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IEEE 802.11ac対応の無線LAN中継機、バッファロー「WEX-733D」徹底レビュー!

 パソコンやスマートフォンはもちろん、プリンターやコンシューマーゲーム機など、無線LANはさまざまな機器に使われているが、無線LAN対応機器が急増したことで、電波の干渉によって速度が落ちたり、接続が不安定になるといった問題も出てきた。また、無線LANルーターから離れた部屋や別の階の部屋では、電波が弱くなって、接続が途切れがちになってしまうという不満をお持ちの方も多いことだろう。

 こうした問題を解決してくれる便利な機器が、無線LAN中継機である。今回は、バッファローの最新無線LAN中継機「WEX-733D」を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。

バッファローの無線LAN中継機「WEX-733D」

電波を中継してエリアを広げる無線LAN中継機

 無線LANは、ケーブルの代わりに電波を利用して、ネットワークに接続する技術だ。無線LANの普及によって、邪魔なLANケーブルから解放され、エリア内ならどこからでもネットワークに接続できるようになり、利便性が格段に向上した。しかし、電波は距離が離れるにしたがって弱くなる性質があるため、無線LANルーターや無線LANアクセスポイントから離れた場所では、通信速度が落ちたり、接続が不安定になりがちだ。

 そうした問題を解決してくれる便利な機器が、無線LAN中継機である。無線LAN中継機は、その名の通り、無線LANの電波を中継して、無線LANが使えるエリアを広げるための機器だ。その動作のイメージは、次のようなものだ。

 例えば、AさんとBさんが会話をしているとする。AさんとBさんの距離が近い場合は、問題なく会話できるが、距離が遠くなると、お互いの声が小さくなり、会話が困難になってくる。そこで、第三者であるCさんが、AさんとBさんの間に立って、Aさんが話した内容を、そのままBさんに向けてもう一度大声で話すようにすれば、AさんからBさんへの意思の疎通が可能になる。次は、Bさんが話した内容を、そのままAさんに向けて大声で話せば、二人の意思の疎通が図れる。

 無線LAN規格も、IEEE 802.11bからIEEE 802.11a、IEEE 802.11g、IEEE 802.11n、そして最新のIEEE 802.11acと進化を続けてきているが、せっかく最新の高速無線LAN規格に対応した製品であっても、電波が弱ければ、本来の速度は出ない。一戸建てや大型マンションなどに住んでいる方なら、無線LANルーターの電波が届きにくい部屋や場所があるといった経験をお持ちの方も多いだろう。そうしたユーザーにお勧めしたいのが、今回のテーマである無線LAN中継機だ。

無線LAN中継機を使うことで、繋がらなかった場所や速度が極端に低下していた場所でも、安定した接続が可能になる

デュアルバンド同時接続で通信速度が低下しないWEX-733D

 無線LAN中継機も各社から発売されているが、今回取り上げるバッファローの「WEX-733D」は、最新無線LAN規格の11acに対応し、最大433Mbps(5GHz帯)+300Mbps(2.4GHz帯)の高速通信に対応していることが魅力だ。もちろん、11gや11nとの互換性があるので、11ac非対応の製品でも問題なく接続できる。5GHz帯と2.4GHz帯のデュアルバンド同時接続に対応しているため、通信速度が低下しないことも特筆できる。

 他社の無線LAN中継機では、デュアルバンド対応でも同時接続ではなく、切替接続方式となっているものがある。そうした製品では、親機(無線LANルーターなど)と中継機、中継機と子機(パソコンやスマートフォンなど)の通信を、1つの周波数帯域の同じチャンネルを交互に利用して行うため、実効的な通信速度が半減してしまうのだ。

 それに対し、WEX-733Dでは、親機と中継機、中継機と子機の通信を別々の周波数帯域を同時に使って中継できる。例えば、親機と中継機は5GHz帯で通信し、中継機と子機は2.4GHz帯で通信することができるわけだ(もちろん、逆も可能)。そのため、中継することで、通信速度が半減してしまうようなことはない。本体には、5GHz帯と2.4GHz帯それぞれの電波強度を示すLEDが用意されているので、最適な設置場所も探しやすい。なお、LEDの点灯をオフにすることもできるので、夜にLEDの光が気になることもない。

WEX-733D
片手でつかめるほどのサイズだ

 WEX-733Dは、コンセント直差しタイプであり、ボディもコンパクトなので、コンセントのある場所ならどこでも気軽に設置でき、邪魔にならない。こうしたコンセント直差しタイプの製品は、隣のコンセントまで塞いでしまうことも多いが、WEX-733Dは、コンセントの上端からボディ上端までの距離が10mm程度しかないので、2口コンセントの下側に差し込めば、上側のコンセントが塞がれてしまうことはない。地味な点だが、高く評価できるポイントだ。

