特別企画
初めての確定申告 最終回・クラウド編
2016年2月22日 06:00
今年も確定申告の受付が始まった。すでに準備万端という人もいると思うが、「いつ始めよう」と頭を抱えている人も少なくないだろう。確定申告は多くの個人事業主とって避けては通れないこの時期の一大イベントだ。すでに弊誌INTERNET Watchでは1月から「初めての確定申告」と題し、基本的な知識から、実際に青色申告ソフトを使用した記帳方法、決算書・申告書の作成までを3回の連載で紹介している。
これまでの3回は、基礎知識と、Windows PCにインストールして使用する「やよいの青色申告16」をベースに、細かな記帳方法などを紹介した。今回は、Macユーザーも使用できるクラウド型青色申告サービス「やよいの青色申告オンライン」による確定申告書の作成について紹介しよう。
これまでの連載では、実際に確定申告をする人が理解しづらい点の説明や、設定方法、操作方法などを取説的な視点で紹介している。基本的な知識など重複する点は省くが、今回もこれまでと同様に取説的な視点で紹介していくので、記帳作業で疑問が発生したときに読み返して役立てていただきたい。実際に記帳作業をするのはまだ先という人は、細かな操作説明は読み飛ばして、確定申告作業の流れをつかんでいただければ幸いだ。
INTERNET Watchの読者にはクラウド対応の青色申告ソフト/サービスの認知度は高いと思うが、実際の利用者はまだまだ多くはない。1月18日にMM総研が発表した「クラウド会計ソフトの利用状況調査」によると、会計ソフトを利用している個人事業主の中でクラウド会計ソフトを使用しているのは8.1%にとどまっている。ただし、この調査は12月に行われているが、青色申告ソフトの導入は2月~3月に集中するので、4月以降に調査すると大きく伸びる可能性はある。
主な変更点を確認
INTERNET Watchでは2014年12月にサービス開始直後の「やよいの青色申告オンライン」のレビューを掲載している。2シーズン目を迎え、さまざまなアップデートが行われているので、主な変更点を確認しておこう。
やよいの青色申告オンラインの主な変更点
1.銀行の法人口座に対応したアグリゲーション機能の追加
2.消費税課税事業者の申告に対応
3.不動産所得の確定申告に対応
4.ユーザーインターフェイスの変更
5.無料スマートフォンアプリの提供
6.スキャンデータ取込機能の追加
7.パッケージ版からのデータ移行に対応
2014年のサービス開始時は消費税課税事業者の申告に対応していなかったので、起業したばかりのフリーランス向けといった印象があった。最新バージョンでは前々年の売り上げが1000万円を超える課税事業者の申告に対応し、不動産所得にも対応したので、従来と比較して幅広いユーザーが利用可能となった。
アグリゲーション機能が銀行の法人口座に対応したことと、スキャンデータ取込機能の追加は、パッケージ版のやよいの青色申告16と同様だ。やよいの青色申告オンライン独自の機能としては、無料のスマートフォンアプリが提供開始された。iPhone用は1月から、Android用は2月下旬公開予定となっている。
今年も初年度無料を継続
昨シーズンと同様に、やよいの青色申告オンラインは初年度無料キャンペーンが実施されている。すべての機能が利用できるセルフプラン(通常1年間 税別8000円)であれば、最大14カ月無料で使用することが可能だ。2016年の2月に申し込みをすれば2017年の3月まで使用できる。
ただし、確定申告書の作成は平成27年(2015年)分のみ。平成28年分の確定申告書作成には更新が必要となる。なので実質的な無料期間は、2015年分の記帳と確定申告(2016年2~3月申告分)、2016年の1年間の記帳が無料ということだ。2015年に起業して初めて確定申告をする人が、アグリゲーション機能が使える青色申告ソフト/サービスを使用する際の最安値と言えよう。
初期設定
実際にやよいの青色申告オンラインを使用してみよう。やよいの青色申告オンラインのWebページから「申し込む(料金プランへ)」をクリックするとプラン選択の画面が開くので、セルフプランかベーシックプランを選択しよう。
やよいの青色申告オンラインを使用する際に必要な「弥生ID(=メールアドレス)」を登録しよう。その後は認証作業や個人情報の登録をすると、あっと言う間に使用可能となる。このあたりはINTERNET Watchの読者が迷うことはないと思われる。
