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2006年中国インターネット事情
第3回:2006年中国インターネットの話題を総ざらえ


 第3回では、2006年の締めとして、筆者の印象に残った2006年の中国のインターネットをめぐる話題をまとめてみた。ざっと目を通していただければ、なんとなくかもしれないが、2006年の中国のインターネットが見えてくるだろう。


中国Web2.0元年。YouTube似のサイトが急増

中国の動画共有サイト「UUME」
http://www.uume.com/
 2005年はブログが認知され始めた年となったが、2006年は動画共有サイトのUUME< http://www.uume.com/ >や、SNSサイトの51.com< http://www.51.com/ >、雑誌をめくるように読めるリッチな見栄えの無料オンラインマガジンを提供するサイトなど、Web 2.0的なサービスを提供するサイトが多数開設された。百度もWikiサービス「百科」や、ブログサービス「空間」のようにWeb 2.0的なサービスをいくつか開始しており、いよいよ中国もWeb 2.0元年かと感じる年であった。中でも、YouTubeをお手本にしたような動画共有サイトが多数開設されたのが印象的だ。

 また、これらWeb 2.0的サイトの台頭により、Alexaでの中国での順位に異変が起きた。前述の51.comやUUME、それにUUMEの運営元が別に運営するMOPや迅雷などのサイトがAlexaで上位にランクインした。

 Alexaの順位といえば、長年中国のサイトのトップを維持してきた中国3大ポータルサイト(新浪、捜狐、網易)が、2005年は百度にトップの座を譲ってしまい、2006年はチャットソフトQQのポータルサイト「QQ」に2位の座も譲ってしまった。従来のようなポータルサイトは、2007年にはさらに別のサイトに人気を取って代わられるのだろうか。

 YouTube似のサイトやサービスが増えたことで、日本と同様に、中国でも動画ベースでの、いわゆるネタ動画の投稿が急増した。ネタ動画の中には、中国の著名映画から政治歴史までさまざまな題材をネタの題材もあったため、中国政府当局が「悪ふざけがすぎる」と怒りのコメントを出したり、中国電信の子会社が動画共有サイト封鎖令を発表するなどの動きもあった。

 中国のリサーチ企業である易観国際(Analysys International)が発表した「中国Web2.0市場年度総合報告2006」によると、Web2.0サービス市場は、2005年に7,100万元(約10億6,500万円。1元=15円で計算)であった。同社は2006年には1億6,500万元(約24億7,500万円)、2007年には5億1,800万円(約77億7,000億円)、2008年には21億4,400万元(約321億6,000万円)になると予測している。


中国政府、オンライン上の海賊版取締りを強化

 2006年は従来に比べて、中国政府当局によるネットカフェや、サーバー内の海賊版コンテンツの取り締まりが多かった。これで充分かというと、まだまだこれからなのだが、蔓延する海賊版コンテンツに対する取り締まりが強化されたことは評価できる。

 具体例を挙げると、10月には中国国家版権局主導で、中国主要都市に置かれるサーバー内の海賊版コンテンツの摘発が、また中国文化部主導で、ネットカフェの提供する海賊版コンテンツの摘発と中国の正規版コンテンツベンダーのリスト提示が行なわれた。

 また、7月には「信息網絡伝播権保護条例(情報ネットワーク伝播権保護条例)」という、著作権があるニュース記事コンテンツなどを勝手に拝借して利用してはいけない、拝借するなら引用元を記事中に明示せよ、という内容の条例も施行されている。

 実際に、これらの法律により取り締まりを受けたという話はあまり聞かないが、後者の信息網絡伝播権保護条例施行後は、多くのネットメディアで引用元の記載を見ることができるようになった(もっとも、無断で他人の記事をあたかもオリジナル記事であるかのように掲載する例はまだまだ多い)。

 国際レコード連盟は、mp3などの検索に特化したサービス「百度mp3捜索」が著作権違反だとして、2005年に百度を提訴したが、2006年はヤフー中国を著作権違反で訴えた。台湾で同じく著作権違反で2005年に訴えられたサイト「kuro」の姉妹サイトの中国版kuroも閉鎖し、合法コンテンツでの再スタートを切る。その他にも、国際レコード連盟はいくつかのサイトを著作権法違反で提訴したが、中国の動画共有サイトでは現在でも、中国で人気の日本のアニメがアップされているし、J-POPも音楽配信サイトでアップされている。2007年には日本も、国際レコード連盟のように中国の著作権侵害サイトや中国のインターネット利用者に著作権の保護をアピールしてほしいと思う。


オンラインショッピングサイトが急成長

 中国におけるオンラインショッピングは、2005年から2006年にかけて都市部を中心に急激に普及した。「易観国際」の調査結果によると、2004年までの取引総額は数十億元程度であったが、2005年には100億元(約1,500億円)を超え、2006年には200億元(約3,000億円)を超えた。「易観国際」では、2010年までの4年間に、取引総額は年平均80%近い数字で増加し、2010年には627億元程度になると予測している。

 中国では、大都市と小都市、沿岸部と内陸部で普及率に差はあるものの、インターネットは浸透していると言っていいだろう。しかし、オンラインショッピングに関しては、利用は北京、上海とその周辺、広東省の経済的に発達した地域に限られている。今後、中都市や小都市へと利用者が拡大すると考えれば、前述の「易観国際」による予想も現実味がある話といえる。また、将来予想通り普及すれば、インターネット利用によって流通形態が大きく変化するかもしれない。

 中国のオンラインショッピングサイトでは淘宝網< http://www.taobao.com/ >が最も人気があり、次いで人気なのがeBay中国< http://www.ebay.com.cn/ >だ。この2サイトで取引の大半をカバーする。