 また、有線LAN(100Mbps対応)ポートが1基用意されているので、無線LAN子機としての利用も可能だ。例えば、無線LANルーターから離れた場所に設置されている、有線LANのみ対応のHDDレコーダーを無線化するといった使い方だ。

WEX-733Dの左側面。電源スイッチが用意されており、長時間使わないときには電源を切っておけば、電気代を節約できる
WEX-733Dの底面。LAN端子とAUTO/5GHzスイッチが用意されている
コンセントの上端からボディの上端までの距離が短いため、上側のコンセントを塞いでしまうことはない

 さらに、簡単セキュリティ設定機能の業界標準規格「WPS」対応で、本体前面のWPSボタンを押すだけで、バッファロー製無線LANルーターはもちろん、他社の無線LANルーターとの間でも、ワンタッチで引き継ぎ設定を行うことができる。

電波状況や動作状況を示すLEDが用意されているので便利だ

筆者の自宅も2Fの隅では無線LANの電波が届きにくい

 今回は、WEX-733Dを実際に筆者の自宅で使ってみて、さまざまなテストを行ってみたので、その結果をレポートしたい。まず、導入前の無線LAN環境だが、筆者が住んでいる木造2階建ての間取り図を下に示す。

筆者の自宅。APと書かれている場所に無線LANルーターを設置している。今回は、1~5の5カ所で通信速度を計測した

 間取り図で、APと書かれている場所に無線LANルーター(NURO光との契約時に配布されたZTEのZXHN F660T)を設置しており、普段は図中の1の場所で、ノートPCを使って仕事をしている。妻は図中の5の場所でノートPCを使っていることが多いのだが、無線LANの電波が弱く、速度が遅いだけでなく、ときどき切断されてしまうこともあり、なんとかしてほしいと以前から言われていたのだ。

 ZXHN F660Tは、IEEE 802.11n対応の無線LANルーターであり、最大450Mbps(理論値)での通信が可能である。インターネットへのアクセスラインは、NURO光を利用しているが、NURO光の通信速度計測ページでの測定結果は、有線LAN接続時に900Mbpsを超える通信速度を記録しており、バックボーンの速度は十分に高速だ。筆者が使っているノートPCは、ソニーのVAIO Sで、内蔵無線LAN機能はIEEE 802.11n対応(2.4GHz帯のみ)である。また、妻が使っているノートPCは、パナソニックのLet'snote SX2で、内蔵無線LAN機能はIEEE 802.11n対応(2.4GHz帯/5GHz帯)である。

 まず、無線LAN中継機導入前の通信速度を、NURO光の通信速度計測ページ(http://www.nuro.jp/speedup/speedupStep1.html)を使って計測してみた。計測は5回ずつ行い、その平均を採用した。計測にはVAIO Sを用い、2.4GH帯で接続している。結果は、下の表に示した通りで、やはり地点5では速度が大きく低下しており、地点1の半分~3分の1程度しか出ていない。他の地点では、安定して再生できるYouTubeなどの動画共有サイトの映像もときどきコマ落ちやひっかかりが感じられる。

【無線LAN中継機導入前の速度計測結果】
ルーターとの位置関係下り上り
地点①同じ部屋(距離2m程度)90.8Mbps98.8Mbps
地点②隣の部屋(距離5m程度)72.0Mbps93.5Mbps
地点③2Fの真上の部屋の隅71.3Mbps68.2Mbps
地点④2Fの角部屋77.7Mbps93.5Mbps
地点⑤2Fの反対側の角部屋38.0Mbps32.2Mbps

WEX-733Dを既存の11n環境に導入

 筆者の自宅は、特に広いわけではないが、一般的な無線LANルーターで、2階建ての家をすべてカバーするのはなかなか難しいようだ。そうした無線LANの電波環境を改善する機器がWEX-733Dだ。

 前述したようにWEX-733Dは、最新の無線LAN規格であるIEEE 802.11acに対応しているのだが、筆者宅の無線LAN環境はIEEE 802.11n止まりだ。そこで、既存のIEEE 802.11n環境にWEX-733Dだけを導入した場合と、無線LANルーターと無線LAN子機をIEEE 802.11ac対応製品に変更した場合、さらにWEX-733Dの導入とIEEE 802.11ac環境へのアップグレードを同時に行った場合の合計3通りの環境でテストしてみることにした。