トップページを見るとユーザーインターフェイスが一新されているが、初めて使用する人には関係ないだろう。細かなところを見ると、高度なメニューの中に「弥生データのインポート/エクスポート」が追加されている。従来のパッケージ型のやよいの青色申告15などを使用しているユーザーは、この機能でやよいの青色申告オンラインに移行することができる。
初期設定から始めよう。トップ画面の「設定」をクリックすると設定のメニュー画面に移動する。消費税[全体の設定]から順番に進めていこう。ここでは事業内容、申告方法、消費税の3つの設定を行う。事業内容は事業所得のある人は「一般」、不動産所得のあるひとは「不動産業」を選択する。申告方法の設定では「青色申告65万円」を選択する。消費税の設定では設定する年度で「2015(平成27年)」を選択。消費税の申告義務は「なし(免税事業者)」を選択し「登録」をクリックすると強制的にログアウトされる。なお免税事業者と課税事業者の違いなどの説明は「初めての確定申告 第2回・初期設定、クラウド取込編」を参照いただきたい。現金の開始残高をどう設定するかなども、同様にそちらの記事で確認していただきたい。
再度ログインをして口座設定から再開する。銀行口座は売り上げ(売掛金)が振り込まれる口座を登録する。個人用の口座は登録してもしなくてもよい。同じく、クレジットカードも事業専用であれば登録するが、個人用と事業用が混在する場合は登録しない方が記帳は楽になる。
固定資産の登録はスルーして、次は開始残高の設定だ。ここでは現金の開始残高を10万円、普通預金の開始残高を40万円とした。入力して登録をクリックするとエラー表示が出る。「賃借の金額が一致しないまま、登録してよろしいですか?」と聞かれるので「いいえ」をクリック。指示に従い「元入金を自動計算」をクリックすると、元入金に50万円が記入され借方、貸方の金額が一致したので登録を完了しよう。何のことか分からなくても気にすることはない。間違っていればアプリ側が警告をしてくるので、それに従えば先に進むことができる。
ここでレポート・帳簿の残高試算表を開くと、貸借対照表の現金が10万円、普通預金が40万円、元入金が50万円となっていることが確認できる。
初期設定の最後は科目設定だ。左側の設定メニューにある「科目の設定」をクリックすると、勘定科目、補助科目の設定メニューに移動する。ここでは水道光熱費の補助科目に電気代、ガス代、上下水道代を追加してみた。左側の科目名の水道光熱費をクリックし上段の「補助科目を追加」をクリックすると、水道光熱費の下に空欄が用意される。そこに電気代を入力。同じ作業を繰り返しガス代、上下水道代も追加しよう。フォルダー構造と似た感じで、水道光熱費の下に電気代、ガス代、上下水道代という補助科目が設定できた。
少々余談となるが、やよいの青色申告オンラインはパッケージ版のやよいの青色申告16をクラウド化したものではない。随所にフリーランス向けの設定が用意されていて、ライターやデザイナーなどが記帳をする際に分かりやすいメニューが表示される。勘定科目においても事業主貸のところに「受取報酬の源泉徴収税」という科目が最初から設定されている。原稿料、講演料など特定の報酬は、支払いをする際に源泉徴収(税金を事前に差し引く)するルールとなっているので、事業主貸という意味不明な科目ではなく、源泉徴収というダイレクトな科目で記帳できる。フリーランスで初めて確定申告をする人にはこの方が分かりやすい。
Macと法人口座の関係
やよいの青色申告オンラインはスマート取引取込で銀行口座、クレジットカード、電子マネーの入出金データを取り込むことができる。以前からあるMoneyLook、Zaim、Moneytreeという外部サービスに加え、新たに弥生独自のサービスとして「口座連携」を追加、銀行の法人口座からデータ取込が可能となった。
「初めての確定申告 第2回・初期設定、クラウド取込編」と同様に、筆者が使用している三菱東京UFJ銀行の法人口座は「口座連携」を利用して取り込み、個人口座はMoneytreeから取り込もうとしたが、少々問題が発生した。個人口座のMoneytreeによる取り込みは全く問題がなく銀行(個人口座)、クレジットカード、電子マネーとの連携ができたが、口座連携はMac非対応でデータ取込ができないことに気付いた。
最初は各サービスのMac対応を確認するだけのつもりだったが、調べ始めると金融系サービスとMacの相性の悪さは予想以上だ。フリーランス系のお仕事をされている方はMac比率が高いと思われるので、調べたことやテストした結果をまとめておきたい。「自分はWindowsユーザーだし、法人口座も関係ないし……」という人は読み飛ばしていただきたい。
