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理論編:その1
訪問者数はそのままで、売上が倍に?
[12:52]

実践編:その3「BBソフトダイレクト」


 Webサイトのユーザビリティを、実例を基にわかりやすく紹介する「実践! Webユーザビリティ研究室」。今回は実践編の第3回として、ソフトウェア配信サイト「BBソフトダイレクト」を取り上げます。


ソフトをストリーミングで配信し、月額料金で利用できるサイト

BBソフトダイレクトのトップページ。各種ソフトが月額料金制で利用できる
 今回取り上げるのは、BBソフトサービス株式会社が運営する「BBソフトダイレクト」です。

アンチウイルスソフトやバックアップソフトなど、各種ビジネスソフトからゲームに至るまで、さまざまなソフトをストリーミングで配信し、月額料金制で利用できるというサイトです。

 パッケージ販売されている著名なソフトも多数ラインナップされており、「パッケージソフトを買うほどではないが、フリーソフトなどでは物足りない」という需要をピンポイントで埋めてくれる、非常に興味深いビジネスモデルになっています。

 さて、本サイトは「窓の杜」に代表されるオンラインソフト配布サイトと同様、ソフトを検索して探し、気に入ったものを見つけたらダウンロードするという仕組みになっています。ライセンス管理のシステムが導入されている点を除いては、ユーザーにとって馴染み深いインターフェイスであると言えます。


タブ切替方式のオーソドックスな構造。被験者の動きも迷いなし

 まずはトップページの構造から見てみましょう。

 ページの上部にはソフトウェアのジャンルを切り替えるタブが存在しており、メインとなる「ゲーム&アプリケーション」のほかに、「セキュリティ」「バックアップ」「モバイルアプリケーション」といったカテゴリが、タブで切り替えられるようになっています。

 今回のユーザーテストでは、たとえばセキュリティソフトを探す課題においては、被験者はきちんと「セキュリティ」のタブをクリックするといった具合に、タブの存在および使い方が正しく認識されていることが確認できました。デザイン的には隣のタブに文字が若干かぶっているのが気になりますが、実用上の問題になっているかというと、そういうわけではなさそうです。

 また、「ゲーム&アプリケーション」タブの下段には、細分化されたカテゴリの一覧が表示されています。こちらについても、多くの被験者は問題なくカテゴリを見つけ、使いこなしていました。コンサルタントによる事前調査の段階では、上部にある「タブ」とページ下段にある「カテゴリ」について、ユーザーがきちんと区別できなかったり、カテゴリ欄を見つけにくい可能性が指摘されていたのですが、結果を見る限りではこの心配は杞憂だったようです。

 もちろん、階層構造的には「タブ」「カテゴリ」を統合し、わかりやすいメニュー体系にするのが望ましいのですが、そのためにはサイトの全面的なリニューアルが必要になってしまいます。プライオリティがそれほど高くないのであれば、当面はこのままにしておき、重要度の高いほかの問題点の修正に注力するほうが、コストの面でも有利ですし、成果が出るまでのタイムラグも短くなります。

 このように、実際のユーザーの反応を通じて問題点の格付けができる点も、ユーザーテストのひとつのメリットであると言えます。


ECサイトでは検索・絞り込み・並び替え機能が重要

 次はトップページ以下、ソフトウェアを検索する導線について見てみましょう。

 「カテゴリから検索」の各分類をクリックすると、ソフトウェアの一覧ページが表示されます。上部には小カテゴリが一覧表示されており、ユーザーはここをクリックして商品を絞り込んだのち、表示件数を変更したり、並び替えを行いつつ、目的のソフトウェアを探すことができます。

 本サイトをはじめとするEC系のサイトでは、数多くの商品の中から自分が求める商品を絞り込むための機能、並び替えるための機能の使い勝手が、実際に購入を左右することが多々あります。本サイトではこれらの機能がきちんと実装されており、被験者の評価も上々でした。訪問者がスムーズに商品を探せるサイトである、と言えるでしょう。

 あえて指摘するとすれば、ページ数の表記が「1/5ページ」としか表示されておらず、商品の一覧を見ていく際、順めくりしか行なえないことでしょうか。多くのサイトでは、任意のページにジャンプできるようリンクが設定してあるほか、最後のページには直接リンクが張ってあることもよくあります。ユーザーテストの結果だけ見るととくに問題視されるべき部分ではありませんが、ヒューリスティック的には注意すべきであると言えます。