 まずは、既存の環境にWEX-733Dだけを導入した場合の結果を報告する。WEX-733Dは、2Fの階段を上がってすぐの場所に設置した。無線LAN中継機の性能を十分に発揮するには、設置場所も重要になるが、WEX-733Dには、電波強度を示すLEDが用意されているので、最適な設置場所を見つけやすい。

 既存の環境でのテストでは、親機から中継機への通信に5GHz帯を、中継機から子機への通信に2.4GHz帯を使うことにした(子機のVAIO Sの内蔵無線LAN機能が2.4GHz帯のみ対応のため)。一般に、2.4GHz帯よりも5GHz帯のほうが直進性が強くなるため、広がりにくいとされている。今回、WEX-733Dを設置した場所では、5GHz帯の電波強度を示すLEDはゆっくりと点滅しており、まずまずの場所といえる。

2Fの階段を上がってすぐの場所にWEX-733Dを設置した

 既存の無線LAN環境にWEX-733Dを導入する場合は、本体のWPSボタンを長押ししてWPS待ち受け状態に入ったのち、無線LANルーターのWPSボタンを押すだけで、自動的にセキュリティ設定などが行われ、利用可能な状態になる。

 ただし、この状態では、SSIDが無線LANルーターと同じになってしまうので、子機が無線LANルーターに接続しているのか、WEX-733Dに接続にしているのかがわかりにくい。そこで、ノートPCとWEX-733Dの有線LANポートをLANケーブルで接続し、ウェブ設定画面を開いて、WEX-733DのSSIDを無線LANルーターとは違うものに設定した。

PCとWEX-733Dの有線LANポートをLANケーブルで接続して、ウェブブラウザーから設定を行える
WEX-733DのSSIDを無線LANルーターとは違うものに設定すれば、子機がどちらに接続しているかが一目でわかる

 既存のIEEE 802.11n環境にWEX-733Dを導入し、子機からWEX-733Dに接続した場合の速度計測結果は以下の通りだ。WEX-733D導入前の結果と比べて、地点5での通信速度が下りで38.0Mbpsから52.8Mbpsに、上りで32.2Mbpsから52.0Mbpsへと1.4~1.6倍程度向上していることに注目してほしい。

 それ以外の地点では、既存の無線LANルーターに接続した場合のほうがやや高速であるが、例えば地点1では当然、無線LANルーターのほうがWEX-733Dよりも近くにあり、電波強度も高い。

 今回は、検証のために、地点1でもわざとWEX-733Dに接続しているが、WEX-733Dを導入しても、既存の無線LANルーターに接続したほうが速度が速い場所では、既存の無線LANルーターを選んで接続すればよいのだ。WEX-733Dを導入しても、PC1台を既存の無線LANルーターに接続する場合の速度が低下するわけではないので、特に心配はいらない。今回のテストでは、地点1~4については既存の無線LANルーターに接続したほうがよく、地点5でPCを使う場合のみ、WEX-733Dに接続すればより安定した通信が可能になるわけだ。

【無線LAN中継機導入後の速度計測結果(既存の11n環境で利用)】
ルーターとの位置関係下り上り
地点①同じ部屋(距離2m程度)53.01Mbps55.94Mbps
地点②隣の部屋(距離5m程度)68.0Mbps76.65Mbps
地点③2Fの真上の部屋の隅57.0Mbps59.5Mbps
地点④2Fの角部屋63.7Mbps61.6Mbps
地点⑤2Fの反対側の角部屋52.8Mbps52.0Mbps

無線LAN環境をバッファローの11ac対応製品にアップグレード

 次に、WEX-733Dを導入せず、無線LAN環境をIEEE 802.11nからIEEE 802.11acへアップグレードした場合の速度を計測してみた。

 無線LANルーターとしてはバッファローの「WHR-1166DHP」、無線LAN子機としてはUSB接続タイプの「WI-U2-433DM」を利用した。WHR-1166DHPは、5GHz帯と2.4GHz帯の同時利用が可能な製品で、5GHz帯では最大866Mbps(理論値)、2.4GHz帯では最大300Mbps(理論値)での通信が可能だ。また、WI-U2-433DMは、5GHz帯と2.4GHz帯に対応したコンパクトな無線LAN子機であり、5GHz帯では最大433Mbps(理論値)、2.4GHz帯では最大150Mbps(理論値)での通信が可能である。

バッファローの無線LANルーター「WHR-1166DHP」。IEEE 802.11ac対応で、最大866Mbps+300Mbpsでの通信が可能
バッファローの無線LAN子機「WI-U2-433DM」。USB接続タイプの超小型子機だ。こちらは最大433Mbpsでの通信が可能

