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やじうまWatchで振り返る2007年(後編)

初音ミク、4カ月の軌跡 ほか

 やじうまWatchで2007年の出来事を振り返る企画の後編。前編では、「増田」さんの愛称でお馴染みの「はてな匿名ダイアリー」や、ネット発の事件などを紹介した。後編では、やじうまWatch内で今年最も話題に上った「初音ミク」の話題を中心に2007年を振り返る。


Wiiリモコン

 やじうまWatch内で今年一番注目を集めたゲーム機は、任天堂の「Wii」。というか、Wiiリモコンだ。去年の暮れのデビュー直後には、ユーザーが設計の想定外に強く振り回してストラップが切れ、モニターに飛んでいって壊す事故が続出していた。ただし、リモコンが飛んだとブログに書けば炎上するし、やじうまWatchでも紹介するとすかさず、任天堂ファンの皆さんからネットで「めたるまんはGK!」とレッテルを貼られてしまった(2006/12/04)。Wiiリモコンを紹介するのも命がけだ。

 Wiiリモコンは見かけによらずたいへんな性能の持ち主で、簡易型とはいえバーチャルリアリティのセンサーにもなるほどだ(2007/12/25)。センサーバーの中身は単なるLEDのようで、自作も容易。安価にどこでも手に入るために、PCの実験用入力デバイスとしてリモコン単独でも重宝されていた。

 スティック状のシンプルな外観から、いろいろと付け加えて改造されることも多かった。Wii Sports向けに、ラケットやゴルフクラブを模した簡易なアタッチメントもすぐに出回った(2007/01/09)。レーシングゲームで使うため、子供用の木馬に装着して、乗った子供が体を傾けて操作する様子をとらえた映像もあった(2007/11/28)


初音ミク、4カ月の軌跡

「初音ミク」のパッケージ画像
 今年最大の話題は、なんといっても「初音ミク」の登場だろう。やじうまWatchでもしつこいほど話題にしたのだけれど、これでも掲載できなかった出来事も多かった。初音ミク専門の情報ページになってしまってもよかったと思えるほど、興味深い話題が毎日のようにあふれ出ていた。

 このバーチャル歌手ソフトの発売日は8月31日。実売価格は16,000円前後と、今どきのパッケージソフトにしては結構な金額だ。それが、発売直後から売り切れが続出、入手困難になってしまった(2007/09/06)

 PCで音楽を作り出す「DTM」は、音楽の才能もさることながら、たいへんな根気も必要な作業になる。何しろ、各楽器の発音を、1音ずつデータとしてコントロールしなければならないからだ。初音ミクもDTMのためのソフトだから手間は変わらない。発売初期に買い込んで、思い通りに使えずに挫折してしまった皆さんも多かったようだ。難しいという評判が広まるなかでも、初音ミクのパッケージは、DTM用ソフトとしては異例の売れ行きが続いていたのだから、魅力のほどがわかる。

 初音ミクのユーザーが急激な勢いで増えてくると、さまざまな現象を引き起こしながら、隠されていた問題点をあからさまにしていくことになる。

 初音ミクが発売されてから1カ月近く経った頃、「ニコニコ動画」に投稿された曲「Packaged」がたった24時間でアクセス7万件以上にもなったことがあった(2007/09/26)。作者は、それまで無名だったアマチュアのクリエイターだ。ニコニコ動画ではおなじみの、画面を飛び交うコメントは、曲を絶賛するものばかり。10月には「ハジメテノオト」「celluloid」が公開された(2007/10/23)。既存の著名曲ではない、アマチュアが創作した曲が初音ミクをボーカリストとして制作、数多く公表されて、それを楽しむファンが急激に増えるといった現象が起こった。ニコニコ動画にあるオリジナル曲は、11月初め頃には115曲だったものが、現在では470曲以上に増えている(2007/11/06)

 初音ミクのボーカルで公表された曲、そのカラオケにアマチュアのボーカリストが歌を重ねて公開する例もあった。また、曲にあわせて作られた、3DCGの映像も数多く公開された(2007/10/09)。初音ミクが長ネギを振り回す、自作のDSソフトも登場(2007/10/23)。こういったアマチュア同士の「二次創作」が繰り返されたことで、曲や、初音ミクのキャラクターを、オリジナルから大きくふくらませることになった。


 これだけ大きなムーブメントになれば、マスコミも取り扱うようになる。露出が増えるなかで起こったのが、TBS「アッコにおまかせ!」での問題だ(2007/10/16)。1分半ほどの映像にまとまったものは、初音ミクをまともに紹介することなく、初音ミクファンを嘲笑するような調子の内容だった。これに対する抗議の声がネットにあふれたが、TBSのスタッフにだまされるように取材を受けた、初音ミク発売元のクリプトン・フューチャー・メディアがなぜか謝罪することになってしまった。

 続いて起きたのが、Google画像検索の問題だ。「初音ミク」で検索しても、関連の画像が結果にまったく表示されない現象が起こっていた。ネットにはすでに初音ミクの画像はあふれかえっていた状態でのこの現象は不可解なものだった。マイクロソフトの検索サイト「Live Search」では正常な結果だったから、いままでGoogle一辺倒だった検索サイトの利用者が、ほかの検索サイトに目を向けるきっかけともなった。

