよう。などなど、いろんなことを考えました。

 次に、どこの仕組みを使うか。印税率や応答速度などだけを考えるとKindleストアなどのセルフパブリッシングプラットフォームと直接やる方が有利なのですが、配分の透明性や事務処理の煩わしさが大きくなります。そこで、共同編集や印税配分ができ、紙も電子も作れて、主要な電子書店への配信代行もしてくれる「BCCKS」を使うことにしました。

 配信プラットフォームが決まったので、EPUBファイルで最大200MB、印刷版で最大320ページという上限が明確になりました。いろいろ計算をして1作品あたりの最大文字数やページ数を設定し、新作枠を最大5、既刊サンプル枠を最大10と決めました。また、小説、漫画だけでなく、イラストを描く人にも参加して欲しかったので、表紙枠も用意しました。発売日や締め切りも決めました。

持続可能性と販売価格

 実のところ、同人による電子雑誌には先駆者がいます。 私が知っているだけでも、佐々木大輔氏・忌川タツヤ氏らによる「ダイレクト文藝マガジン」、堀田純司氏らによる「AiR」、鈴木秀生氏らによる「ネット出版部マガジン LAPIS」、古田靖氏らによる「トルタル」などです。ただ、残念ながら、いずれも現在は続刊が出ていない状態です。始めることより、続けることの方が大変だということなのでしょう。

 だから私は、初めから「月刊誌」だと宣言して自分を追い込むことにしました。毎月、最終火曜日発売です。明確な締め切りがあることで、かけられる時間と労力に制限ができます。私も凝り性なので、できることなら徹底的にやりたいたちです。しかし、いつまでもクオリティにこだわることより、スケジュールを守って出し続けることの方が重要です。割り切りが必要だと考えました。

 またもう一つ重要な要素として、参加作家にはきちっと対価をお返ししたいという私の思いがありました。恐らくそうしないと、いずれ継続していくのが難しくなっていくでしょう。だから、安売りをするつもりはありませんでした。そもそも、インディーズ作家の同人雑誌を欲しがる人は、恐らくそれほど多くありません。安売りしたところで、多くの方には売れないでしょう。ターゲットはマスではなく、ごく限られた好事家です。

 だから、単価設定は非常に悩んだのですが、インディーズ作家を応援することを目的とし年間1万円の投資をしてくれる方が100人いれば、少なくとも新作を載せてくれた作家には1人あたり5000円くらいはお返しできるだろうと試算し、電子版は1部800円にすることにしました。正直、目標100部というのも、継続的に購入してもらうには高いハードルでしょう。

 しかし、雑誌のプロモーションと同時に作家の紹介をしていけば、少なくとも「参加作家の知名度向上」という目的は果たすことができます。そうやっていろんなことを悩み考え、レギュレーション案が公開できたのは、インタビューが掲載されている「OnDeck weekly」の配信前日の夕方でした。

「月刊群雛 (GunSu)」の名前やロゴは投票で決めた

投票で決めた「月刊群雛 (GunSu)」のロゴ

 雑誌の名前やロゴは仮でレギュレーション案に載せていたのですが、同盟の参加者から「公募したらどうか?」という提案をされました。そこで同盟内で名称案を募集し、Google+の+1ボタンによる投票数が多い案にする、ということにしました。結局、私が提案した「群雛」という名称に決まりました。

 「群雛」という名前は、雛の群れを意味します。巣で親鳥が餌を運んでくるのをただ待つ雛ではなく、大空を飛ぼうという強い意志を持ち、両足で大地を踏みしめ、まだ羽の生え揃っていない両手を懸命にバタつかせている雛の群れです。大切なのは、「いつかあの大空を飛んでみせる」という意思と、そのために努力ができるかどうかだと私は考えます。

 ロゴは同盟の中だけでなく外にも募ったのですが、締め切りまでの期間が少し短すぎたためか、締め切り後に応募してきた方が何人かいらっしゃって、申し訳ないことをしました。名称と同じように+1ボタンで投票をしてもらい、宮比のんさんの案に決まりました。

 投票で決める、というやり方をしてから気づいたのですが、こうやって作り上げていくプロセスで多くの方に直接的・間接的に関わってもらうことで、発売前に認知してもらうことができます。また、参加者にも「自分の雑誌」という思いを強くしてもらうことができるでしょう。初めから思い至っておくべき点だったと、少し反省しています。

作品を売ることは、自分を売ること

 さて、同盟のコミュニティは、Google+の機能を利用しています。申請・許可が必要な形にはしなかったので、Googleアカウントさえあれば1クリックで入ることが可能です。誰でも利用できるオープンコミュニティなので、入っただけ、動向を見守るだけの方も多いです。