ActiveXが障害となりサイトを離脱するケースが。早めの改修が望まれる

 さて、本サイトにおいて大きな問題として挙げられるのは、「セキュリティソフト」のページです。実はこのページでは、ActiveXを利用することにより、訪問者の環境においてソフトウェアの動作がサポートされていれば「ご利用できます」というメッセージを自動的に表示してくれる仕組みになっています。

 これは、訪問者が非対応ソフトを誤って購入してしまうリスクを低減するほか、販売元のサポートコストも低減できるという、他のソフトウェア配信サイトには見られない特徴です。

 しかし、今回のユーザーテストでは、ActiveXをインストールしないままこのページを利用しようとした被験者を中心に、購入方法がわからずにギブアップするという例が見られました。というのも、「セキュリティ」ページにおいては、ActiveXコントロールをインストールしていなければ、購入ボタンがまったく表示されず、目的達成への導線が失なわれてしまうからです。


自分のPCでこのソフトが利用できるかが自動的に判定され、表示されます ActiveXコントロールをインストールしていなければ、動作チェックは行なわれず、ボタンも表示されないため、ユーザーは何をしてよいか分からなくなってしまいます

ActiveXをインストールしておらず、申込ボタンが表示されていない状態での被験者の視線。次のページに進むための手掛かりを求め、ボタンに近いデザインのパーツやテキストリンクを片っ端から注視している様子がわかります 初心者向けのヘルプページにはボタンが表示された状態でのスクリーンショットが掲載されているため、被験者の混乱にさらに拍車をかける結果になりました。「会員登録をすれば申込ボタンが表示されるのかと思った」とテスト終了後にコメントした被験者も

 ここでの問題点は、主に2つに分けられます。1つは、Webサイトの構造が良い意味でオーソドックスであるため、通常であれば購入ボタンがあるべき箇所にボタンが存在しなかった際、被験者が次に何をしてよいかわからなくなってしまうことです。解決法はいろいろありますが、購入ボタンは通常通り表示しておき、動作確認は別のページで行なうようにすることで、どのプロセスでつまづいているのかをユーザーが自覚できるようにするといった方法が考えられます。

 もう1つは、ActiveXコントロールのインストールを促す情報バーのメッセージについて、ほとんどの被験者が無視をしたという事実です。アイトラッキング(視線計測調査)でも、被験者の視線は、IEの情報バーをまったくといっていいほど見ていません。被験者の1人は「情報バーに何か出ているのは気付いていたが、ポップアップウィンドウをブロックしたことを通知しているのだろうと思って無視した」とテスト後のヒアリングで語っています。

 つまり、ふだん情報バーが表示されるのはポップアップウィンドウをブロックした際のメッセージが多数を占めることから、ユーザーは情報バーのアナウンスを重要視しなくなっている――というような背景が読み取れます。


IEの情報バー(赤枠のついている部分)。ユーザーにとっては「ポップアップブロックのメッセージが表示されるところ」と決めつけられている感があります

 サイトを企画・運営する側は、こうしたユーザーの行動を念頭に入れた上で、メリット・デメリットを照らし合わせつつ、プラグイン採用の可否を決定していく必要があると言えるでしょう。

 今回のユーザーテストにおける被験者は、決してITリテラシーが低いわけではなく、むしろ高い部類に入ります。にもかかわらずこうした行動が見られたわけですから、どちらかというと初級~中級者をターゲットとしている本サイトにとっては、優先的に対応しなければいけない問題であることがわかります。

 現在、運営元のBBソフトサービスさんでは、ActiveXを必要としないインターフェイスの作成に着手されているとのことで、これらのユーザーテストの結果が少しでも役立ってほしいと願う次第です。


関連情報

URL
  BBソフトダイレクト
  http://bbsoft-direct.com/


2008/02/06 10:52
山口真弘
(株)NTTデータキュビット コンサルティング本部所属。Webユーザビリティのコンサルタントとして活動中。本職外ではテクニカルライターとしての活動歴も長く、PC Watch「電子辞書最前線」、Broadband Watch「気になる! itemズ」のほか、本誌エイプリルフール企画の執筆なども手掛ける。近著は「3分LifeHacking」。

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