ついに登場したGoogle ドライブの実力は? Dropboxと徹底比較


 Googleは24日、かねてから噂されていたオンラインストレージサービス「Google Drive(Google ドライブ)」を開始した。単にファイルをオンラインに保存できるだけでなく、PC内のデータをオンラインや複数のPCへ反映する同期機能が特徴だ。

 ファイルをPCやオンラインで同期する形式のオンラインストレージサービスは現在流行している分野であり、さまざまなサービスが存在する中でもDropboxがその代表的な存在だ。この分野で後発となるGoogle ドライブがどのような機能を搭載しているのか、Dropboxと比較しながらその利便性をレビューする。

料金のお得感ではGoogle ドライブに軍配、ただしDropboxは友人招待で容量増も

 Google ドライブは、Google アカウントを取得すれば無料で利用できるオンラインストレージサービス。ただしサービス開始当初は利用対象が一部ユーザーに限定されており、利用したいユーザーはGoogle ドライブに登録して利用開始の通知を待つ必要がある。

 無料アカウントで5GBまでのストレージが利用でき、25GBから最大16TBまで9段階で容量を追加することが可能。料金は25GBで2.49ドル、100GBで4.99ドル、最大容量の16TBは799.99ドルで利用可能だ。

 Google ドライブの提供にあたって、これまでGmailなどで利用できた容量拡張の料金も変更されており、Gmailは無料アカウントの場合最大7GB超の容量が最大10GBに引き上げられた。追加容量については、旧プランは年払い、新プランは月払いと課金方法が改められた。

 最小追加容量は旧プランが20GBで$5、新プランは25GBで$2.49ドル。1GBあたりの年額を比較すると、20GBの旧プランで年$0.25、25GBの新プランで約$1.2と大幅な値上げとなっている。新旧のプラン詳細については、ここ(http://support.google.com/picasa/bin/answer.py?hl=ja&answer=39567)に公式説明があるので詳しくはそちらを参照してほしい。(※編集部注:記事初出時、追加容量についての新旧プラン比較について、記述に間違いがありました。お詫びして訂正いたします。)

旧プラン料金設定(年額)

20 GB - $5
80 GB - $20
200 GB - $50
400 GB - $100
1 TB - $256
2 TB - $512
4 TB - $1024
8 TB - $2048
16 TB - $4096

新プラン料金設定(月額)

25 GB - $2.49
100 GB - $4.99
200 GB - $9.99
400 GB - $19.99
1 TB - $49.99
2 TB - $99.99
4 TB - $199.99
8 TB - $399.99
16 TB - $799.99

 先行するDropboxの料金は無料の場合、容量が2GBで、有料プランは容量50GBが月額9.99ドルまたは年額99ドル、容量100GBが月額19.99ドルまたは年額199ドル。無料ユーザーの容量、有料プランの価格帯ともにGoogle ドライブのほうがお得だ。ただし、Dropboxは他のユーザーを招待するとお互いに容量が増える、といったユニークなキャンペーンを実施しており、ユーザーによっては無料でも20GBを超える容量を利用できているため、そうしたユーザーからすると無料の5GBは物足りなく感じるかもしれない。

 なお、Google ドライブは、Googleが従来から提供していたGoogle ドキュメントの機能にオンラインストレージの機能を統合して進化させたサービスとなっている。そのため、Google ドライブを設定するとこれまで「Google ドキュメント」と表示されていたサービスが「Google ドライブ」へと改称され、今後Google ドキュメントの機能はGoogle ドライブ内で利用することになる。

PCの保存データをオンラインや他のPCへ自動的に同期

 Google ドライブを利用するには専用クライアントをインストールした上で、Googleアカウントでのログインが必要。クライアントはWindows XP/Vista/7とMac 10.6(Snow Leopard)/10.7(Lion)に対応しており、インストールすることでPC内の特定のフォルダーがGoogle ドライブのフォルダーとして割り当てられる。初期設定であればGoogle ドライブのフォルダーはWindows、Macともにユーザー名の直下に作成される。

利用するGoogleアカウントでログイン
専用クライアントをインストール

 設定が終わると、以前にGoogle ドキュメントでファイルを管理していた場合は、そのファイルがPC内のGoogle ドライブへ自動的にダウンロードされ、PCとオンラインのファイルが常に同じ状態に同期される。