 ネットで暇つぶしや交流することだけが目的であれば、「2ちゃんねる」など比較的匿名性が高い場所で活動した方が安全です。しかし、作家として活動をし多くの人に自分の作品を読んでもらいたいのであれば、Anonymousのままでは非効率です。まず自分のウェブサイトを用意してベースキャンプとし、利用者が多くて拡散性の高いTwitterやFacebookでも情報発信し続け、ファンの輪を広げていく必要があります。SNSのフォロワーを増やすには、地道な活動が必要です。

 だから、同盟の参加者リストへ名前を連ねるには、まず最低限、自己紹介(参加表明)だけは必要だというハードルを設定しました。だから、参加者リストに載っているのは、コミュニティへ入った方の約半数です。コミュニティへ入っていきなり新刊情報の告知依頼をしてくる方もいますが、「まず先に、自己紹介をして下さい」という形にしています。そもそも、突然知らない人から自分の作品を買ってくれと言われたところで、誰がその言葉に耳を傾けるでしょうか。

 そういうハードルを設定していても、自己紹介投稿は1行だけ、プロフィール情報を見ると登録されているのは名前と性別だけ、プロフィール写真は初期状態のままという方も少なくありません。試しに名前で検索してみても、ウェブサイトはおろかTwitterやFacebookすらやっていない方も多いです。

 そんな状態で、どうしたら自分の作品を多くの人に知ってもらうことができるでしょうか。自分を紹介できない人が、どうしたら自分の作品を紹介できるでしょうか。もっと言えば、そんなことすらできない人の作品が、どうしたら他の人の心を揺さぶることができるでしょうか。私は難しいと思います。他の誰かがプロモーションしてくれるわけではないのですから、自分でやるしかありません。作品を売ることは、まず自分を売ることです。

◇URL
「日本独立作家同盟コミュニティ」
https://plus.google.com/communities/105376117124574284050

「月刊群雛 (GunSu)」へ参加するには

 「月刊群雛 (GunSu)」への掲載も、まず必要なのは意思表明です。Google+のコミュニティで「月刊群雛 (GunSu)」参加者募集の「イベント」を立てると、同盟コミュニティ参加者全員に「招待状」通知が届きます。「イベントに参加しますか?」という通知に[はい]をクリックするだけではダメで、参加の意思表明をコメントで書いた人から順に掲載するというスタイルを採っています。要は、早い者勝ちです。参加したくない場合は、イベント通知で[いいえ]をクリックするだけです。以後、その号の募集に関しては通知は届かなくなります。

 掲載可能な作品は、文章、漫画、イラスト、写真です。作品の巧拙は問いません。フィクション、ノンフィクション、エッセー、詩、批評、論説、ビジネスなど、ジャンルも問いません。ただし、ストア配信の都合上、R18は対象外です。著作権や商標など、法律上問題があると判断した場合は掲載をお断りします。もちろんお金もかかりません。収益は、新作を掲載いただいた方々と編集でレベニューシェアします。

 ちなみに、創刊号の参加者募集イベントは、募集開始から2時間半で表紙と新作枠が埋まり、2日半で既刊サンプル枠まですべて埋まりました。その後も何人か参加希望者があり、お断りしなければならないほどでした。残念ながら、配信プラットフォームのファイル容量制限や、印刷版のページ数制限、制作工数の問題があるので、「いくらでも載せます!」というわけにはいきません。

作品の巧拙やジャンルを問わない理由

 作品の巧拙やジャンルを問わないというのは、こだわりポイントです。自分の作品を誰かに見てもらうというのは、笑われたり貶されたりする恐怖との戦いです。編集側で、表記の統一や誤字脱字の修正だけではなく、意味が通らない部分の補足や言い換え提案もできるだけやりましたが、それでもなお作品の質について意見をいただくことは間違いないでしょう。プロの作品ですら、批判をされるのですから。

 厳しい批判にさらされてもなお「自らの足で立とうとする意思」がある人であれば、次はもっといい作品を生み出すことができるでしょう。だから「月刊群雛 (GunSu)」掲載作には、暖かい言葉だけではなく、むしろ厳しい言葉を望みます。☆1レビューだってウェルカムです。誰からも反応がないより、厳しい意見でも言ってもらえたほうがマシです。

 ただ、いくら巧拙を問わないとはいえ、遊び半分や冷やかし半分で参加をされては困ります。こっちは真剣ですし、他にも真剣な方はたくさんいます。早い者勝ちだと、遊び半分や冷やかし半分の方の参加を排除できません。だから、文章であれば最低文字数、漫画であれば最低ページ数の制限を設けました。

 また、新作枠への参加は、過去に自分で作品を公開し衆目に晒した経験があることも条件としました。巧拙は問わないけど、最低限ある程度の分量の作品を書き(描き)上げた経験の有無は問うことにしました。これで今後しばらくやってみて、問題があるようであればレギュレーションの微調整をしていこうと思います。最初から100点満点なんてあり得ないですから、あとは走りながら考えていきます。

(鷹野 凌)