筆者は個人事業主なので法人(株式会社等)ではない。法人ではないが屋号を取っているので、売り上げの入金はアイピーアールという屋号名の口座(屋号付口座)に振り込まれる。おそらく法人ではない商店街の○○商店やカフェ、美容室なども店主の個人名の口座ではなく、筆者と同様に屋号(店名)の口座を使用しているケースは多いと思われる。
3大メガバンクの屋号付口座とインターネットバンキングの関係を調べてみた。三菱東京UFJ銀行は、屋号付口座が利用できるインターネットバンキングは「BizSTATION」という法人用。みずほ銀行も、屋号付口座のインターネットバンキングは法人向けの「みずほe-ビジネスサイト」となっている。三井住友銀行は、個人用の「SMBCダイレクト」、法人用の「パソコンバンクWeb21」と、両方のインターネットバンキングを利用できるようだ。
「BizSTATION」「みずほe-ビジネスサイト」「パソコンバンクWeb21」とも、Windowsのみの対応でMacは使用できない。これらの法人口座は電子証明書を任意のWindows PCにインストールする必要があるので、自宅のデスクトップPCにインストールしただけではノートPCからはアクセスできない。
このあたりの制約は、各社のクラウド会計ソフトは横並びで、freeeもMFクラウド確定申告も、電子証明書が必要な法人口座から取引データを取得するには、電子証明書をインストールしたWindows PCを使用するしかない。「Macで使えるってうそじゃん」「ローカルにインストールしてちゃクラウドって呼べない」という声も聞こえそうだが、法人口座からのデータ取得の部分だけは、Windows PCあるいはMacにインストールしたWindowsを利用するしかないのが現状だ。
法人口座が電子証明書を使用する目的はセキュリティだ。これとは別に、やよいの青色申告オンライン(やよいの青色申告16なども同様)が利用できる4つのサービスにもセキュリティレベルの差がある。
例えば、筆者が主に使用しているMoneytreeはもともとiPhone用のサービスで、銀行、クレジットカード、電子マネーなどのWebサービスにアクセスして入出金の情報を収集してくれるものだ。各サービスへのログイン情報をMoneytreeに登録することで、Moneytreeが勝手にWebサイトにアクセスする仕組みとなっている。当然ログイン情報はMoneytree側に置かれている。これはZaimも同様だ。
口座連携とMoneyLookは、ログイン情報をローカルPCに保存する仕組みを採用している。この2つが初期設定の際にローカルPCへ「ログイン情報管理マネージャー」なるものをインストールするのはこのためだ。銀行やクレジットカード会社のWebサービスにログインするためのIDやパスワードを暗号化してPCに保存しているので、セキュリティレベルはMoneytree、Zaimよりも高いと考えられる。
実際にMoneyLookで確認してみよう。デスクトップPCだけにログイン情報管理マネージャーをインストールしノートPCからMoneyLookにログインしてみると、入出金の履歴を確認することはできるが、口座情報の更新(取得)を行うと「ログイン情報管理マネージャーがインストールされていない」メッセージが出る。
口座連携とMoneyLookがMacに対応していない理由は、ログイン情報管理マネージャーがWindows版しか用意されていないためだ。利便性ではMoneytree、Zaimの方が優れているが、ひと様のサーバーにログイン情報を預けるのは不安だと思う人は口座連携かMoneyLookを使用した方が安心だろう。
いろいろな検証をして、筆者はMacで法人口座のデータ取得ができるという仮説を立てた。もちろんMacだけでは法人口座の電子証明書にも口座連携のログイン情報管理マネージャーにも対応はできないが、Windowsで設定まで行えば、データ取得はMacでも可能となる。
口座連携に法人口座や個人口座、クレジットカード、電子マネーなどを登録し、自動更新の登録をすると、毎日同じ時間に口座連携のサーバーがそれぞれのWebサイトからデータを取得する。電子証明書とログイン情報管理マネージャーがインストールされたPCだけ、法人口座へのアクセスの許可とワンタイムパスワードを要求する画面がポップアップする。
