特別企画
知っておこう、確定申告とは
~サラリーマンと自営業、それぞれ確定申告は何をするの~
2016年2月26日 06:00
先日、確定申告の受付が始まった。著名人が確定申告する映像はこの時期の風物詩で、品川税務署では高橋英樹さんと真麻さん親子、奈良納税協会ではNMB48の渡辺美優紀さん、武蔵野税務署では漫画家の原哲夫さん、春日部税務署ではボクシングの内山高志選手などがPRに一役買ったようだ。ニュースの締めの言葉は「確定申告は個人事業主や年収2000万円を超えるサラリーマンなどが対象で、来月15日まで受け付けています」となる。
確定申告という言葉は多くの人が知っているが、実際に理解している人は少ないように思う。自営業(個人事業主)にとっては避けては通れない、わずらわしいイベントであり、多くのサラリーマンには無縁なイベントが確定申告とも言える。「確定申告は1年間の個人の収支を確定し納税額を申告するもの」と言われてもピンと来ないだろう。確定申告の季節到来ということで、サラリーマンと自営業者、それぞれの確定申告について少し理解を深めていただきたい。
先日掲載した源泉徴収票に関する記事は多くの人に読んでいただけたようで、はてなブックマーク、Facebookのシェア、Pocketの数は驚くような値となった。
筆者は起業して10年目を迎えているが、縁があって7~8年前から税金に関する記事を書いている。筆者の税金記事のターゲットは、サラリーマン時代の筆者自身だ。税の知識が皆無に等しかったサラリーマン時代の筆者でも理解できるように、表を作ったり図を色分けしたりと、衰えた頭を使って記事を作成している。税に詳しくない人には「なるほど」「理解できた」と思っていただくこともあるし、詳しい人にすれば「何をいまさら、常識だろ」と思える内容だ。
筆者は、国民が税に詳しくなることは国が良くなることだと思っている。そのための啓発活動と思いながら執筆を続けている。今まで税金と縁が薄かった人には、少しでも税に興味を持っていただきたいと思っている。また詳しい人は、その知識を周りの人に分けていただければ幸いだ。
今回は「こんなときはサラリーマンも確定申告をした方が得」「副収入があるけど確定申告しなきゃダメ?」といった、サラリーマンが確定申告するときに知っておきたい知識を取り上げた。また、独立を考えている人や独立したばかりの人が知っておくとよい、個人事業主の確定申告にもついてお伝えしよう。
サラリーマンの確定申告
所得税の算出方法を知らないと確定申告をする理由が理解できないと思う。簡単におさらいをしよう。サラリーマン(給与所得者)の所得税は以下の式で求められる。
収入金額-給与所得控除=給与所得
給与所得-各種所得控除=課税所得
課税所得×税率=所得税
給与所得控除の額は以下の計算式から算出できる。
給与等の収入金額(年収) | 給与所得控除額 |
162万5000円以下 | 65万円 |
162万5000円超 180万円以下 | 収入金額×40% |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20%+54万円 |
660万円超 1000万円以下 | 収入金額×10%+120万円 |
1000万円超 1500万円以下 | 収入金額×5%+170万円 |
1500万円超 | 245万円(上限) |
- ※平成27年分。平成28年は上限230万円、平成29年以降は上限220万円となる
所得から所得控除(配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除等)を引いた課税所得に以下の税率を掛かると所得税の納税額が算出できる。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超 330万円以下 | 10% | 9万7500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 42万7500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 63万6000円 |
900万円超 1800万円以下 | 33% | 153万6000円 |
1800万円超 4000万円以下 | 40% | 279万6000円 |
4000万円超 | 45% | 479万6000円 |
サラリーマンの所得税についてもっと知りたい人は「知っておこう、源泉徴収票の見方」に目を通していただきたい。
給与所得控除の計算式や所得税の税率を覚える必要はないが、収入と所得の意味の違い、給与所得控除、各種所得控除の意味を何となく理解していることを前提に話を進めよう。
