ニフティとオーバルリンクは14日、@niftyビジネスセミナー「メディアからの解放~次世代型映像ビジネス考~」を開催した。インターネットの映像ビジネスについて、「Second Life」「交通広告」「著作権問題」を題材にした3つのトークセッションが行なわれた。
● 仮想空間はピュアなメディア
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「Second Lifeよりニコニニ動画が面白いという人もいるが、それは犬と猫を比べているようなもの」と話す神田氏(左)
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Second Lifeとインターネット初期の類似点
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Second Lifeを背景にした番組を準備中の神田氏。左が沢尻エリカに似せたアバター
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セッション1では、「仮想空間に流行るツボとは?」と題し、ビデオジャーナリストの神田敏晶氏、シャ乱Qのリーダー/ギタリストはたけ氏がトークを行なった。
神田氏は、Second Lifeを取り巻く2007年の状況について、「2000年のネットバブルに似ている」と指摘する。また、Second Lifeとインターネット初期の類似点を挙げ、「今のSecond Lifeは、『Mosaic』から『Netscape Navigator』が出てくる瞬間なのでは」と分析した。
はたけ氏は、Second LifeでSIM群「JapaLand」を運営している。Second Lifeについては、「『2ちゃんねる』のように、全くの匿名ではなく、ある程度の匿名性がありつつ、顔が見えて、自分の発言に責任が持てるところが良い。秩序を保ちやすいと思う」と話す。
Second Lifeの楽しさの1つとして神田氏は、アバター遊びを挙げる。自分そっくりのアバターと、沢尻エリカに似せたアバターの2つを使っているという。「女性アバターを作って人生が変わった。昔は、女性が服に合う靴やバッグを探す感覚がわからなかったが、今はよくわかる」と話す。
お気に入りの遊び方は、自分のアバターと沢尻エリカ似のアバターを一人で操作して、バーチャルデートを楽しむことだという。「これを聞いて引かれるかもしれませんが、新しいメディアを楽しんでいる人が“キモく”見えるのは重要なこと。最初のネットもそうだった」(神田氏)。
また、はたけ氏は、面白い人(アバター)がいるところに人は集まると話す。「企業が作った豪華な施設よりも、主婦がやってる喫茶店が人気だったりする。JapaLandに実際のカレー屋が出店し、人気スポットになっている。店のおばちゃんが面白くて、中には実際に会いたくてリアルな店に行った人もいる」という。
最近のSecond Lifeについて神田氏は、「人が増えことで、危ない面も出てきた。最初は、いろいろと物をくれる人がいて優しい世界だったが、今は貰ったものがウイルスなのではと心配することもある」と説明。一方で、カジノが廃止されるなど、怪しい場所は減ってきたという。
はたけ氏は、Second Lifeを含め、仮想空間について、「今のところ、ピュアなメディアだと思う」とコメント。従来のメディアでは、特別な手法、奇抜なアイディアを使わないと注目してもらえないが、「仮想空間では、作りたい物を丁寧に作れば、人は見てくれる」とし、アーティストならではの考えを述べた。
仮想空間の発展形として神田氏は、「Augmented Reality(AR)」を紹介。ARとは、専用のヘッドマウンテッドディスプレイなどを使い、現実の世界に仮想空間の情報を重ね合わせて見せる技術。「Second Lifeにはハマれない人でも、実際の生活に仮想空間が入れば、変わってくるのではないか」(神田氏)と語った。
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シャ乱Qはたけ氏
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Second Lifeにおけるヒットメイキング10も極意
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● 毎週5,000万人が見る車内映像
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ジェイアール東日本企画の山本孝氏
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セッション2では、「交通広告における『デジタルサイネージ』」と題し、ジェイアール東日本企画交通媒体局媒体開発部部長の山本孝氏が、駅・電車内の映像広告について説明した。
山手線・中央線・京浜東北線の車内モニター(ドアの上)に流れている映像は「トレインチャンネル」という名称で商品化されている。「街にある映像広告媒体の中で、日本で唯一ビジネス的に成功しているのがトレインチャンネル」だという。
トレインチャンネルは、2002年から山手線車両で順次導入を開始した。2006年からは中央線、2007年からは京浜東北線にも導入され、「すべて完了すれば、16,200面のモニターで毎日映像が流れることになる。毎週約5,000万人にリーチできる媒体」(山本氏)と説明。
動画はWMVとMPEG、静止画はBMPを使用。配信センターから、ネットワークを通じて、駅や車内にデータを送信する。車両伝送は、山手線・中央線がミリ波を、京浜東北線が無線LANを使用する。車内伝送は、中央線・京浜東北線がデジタル化されており、「山手線と比べると、圧倒的に画質が綺麗」とのこと。コンテンツは、ニュースや天気予報といったリアルタイム系が人気だという。
このほか、恵比寿駅で3月23日まで実証実験を行なっている自動改札機の電子ペーパーディスプレイや、Suicaと携帯電話を利用したインタラクティブ広告「Suicaポスター(SuiPo)」を紹介した。「インタラクティブ広告は他でも実験されているが、商品化しているのは我々だけ。春から設置駅が増えるので、目に触れる機会が多くなるだろう」(山本氏)。
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交通広告におけるネットワークメディア
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デジタルサイネージの定義
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デジタルサイネージの基本特性
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デジタルサイネージのネットワーク例
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トレインチャンネルの展開
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トレインチャンネル路線別の違い
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● 著作権法は前世紀の遺物
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データセクション代表取締役の橋本大也氏
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セッション3では、「映像ビジネス再構築とライツマネジメント」と題し、ジャパン・ライツ・クリアランス代表取締役の荒川祐二氏、ITジャーナリストの津田大介氏がトークを行なった。進行役はデータセクション代表取締役の橋本大也氏が務めた。
現行制度の問題点について津田氏は、著作権法がデジタル技術の進歩に伴い改正されてきた経緯を説明した上で、「技術進歩の速度に対して、法律は遅すぎる。パッチワーク的なものではなく、もっと大枠な法律を考えていく必要がある」とコメントした。また、荒川氏は、「著作権法は前世紀の遺物」と語る。著作権を管理する現場の考えとして、利用者と利用形態が多岐にわたったことで、現行法では対処しきれない問題が多いことを説明した。
未来像については、まず、野村総合研究所が発表した「クリエイティブ産業への変革シナリオ」を橋本氏が紹介した。このシナリオでは、新しいテレビの視聴方法やクリエイターの資金調達方法など“明るい未来”を描いている。これに対して、荒川氏は、「個々のコンテンツに対し、IDが割り当てられ、視聴回数などを管理できる仕組みが必要」とコメント。また、津田氏は、「このシナリオには、クリエイターを育てるという観点が少ない。明るい未来の前には、法制度の壁とは別に、クリエイターの壁もある」と指摘した。
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ジャパン・ライツ・クリアランス代表取締役の荒川祐二氏
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ITジャーナリストの津田大介氏
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関連情報
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@niftyビジネス
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( 野津 誠 )
2008/03/17 12:55
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