 無線LAN環境をIEEE 802.11acにアップグレードし、5GHz帯を利用して接続した場合の速度計測結果は以下の通りだ。

 当初の環境と比べると、大幅に通信速度が向上していることがわかるが、逆に地点5では、IEEE 802.11nのときよりも速度が低下しているなど、挙動が異なることが面白い。IEEE 802.11nでは2.4GHz帯を利用していたが、こちらのテストでは5GHz帯を利用しているため、電波の飛び方がかなり異なるのだ。無線LAN環境をIEEE 802.11ac対応にアップグレードした効果は大きく、特に地点1と地点3では、上り、下りともに200Mbps前後という、非常に高速な通信が可能であった。

 しかし、地点5では下り速度が地点1や地点3の10分の1以下に低下してしまっており、接続もかなり不安定であった。やはり、無線LANルーターから一番遠い地点5で快適な通信環境を実現するためには、無線LAN中継機が必要なようだ。

【無線LAN環境をIEEE 802.11acにアップグレード(5GHz帯)】
ルーターとの位置関係下り上り
地点①同じ部屋(距離2m程度)195.6Mbps208.3Mbps
地点②隣の部屋(距離5m程度)85.7Mbps171.9Mbps
地点③2Fの真上の部屋の隅213.7Mbps215.9Mbps
地点④2Fの角部屋95.8Mbps113.9Mbps
地点⑤2Fの反対側の角部屋17.5Mbps45.0Mbps

11ac環境+無線LAN中継機の効果は絶大!

 そこで最後に、IEEE 802.11ac環境にWEX-733Dを導入した状態で、速度を計測してみた。今度は、親機から中継機への通信に2.4GHz帯を、中継機から子機への通信に5GHz帯を利用した。

 WEX-733Dの設置場所は、先ほどと同じ2Fの階段を上がってすぐのところだが、2.4GHz帯のほうが遠くまで届きやすいため、2.4GHz帯の電波強度を示すLEDが常時点灯しており、通信状態が良好であることを示していた。

 速度計測結果は、以下の通りであり、地点5での通信速度が下りで17.5Mbpsから90.1Mbpsに、上りで45.0Mbpsから97.5Mbpsへと、下りは5.1倍程度、上りは2.2倍程度に向上している。それ以外の地点では、WEX-733D導入前のほうが高速であるが、これは先ほどと同じく、検証のために地点1~4でもわざわざWEX-733Dを選んで接続しているためだ。

 この結果だと、WEX-733Dを導入したことでかえって遅くなっている場所があるように見えるが、実際に利用する場合は、地点1~4についてはIEEE 802.11ac対応のWHR-1166DHPを選んで接続すればよいので、心配はいらない。

【WEX-733DをIEEE 802.11ac環境に導入後(2.4GHz帯→中継機→5GHz帯)】
ルーターとの位置関係下り上り
地点①同じ部屋(距離2m程度)38.4Mbps35.8Mbps
地点②隣の部屋(距離5m程度)65.0Mbps67.2Mbps
地点③2Fの真上の部屋の隅73.6Mbps74.0Mbps
地点④2Fの角部屋80.6Mbps70.2Mbps
地点⑤2Fの反対側の角部屋90.1Mbps97.5Mbps

無線LANの電波が弱くて困っている人にお勧め

 無線LAN環境をIEEE 802.11acにアップグレードして、さらに無線LAN中継機のWEX-733Dを導入することで、当初のIEEE 802.11n環境では接続が不安定であった地点5での、通信環境が大きく改善された。通信速度は2.3~3倍程度に向上して、より快適にインターネットを利用できるようになっただけでなく、接続が途切れてしまうようなことも全く起きなくなり、妻もイライラせずに済むと喜んでいる。

 場所によって無線LANの速度が大きく落ちてしまったり、接続が不安定になって困っている場合は、WEX-733Dを導入することで、大きな改善が見込めるであろう。WEX-733Dの実売価格も6000円前後とリーズナブルであり、費用対効果は非常に高いといえる。設定も簡単なので、無線LANの電波が弱くてイライラした経験のある方は、WEX-733Dの導入をお勧めしたい。

 また、無線LAN環境がIEEE 802.11nまでの対応であっても、WEX-733Dを導入する意義はあるが、無線LAN環境もWEX-733Dの導入にあわせて、IEEE 802.11ac対応に一新することで、さらに大きな効果が得られる。

石井 英男