サラリーマンは毎月の給与から所得税を天引きされている。これは扶養家族などは考慮されているが、生命保険料の支払いなどは考慮されていない。みなしの税額を納めておいて、年末調整で実際の年収、家族の所得、社会保険料、生命保険料などから最終的な納税額を算出し、12月の給与で調整して納税が完了する。
だが、年末調整で完了しないケースがある。例えば医療費を多く支払った人は、年末調整では医療費控除がされていないので、自分で確定申告をすると税金を取り戻すことができる。途中で退職し再就職していない人は年末調整を受けていないので、みなしで天引きされた分を納税したままとなっている。会社とは別に副業で所得があった人は、会社分と副業分を合算して納税額を決めなければならない。
多くのサラリーマンが該当する人的控除(配偶者控除や扶養控除)、社会保険料控除(厚生年金や健康保険)、生命保険料控除は年末調整で控除を行い、納税額を確定し納税が完了しているので確定申告の必要はないが、そうでない人は「確定申告をしなければならない」あるいは「確定申告をすると得をする」ということだ。
サラリーマンで確定申告をしなければならない人
サラリーマンで確定申告をしなければならない人は、国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」に詳しく(分かりにくく)書かれている。主なところを要約すると、「ほとんどのサラリーマンは年末調整して納税済みだから確定申告は不要ですよ」と書かれていて、その上で以下の人は確認申告が必要となる。
1.年収2000万円を超える人
2.副業で「所得」が20万円を超える人
3.2つの会社から給与をもらっていて副業の会社の所得が20万円を超える人
1.の年収2000万円を超えるサラリーマンは、税理士にお願いするなど自己解決していただくとして、2.と3.の副業は該当する人がそこそこいるだろう。
主な給与は会社からもらっていて、年末調整もして納税は完了し、源泉徴収票ももらっているとしよう。2.はそれ以外に原稿料をもらっていたり、ネットで何かを販売していたり、アフィリエイトで収入あったり、と副業で稼いでいる人が対象だ。この場合は稼ぎが多いと確定申告が必要かもしれない。その分かれ目は所得が20万円を超えるか超えないか。収入ではなく所得という点に注目しよう。収入と所得の関係は以下となる。
収入-経費=所得
仮に原稿料が25万円で経費が5万円なら所得は20万円となり確定申告の必要はない。物販で売り上げが100万円で部材などの経費が80万円でも、確定申告の必要はないということだ。収入を得るために掛かった交通費や物品の購入費、電気代の一部などを証明できるような領収書を保存し、もし税務署から問い合わせがあったときは説明できるようにしておきたい。
3.は昼間はサラリーマンとして働き、夜や休日にコンビニや居酒屋でバイトをしている場合だろうか。2つの給与所得があり源泉徴収票を2カ所からもらっている場合は、2枚(2社)の源泉徴収票を合算し、再計算した納税額を納める必要がある。
サラリーマンで確定申告をした方がよい人
確定申告をすることで、払いすぎた税金を取り戻すことができるケースがある。主なものは
・医療費を多く支払った人
・年末調整後に配偶者控除の対象となる人と結婚した人
・災害などへの寄付をした人
・退職後に再就職していない人
・住宅を購入した人
などだ。これらは義務ではないので無視することはできる。例えば医療費が10万500円の場合、控除額は500円。所得税の税率が5%の人は、支払った所得税から25円が戻ってくる。住民税を加味しても、確定申告書を郵送する切手代の方が掛かることになる。
「知っておこう、源泉徴収票の見方」を読まれて、ご自身の納税額が算出できた人は、確定申告をすると還付される税額が計算できるはずだ。「1万円戻ってくるならやってみよう」「3000円戻ってくるけど、それより再就職が優先」など判断はお任せしよう。
安倍進次郎が医療費控除に挑戦
次のグラフは国税庁の「平成26年分 申告所得税標本調査」から、各種所得控除を受けた人数のベスト10だ。すべての人が受けられる基礎控除を100%とすると、社会保険料控除(健康保険など)は94%、生命保険料控除は79%などとなっている。
配偶者控除、扶養控除など年末調整の対象となる控除より多いのが、医療費控除だ。およそ3割の人が確定申告をして医療費控除を受けている。これほど多くの人が医療費控除を受けているなら、年末調整ができたらいいのに、と思われる人もいそうだが、年末調整の申告書を提出するのは11月から12月上旬が一般的なので、それ以降の医療費を含めようとすると、確定申告をするしかなさそうだ。