設定が終わるとGoogle ドキュメントのデータが自動でダウンロード

 初回の同期が終わったら、あとは保存したいファイルをGoogle ドライブのフォルダーに保存するだけで自動的にアップロードを開始。オンラインのGoogle ドライブからアクセスできるようになるほか、自分のアカウントでログインした他のPCでも同様にファイルの状態が同期される。

左上が新たに保存したフォルダ。アップロード状況のアイコンが表示される

 同期とアップロードの仕組みは先行するDropboxと非常によく似ているが、細かな点ではDropboxのほうが使い勝手がよい。例えば、Google ドライブは他のPCで保存したファイルが自分のPCにダウンロードされた場合も通知はなく、いつの間にか新しいファイルが増えている。同期中はGoogle ドライブのアイコンがアニメーションして同期中であることがわかるものの、Windows版は同期中と同期済みの区別を目視で認識するのが難しい。このあたりは新しいファイルが保存されるたびに通知があり、同期中のアニメーションもわかりやすいDropboxのほうが使いやすいと感じた。

Windows版の通知アイコン比較。Google ドライブは薄く光るが視認性は低い
Mac版の通知アイコン比較。Mac版は薄い灰色部分が回転し、Windows版よりは確認しやすい

 また、Google ドキュメントで作成したファイルは「.gsheet」「.gdoc」といったGoogle ドキュメント形式でPCに保存されるため、ファイルの閲覧や編集もブラウザ経由となり、WordやExcelといったクライアントソフトで開くことはできない。

 一方、「.xls」「.doc」といったOffice文書をそのままGoogle ドライブに保存した場合、Google ドキュメント形式に変換されることなくアップロードや同期が行なわれる。同じ文書や表計算を扱うのにも形式が異なり少々わかりにくいため、Google ドキュメントのデータは別のフォルダーで管理しておくといいだろう。

 アップロード可能なファイルやフォルダーの上限サイズは10GBまでだが、1GBを超える動画ファイルも問題なくアップロードできた。ただし、PCのディスク容量に余裕があっても、Google ドライブの上限容量に達した場合は新しいファイルの同期が行なわれない。容量の上限はGoogle ドライブのアイコンをクリックして確認できるので、常にどのくらいの容量を使っているか確認しておくといいだろう。

他ユーザーとファイルやフォルダー単位で共有

 Google ドライブでは自分の所有するPCでの同期だけでなく、他のユーザーとファイルを同期することも可能だ。同期の対象は特定のファイルのみを指定できるほか、フォルダー単位で共有をかけることもできる。

 共有相手を指定する場合は、ブラウザーからGoogle ドキュメントにアクセスし、対象のファイルを右クリックで表示される「共有」を選択。複数ファイルを選択する時など、画面上部の「その他」メニューから「共有」を選ぶこともできる。

他ユーザーとの共有
共有範囲を指定できる
編集権限も設定できる

 共有の方法はウェブ上で一般公開するか、リンクを知っているユーザーのみ、メールアドレスで指定したユーザーのみという選択が可能。また、共有相手はファイルを編集できる「共同編集者」、閲覧とコメントができる「閲覧者(コメント可)」、閲覧のみでコメントできない「閲覧者」の3段階から選択できる。このあたりの共有機能はGoogle ドキュメントを継承しているため、Google ドキュメントのユーザーであればさほど違和感なく利用できるだろう。

 共有相手にはメールで通知を行うと同時に共有を開始。相手先にも同じファイルやフォルダー名が自動で作成され、お互いが新しいファイルを追加したり、既存のファイルを削除したりすると相手のGoogle ドライブも同じ状態に同期される。

相手にはメールで通知。Google ドライブをまだ利用していない場合はファイルが添付される
共有したファイルは「共有中」と表示
ファイルとフォルダはサムネイル表示も可能。共有中のフォルダは人のアイコンつきで表示

 なお、現在はまだGoogle ドライブが利用できずGoogle ドキュメントのままのユーザーも混在する状況だが、Google ドライブからGoogle ドキュメントへ共有することは可能で、共有したフォルダーにファイルを追加すると相手のGoogle ドキュメントにも同様に反映される。

 相手を指定して同期する機能や、リンクを知っているユーザーはログイン不要でアクセスできる機能など、共有機能はDropboxとほぼ同等。細かな点ではDropboxの場合、他のユーザーと共有したフォルダーやファイルがPC上ではアイコンで区別されるのに対し、Google ドライブでは見分けがつかない。