筆者は毎日入金があるわけでもないので「許可しない」で画面を閉じてしまうこともしばしばだが、仮に月に1回許可をしてパスワードを入力すれば、その日までのデータは口座連携のサーバーには取り込まれている。Macでスマート取引取込にアクセスしデータ取込をすれば、口座連携のサーバーに蓄積された入出金の履歴をスマート取引取込に取り込むことができる。
最初の設定をWindows PCで行い、アクセスを許可すれば法人口座のデータもMacで取得可能だ。1カ月、2カ月という時間軸で試してはいないが、実験的には設定だけWindows PCで行った後、Macで法人口座のデータ取得はできた。もし長期的に何か問題を見つけたら来年報告しよう。
スマート取引取込で入出金のデータを取り込もう
先へ進もう。初期設定が完了したら売り上げと経費の記帳だ。売り上げと経費はどちらを先に記帳しても問題ない。まずはスマート取引取込で可能な限り取り込んだデータで記帳をして、現金支払いなどデータ取込ができなかった入出金を手入力する流れだ。
スマート取引取込で使用するサービスはどれを選択してもよいので、自分が使用している金融機関を取り込めるサービスを選択しよう。おそらく大手の金融機関であれば、どのサービスを使用しても取り込みは可能だ。1つのサービスから取り込む必要もないので、法人口座は口座連携、個人口座はZaim、クレジットカードはMoneytreeなどと分散して取り込むこともできる。
MoneyLook、Zaim、Moneytreeの外部サービスを使用する場合は、それぞれのWebサイトで自分の使用している口座を事前に登録する。口座連携を使用する場合はスマート取引取込から連携した後に口座を登録しよう。今回は銀行の個人口座をMoneytreeから、クレジットカードとWAONをZaimから取得してみた。画面を見ると上半分がMoneytreeで下半分がZaim。Moneytreeから銀行、Zaimからクレジットカード、WAONを取り込む設定とした。
また、今回取り込む口座は事業使用と個人使用が混在しているので、主な用途は個人用とし、勘定科目は事業主借とした。科目を事業主借とする記帳方法のメリットについては「第1回・基礎編」を参考にしていただきたい。
設定を保存すると取引データが取り込まれ、自動仕訳が行われる。間違って仕訳された科目を修正し、補助科目が必要なものはプルダウンメニューから選択しよう。初期設定で補助科目を設定した水道光熱費はプルダウンメニューで電気代、ガス代などの選択が可能となっている。
取り込んだ取引のうち、事業に関係ないものは送信の欄を「しない」に設定することで、やよいの青色申告オンラインに送られなくなる。実際の作業は摘要欄でソートすると同じ取引が並ぶので効率よく確認、修正、送信するしないを設定できる。作業が終了したら「内容を確認」で最終確認し、取引データをやよいの青色申告オンラインに送ろう。送信しないに設定した取引は過去の取引一覧に移動される。
スマート取引取込には新機能として「スキャンデータ取込」「まとめ仕訳」が追加された。スキャンデータ取込は領収書、レシートなどをスキャンした画像からデータ化する機能。まとめ仕訳は交通費などの記帳を1カ月分などにまとめて記帳する機能。いずれも第2回・初期設定、クラウド取込編で紹介しているので参考にしていただきたい。
かんたん取引入力で現金支払いを記帳しよう
スマート取引取込で取り込みのできなかった、現金払いした際の領収書などは「かんたん取引入力」で手入力をしよう。「第3回・手入力と決算書、確定申告書の作成編」でやよいの青色申告16のかんたん取引入力を紹介したが、やよいの青色申告オンラインのかんたん取引入力は別物といった印象で、やよいの青色申告16よりやよいの青色申告オンラインの方が初心者向けの作りとなっている。
かんたん取引入力の画面が開いたら、「よく使う取引」をクリックすると検索窓とプルダウンメニューが表示される。プルダウンに表示された取引事例を選ぶこともできるし、検索することもできる。文房具、タクシー、スマートフォンなどと入力すると、該当する事例が表示される。
宅配便の着払いの記帳をしてみよう。着払で検索すると「宅配便の着払金支払い」と表示されたので、選択すると科目の欄に荷造運賃と記入される。日付をカレンダーから選択し、取引手段は現金を選択、金額を記入し登録をクリックすると記帳が完了する。同じ種類の領収書をまとめて記帳する場合は、「同じ取引を続けて登録」にチェックを付け、日付と金額を変更すれば次の領収書が記帳できる。別の画面で複式簿記の記帳を確認すると貸方に現金、借方に荷造運賃と正しく記帳されたことが分かる。
