第341回:アクトビラもDTCP-IP配信も楽しめる!

アイ・オー・データ機器「AVeL Link Player(AV-LS500VX)」


 アイ・オー・データ機器から「アクトビラ」や「DMM.TV」などに対応した映像配信サービス用のSTBに加え、DTCP-IP対応のネットワークプレーヤーとしても利用できる「AVeL Link Player(AV-LS500VX)」が発売された。早速、その実力を検証してみよう。

手持ちのテレビをパワーアップできる「AV-LS500VX」

アイ・オー・データ機器のネットワークプレーヤー「AVel Link Player AV-LS500VX」

 デジタル放送の視聴はもちろん、HDDへの録画機能やDLNA対応、そして「アクトビラ」や「ひかりTV」、さらには「YouTube」などの映像配信サービスへの対応など、ここ2~3年ほどで発売されたテレビの多機能さには目を見張るものがある。

 そんな最新テレビの機能を羨ましく思っている人にぜひ紹介したいのが、今回取り上げるアイ・オーのネットワークプレーヤー「AVeL Link Player AV-LS500VX(以下、AV-LS500VX)」だ。ネットワークプレーヤーとはPCやNASに保存したメディアファイルをネットワーク経由で再生できる製品で、アイ・オーとしては久しぶりの新製品になる。

 本製品では、DLNAに対応するNAS、Windows Media Connectでメディア共有を設定したPCをサーバーとして利用することも可能で、これら機器に保存する映像や写真、音楽などをネットワーク経由で再生できる。

 そして本製品最大の特徴は、インターネット上の映像配信サービス「アクトビラ」と「DMM.TV」に対応している点だろう。これにより、本製品を家庭用のテレビとネットワークに接続するだけで、これらの映像配信サービスを手軽に利用できるようになっている。

 前述したように、最近のテレビでは、こうしたインターネット映像配信サービスに標準対応するモデルもあるが、未対応の低価格モデルや1世代前の液晶テレビやプラズマテレビなどでも、本製品を繋ぐだけで最新のネットワーク機能を追加できる。言わば、ひと昔前のテレビをパワーアップするためのアイテムと言ったところだ。

DTCP-IP対応で、録画したデジタル放送をLAN経由で視聴可能

 それでは早速、使い勝手を見ていこう。まずはセットアップだが、これは基本的に繋ぐだけで良い。


正面。コンパクトなサイズで場所もとらない背面には各種端子を装備。映像出力はHDMIとビデオ出力のいずれかを利用

 本体背面には、LAN端子やHDMI端子、ビデオ出力端子、光デジタル音声端子、USBポート、IRオプション用端子が用意されている。このうち、LAN端子をルータなどの家庭内LANにLANケーブルを使って接続し、付属のAVケーブルや別途用意したHDMIケーブルを利用して家庭用のテレビに接続すれば設定は完了だ。

 そして、付属のリモコンで電源をオンにすると、しばらくしてメニュー画面が表示され、各種サービスが利用できるようになる。

 まずは、基本機能とも言えるメディアプレーヤー機能を検証してみた。ネットワーク上には、アイ・オーのDLNAサーバー機能を持ったNAS「HDL-GS500」、「Windows Home Server(Windows Media Connect)」、さらにRC版が配布されたばかりの「Windows 7(メディアストリーミング機能)」、東芝のHDDレコーダ「RD-S303」を用意した。この状態で、AV-LS500VXを起動し、メニューからメディアサーバーを選択すると、いずれの機器もサーバーとして問題なく認識された。


電源をオンにした際のトップページ。各機能が大きなアイコンで表示されるネットワークメディア機能を使ってLAN上のサーバーを表示。Windows 7やDLNA対応レコーダー、NASなどが表示される
DTCP-IPにも対応しているため、同じくDTCP-IP対応レコーダなどで録画した映像も再生できる

 本製品が対応するフォーマットについては、製品情報ページを参照していただきたいが、筆者が試した限りでは、前述したサーバーのうち、HDL-GS500、Windows 7、RD-S303にある画像や音楽、動画ファイルなどを問題なく再生することができた。

 一方、筆者宅の環境ではWindows Home Serverはサーバーとして認識されるものの、残念ながら接続に失敗してしまった。本製品は正式にはDLNAもしくはWindows Media Player 11対応となっており、サーバー側のソフトウェアバージョンの問題である可能性も考えられる。Windows Home Serverの場合、メディアサーバーソフトを変えるという選択肢もあるので、工夫次第で接続も可能になるだろう。