 同じ頃、Wikipediaにあった初音ミクの項目が削除されていた。理由は、項目の編集が始まった初期の段階で、初音ミクの公式サイトからテキストが、引用元の表記なしでコピーされていたのがわかったためだ。この削除は、Wikipediaの手続きとしては正常であったものの、タイミングがGoogle画像検索の問題と重なってしまったこともあって、ネットでは「これは電通の陰謀」との主張が出現した(2007/10/18)

 ここまで、ニコニコ動画との相乗効果で盛り上がってきたムーブメントに、冷や水を掛ける出来事が起こった。最初期のヒット曲「みくみくにしてあげる♪」がJASRACの管理楽曲として登録されたのだ(2007/12/19)。しかも、アーティスト名が曲の作者ではなく「初音ミク」となっていた。

 これが問題となって、およそ1週間にわたってネットは騒然となった。JASRACに登録したのは、ニコニコ動画と関係の深い、ドワンゴの音楽出版子会社。着うたやカラオケ販売のための措置だったようだが、着うたの宣伝文句に「独占」との文字があったために、初音ファンから大きな反発が起きた。初音ミクの発売元とドワンゴ子会社がネット上でコメントを応酬する事態になってしまった。

 結局、アーティスト名は曲の作者のペンネームに変更された。その後、両社は和解、共同コメントを発表した。この騒ぎが直接影響したのかは不明だが、21日にはドワンゴの株価が前日終値に比べて12%下落。ニコニコ動画に関わりの深いひろゆきさんは、24日に初音ミクを使って「きよしこの夜」を公開した。

 以上、初音ミク誕生からたった4カ月間の軌跡を追いかけてみた。


いろいろ

 その他、上記までのテーマに当てはまらなかった、気になるものを時系列で挙げておきたい。

 ソニー発の情報は当てにならない、という意味の「※ただしソースはソニー」が流行する(2007/01/31)

 Xbox 360のゲーム「アイドルマスター」のキャラクターが、ゲーム中にステージで歌うシーンをニコニコ動画にアップロードすることが流行。舌足らずに「とかちつくちて」とこぶしを回しながら歌う、声優の下田麻美さんが「ロリ演歌」だと人気に(2007/02/16)。後に、初音ミクと同じ「VOCALOID2」シリーズの第2弾「鏡音リン・レン」の声優として登場することに。

 TBSがネット掲示板をねつ造して放送したことへのいいわけから、「※イメージです」が流行(2007/03/15)

 東京都知事選に立候補した、外山恒一候補の独特な政見放送がYouTubeに転載されて高アクセスになる(2007/03/27)。落選はしたものの、ネットでの選挙活動は金を掛けずに効果的にできることを知らしめて、現状に一石を投じることに。

 Twitterの流行(2007/04/11)。膨大な人数をフォローして、大量のテキストを脳内にたたき込む使い方をしている人がいる。多くの人に広まったというより、ヘビーユーザーがますますヘビーに使う、といったところ。

 アニメキャラを自動車のボディにペイントする「痛車」を、Xbox 360のレーシングゲーム「Forza2」の中で、なかば無理矢理実現してしまうことが流行(2007/05/29)。日本人が作ったみごとな痛車を、米国人がほしがる様子もあった(2007/06/01)

 土鍋にネコが入り込む動画「ねこ鍋」がニコニコ動画で人気を集めた(2007/08/09)。のちに、テレビで取り上げられ、書籍やDVDになる。12月には、牛丼の持ち帰り用のどんぶりに、子ネコが入り込む「ねこ丼」も登場した(2007/12/25)

 伝説のくそゲー「チーターマン」のBGMが、おしゃれな曲「チーターガール」に変身(2007/11/14)。凝った「コメントアート」もあって、ニコニコ動画で人気を呼んだ。

 タッチパッドとダイヤル、数個のボタンのみで演奏する、電卓サイズの電子楽器「Kaossilator」が人気に(2007/12/05)


2008年に向けて

 今年、初音ミク周辺が掘り起こしていった、潜在的な問題の数々。掘り起こしただけで、根本的には解決していないものも多そうだ。これがきれいに片付くのか、また埋め戻されるだけなのか、今後の動向が興味深いところだ。

 プロが作った著作物のネットでの違法流通に圧力がどんどん加わる一方で、アマチュアが創作したさまざまな作品が出回り、さらに二次創作の手が加わり、派生も含めたバリエーションを鑑賞して楽しむ皆さんがものすごい勢いで増えたのも今年の特徴だろう。違法流通への規制が完璧になったはいいが、プロ作品のオーディエンスが激減なんてことにならなければいいが、とよけいな心配をしている筆者だ。


関連情報

URL
  やじうまWatch
  http://internet.watch.impress.co.jp/static/yajiuma/

関連記事
やじうまWatchで振り返る2007年(前編)(2007/12/26)


( めたるまん(山崎一幸) )
2007/12/27 10:55

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