前回に引き続き、今回もアクセスログ解析についてご紹介します。今回は、ユーザビリティの向上という観点に特化し、アクセスログをどのように活用していくかをご紹介したいと思います。
● 訪問者にとってわかりにくいページをなくすには
スタッフの一員としてサイトの運営に携わるようになってからというもの、サイトを利用する側としての視点は、徐々に失われていくものです。サイトに初めて触れた時「この部分はきっと使いにくいはず。いつか時間があるときに改善しよう」と思っていたインターフェイスや機能についても、慣れてしまうとだんだん感覚がマヒしてしまい、ついには何を使いにくいと感じていたのかすら、分からなくなってしまいます。
また、特定の業界、企業にどっぷりと浸かってしまっているがゆえに、客観的には意味不明な表現、専門用語をサイトに載せているにもかかわらず、まったく気付かないというケースも多々あります。業界内の人しかアクセスしないBtoBサイトならいざ知らず、ユーザーが直感的に理解できない分け方で商品を分類していたり、専門用語をラベルに用いていると、ユーザーは目的を達成することが困難になり、結果としてサイトが利用される回数は減少していきます。
こうした場合、ユーザビリティ調査などの手法でセカンドオピニオンからの意見を求めるのが一般的ですが、手掛かりをつかむだけであれば、アクセスログ解析を利用するのがお手軽です。多くのサイトが標準装備している「サイトマップ」「FAQページ」「サイト内検索機能」に着目し、アクセスログを活用する方法を見てみましょう。
● サイトマップのログから、サイトの導線を見直す
「鳥瞰」という言葉があります。上空を飛ぶ鳥の視点で全体像を捉える、つまりマクロな見方をするという意味ですが、サイトにおいてこのサイトマップは鳥瞰図に相当します。サイトの全体像を捉えたいと思った場合に閲覧されるのが、このサイトマップというわけです。
さて、これを言い替えると「サイトマップを訪れる訪問者というのは、サイトの全体像を捉えたがっている」とも言えます。つまり彼らは、サイトのどこに何があるかわからず、迷子になっている確率が高いわけです。
たとえば、アクセスログを見ると、訪問者が以下のような順にページを移動しているとします。
ページA→サイトマップ→ページB
この場合、訪問者はページAからBに直接移動したかったにもかからわず、ページBへのリンクを見つけられなかったために仕方なくサイトマップを訪れ、そこでページBへのリンクを見つけて移動した、と解釈することができます。
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サイトマップを訪れるのは、探しているコンテンツが見つからないから
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この場合、まずページAの中に、ページBへのリンクがきちんと設置されているかをチェックします。リンクがない場合は設置する必要がありますし、すでにリンクが設置されているのであれば、訪問者がリンクを見つけにくい状態になっていると考えられますので、ユーザーテストなどを通じてリンクの位置や文言を適切な状態に改めていくべきです。
また、サイトマップそのもののPVが多いことも要注意です。たとえばサイトをリニューアルした結果、以前に比べてサイトマップのPVが急激に増えたといったケースは、明らかに危険信号だと言えます。逆に、サイトマップのPVが少なくても、単にサイトマップそのものがアクセスしにくいだけという場合もあるので、油断は禁物です。
● FAQページのログから、訪問者が求める情報を知る
「FAQ」「Q&A」「よくある質問」――呼び名はいろいろですが、ユーザーの疑問に答えるヘルプ系ページは、サイトを訪れるユーザーが多用するコンテンツのひとつです。これらのページのアクセスログを解析し、適切な対策を行えばサイトの使い勝手を大きく向上させることができます。
まずは前段階として、サイト内のすべてのページにFAQページへのリンクを設け、訪問者がなにかわからないことがあればすぐにFAQページに移動できる状態にしておきます。具体的にはヘッダなど共通要素の中にリンクを設けるのが望ましいでしょう。
この状況下でアクセスログを解析し、FAQページを訪れたユーザーが直前まで閲覧していたページをチェックします。FAQページのリンク元のページは、訪問者が「わかりにくい」「説明が不足している」と感じたきっかけのページであると解釈できますので、表現や説明を見直すことにより、ユーザーの満足度を向上させることができます。
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FAQページを訪れるのは、リンク元ページの内容に不足があり、さらなる情報を求めている場合が多い
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特に、FAQページのリンク元が特定のページに集中しているようであれば、ユーザーテストやヒアリングなどにより、そのページにどんな情報が不足しているのか、ユーザーに直接意見を求めてみることをお勧めします。また、FAQページを訪れた訪問者が最終的にどのような質問にたどり着いたかを調べることで、訪問者が知りたかった情報が何であったかを知ることもできます。
余談ですが、FAQページの下部に「このページはお客様の役に立ちましたか」の投票ボタンを設けているサイトがよくあります。このような仕組みを設けておけば、訪問者が本当にその情報を欲していたのか、的確に判断できるというわけです。これもひとつの工夫だと言えるでしょう(もちろんそのためには、質問ごとにページを分割しておく必要があります)。
なお、FAQページに限らず、問い合わせページについても、同じようなことが言えます。どんなページから問い合わせページに進んでいる割合が多いかを見れば、もともとのページにどんな情報が不足していたのかがわかりますので、社内のサポート部門と連携してページを修正することにより、問い合わせへの対応にかかる工数を削減し、あわせてユーザーの満足度も向上させることができます。
● サイト内検索のログから、サイトの導線を見直す
最後に紹介するのは、サイト内検索のログです。正確にはアクセスログとは別物ですが、ユーザビリティの向上には非常に役立つ手法の1つとして、あわせて紹介します。
一般的に、サイトへの訪問目的がはっきりしているユーザーは、手掛かりになる文言がトップページになければ、早い段階でサイト内検索機能を使おうとする傾向があります。従って、サイト内検索のログを見れば、ユーザーが求めているコンテンツのうち、トップページからの誘導が適切でないコンテンツが明らかになるというわけです。
もし、検索されているのが特定の商品ばかりであれば、その商品ページに対してトップページからの導線が確保されているかを確認し、もしなければ該当の商品ページへのバナーを張るなどして、ユーザーがその商品に容易にアクセスできるようにします。
逆に、導線が確保されているにもかかわらず、サイト内検索機能を使う訪問者が多いようであれば、訪問者がリンクが見つけにくい状態になっている可能性があります。この場合はユーザビリティ調査を実施し、原因を正しく突き止めることをお勧めします。ユーザーの視線の動きを知りたいのであれば、アイトラッキング(視線計測調査)などが役に立つことでしょう。
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ざっとアクセスログの活用方法をご説明しましたが、ユーザビリティ調査の前段階としてアクセスログを利用するのは、たいへん有益な方法であることがおわかりいただけたと思います。自社サイトのユーザビリティの向上を考える際、まずは手の届くところからということで、アクセスログをじっくりと観察するところから始めてみてはいかがでしょうか。
2008/08/19 12:01
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山口真弘 (株)NTTデータキュビット コンサルティング本部所属。Webユーザビリティのコンサルタントとして活動中。本職外ではテクニカルライターとしての活動歴も長く、PC Watch「電子辞書最前線」、Broadband Watch「気になる! itemズ」のほか、本誌エイプリルフール企画の執筆なども手掛ける。近著は「3分LifeHacking」。 |
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