医療費控除は10万円(所得が200万円未満の人は所得の5%)を超えた分の医療費が控除の対象となる。例えば家族全員の医療費の合計が15万円なら、5万円が控除されるということだ。「入院して15万円支払ったぞ」と、ぬか喜びはしない方がよい。生命保険会社から受け取った入院給付金や、健康保険から支給された高額療養費を差し引くので、2週間入院して15万円支払っていても、保険会社から入院給付金を10万円を受け取っていれば差し引き5万円となる。
実際に医療費控除の確定申告を行ってみよう。「知っておこう、源泉徴収票の見方」で例とした、安倍進次郎さんの1年間の医療費が18万円かかったという前提で確定申告書を作成してみたい。
サラリーマンが確定申告をするときは、国税庁の「確定申告特集」にある「確定申告書等作成コーナー」を利用しよう。手元に用意するのは源泉徴収票と医療費の領収書。医療費の集計は指定のExcelフォーマットをダウンロードして、記入後にアップロードすることも可能だ。画面の指示にそって入力をするだけなので、特に迷うところはないだろう。
医療費控除により、課税所得が166万円から158万円に減少。税率が5%なので所得税が7万9000円、復興特別税が1659円で、修正された納税額は8万659円。納税済みの8万4700円との差額、4041円が還付となった。当然、税率が10%、20%の人は還付される額が増える。さらに住民税も下がるので、チョットしたお小遣いにはなりそうだ。
年の途中で退職し年末調整を受けていない人は、同様な手順で進んで、途中の選択で「給与支払者が1か所、年末調整を行っていない」を選択すればよい。コンビニなどの副業による給与所得がある人は「給与支払者が2か所以上」を選択する。また、副業の収入を会社に知られたくない人は、住民税の徴収方法で「自分で納付」を選択した方が安全だと言われている。
国税庁の「確定申告書等作成コーナー」はPDFを出力するだけなので、実際に医療費を払っていなくても、お試しで入力することはできる。やってみれば「なんだ、確定申告って簡単じゃん」と思うはずだ。一度操作しておけば、いざ本当に確定申告が必要なときに精神的なハードルを下げることができるので、興味のある方は試していただきたい。
個人事業主の確定申告
確定申告の主役は個人事業主(自営業者)だ。サラリーマンと違い、すべての個人事業主が確定申告をする必要がある=避けては通れない。その内容はサラリーマンと大きく異なり面倒臭い。源泉徴収票のように集計したものを用意してくれる人はいないので、税理士にお金を払って依頼するか、ひたすら自分で集計するしかない。
今年の提出期限は3月15日。ベテランの人には「言われなくて分かってるよ。毎年同じだろ」とツイートされそうだが、残り1カ月を切り、初心者には何をどうしたらいいのか、どれくらいの作業量なのかが分からず不安を感じている人もいるだろう。ここでは、独立を考えている人や独立したばかりの人が知っておくとよい、個人事業主の確定申告について説明していこう。まずは個人事業主の所得税の計算式から確認していこう。
売り上げ-経費=所得
所得-各種所得控除=課税所得
課税所得×税率=所得税
1行目はサラリーマンの計算式と異なるが、2行目はほぼ同じ。3行目はすべて同じだ。個人事業主とサラリーマンの確定申告の差は、1行目の所得を算出するための知識と労力の差といってもよいだろう。
サラリーマンは収入(年収)-給与所得控除=所得を簡単に計算できる。年収は源泉徴収票に明記されている。給与所得控除は計算式が決まっているし、早見表を見て金額を求めることができる。理屈が分かれば、源泉徴収票がなくても12カ月分の給与明細とボーナスの明細があれば、「収入はこれを足して、社会保険は厚生年金と健康保険と雇用保険を足して、通勤費は無視、後は納税済みの所得税の合計は……」と、すべて計算してもそれほどの労力は掛からないだろう。
個人事業主は、業種により申告に掛かる労力に差がある。物販や製造業など仕入れがある事業は労力が掛かる。日々入金のある小売り系も同様だ。比較的労力が掛からないのはライター、デザイナーなどのフリーランス系だろう。
取引先が1社で毎月その会社だけから入金があったとすると、請求時(売り上げ)と入金時で2回記録を残す(記帳する)ことになる。1社で年間24回、5社なら120回の記帳だ。オフィス/自宅など仕事場の電気代は12回、家賃も12回、飲み代や喫茶店代の領収書が50枚、PC関係の消耗品の領収書が30枚、プリンター用紙にインクなどの事務用品、本屋、宅配便、切手、スマホ、ネット回線、交通費……500枚の領収書の記帳は少ない方だと思われる。
記帳件数が作業量、労力に影響するので、売り上げの件数、経費の件数により拘束される時間は人それぞれだ。初体験の人は「売り上げも経費も少ない」という人で3日、そこそこ件数がある人は5日から1週間くらいは没頭する時間を取っておきたい。売り上げと経費の記帳が作業全体の8~9割を占める。まずは初心者が売り上げと経費で注意したい点を確認しておこう。