 また、Dropboxでは、ファイルやフォルダーを右クリックして「リンクの取得」を選択すると自動でブラウザーが立ち上がり、ログイン不要でアクセスできるURLを取得できる。Google ドライブではURLを取得するのにブラウザでログインし、目的のファイルを探してからリンクを取得する必要があるため、操作手順としてはDropboxのほうがシンプルで手軽だ。

Dropboxは共有フォルダーがPCでもわかりやすい
Google ドライブ。2つのフォルダーはそれぞれ共有あり、なしで設定しているが判別できない

 ただ1つ興味深いのが、ファイル削除時のGoogle ドライブの機能だ。まだ開発中で実際に利用はできない機能だが、ファイルを削除するときに該当ファイルのオーナー権限を相手に渡すことで、自分のファイルは削除しつつ相手にはファイルが残っている、という共有が可能になる。Dropboxでは自分の共有ファイルを削除すると相手のファイルも削除されてしまうため、ファイルの削除が難しいという面もあった。他のユーザーとファイルを共有することが多いユーザーには期待の機能だろう。

共有ファイルを削除するときにオーナーを変更できる

ブラウザー経由でのアクセスも可能、ファイルのプレビュー機能も

 Google ドライブに保存したファイルは、PCフォルダー以外にブラウザーからオンラインでアクセスすることも可能なため、自分のGoogle ドライブを設定していないPCからでもオンラインで自分のファイルへアクセスできる。前述の通り、共有ファイルやフォルダーのURLを相手に伝えることで、相手がログインすることなく目的のファイルにアクセスする、というのも可能だ。

 オンラインでの表示機能はGoogle ドキュメントを引き継いでいるだけに充実した機能が用意されている。WordやExcel、PowerPointといったファイルは変換してブラウザーで表示できるほか、形式をGoogle ドキュメントに変換して保存することも可能。また、ZIPファイルを展開して中をファイルを確認することも可能だ。ただし、ファイルを完全に解凍したわけではないため、画像ファイルは表示できず、テキストファイルも文字化けすることがあった。とはいえダウンロードすることなく中身を確認できるというのは便利な機能だろう。

INTERNET Watchのキャプチャ画像を表示
.ai形式のファイルもプレビュー表示できる
ZIPファイルの中身を表示。テキストのタイトルは文字化けしている

 Dropboxも画像や動画をオンラインで表示する機能は搭載されているが、OfficeファイルやZIPファイルなどはウェブ上で表示できず、ダウンロードして確認する必要がある。手軽に確認できるという点ではGoogle ドライブのほうが使いやすい。また、Adobeの「.psd」ファイルはGoogle ドライブ、Dropboxどちらも閲覧が可能だが、「.ai」に関してはDropboxでは表示できず、Google ドライブでは表示できるなど、細かな点でも違いが見られる。

Dropboxは動画や静止画はプレビュー可能。「.ai」はアイコン表示でプレビューできない

 Google ドライブでは、ファイルのバージョン管理機能も搭載しており、30日以内であれば以前のバージョンを表示できるほか、PC内のGoogle ドライブフォルダーから削除した場合もオンラインの「ゴミ箱」に保存されている。なお、30日以内でもファイルの過去の半数が100を超えた場合は同様に削除される。

Google ドライブのバージョン管理機能
Dropboxのバージョン管理機能。30日以内の無料機能ではほぼ同等

 Dropboxも同様の管理機能を有しており、30日以内のファイルは復元が可能なほか、有料プランでは過去のバージョンを永久に保存することも可能。なお、Google ドライブも指定したファイルのバージョンについて永久に保存する機能があるとしているが、ヘルプに記載されている設定メニューからは発見できなかった。ヘルプメニューには「特定の版を残すためにこの設定を無効することもできますが、場合によっては追加容量の購入が必要になることにご注意ください」とはっきりしない表現になっているが、無料バージョンでは「Do not auto delete」の項目が非表示になっているため、これは有料プランのみの機能という可能性もありそうだ。

Googleならではの検索や各種サービス連携も

 機能面ではDropboxとほぼ同等の機能を有するGoogle ドライブだが、他にもさまざまなサービスを提供しているGoogleだけに、Googleならではの機能もいくつか搭載されている。

