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「35%取得で勝負あり」ライブドア問題を“切込隊長”山本氏らが議論

ライブドアによるニッポン放送買収問題をどう捉えるか

 「ライブドアがニッポン放送株の35%を取得した時点で勝負あった」「堀江氏がテレビというマスメディアのビジネスモデルを明らかにしたことは重要」。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)が25日に主催したシンポジウム「ライブドアによるニッポン放送買収問題をどう捉えるか」では、活発な議論が交わされた。

 パネリストは、国際大学GLOCOMの中島洋主幹研究員、同じくGLOCOMの岸本周平客員教授、メディア批評誌「創」の篠田博之編集長、IRIS経済研究所の中林美恵子研究員、首都大学東京の宮台真司准教授、“切込隊長”のハンドルネームで活躍するベルロックメディアの山本一郎シニアマネージャーの6名。司会は、GLOCOMの福冨忠和主幹研究員が務めた。


GLOCOMの中島主幹研究員 IRIS経済研究所の中林研究員 司会はGLOCOMの福冨主幹研究員が務めた

堀江氏はスリルを求めていたのでは~切込隊長が指摘

“切込隊長”のハンドルネームで活躍する山本氏
 「ライブドアがニッポン放送株の35%を取得した時点で勝負あった」と“切込隊長”山本氏は指摘する。

 「通常は50%を取得するまで公表しないものだが、ライブドアは公表した。どういうスタンスでメディアの買収に着手したのか。実際に堀江社長に話を聞いてもわからなかったし、本人もわかっていないと感じた。スリルを求めていたのではないかと個人的には考えている。ライブドアのニッポン放送買収から始まった問題だが、結果的にはフジテレビからライブドアに1,400億円の金が流れただけだ。」

 また、山本氏は国内マスコミの問題点として「新聞社がテレビ局を持っていることはどうなのか」と指摘。「米国では新聞社がテレビ局を所有するようなクロスメディアは明確に禁じている。イタリアを除くヨーロッパ各国も同様だ」という。

 その上で、ライブドア問題に関連して総務省の麻生太郎大臣が「民間企業の問題だからと突っぱねたしまったのは大きな失点だ」と批判。「放送メディアは国の資産を使った統治の1つ、ガバメントの1つだ。基本的には外資規制はすべきで、電波の公共性は国籍条項で守るべきだ」と主張する。

 「外資勢力に買収されないためにも、報道をはじめメディアがどういう機能をもっているのか明文化する必要がある。突っぱねてしまった総務省の前例ができてしまった。今のままではテレビ朝日やTBSも簡単に買収されてしまう可能性がある。」


ライブドア問題のおかげで、テレビのビジネスモデルが明らかに

首都大学東京の宮台准教授

GLOCOMの岸本客員教授
 宮台氏は「ライブドアによるニッポン放送の買収自体を評価することは避ける」とした上で、「広告収入を少数の旦那衆(主要局)で独占している」「記者クラブなどの制度で伝達報道のチャンスを独占している」とテレビのビジネスモデルの問題点が明らかになった点を評価するという。

 インターネット上では、参入制限のある地上波とは異なり無数にチャンネルがある。そのため、インターネットで広告収入や視聴時間という限られたパイを分配するには、地上波より多くのプレイヤーで分け合わなければならない。岸本氏は、「放送と通信が融合するとなれば、銀行と同じようにテレビ局従業員の給料を減らさなければならなくなるのではないか」と指摘する。

 従来型のビジネスモデルが崩壊する一方、「2時間10万円でインターネット上の番組は制作できる」(宮台氏)と「配信側のダウンサイジング」がインターネットの利点だ。ただし、山本氏は「大勢の人が無料で見られるという意味では、テレビの有効性がなくなってしまったわけではない。一般的な放送はテレビで、個人的な番組はインターネットの有料配信を利用するといったような住み分けが始まる」との見解を示した。

 メディアとしてのインターネットに関しては、宮台氏が「テレビや新聞でなく、インターネットでメディアが確立された時に、メディアとしての公共性は担保できるのか」と危惧。「言論の公共性が担保されないうちは、どんなに放送局や通信事業者の株主価値が高まっても船全体、つまり社会全体が沈没してしまう。そうなってはどうしようもない」。


「堀江氏の問題提起は良かったが、その後が続かなかった」

メディア批評誌「創」の篠田編集長
 メディア批評誌「創」の篠田編集長は「ライブドアは孤軍奮闘で、苦戦はしていたがフジテレビを相手にできていた」とし、これまでの絶対的なテレビ局のイメージを転換したという。

 「フジテレビがほかのテレビ局と異なり、政財界の要請で誕生したという特殊性を抜きにしても、テレビや新聞というマスメディアは制度疲労を起こしている。そこで、インターネットとメディアの融合が出てきた。マスメディアの転換期の予感はみんな持っていたが、そこに堀江氏がタイミングよく問題提起できた。」

 「問題提起までは良かったが、その後が続かなかった」と篠田氏。毎日新聞やフリージャーナリストの江川紹子氏によるインタビュー記事を例示し、「堀江氏は、ドラマのリンクから洋服が買えるなどと発言し、テレビの関係者は『チープな発想だ』と気持ちが引いたのではないか」という。

 「堀江氏の提案はタイアップと呼ばれる手法で、昔からやっていた。しかし、やりすぎるとドラマがチープになる。ソフトはどうやって人を感動させるかという点が大事。堀江氏の発言は、番組制作の経験の蓄積を一蹴したもので、商売人的な発想だ。」

 そんな篠田氏だが、「堀江氏の意見に賛同した」のは大マスコミによる情報の独占状態から市民に開放するといった考えからだという。実際にライブドアでは、パブリック・ジャーナリストとして一般市民による記者を登録し始めており、「できた記事はえらくお粗末だったと聞いているが、既存の記者クラブへの反論にもなり、評価する」という。

 「東芝クレーマー事件など、これまでマスコミがOKを出さなかったら採用されない事件がインターネットを通じて知られるようになった」とコメント。「プロ野球問題では本来、読売グループ批判になって当然だと私は考えているが、テレビ局の報道などではそういう流れにはならなかった。そこには放送する側にも切実な問題があるのではないか」とし、マスコミの資本関係に関して、議論の必要性があると強調した。


関連情報

URL
  ライブドアによるニッポン放送買収問題をどう捉えるか
  http://www.glocom.ac.jp/IECP/infoC_Tmp.html

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( 鷹木 創 )
2005/04/25 22:24

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