売り上げの注意点
売り上げの注意点は請求と入金が年をまたぐ場合だ。2015年12月に納品した仕事の請求書を12月末に発行し、2016年の1月末に入金があったとしよう。この売り上げは2015年の売り上げとなる。法人取引をする人は、この点だけ注意しよう。
経費は按分に注意
経費とは事業に必要なさまざまな費用だ。事務所の家賃、電車やタクシー、高速代といった交通費、携帯電話やインターネット、切手といった通信費、水道光熱費、接待交際費、荷造り運賃、これ以外にも消耗品費、修繕費、支払手数料など数多くの経費が発生する。
経費に関する注意点は、事業使用と家事(個人)使用がまざる費用だ。例えばスマホの通話料は仕事9割、プライベート1割などと、仕事以外の費用が支払った金額にまざることがある。電気代やガソリン代もその可能性が高い。経費の中に事業使用と家事使用がまざるときは、按分して支払った経費から家事使用分を差し引くことになる。そのことを、記帳を始める前によく考えてから作業を始めたい。
経費は勘定科目に分類して記帳するが、按分するものだけ注意すれば、それ以外は科目が多少間違っていても問題はない。例えば切手は通信費、郵便局でゆうパック(宅配便)を送ると荷造り運賃となるが、ゆうパックを通信費にしても、切手を荷造り運賃にしても納税額に差は生じない。
按分する科目としない科目は注意しよう。例えば車は8割が仕事、2割がプライベート使用としよう。高速代、コインパーキングは100%仕事なので勘定科目を交通費。ガソリン代、月極駐車場代、自動車保険、自動車税、車の購入費……は勘定科目を車両費と記帳して2割分は家事使用とする。ガソリン代を交通費にすると経費が増え、納税額が減る。うっかり高速代を車両費とすると納税額が増える。納税額が増える分には税務署は文句を言わないが、自分が損をすることになる。
このように、経費の記帳は按分するものをよく考えることと、記帳の際に間違わないことに注意したい。按分にさえ注意すれば、勘定科目は神経質になる必要はない。迷ったときは「○○ 勘定科目」と検索すれば答えは簡単に見つかるだろう。なかには複数の答えが見つかることもあるが、その際は適当に決めて問題はない。
固定資産と減価償却
仕事で使用する備品は消耗品費という経費で記帳する。文房具やPC、デジカメなどさまざまな備品がその対象となる。ただし、10万円以上の備品は固定資産という扱いになるので注意しよう。同じPCでも6万円なら消耗品費、12万円なら固定資産ということだ。
固定資産の代表的なものは建物や車だ。車は耐用年数が6年(軽自動車は4年)と定められているので360万円の車は72ヶ月(=6年)に分割して経費とする(360万円/72=5万円)。7月に購入した場合は最初の年は6ヶ月分の30万円(5万円×6)、翌年は12ヶ月分の60万円が経費となる仕組みだ。
国税庁の耐用年数表を見ると、PCは器具・備品に分類され4年、テレビは5年、カメラは5年などとなっている。もちろんテレビ、カメラで10万円未満のものは購入した年に全額消耗品費で処理することができる。
青色申告を行っていると。30万円未満の固定資産は購入した年に全額経費にできる特典がある。青色申告にはほかにもさまざまな税制面の優遇があるので、別の機会に説明したい。
所得控除はサラリーマンとほぼ同じ
基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除といった主な所得控除はサラリーマンも個人事業主も同じだ。所得38万円以下の奥さん(配偶者)がいれば38万円の控除、大学生の子どもがいれば63万円の控除が受けられる。
個人事業主ならではの控除は青色申告特別控除、小規模企業共済等掛金控除などがある。青色申告特別控除は別の機会にまとめて説明しよう。小規模企業共済等掛金控除には小規模企業共済や確定拠出年金、国民年金基金がある。
個人事業主には退職金がない。加えてサラリーマンが加入する厚生年金は、給与の支給額が増えると納める金額が増え、さらに会社負担分が上乗せとなるので、将来的にもらえる年金額が多い。個人事業主が加入する国民年金は固定額(現在は1万5590円)で、20歳を超えた大学生も所得800万円の個人事業主も同額だ。退職金がなく、引退後の年金も少ないので、自分で将来に備える必要がある。
小規模企業共済や確定拠出年金、国民年金基金は、自分で退職金や年金を積み立てるイメージで、支払った掛け金の全額が控除される。手元の資金にゆとりがあれば控除額を積み上げることができるので、節税対策となる。