次は、電気代が引き落とされたときの記帳。よく使う取引に電気と入力し、「電気料金の支払い」を選択。科目に水道光熱費と記入されるが、水道光熱費は補助科目が設定してあるので、プルダウンメニューから補助科目の電気代を選択しよう。普通預金も初期設定で登録した三菱東京UFJ銀行を選択。日付、金額を記入して登録しよう。
次は売り上げと入金の記帳だ。法人との取引では、例えば1月末に請求書を送り、2月末に銀行振り込みされる売り掛けの取引が一般的だ。記帳ベースでみると1月に売り上げを立て、2月に入金(回収)という2Stepの記帳となる。銀行口座の履歴から取り込めるのは入金だけなので、表計算ソフトなどで請求書を作成した場合は売り上げの記帳は手入力となる。
スマート取引取込の連携先には請求書のサービスがある。今回は無料で請求書作成ができるMISOCAを使用して請求書を作成し、その情報をやよいの青色申告オンラインに取り込む方法で売り上げの記帳を行ってみた。
MISOCAは、請求書のPDF作成は無料だ。自分で印刷して郵送するなら費用は発生しない。郵送を依頼すると課金される仕組みとなっていて、法人向けの有料Webサービスで100社以上に請求書を郵送するときなどに便利なサービスだ。
まずMISOCAで「YAYOI SMART CONNECT」との連携を行う。自社情報などを入力した後、請求書を作成し「YAYOI SMART CONNECT」をクリックすると売り上げの情報がスマート取引取込に送られる。やよいの青色申告オンラインでスマート取引取込を開くと売り上げのデータが取り込まれる仕組みだ。
売掛金の入金データをスマート取引取込で取り込み記帳できていれば、入金は何も作業する必要はない。これで売り上げと入金の記帳は完了だ。
だが読者の中には、2015年の請求書は表計算ソフトで作成したから、さかのぼってMISOCAに入力するのは二度手間。銀行口座は前月の1日までしかデータ取得ができないから2015年の入金データはない。そもそも出版社に請求書を送ったことはないけど毎月原稿料は振り込まれている、という人もいるだろう。このように売り上げのデータも入金のデータも取得できない人は手入力しかない。
2014年にやよいの青色申告オンラインを試用した際は、売り上げを記帳するときに源泉徴収分も記帳する方式だったが、最新版では売上時、入金時、どちらでも源泉徴収の記帳に対応している。今回は、入金時に源泉徴収分を記帳する方法を紹介しよう。
かんたん取引入力で左側の収入をクリックし、「よく使う取引」で「原稿料の受け取り」を選択する。やよいの青色申告オンラインはフリーランス向けの選択肢や機能が豊富で、プルダウンメニューにはデザイン料、写真の報酬、イラスト代金……といった項目が並んでいる。
日付を記入し、取引手段は「売掛金」を選択。取引先名を入力する。ちなみに取引先は一度記帳すると登録され、次回はプルダウンメニューから選択できるようになる。反映されるのはここだけでなく、売掛金の補助科目としても登録される。やよいの青色申告16では初期設定で得意先の登録をしたが、やよいの青色申告オンラインでは、初期設定をしなくても都度登録が可能だ。今回は入金時に源泉徴収を処理するので、消費税を含む金額を記入し、「うち源泉徴収税額」のチェックを外し登録しよう。
次は入金時の記帳。「よく使う取引」に売掛金と入力し「売掛金の回収」を選択。入金日の日付、取引手段は入金された銀行、取引先はプルダウンメニューから選択する。銀行口座には税別の原稿料である1万円の10.21%=1021円が差し引かれた金額が入金されているはずだ。金額欄に税別の原稿料を記入し、「うち源泉徴収税額」にチェックを付けよう。源泉徴収税額が算出されたら、金額欄に戻って消費税分を加えて登録しよう。
仕訳の入力で確認すると3月31日に貸方が売上、借方が売掛金の記帳。4月30日に貸方が売掛金、借方が普通預金に実際に振り込まれた9779円、源泉徴収税として1021円と正しく記帳されている。
スマートフォンアプリを使えば外出先でも記帳できる
スマート取引取込、かんたん取引入力が主な記帳方法となるが、やよいの青色申告オンラインに新たに加わった記帳方法が、スマホアプリ「弥生 確定申告ソフト専用アプリ」だ。やよいの青色申告オンラインと同じIDでログインすると、スマートフォンから記帳することが可能となる。外出の多い人は、移動中やランチのときにも記帳ができるようになる。
