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政府の迷惑メール対策、法改正で違反業者摘発が増加


迷惑メールに関する政府の役割分担
 財団法人インターネット協会が28日に開催した「第4回迷惑メール対策カンファレンス」で、総務省や経済産業省の担当者が政府の迷惑メール対策の最新動向を紹介した。

 迷惑メールに関する政府の役割分担としては、総務省の「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(特定電子メール法)」が対象とする範囲と、経産省の「特定商取引に関する法律(特定商取引法)」が対象とする範囲に分けられる。主に、特定電子メール法ではメール送信者、特定商取引法ではメールで商品販売やサービス提供の広告をする事業者を規制している。


特定電子メール法改正で今後はさらに摘発件数は増える

総務省 総合通信基盤局消費者行政課 課長補佐の平松寛代氏

特定電子メール法の改正点
 総務省 総合通信基盤局消費者行政課 課長補佐の平松寛代氏は、1)政府による法執行、2)電気通信事業者による自主規制、3)技術的解決策――などのポイントから、総務省による迷惑メール対策を説明した。

 政府の法執行については、2002年7月に施行された特定電子メール法を紹介。同法では、受信者の同意を得ずに送信される広告宣伝メール(特定電子メール)について、その旨を表わす「未承諾広告※」という表示のほか、送信者の名称、住所、電話番号、送信拒否の通知ができる旨および通知を受け取るためのメールアドレスの表示を義務付けている。

 さらに、2005年11月には法改正が実施され、送信者情報を偽るなど悪質な迷惑メール送信者に対して、直接刑事罰を科せるようになった。法改正前までは、同法に違反した送信者に対しては、まず総務大臣が行政処分を出し、これに従わない場合に初めて罰則が適用されていた。

 迷惑メール送信者は、ほとんどが送信元情報を偽装して送信しているが、送信者情報をISPに開示させるためには警察の捜査令状が必要だった。このため、法改正前に行政処分が適用されたのは、簡単に身元が割れてしまう迷惑メール送信者だけで、行政処分の件数も4年間で4件にとどまっていた。

 しかし、法改正後は2006年5月には同法による初めての摘発が行なわれ、これまで送信者情報を偽った迷惑メール送信者を摘発した事例は3件に上る。「摘発の件数が少ないと思われるかもしれないが、迷惑メールは技術的に複雑で、警察も長い時間をかけて捜査する。総務省でも、摘発に至るまでに警察と何回も法解釈のやりとりを交わしている状況。そういった中で3件とという摘発数は、今後さらに増えると期待している」(平松氏)。


迷惑メール対策技術は「通信の秘密」を侵害せず、ISPを後押し

OP25Bや送信ドメイン認証を導入したISPは、迷惑メールが激減した
 電気通信事業者による自主規制については、まず2003年11月に携帯電話事業者とともに迷惑メール対策を検討。各社に対して、迷惑メール送信回線の停止や携帯電話発のメールの送信通数制限などの自主規制措置を要請した。

 さらに、携帯電話事業者から利用停止措置を受けた迷惑メール送信者が、他の携帯電話事業者に加入して迷惑メール送信を続ける、いわゆる“渡り”行為を防止するため、2005年10月には事業者間で迷惑メール送信者のブラックリストを共有する仕組みを策定。2006年3月より、携帯電話・PHS事業者間でブラックリストの共有が実施された。

 2005年2月には、経産省と連携して迷惑メール追放支援プロジェクトを実施。これは、総務省で受信した迷惑メールの違法性を確認し、当該メールに関する情報を送信元のISPに通知することにより、迷惑メール送信回線の利用停止措置などを促すことが狙いだ。

 このほか、技術的解決策については、「Outbound Port 25 Blocking(OP25B)」や送信認証ドメイン技術の法律的問題点を説明。これらの迷惑メール対策技術は当初、ISPが迷惑メールを排除することについて、電気通信事業法に規定されている「通信の秘密」を侵害するのではという議論があった。しかし、総務省では正当業務であるという見解を公表、「ISPがこれらの技術を導入することを促進した結果、迷惑メールの件数が激減した」(平松氏)とアピールした。


迷惑メール規制は「オプトアウト」から「オプトイン」へ

経済産業省 商務情報政策局商務流通グループ 消費経済政策課 課長補佐 の石塚康志氏
 経産省 商務情報政策局商務流通グループ 消費経済政策課 課長補佐 の石塚康志氏は、広告メールをめぐる問題への対応について説明した。

 石塚氏によれば、現在の広告メール規制では、広告メールの受信を拒否する意思を伝えた消費者に対して、一方的に広告メールを送りつけることを禁止する「オプトアウト規制」の形態をとっている。しかし、「拒絶意思をメールで伝えると、かえってそのアドレスに(別の業者からの)迷惑メールが集中する」ため、実効性が疑問視されているという。

 こうしたことから、消費者が広告メールの受信を事前に承諾しない限り、広告メールを送信することを禁止する「オプトイン規制」を特定商取引法に導入する方向で議論が進められているという。しかし石塚氏は、「正当な“パーミッション(許可)”とは何か?」という問題があると指摘。製品やサービスのユーザー登録画面で、「ダイレクトメールの受信を了承する」といったチェックボックスがデフォルトの状態で有効になっている例など、消費者からの承諾の取り方について整理する必要があると述べた。このほか、消費者が認めた承諾の有効期限などについても議論すべきだとした。


経産省では迷惑メール業者の規制まで手が回らない状況

 石塚氏によれば、特定商取引法では、メールで商品販売やサービス提供の広告をする事業者に対する行政処分は、経産大臣しかできない状況だという。しかし、「訪問販売やマルチ商法などリアルな世界の摘発で手一杯」であることから、迷惑メールの問題について「監視の目を増やすことが重要」と訴える。

 そのため、経産省では通販業者の規制権限を都道府県知事に任せる方向で作業を進めているほか、消費者団体が不当な通販業者に対して民事訴訟を提起できる「消費者団体訴訟制度」を、特定商取引法にも導入することについても検討しているという。石塚氏は、「経産大臣だけでなく、都道府県知事や消費者団体の(迷惑メールに対する)監視の目をベストミックスすることを考えるべき」と呼びかけて講演を締めくくった。


関連情報

URL
  第4回迷惑メール対策カンファレンス
  http://www.iajapan.org/anti_spam/event/2007/conf0528/index.html

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( 増田 覚 )
2007/05/29 15:08

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