小規模企業共済の掛け金は月額1000円から500円刻みで7万円まで。毎月の掛け金を上限の7万円に設定すれば年額84万円。所得税の税率が10%であれば所得税で8万4000円、住民税で8万4000円、合計16万8000円も節税することができる。
確定拠出年金の掛け金は月額5000円から1000円刻みで6万8000円まで。年額で最大81万6000円となる。小規模企業共済と確定拠出年金を満額にすると、合計165万6000円もの控除を経費の支払いがなく積み上げることが可能だ。課税所得360万円(税率20%)の人が、2つの控除で課税所得194万4000円(税率5%)となるので、節税効果は高い。
筆者の個人的なお勧めは、最初が小規模企業共済、次が確定拠出年金。まずは小規模企業共済に加入し、さらにゆとりができたら確定拠出年金にも加入したい。ちなみに筆者は起業した年は小規模企業共済の存在を知らず、翌年に加入した。確定拠出年金にも最近加入(手続き中)した。
筆者には、数年前は大学生の子ども2人と近所の老人ホームに母親がいたので、63万円×2人+48万円=174万円も控除があったが、母が亡くなり上の子は結婚、下の子も社会人となり、これらの控除は0円となった。学費などの支払いもなくなったので、小規模企業共済と確定拠出年金で節税しようという作戦だ。
税率はサラリーマンも個人事業主も同じ
売り上げ、経費、各種所得控除から課税所得が求められる。その課税所得に税率を掛かると所得税の納税額が決まる。税率はサラリーマンも個人事業主も同じだ。
個人事業主が所得税の納税額を減らす(=節税)する方法は経費を増やすか控除を増やすかの2つ。備品を購入して経費を増やす場合も、生命保険に加入して控除を増やす場合も、支払った経費以上に納税額を減らすことはできない。節税のために、衝動買いをして経費を増やしても、税金が減る以上に手元資金が減ることは理解しておきたい。
所得税以外の税金
所得税以外に個人事業主が納める税金には住民税、事業税、消費税がある。国民健康保険も自治体によっては国民健康保険税として徴収するところもある。
住民税
住民税は、サラリーマンも個人事業主も同じ計算式で算出される。税務署に提出した確定申告の結果が地方自治体に送られ、市区町村から5月にお知らせが届く。サラリーマンは毎月の給与に分割して天引きされるが、個人事業主は1年分を1回か4回に分けて納めることになる。少々まとまった額になるので準備をしておこう。
事業税
事業税は業種によって徴収される不思議な税金だ。対象となるのは物品販売業、運送取扱業、保険業、飲食店業、不動産売買業、医業、税理士業、デザイン業など70業種。税率は3~5%となっている。ライター業、執筆業などは対象業種に含まれておらず、何人かのライターさんに聞いてみたが「何それ、払ってないよ」とのことなので、該当しない業種であれば納める必要はなさそうだ。
東京都主税局 個人事業税
http://www.tax.metro.tokyo.jp/kazei/kojin_ji.html
消費税
消費税は、前々年の売り上げが1000万円を超えると消費税課税事業者となる。そのため、開業から2年間は消費税を納める必要はない。売り上げがずっと1000万円を超えなければ、その後も非課税事業者を継続することになる。年末に売り上げが1000万円を超えそうになったら、年内の仕事を断ると2年後に節税となることもある。
国民健康保険
国民健康保険は地方自治体ごとに計算式が異なっている。その計算式も毎年微妙に料率が変更されるので、お住まいの地域ごとに確認したい。少し稼ぐとサラリーマンの健康保険より高額になることが多く、地域による金額差もかなりある。
なお、個人事業主の確定申告に関しては「初めての確定申告」と題し、具体的な記帳方法も紹介しているのでそちらも参考にしていただきたい。起業後に初めて確定申告をする人は、早めに作業に取りかかることをお勧めしたい。
初めての確定申告 第1回・基礎編
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20160108_737601.html
初めての確定申告 第2回・初期設定、クラウド取込編
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20160129_740159.html
初めての確定申告 第3回・手入力と決算書、確定申告書の作成編
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20160215_742696.html
初めての確定申告 最終回・クラウド編
http://internet.watch.impress.co.jp/docs/special/20160222_744280.html