インタビュー
未成年への「オプチャ制限」はあるのか? リスクと対策についてLINEヤフーに聞いた
「健全な交流」まで規制する理由はない――友だち追加QRコードの交換はNGだが、ゲームIDの交換はあり?
2026年10月22日 08:32
警察庁によると、未成年が性犯罪などの加害者と出会うきっかけとなったサービスとして、2024年度はInstagram、X、オンラインゲームなどに続き、LINEが全体の3.9%を占め、第5位だった。LINEの「オープンチャット(オプチャ)」を使えば未成年でも不特定多数と交流でき、オープンチャットだけを使えないように制限する仕組みはない。
「オープンチャットを制限できるようにしてほしい」という保護者も少なくないが、制限は考えているのか? 未成年のオープンチャット利用におけるリスクと対策について、LINEヤフー株式会社の松本健太郎氏(ガバナンスドメイン 政策渉外CBU 政策渉外1ユニットリード 兼 渉外安全対策ユニット 安全政策ディビジョンリード)に聞いた。
3000万人が利用するLINEの「オープンチャット」
――まず、オープンチャットの最新の利用状況、ユーザーの年齢層などについて教えてください。
[松本氏]オープンチャットとは、LINEの「友だち」になっていなくても、共通の趣味や興味・関心で不特定多数の人々と匿名でトーク、情報交換などができるサービスです。トークルームごとに専用のニックネーム、アイコンで参加できるため、普段のLINEと分けて使えるようになっています。
累計ユーザー数は、3000万人以上に上ります。オープンチャットのユーザーの年齢層は10代が24%、20代が21%、30代が21%、40代が20%、50代以上が14%(2024年5月31日時点)。さまざまなカテゴリーのトークルームが作られており、10代における人気のカテゴリーは、「ゲーム」「学校・同窓会」「芸能人・有名人」「アニメ・漫画」「音楽」などとなっています。
――LINEは全年代に利用されていますが、オープンチャットは10代・20代が約半数ですね。やはり、若者に支持されているサービスなんですね。
[松本氏]徐々に、上の世代も増えてきているところです。地域での情報交換にも活用されており、地域関連のアクティブなトークルームは3万以上あります。東京の豊洲エリアでは、オープンチャットを活用した防災の取り組みとして、バーチャル防災訓練などを行っており、コロナ禍で会わなくても防災情報がやり取りされました。駅ごとのトークルームもあり、飲食店やお祭り、電車の遅延情報などの情報交換に使われています。
加害者と出会うきっかけ、LINEが毎年5%前後で推移。だが、被害者数としては「減少傾向」
――警察庁によると、LINEが未成年の出会いのきっかけになっています。このLINEとは、オープンチャットのことなのでしょうか。
[松本氏]警察庁と意見交換もしたのですが、通常のトークかオープンチャットかは分かっていません。2025年以降、出会いのきっかけとなったサービスの割合は公開されていませんが、いつもLINEは全体の5%程度。5位、6位あたりを行ったり来たりしている状態です。
2024年の3.9%という数字に関しては、LINEのユーザー数は1億人おり、母数が多いことも影響していると思います。「全体で占める割合は毎年ほぼ同じ」と言いましたが、SNSに起因する児童の性被害件数の総数は、年々、減少傾向にありました。つまり、被害者数としては減っているということです。なお、2025年から再び増加に転じています。
意識して被害を減らすよう努力してきましたし、他のサービスに比べると圧倒的に少なく抑えられていると考えています。もちろん、まだまだ減らす努力をしていくつもりです。
オプチャへの問題のある投稿は平均2.6分で削除。「友だち追加QRコード」の投稿などが該当
――未成年の被害を減らすための仕組みを教えてください。
[松本氏]LINEには通常のトークやオープンチャットなどさまざまな機能がありますが、共通するのは、いろいろな人とつながって話すサービスということ。子どもの保護で一番重要なのはコンタクトリスク(※子どもが大人と接触して有害な行為に遭うリスク)です。そこで、知らない人とつながって犯罪に巻き込まれないようにしています。
オープンチャットでは、LINEの1対1のトークには移れない仕様となっています。LINEアプリの外などで例外的につながることもあるかもしれませんが、少なくともアプリ内では難しい仕様ではあります。
年齢確認も、自己申告制ではなく、携帯電話会社の利用者情報と連携して大人か子どもかを判定しています。年齢確認していない人は子ども判定とし、子どもと同じに制限をかけ、ID検索、電話番号検索などはできません。プラットフォーム側で行うので、保護者が解除できないため非常に強力な対策です。
オープンチャットを立ち上げたときのポップアップで注意喚起を表示したり、夏休みなどに合わせて注意喚起を表示するなどの工夫もしています。CSR活動で情報モラル向上のための取り組みもしており、「LINEヤフーみらいプロジェクト」として全国の学校で情報モラルの教材を開発し、20県102市町村で活用いただいています。
――AIや監視員による監視もしているんですよね。
[松本氏]LINEのトークは個人間のコミュニケーションツールであるという性質上、サービスを提供する事業者側でメッセージの中身を見ることはできませんが、オープンチャットは見て対処することができます。
AIにより機械的検知を行い、24時間体制で専用の監視員がモニタリング、削除対応しています。友だち追加QRコードは表示されないようにしたり、不適切なコンテンツを削除、非表示にしたりしているのです。違反行為はユーザーによる通報も可能です。違反者に対しては該当の投稿を削除したり、オープンチャットを一定期間使えなくしたり、トークルーム閉鎖などもあります。
[松本氏]2025年度のオープンチャット投稿削除件数は、928万3047件です。一見多いように感じるかもしれませんが、投稿総数は58億5854万9402件にも上るので、投稿総数に対し、削除された投稿の件数は約0.16%です。丁寧に見ていくクオリティとスピードが大事であり、問題あるものは平均2.6分で削除されています。