 さて、特筆すべきなのは、やはり著作権保護技術「DTCP-IP」に対応している点だ。同じく、DTCP-IPに対応する「RD-S303」との組み合わせで試したところ、TSモードで録画した地上デジタル放送の番組を、AV-LS500VX上で番組名も含めてリストアップでき、ネットワーク経由で問題なく番組を再生できた(トリックプレイもOK)。すべてのDTCP-IPに対応したHDDレコーダで問題なく再生できるかはわからないが、リビングのHDDレコーダに録画したデジタル放送を他の部屋で視聴したいという場合に重宝しそうだ。

 また、Windows 7をサーバーとして利用した場合、ビデオフォルダに保存したAVCHDのデジタルビデオ映像も問題なく認識し、早送りやスキップなどのトリックプレイも含め問題なく再生できた。AVCHD対応のビデオカメラの映像は、どこに保存して、どこで再生するかが少々悩ましいところであったが、Windows 7のH.264対応も含め、これからはPCに保存してネットワークプレーヤーで再生するというのも1つの選択肢となりそうだ。

 なお、本製品にはメディアサーバーソフトは添付されない。このため、DLNA対応のサーバー機器を利用するか、Windows Media Player 11のメディア共有機能を利用しよう。

これまでにない軽快さを実現したアクトビラUI

 続いて、映像配信サービスへの対応について見ていこう。こちらの使い方も、基本的にはネットワークプレーヤー機能と同じで、トップメニューから「アクトビラ」もしくは「DMM.TV」を選ぶだけとなっている。初回のみ、本体登録作業のために、ユーザーIDとパスワードの登録が必要になるが、それ以降はIDの入力などは特に不要で、メニューを選ぶだけですぐにサービスにアクセスできる。

 なお、DMM.TVの利用においては、本体登録作業に加えて、別途サービス登録手続きが必要になる。


はじめて利用する際は本体の登録作業が必要。IDとパスワードを登録するDMM.TVの利用には別途サービス登録も必要

 アクトビラの利用に関しては、非常に完成度が高い。最近の「アクトビラ ビデオ」に対応したテレビなどは、サービス開始当初の対応機器の動作の鈍さから比べると、かなり軽快な動作に改善されてきてはいるが、それでもメニューの選択や画面の遷移などで、もっさりとした動作が気になる場合もある。

 これに対して、AV-LS500VXの動作は非常に軽快だ。サービスへの切り替えに多少のラグはあるものの、画面の読み込みにさほど待たされることはなく、画面上のアイコンの選択もリモコンのボタン操作とリニアに連動してくれる。

 従来のアクトビラ対応製品では、リモコンを操作してから、一瞬遅れて画面上の操作に反映されるイメージで、メニューを選ぶのも、ビデオを選ぶのも、ストレスを感じることが多かったが、これとはまったく無縁だ。

 アクトビラに関しては、ビデオの一覧画面でリモコンの左右ボタンから1発でリストを切り替えられるようになって欲しいなど、ユーザーインターフェイス(UI)自体に少々使いにくい点は残っている。しかし、本製品ではそれをスピードでカバーする快適さで、ようやく実用的になったという印象だ。

 難点を挙げるとすれば、リモコンの巻き戻しや再生ボタンが1番下で、しかも小さく、すべてが同じ形状となるため、早送りや巻き戻しなどの操作がやりにくい。リモコンのボタン配置と質感は、もう少し改善の余地がありそうだ。


アクトビラビデオの画面。画面上のボタンの移動やビデオ一覧でのリストの切り替えなど、表示が高速で、操作にストレスを感じない付属のリモコン。再生系のボタンの形状や配置、さらに質感の工夫が欲しかったところ

パーソナルな利用に最適

 このように、アイ・オー・データ機器の「AV-LS500VX」はネットワーク上のメディアファイルの再生、インターネット上の映像配信サービスを手軽に、そして快適に利用できる製品となっている。

 ネットワークプレーヤーというと、ひと昔前までは家庭内の個人のPCに散在しているメディアをリビングなどでみんなで楽しむという使い方が想定されていた。しかし、現状は恐らく逆で、リビングのレコーダやNASなど、みんなで共有しているデータを個人のPCや自分の部屋で楽しむという使い方の方が注目されている。

 そういった意味では、DTCP-IPで録画した地上デジタル放送を視聴でき、アクトビラやDMM.TVで見たいビデオを見たいときに楽しめる本製品は1台あると便利な製品と言えるだろう。


関連情報

2009/5/12 11:04


清水 理史
製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。最新刊「できるWindows 8.1/7 XPパソコンからの乗り換え&データ移行」ほか多数の著書がある。