例えばタクシー代を現金で支払った、切手を現金で購入した、といった現金の取引は、スマート取引取込から取り込むことはできない。そのようなときにスマートフォンから記帳しておけば、すき間の時間で記帳することが可能となる。
収入、支出どちらも記帳は可能。支出の画面を見ると勘定科目が並んでいるので旅費交通費→摘要にタクシー→金額と記入するだけだ。その結果は直接やよいの青色申告オンラインに反映される。
固定資産は登録を忘れずガッツリ節税しよう
売り上げと経費の記帳が終わればゴールは近い。次は固定資産の登録だ。固定資産の基礎的な話は「第3回・手入力と決算書、確定申告書の作成編」の、「固定資産の登録と減価償却の設定は2Stepと理解しよう」を一読され、「買ったことの記帳」と「経費にする方法の登録」の2Stepの意味を理解してから記帳することをお勧めしたい。
固定資産の登録はいつくかの入り口が用意されている。1つはかんたん取引入力。よく使う取引に「10万円」と入力すると「○○(10万円以上)の購入」という例が多数表示される。新規に登録をするときは、ここから記帳作業を始めればよいだろう。
すでにスマート取引取込で購入時の出金データが記帳されている場合は、左側メニューの高度なメニュー内の「固定資産の登録」から始めよう。固定資産の登録画面が開くと未確認の固定資産が表示される。スマート取引取込で10万円以上の資産を購入した際の記帳がここに反映されている。
固定資産の登録と減価償却方法を決定しよう。資産の種類は「固定資産」を選択。コンピューターなどは「工具器具備品」を選択。名称、台数を記入し償却方法の選択をしよう。青色申告をする人は30万円未満の資産を即時償却できる。30万円以上の資産は耐用年数で償却することになる。今回は即時償却を選択した。事業割合を確認し、登録をすると作業は終了。今回は青色申告の特典を使って全額を経費とした。
決算書・確定申告書は税の知識不要で簡単に終了する
いよいよ最後、決算書と申告書の作成だ。ここからゴールまではほとんど税金の知識はいらない。設問に答え、記入をしていけばわずかな時間で申告作業は完了するだろう。それくらい、やよいの青色申告オンラインは親切にデザインされている。
メインメニューの「確定申告」をクリックすると、手順が表示される。まずは申告する年が2015年分になっていることを確認しよう。続いて減価償却費の計算。すでに固定資産の登録が済んでいれば、ページを開いて「完了」をクリックすると減価償却費が経費に組み込まれる。
続いて青色申告決算書の作成へ進もう。上段の数字にそって作業は進む。最初は個人情報などの記入だ。配偶者控除、扶養控除が受けられる人は子どもの誕生日などを間違わないように記入しよう。家事按分は事業割合を記入するだけ。按分に関してもう少し詳しく知りたい人は「第3回・手入力と決算書、確定申告書の作成編」で確認しよう。その他経費は地代家賃の登録。家族や従業員を雇っていなければこれでほぼ終了だ。
入力が完了したら「青色申告決算書をダウンロード」をクリックすると、損益計算書、貸借対照表など4ページの決算書がPDFでダウンロードできる。印刷すれば完成だ。
次は確定申告書の作成。こちらも設問に答え、必要に応じ記入をしていこう。最初は個人情報や税務署名などを記入。続いて源泉徴収され納付済みの税額を、支払調書を見ながら記入。3番目は事業所得以外の所得があれば記入しよう。
所得控除の最初のページは該当する所得控除を選択する。次に進むと選択した所得控除の記入欄が表示されるので順番に記入しよう。社会保険料控除は国民年金や国民健康保険を記入。生命保険料控除は保険会社から送られてきた証明書を見ながら記入しよう。サラリーマンの年末調整では自分で計算する必要があったが、証明書どおりに記入すればやよいの青色申告オンラインが自動的に控除額を算出してくれる。極めて簡単だ。配偶者控除は奥さんの所得(収入-65万円)を記入すると配偶者控除か配偶者特別控除かを自動的に判断し正しい控除額が記入される。さらに決算書で記入した子どもの誕生日から扶養控除の額も自動的に記入される。
記入が終わったら「所得税確定申告書をダウンロード」をクリックすると、第一表、第二表がPDFでダウンロードできる。
これですべての作業は終了。印刷した決算書、申告書は確定申告受付会場に提出するか、管轄の税務署に郵送するか、e-Taxで送信しよう(事前手続きが必要)。確定申告の提出期間は1カ月あるが、終盤になると受付会場は混雑する。期限に遅れると青色申告特別控除の65万円を失うことになるので、すぐにでも準備を始め、早めに提出しよう。