第111回:外出から自宅へお手軽アクセス
「WHR2-G54V」で身近になったリモートアクセス



 簡単な設定で誰にでも手軽にVPNによるリモートアクセス環境を構築可能な製品が登場した。バッファローから新たに発売された「WHR2-G54V」だ。これまで敷居が高いとされていたVPN環境の構築が、どれほど簡単になったのかを検証してみよう。





外出先から自宅にアクセス

WHR2-G54V

 ホットスポットやホテルなど外出先でPCを利用している時、ふと「自宅にアクセスできればなあ」と感じたことはないだろうか? 外出先でも、自宅のPCに保存されているファイルを参照できたり、自宅のPCで受信したメールをもう一度見直すなどということができれば、それはそれで便利だ。

 筆者も、このようなニーズから、外出から自宅へのリモートアクセス環境を整えているひとりだ。以前は、打合せなどで外出した後に、うっかり必要なデータを自宅のPCに忘れてきたことに気が付いたり、打合せの場所などが記載されたメールを確認せずに出かけて困ってしまったことがあったが、リモートアクセス環境を整えてからは、そうなったとしても、無事にファイルやメールを確認できるようになった。不謹慎なのは承知の上だが、打合せ中に自宅のPCに接続、テレビ(ナイター中継)を見ながら原稿を書くなどということもたまにしている(編集担当にとっては迷惑な話かもしれないが……)。

 もちろん、リモートアクセス環境が誰にでも必要なものとは限らない。しかし、あればあったで便利なことも多い。FTTHやADSLなどの常時接続回線で自宅へのアクセスラインが確保されているのであれば、それを活用しないのももったいない話だろう。





誰でも手軽にリモートアクセス環境を構築可能

 とは言え、リモートアクセス環境の構築が比較的難易度が高かったのも確かだ。リモートデスクトップで自宅のPCにアクセスする程度なら、ルータでポートフォワードの設定をすれば済むが、安全性を考えるとそうもいかない。理想はPPTPなどによるVPN環境を構築することだが、これには手間と費用がかかる。PPTPサーバーにするPCを用意し、それを適切に設定しなければならないとなれば、あきらめてしまう人も少なくないだろう。

 しかし、バッファローの「WHR2-G54V」の登場によって、このような状況が変わりつつある。WHR2-G54Vは、IEEE 802.11gに準拠した無線LANルータだが、本体にPPTPサーバー機能を搭載しており、VPNによるリモートアクセス環境を手軽に構築できる。同様にリモートアクセスを可能にするPPTPサーバー機能を搭載した製品には、ヤマハのRTシリーズやオムロンの「MR104FH」なども存在するが、設定はWHR2-G54Vの方がはるかに手軽だ。

 たとえば、PPTPサーバーの設定はウィザード形式で誰にでも手軽に設定できる。設定画面で「外出先から接続」という項目を選び、ユーザーIDとパスワードの登録など、簡単な項目を入力すれば、すぐにセットアップが完了する。極端な話、VPNやPPTPといった言葉の意味を知らなくてもセットアップできるという手軽さだ。


インターネット接続の設定を行なうと、「外出先から接続」という項目が設定画面に表示され、PPTPサーバーのセットアップが可能となるセットアップはウィザード形式で非常に簡単。ダイナミックDNSの利用やユーザーIDとパスワードの設定など、必要最低限の項目さえ入力すれば、あとは自動的に設定が構成される

 もちろん、外出先からリモートアクセスするには、自宅のアドレスを指定しなければならないという問題があるが、これもダイナミックDNSの利用でクリアできる。WHR2-G54Vでは、DynDNSなどのよく知られたサービスや一部のISPが提供しているサービスに対応するだけでなく、独自の「バッファロー・ダイナミックDNSサービス」 にも対応しており、「xxxx.bf1.jp」などのようなアドレスを手軽に取得可能となっている。同様のサービスではヤマハが「NetVolante DNS」を無料で提供しているのに対して、こちらは年額3,780円の費用が必要だが、比較的覚えやすいアドレスを取得できるので、どちらを選ぶかはユーザー次第だろう。


独自のダイナミックDNSサービスを利用可能。申し込みから設定まですべてルータの設定画面から行なうことができる

 実際、セットアップしてみたが、ものの数分もあればセットアップが完了するという手軽さだった。筆者宅では、これまでWindows XP ProfessionalをPPTPサーバーとして利用していたが、わかりにくいPPTPサーバーのセットアップが必要であったうえ、ルータ側でポートフォワードの設定が必要で、正直、きちんと使えるまでに何度かの試行錯誤があった。しかし、WHR2-G54Vでは、このような面倒は一切なかった。