 また中国では、オンラインショッピングの普及に合わせて、オンラインでの支払い方法も普及した。オンラインでの支払い総額は、2005年の164億元から2006年の330億元へと急増している。中国で最も普及する「支付宝」という名のオンライン支払システムの利用者は、2006年6月で2,000万人を記録した。その一方で、オンラインバンキングのアカウント情報を狙ったフィッシング詐欺やウイルスなど、オンラインショッピングにまつわるネット詐欺も急増した。


ヘビーユーザーが見守った「悪意のあるソフト」の行方

 2006年後半は、「流氓軟件(ならずものソフト) 」や「悪意軟件(悪意のあるソフト)」という言葉がインターネットについてのニュースメディアで誌面を賑わせた。「流氓軟件」と「悪意軟件」は同じ意味で、これが問題視された当初は前者の名前で呼ばれていたが、インターネットのヘビーユーザーが団結し「反流氓軟件聯盟」を結成し、リリース元を相手に裁判沙汰にしたり、メディアに訴えたり、CNNIC(China Internet Network Information Center)に直談判したりしているうちに、CNNICが流氓軟件をさらに悪いイメージの悪意軟件に改名したという経緯がある。

 CNNICによれば、「利用者の許可なく強制インストール」「アンインストールが容易にできない」「悪意を持って個人情報を収集する」「利用者の許可なくポップアップ広告を表示」「ブラウザ使用時に強制的にあるサイトをホームページにする」などの条件に1つでも当てはまれば、それは「悪意軟件」に該当するという。

 この定義によれば、「悪意軟件」をリリースしたのは中小企業だけではなく、ヤフー中国や百度などの大手サービス事業者、それにCNNIC自身も含まれている。反流氓軟件聯盟は、ヤフー中国や、B2Bサイトの雄「アリババ」など複数の企業を提訴している。

 ユーザーレベルで反流氓軟件聯盟を結成したほか、この動きを見たポータルサイト同士も反悪意軟件で団結し、悪意軟件に認定されたソフトについて強制アンインストールできるツールをリリースした。また、反悪意軟件のために寄付を募るポータルサイトも現われた。


ブログの普及で個性的なブロガー続々登場。行き過ぎで祭りへ

 中国では2006年はブログがより一層普及した年となった。百度の調査では、中国語のブログ数は5,230万で、中国のブロガーは1,987万人という数字が出ている。ブログの多くが他メディアのニュース記事の引用のようだが、中にはたくさんの人の興味を引くセンセーショナルなブログも登場してきて話題になった。

 たとえば、あるブロガーは個人のプライベートを赤裸々に語り尽くして話題になり、あるブロガーは過去の異性との遍歴を書き、またあるブロガーは徹底的な外人崇拝中国人異性叩きなどを繰り広げる――日本でいえばワイドショーで取りあげられそうなネタを材料に、こうしたセンセーショナルなブログは多くの読者を集めた。こうした過激な内容のブログは、時にはネットメディアでニュースとして取り上げられ、読者同士による賛否両論の論議が行なわれた。

 行き過ぎて完全にNGとなったブログもある。2006年2月、あるブロガーはブログで猫を公開処刑する写真付きの記事を公開した。このブログ記事は瞬く間に知られるところとなり、まるで2ちゃんねるの祭りのように、読者が一体となってそのブロガーの本名や職歴学歴、それに自宅の場所を探し当ててブロガーを叩いた。日本における、2ちゃんねるの祭りと同じような反応や行動が見られたのは、筆者が知る限り、この事件が初であった。

 また、あるブロガーは他人の中傷記事をブログ上で公開し裁判沙汰になった末に敗訴した。裁判中、この裁判を知った多くのネットユーザーが被告のブロガーを中傷したため、被告となったブロガーは、敗訴後に原告に対しネットで中傷されたことについての裁判を起こしている。

 こうした状況だからか、ブログ実名制導入についての研究会が政府関係部門で行なわれた。ブログ実名制導入の研究会のニュースは、中国人ブロガーからは賛否両論となったが、導入前提の研究会のため、近い将来ブログ実名制が実施されるだろう(インターネットとは直接関係はないが、実名制といえば、携帯電話の登録も近い将来実名制となるようだ)。

 このほか、ブログ関連の話題としては、3月に中国のブログ女王「徐静蕾」のブログ「老徐的博客(徐さんのブログ)< http://blog.sina.com.cn/m/xujinglei >」が書籍化されて話題となった。今後中国でもブログ本がビジネスとなり、2007年には次々にブログ本が出版されることになるのだろうか。


2006年末のインターネット利用者は1億3,000万人台か

 CNNIC(China Internet Network Information Center)の統計によると、2005年末から2006年6月まで約半年の間に、インターネット利用者は1億1,100万人から1億2,300万人へと増加した。また、ブロードバンド環境の普及によって、ダイヤルアップ接続利用者が減少を始めた。2006年末の状況を把握するには、そらく2007年1月発表の統計を待つしかないだろうが、今までと同じ発展スピードなら、2006年末でのインターネット利用者は1億3,000万人台、ブロードバンド接続でのインターネット利用者は8,000万人台となり、2007年はさらに利用者は増えることだろう。

 最後に、中国におけるインターネットの普及ぶりがうかがえる余談をひとつ。今年、中国で唯一公道が走ってない、チベット自治区の墨脱県にネットカフェができた。このニュースを聞く限り、もう中国のほぼ全てのエリアで、ネットカフェがあってもおかしくはなさそうだ。


URL
  山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/column/m_china/
  山谷剛史の海外レポート
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/others/travel/060126/

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第2回:中国の有力ネット企業とそのサービス(2006/12/26)



( 山谷剛史 )
2006/12/27 13:17

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