[松本氏]オープンチャットのトークルームは、作られてすぐに公開されるわけではないのです。一定の時間は見られないようになっており、その間に子どもに見せてもいいかどうかを判定しています。お酒など子どもに不適切なトークルームと判定された場合は、子どもにはおすすめで表示されず、検索しても表示されない対策をとっています。未成年の投稿は、優先的に対処もします。
「小学生集まれ」「中学生集まれ」のような、明らかに小中学生が集まることが想定されるトークルームもあります。そのような小中学生がやり取りすることが想定されているトークルームでは、不適切なことがされていないか特別にモニタリングしています。
LINEには年齢制限はありませんが、12歳以上推奨としています。利用推奨年齢なので12歳以下が使ってはいけないということではなく、家庭内の連絡手段として、保護者の管理のもとで利用していただいているものと思います。
ゲームIDの交換は可能。子どもでも「健全な交流」はあり
――ニフティキッズの「ネッ友についての調査」(2024年8月)によると、小中学生がネット友達を作るきっかけの1位はオンラインゲームですが、2位はLINEになっています。LINEがネッ友を作る場になっているようですね。
[松本氏]オープンチャットでは、LINEの友だち追加QRコードや電話番号等は交換できません。しかし、オンラインゲームのIDは交換して、ゲーム内で出会うことはできます。それから、保護猫の里親募集の場合などで「インスタに詳細があるのでそちらを見てください」はOKとするなど、文脈により判断しています。
――え、ゲームIDは交換できてしまうんですね。
[松本氏]はい。出会いとかわいせつとかを目的として外部のSNSで出会うのはNGですが、ゲームの中だけで健全に交流することまで規制するのは難しいと考えているためです。
――オンラインゲームは出会いのきっかけになるとして、警察庁が注意喚起を行っていますよね。最近のオンラインゲームはボイスチャットやチャットで交流でき、出会いのきっかけとなっています。
[松本氏]ゲームの全てが不健全ということではありません。一方で、リスクのあるゲームもあるということは理解しています。そのようなリスクが高いゲームに関しては、警察庁が注意喚起を行っていることを踏まえて、未成年に対しては気を付けるよう啓蒙啓発も行っています。我々も、必要に応じて安全のための対策や対処をしています。
ただ、我々にはLINEのサービス上のことしか見られないので、ゲーム内のチャットについては、ゲームを提供している事業者において、そのサービスの性質に応じて対策が講じられているものと認識しています。
そのうえで、警察からもゲームが犯罪につながる入口になっていると示されているので、LINEでも安全にゲームを使うよう啓発していきたいです。『このゲームが危ない』などとリスクが顕在化したら、そのリスクに応じた対応に変化させていくこともあります。オープンチャット上でも、そのようなゲームのID交換はNGとすることもあるかもしれません。
「ディズニーランドオフ会」なら未成年でもあり
――オープンチャットでは、オフ会などもありなんですか。
[松本氏]オープンチャットの運営側では「未成年のオープンチャットのオフ会はありかどうか」は、サービス当初から問題になっていました。当初は一律NGとなっていたのですが、それではユーザビリティが限られて活性化しません。そこで、未成年を守りながらどうすればいいのか議論していきました。
議論の結果、「未成年だからといってオフ会を全てNGではなく、ディズニーランドについて語るオープンチャットでみんなでディズニーランドに行くならあり」というようなきめ細かい条件付けをして、目的が不明なオフ会はNGにしたほうがいい――などと、リスクの高さに応じて決めていきました。内部の基準では、行動別に大人ではありでも未成年ではアウトというガイドラインも定めています。
ユーザーにとって楽しいサービスでないと使ってもらえないですが、危険であってもいけません。どこまでNG、どこまでありのサービスにするのかというのが苦労のしどころであり、バランス感覚が求められる部分です。
未成年への「オプチャ制限」はあるのか
――現在の守る仕組みは十分なのでしょうか。
[松本氏]どこまで仕組みを整えても「十分です」「完璧です」と言えはしないと思いますが、限りなく完璧に近づける努力は継続していきたいと考えています。現時点でリスクはかなり低減できていると考えていますが、今後もアップデートを継続し、常に安全な環境を提供できるよう、努めてまいります。
――安全対策で難しいこと、課題となっていることには何ですか。
[松本氏]新しい利用の仕方が次々出てくるうえ、犯罪を意図する人は対策をすり抜けてくるので、対策もアップデートしていかねばなりません。例えばモニタリングの際も、隠語や伏字などにも対応するようにしています。いたちごっこにはなりますが、対策を諦めてしまうとサービスが荒れてしまうので、いたちごっこと分かりつつ対応していくことが大事と考えています。
――未成年について、オープンチャットや機能を制限することは考えていますか。
[松本氏]機能や制限の追加について、具体的に決まっていることはありません。ただ、未成年保護対策はこれからもしていきますし、サービスのあり方としてどうあるべきか、常に考えていかねばならないと考えています。今のままで止まっていいわけではありません。SNS規制が社会で議論されており、我々の議論もアップデートしていかねばならないと思っています。我々は社会の要請に従って考えていくので、必要ということであれば取り入れていきたいですね。
高橋 暁子
ITジャーナリスト/成蹊大学特別客員教授。SNSや情報リテラシー教育が専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい。『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α新書)、『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)ほか著書多数。https://akiakatsuki.com/