 ルータ側で接続を受け付けるというスタイルもありがたい。別途、PPTPサーバーを設置し、常時動かしている必要がないので、電力をあまり消費しない。PCと違って動作音もまったくしないうえ、設置スペースもわずかで済むと良いことづくめだ。





名前解決の仕組みに感心

 さて、このように手軽にVPNの設定が可能なWHR2-G54Vだが、VPNを利用する際にはもうひとつ大きな難問をクリアしなければならない。名前解決の問題だ。

 LANであれば、WindowsのブロードキャストによってLAN上のPCの名前を解決でき、マイネットワークを開けばLAN上のPCをすぐに参照できる。しかし、VPNの場合、このブロードキャストが利用できないため、マイネットワークからPCを参照できないばかりか、コンピュータ名でPCにアクセスすることすらできない。WindowsをPPTPサーバーにしているのであれば、名前解決も可能となるが、ルータでVPN環境を構築する場合、Lmhostsなどの名前解決のための仕組みを別途用意しないと、VPNでつながったは良いものの、肝心のPCにアクセスできないということになる(IPアドレス指定なら可能)。

 今回、WHR2-G54Vを利用するうえで、もっとも気になったのが名前解決の問題をどうクリアしているのかだが、実にうまい方法で回避している。DHCPのリストを利用するという方法だ。WHR2-G54Vを設置した場合、LAN上のPCにはWHR2-G54VがDHCPでIPアドレスをリースする。つまり、LAN上のPCとIPアドレスの対応をルータ側で把握しているわけだ。これに各PCのコンピュータ名を対応付け、HTMLで表示することが可能になっている。

 具体的には、外出先のクライアントから、PPTPでWHR2-G54Vに接続後、ブラウザで「http://buffalo.setup/hosts.htm」にアクセスする。すると、LAN上のコンピュータ名がリスト表示される。ここからアクセスしたいPCをクリックすれば、そのPCの共有フォルダが表示されるという仕組みだ。


VPNでの接続後、「http://buffalo.setup/hosts.htm」にアクセス。LAN上のPCが一覧表示され、アクセス可能となる

 このため、WHR2-G54Vを利用する場合、LAN上のPCのIPアドレスを固定で設定したり、Lmhostsを記述して外出先のPCに読み込んでおくなどという必要は一切ない。うまい方法を考えたものだと感心させられるところだ。

 もちろん、この方法とて万能ではない。外出先のクライアント自信が名前解決をしているわけではなく、ルータが解決した名前を一時的に利用しているにすぎないため、先述した「http://buffalo.setup/hosts.htm」以外では名前解決ができないのだ。

 たとえば、VPNでの接続後、リモートデスクトップでのアクセスやネットワーク対応のテレビ再生ソフトを使ってのテレビ再生など、クライアント側のアプリケーションから直接LAN上のPCにアクセスしようとすると、名前解決に失敗してしまう。幸い「http://buffalo.setup/hosts.htm」を参照すれば、LAN上のPCのIPアドレスがわかるので、IPアドレスを指定してアクセスすることができるが、コンピュータ名で直接アクセスすることはできないので注意が必要だろう。





さらなる機能強化が求められる

 このように、PPTPサーバーの設定、名前解決のしくみなど、WHR2-G54Vはリモートアクセスを手軽に利用するための工夫が搭載された画期的な製品と言える。しかし、欲を言えばさらに機能が強化されて欲しいところだ。

 たとえば、名前解決のしくみの部分で言えば、リストからLmhostsファイルを自動生成してクライアントに適用できるようにするとか、思い切ってルータにDNSサーバー機能を搭載してしまうのも手だろう。

 また、できればWOL(Wake On Lan)への対応もしてほしかったところだ。せっかくリモートアクセスで自宅にアクセスしてもPCが起動していなかったり、サスペンド状態ということの方が多い。ルータからMagic Packetを送信できるようにして、これらをリモートから起動させられるようにできるようになれば完璧と言ってもいいだろう。もちろん、WOLの場合、PC側の問題があるため、Magic Pakcetを送信しても必ずしも起動するとは限らない。サポートの関係を考えるとメーカーとして対応は難しいかもしれないが、個人的にはノンサポートでもかまわないので搭載して欲しいところだ。

 このように、いくつか改善を望みたい点があるのは確かだが、リモートアクセスという環境を一歩でも身近にした功績は非常に大きいと言える。今後は、単純に性能の高さを誇る無線LANルータよりも、本製品のように使い方の幅を広げる付加価値を持った製品が多く登場することを望みたいところだ。


関連情報

2004/7/27 11:26


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。