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12月策定の「u-Japan構想」にみる総務省の将来展望


 CEATEC JAPAN 2004で6日、特別セッション「2010年ユビキタスネット社会の実現に向けて~u-Japan構想~」が開催された。講演者は総務省情報通信政策局総合政策課の和久屋聡課長補佐。12月に向けて策定中である「u-Japan構想」のあらましを解説するとともに、将来展望などを語った。


e-Japanからu-Japanへ

総務省情報通信政策局総合政策課の和久屋聡課長補佐
 講演冒頭ではまず、e-Japan戦略の現状が報告された。「2005年までに日本を世界最先端のIT国家にする」というこの戦略では、具体的な数値目標として、xDSLやCATVといった高速インターネットで3,000万世帯、FTTHに代表される超高速インターネットで1,000万世帯を常時接続可能な環境にすると設定し、すでに達成している。2004年の現段階でもADSLが3,800万世帯、FTTHも1,800万世帯が常時接続できる環境にあるという。

 このほかにも成果は多く、「ADSLの利用料金は3年で約3分の1になり、国への申請や届け出についても97%が電子化される見込み。インターネットを使った株式取引の割合も、売買代金ベースで約20%を占めるまでになった」と和久屋氏は説明。一定の成果が上がっていることをアピールした。

 ただし、ブロードバンド利用者層の中心が主に大都市圏に偏り、地方都市ではいまだADSLすら使えない地域があることも指摘。実際のインターネット利用率も、総務省調べでは停滞しているという。

 これらのことから総務省では2003年7月に「e-Japan戦略II」を策定。どちらかといえばインフラ整備に重点が置かれていた戦略を、ITの利用・活用も念頭に置いたものへと軌道修正させている。

 そして総務省では2004年12月、新たな構想をとりまとめる予定だ。和久屋氏が「通信インフラ面で日本は世界一となった。だが、このポジションをさらに維持していくために、中長期的ビジョンが必要になってくる。そのための構想だ」と力説する「u-japan構想」がそれだ。


社会問題の克服策をIT的視点から見出す

 u-Japan構想は策定前ということもあり、正式発表時には若干の修正があり得ると和久屋氏は前置きした上で、内容の解説を行なった。大筋では、2010年にあるべき日本のネット社会を標榜するもので、「ユビキタス」「ユニバーサル」「ユーザーオリエンテッド」「ユニーク」という4項目の実現を目的に各種施策を推進していく。

 具体的な将来像としては、デジタルテレビをインターネットのゲートウェイとする利用法や、遠隔地医療の実現、外出先から自宅の冷蔵庫内をチェックするという“いかにも”ユビキタスな例を挙げた。ただし、これらには意図があるとのことで、和久屋氏は「こうした技術はPCに詳しいユーザーや若者には既知であることも多い。ただし、それ以外の中高年層には、まだまだ知られていない。社会構造が今後、確実に少子高齢化に大きく傾くことを考え、あえて例示している」と補足。高齢者への配慮がユビキタスやIT分野でも必須になっていくことをうかがわせた。

 u-Japanでの行動指針は、主に有識者を集めての懇談会や、生活者からの声などをもとに決めていく予定だ。すでに「将来的に解決してほしい問題」を、IT分野に限らない生活全般の範囲から求めるアンケートを実施。特に要望の高かった「緊急時の安心・安全」「医療の安心・安全」「色の安心・安全」といった社会問題を、情報通信の技術でいかに解決していくか、そしてその優先順位はいかにすべきかを総務省では模索中であるという。

 また、便利な社会が実現することにともなって浮かび上がる影の部分、すなわちプライバシーの保護やセキュリティの確保という点についても、網羅的に調査・検討していく構えだ。最終的には、「ユビキタス時代に守るべき原則・規範などをまとめ、“憲章”という形で策定できれば」と和久屋氏は述べている。

 最後に和久屋氏は、「おそらく政府が主導しなくても、ユビキタス社会は実現されるだろう。ただし、関係する企業が利益を求める以上、いびつな状態になる可能性も高い。さまざまな意見を集約して、より理想的なユビキタス社会の実現を目指したい」と総務省の立場を語って講演を終えた。


関連情報

URL
  CEATEC JAPAN 2004
  http://www.ceatec.com/

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( 森田秀一 )
2004/10/06 18:43

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