 その1つが検索機能。Google ドライブに保存したファイルは、ファイル名だけでなくテキストの本文なども対象に検索が可能。画像内の文字を認識する「Google Goggles」を利用し、画像内の文字で検索することも可能だ。Dropboxも検索は可能なものの、検索対象はファイル名に限られるため、ファイルの内容まで検索できるGoogle ドライブは非常に便利だ。

「Pocket」で検索したところ、ファイル名には含まれていないがテキストファイルは文章から、画像は「Pocket Wi-Fi」のロゴから検索できた

 Gmailとも連携しており、Google ドライブに保存したファイルは「共有」から「メールに添付して送信」を選択すると、ファイルをアップロードすることなくメールを送信できる。相手がGoogle ドライブを利用している場合は相手のフォルダーへ自動的にファイルが保存され、Google ドライブユーザーでない場合は通常通りファイルが送信される。

Google ドライブのファイルはGmailに添付なしで送信可能

 便利な機能だが、現状この機能を利用するにはブラウザーのみとなり、PCのファイルからGmailを表示して送る、といった連携はできない。また、ブラウザーのメール添付もGoogle ドライブから設定する必要があり、Gmailの添付ファイルとして選択することはできない。このあたりは今後の機能拡張を望みたいところだ。

 Googleサービスの連携では、Google+にも対応。Google+のファイルアップロードの際、Google ドライブに保存した画像を投稿できる。現在のところ連携できるのは静止画のみで動画の連携には対応していない。また、Google+では画像サービスにPicasaを利用しているため、PicasaとGoogle ドライブに保存した画像ファイルをどう切り分けていくのかは気になるところだ。

Google+にGoogle ドライブの画像をアップロードできる

スマートフォンはAndroidに対応。iPhoneも今後対応予定

 スマートフォンはサービス開始当初Androidアプリのみ提供されており、iOS版は今後対応予定。バージョンはAndroidが2.1以上をサポート、iOS版も未提供ながら3.0以上をサポートと、最新バージョン以外も広くサポートしている。

利用時に利用するアカウントを選択

 アプリをインストールするとGoogle ドライブに保存したファイルの閲覧やダウンロード、アップロードが可能になる。こちらもGoogle ドキュメントとの統合が図られているため、Office文書をAndroidで閲覧・編集することが可能なほか、Office文書の新規作成も可能だ。ただし、新規作成したファイルはすべてGoogle ドキュメント形式となり、Microsoftのファイル形式では保存されない。

Android版のホーム画面ファイル一覧。濁点や半濁点が別文字扱いになっている

 スマートフォンからアクセスしたファイルはキャッシュ扱いで、本体にはファイルとして保存されないが、ファイルを長押しして「オフラインを有効にする」を選択することで本体へファイルをダウンロードすることも可能。ファイルはストレージの「sdcard」「Android」「data」「com.google.android.apps.docs」に保存される。

 スマートフォン版は濁点が正しく表示されない、保存ファイルの名前が正しく表示されない不具合もあるが、基本的な動作はほぼ問題なく利用可能。Google ドキュメントの機能を組み合わせることで外出先からExcelをチェックする、と言うときにも便利だろう。

Excelファイルを表示したところ

 スマートフォン対応ではDropboxはAndroidのほかiOSも対応しているが、Google ドライブでも今後の対応を明言しているのでさほど違いはないだろう。ただし、Dropboxではスマートフォンでダウンロードしたファイルをスマートフォンでそのまま更新するとその内容が反映される、という同期機能を搭載しているが、Google ドライブでは現在のところそうした機能はないようだ。

リリース直後ながら機能は充実、今後のサービス拡充に期待

 Google ドライブは、長い間サービスの提供が噂され続けていた存在でもあり、先行するDropboxの機能をほぼ網羅した上でGoogleならではの機能を取り込むなど、リリース当初から充実した機能を備えている。細かな使い勝手では先行するDropboxが勝る部分もあるが、こうした使い勝手は今後改善されていくだろう。

 一方、DropboxもGoogle ドライブのリリース前に保存ファイルをログイン不要で共有できる機能などのアップグレードを実施。また、マイクロソフトの「Windows Live SkyDrive」も、DropboxやGoogle ドライブのような同期機能を新たにリリースした。Dropboxに加え、大手マイクロソフトやGoogleが本格参入したこの分野は、今後さらなる競争によるサービス拡充が期待できそうだ。


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(甲斐 祐樹)

2012/4/26 14:28