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著作権保護期間とフェアユースについて討論、think Cシンポジウム


 「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」(think C)のシンポジウムが30日、都内で開催された。今回のシンポジウムでは、文化審議会の小委員会の中間整理と、think Cが保護期間延長問題と創作・流通支援に関する有志提言をまとめたことを受け、これまでの議論と今後の著作権制度などについてのパネルディスカッションが行われた。


保護期間の延長反対と創作・流通支援を提言

30日に開催された「著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム」のシンポジウム
 think Cの有志提言については、世話人を務める弁護士の福井健策氏が内容を紹介。提言は、1)著作権保護期間は延長すべきでない、2)日本版「フェアユース」規定を速やかに導入する、3)流通・利用促進をはかる(公的報償システム、データベースの相互接続)、4)著作権だけに依存しない創作支援制度を創設・強化する――の4点を柱とするもの。9月11日に提言案として公表され、一般からの意見募集を経て、今回正式に提言としてまとめられた。

 提言では、著作権保護期間を延長しても経済的に利益が得られる作品は全体の1~2%程度に過ぎないという研究がある一方、著作権は相続人全員の同意が得られなければ利用できないため、保護期間が著作者の死後50年から70年に延長されれば許諾のためのコストが増えるとして、保護期間は延長すべきでないと結論付けている。

 福井氏は提言について、「保護期間の問題だけでなく、流通促進についてどのようなあり方が望ましいかということをまとめたもの。提言の作成は予想以上に難航したが、計81人と多数の賛同をいただいた」と説明。創作支援についても言及している点については、「クリエイターの置かれている状況は厳しいという意見もあるが、しかしそのために、本来著作権が担うべきでない役割まで期待されているのではないか。著作権の問題とは別に、支援制度が必要と考えた」と語った。

 提言のまとめに関わった酒井麻千子氏は、「様々な意見や衝突もあったが、その結果として出たものは誇れるものだと思う」とコメント。think C世話人の津田大介氏も、「提言はベストではないかも知れないが、これを叩き台にして議論をするにはベターなものではないかと思う」として、今後もこの提言をもとにさらに議論を深めていきたいと語った。


「フェアユースは次の通常国会への法案提出は難しい状況」と中山氏

ディスカッションの模様。(左から)津田大介氏、生貝直人氏、甲野正道氏、中山信弘氏、福井健策氏、松本零士氏
 続いて行われたディスカッションでは、まず登壇者がthink Cの提言についてコメントした。文化庁の前著作権課長で国立西洋美術館副館長の甲野正道氏は、「創作者はどのようなことを求めているのだろうか、制度や社会に何を求めているのだろうか、ということを考えながら提言の内容を聞いていた。世の中にはいろいろな立場で創作に携わっている方たちがいる。もし第2次の提言があるのであれば、さらに多くの人たちの意見を踏まえることで、より多くの人に受け入れられるものになるのではないか」と語った。

 東京大学名誉教授の中山信弘氏は、「提言は非常に結構なものだと思う。提言の中では、保護期間の延長については、少なくとも今年度はないと思われる。フェアユースについては、ぜひ次の通常国会で立法化してほしいと強く言ってきたが、それは難しいかなという感じになっている。少しがっかりしているが、仮に次の通常国会がダメでも、その次の通常国会がある。めげずに頑張っていきたい」とコメントした。

 漫画家の松本零士氏は、「権利関係がどうのこうのといったことは、創作者はあまり意識しない。自分の作品が公表されてそれが生活の糧となり、自分の信念を多くの人に共有してもらって、共に生きていきたいというのが創作者の願い。ただ、70年問題ということについては、世界の大勢がそうであれば揃えてほしいと思っている」とコメントした。

 司会を務めた津田氏は、「保護期間延長問題については、審議会の場などでもあまり議論が噛み合わなかったと思っているが、なぜそうなったのか」と問いかけた。これに対して甲野氏は、「あくまでも個人的な意見だが、具体的な政策を決めるという場では、それぞれの立場を貫くと噛み合わないのは、著作権に限らずある意味では当然かなと思う。ただ、お互いの意見を90%ぐらい実現させるにはどうすればいいかといった話し合いがあれば、まとまったのではないかとは思う」と語った。

 一方、福井氏は「この問題については、最初から歩み寄って妥結しなければいけない話だったのかと思う」とコメント。「国際的に統一してほしいという話もあるが、統一ルールとしては既にベルヌ条約がある。それを変えたのは欧米で、それは自国の国益につながるから。もし本当に国際標準が必要であるというならば、そうした国際標準を決める場で議論すべき」と語った。


 フェアユースについては、中山氏が「現在ネット関連の新しいビジネスを行おうと思えば、多くは著作権侵害にぶつかってしまう。ネットビジネスは資源の少ない日本にとって大切な産業で、コンテンツがうまく回らなければ権利者にも還元できなくなる。なんとしてもいまフェアユースを導入すべきだと考えている」と主張した。

 これに対して甲野氏は、「フェアユースは、柔軟に世の中の動きに対応できるのはいいことだという印象を持っているが、(著作権法には)刑事罰もあるので規定が難しいのではないか。フェアユースは公的な目的には有効だと思うが、産業発展のためという点については疑問が残る。せめて報酬請求権だけは残すとか、よく議論をしなければいけない。時間がかかってもやむをえないかと思う」と語った。

 司会を務めた津田氏は、「今回は保護期間延長は見送られる形になったが、そんなに簡単に結論が出る問題ではないと思う。この問題については、think Cというオープンな場で議論することで、関心を多く集めることができた。次世代の施策はこうした議論から生まれてくると思うので、これからも輪を広げていきたい」と述べ、シンポジウムを締めくくった。


関連情報

URL
  著作権保護期間の延長問題を考えるフォーラム
  http://thinkcopyright.org/

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( 三柳英樹 )
2008/10/31 16:57

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