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技研公開2009
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東京都世田谷区のNHK放送技術研究所(NHK技研)で、放送技術に関する研究成果などを展示する「技研公開2009」が開催される。一般公開は21日から24日までで、入場は無料。「テレビの進化は止まらない」をテーマに、最新の研究成果37項目を展示する。
一般公開に先駆けて、19日にプレスプレビューが開催された。NHK技研の久保田啓一所長は今年のテーマについて、「本格的なデジタル時代、放送と通信が融合する時代においても、常にテレビは新しいサービスを提供するメディアの中心にいたい。これからも進化と脱皮を繰り返していくという気持ちを込めた」と説明する。
会場入り口付近では、「放送をもっと身近に、未来の技術」と題した展示を行う。既に提供している「NHKオンデマンド」をはじめ、「高度衛星ダウンロード放送」「メタデータを使った検索型視聴スタイル」などを紹介。同じく1階フロアでは、「クローズアップ地デジ」コーナーを設け、「家庭用受信機向け干渉除去技術」「緊急地震速報による受信端末の自動起動」などを紹介する。
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NHK技研の久保田啓一所長
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NHKオンデマンドのブース
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また、今回の目玉として、NHK技研と情報通信研究機構(NICT)が共同で行っている「WINDS衛星によるスーパーハイビジョン伝送実験」を展示する。北海道で撮影されるスーパーハイビジョン(SHV)映像を、NICT鹿島宇宙技術センターおよび超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)を経由して会場で生中継するもの。NHK技研の玄関前に2.4mアンテナ受信局が設置されているほか、会場内に広帯域復調器やSHV複合装置などが並ぶ。
久保田所長は、「スーパーハイビジョンはNHK技研の今後10年の開発において、フラグシップ的位置付け」と話す。スーパーハイビジョン関連の展示では、スーパーハイビジョンシアターでフル解像度3板プロジェクターで新作映像を上映するほか、フル解像度3板式スーパーハイビジョンカメラの試作機や、フル解像度信号をファイバ1本で伝送できる光インターフェイスなどを紹介。フル解像度3300万画素映像素子を使ったプロジェクターやカメラの展示は今回が初めてになるという。
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2.4mアンテナ受信局
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WINDSによるSHV伝送実験で使用する機器
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WINDSによるSHV伝送実験の構成図
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スーパーハイビジョン関連技術は、地下1階の展示ゾーン「放送の未来」で紹介している。地下1階ではこのほか、「豊かなサービス」と題して、放送と通信の融合を見据え、PCや携帯電話などさまざまなデバイスで映像を楽しむための技術を紹介。「Javaデータ放送」「オーバーレイネットワークによる放送配信システム」「ネットワークを利用した放送サービスのための暗号・認証技術」などを展示する。
さらに、21日と22日には今回の展示内容に関連した講演や研究発表も行う。23日と24日には、一般向けにNHK技研職員が展示を解説するツアーガイドも実施する。
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NHKの福地茂雄会長
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19日に行われたオープニングセレモニーにおいて、NHKの福地茂雄会長は、「NHK技研は1930年に設立された。設立の目的は、1940年の東京オリンピック招致を見据えて、テレビ放送の技術開発を行うためだった。1940年のオリンピックは太平洋戦争が始まったことで幻になってしまったが、2008年の北京オリンピックで、NHK技研が開発した技術によって、世界へのハイビジョン映像中継が実現したことは感慨深い」と語った。
また、「昨今、視聴者の放送および映像文化に対するニーズは多様化しており、そのような時代においてNHK技研が果たす役割は大きい」としたほか、「研究成果はNHKの放送だけに役立てるのではなく、広く社会一般に普及し、日本の放送の発展に寄与する役割も果たしてきた」と説明。「2009年の技研公開はNHKの3カ年計画の趣旨である『いつでも、どこでも、もっと身近にNHK』を実現するための技術。2年後に控える地上波デジタル放送への完全移行を支える技術。さらには、未来のスーパーハイビジョンなどもろもろの技術を紹介する」と述べた。
関連情報
■URL
技研公開2009
http://www.nhk.or.jp/strl/open2009/
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( 野津 誠 )
2009/05/19 20:46
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