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「青少年のSNS利用禁止」日本ではどうなる? 当事者の中高生はどう思っている? こども家庭庁に聞いた――目指すのは「こどものウェルビーイング実現」

 青少年のネット利用環境の整備に関して、こども家庭庁、総務省がそれぞれ専門家らによるワーキンググループ(WG)を立ち上げ、議論を進めている。両省庁の役割の違いは何か。そして、こども家庭庁が目指すところは何か。同庁の関根友里氏(成育局安全対策課 課長補佐)に話を聞いた。

こども家庭庁と総務省の2省庁にWGがある理由

 こども家庭庁と総務省の立場の違いはどこにあり、なぜ2つの省庁それぞれにWGが設置されたのか。じつは昨年8月、インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関する関係府省庁連絡会議において「青少年インターネット環境整備法」の在り方に関する論点をまとめた際、論点ごとに担当省庁が振り分けられている。

 例えば「リスクの多様性への対応について(青少年インターネット環境整備法)」の柱にまとめられている法に関する論点については、こども家庭庁が主に担当する。

(インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関する関係府省庁連絡会議「課題と論点の整理」に基づく工程表フォローアップより)

 一方で、「携帯電話事業者に対して、法第13条に規定される購入時の青少年確認義務について、現行では88%であるところ、厳格な履行を求めることについてどう考えるか」といった、通信に関する論点については、総務省で議論をする。

 その結果、2省庁それぞれでWGが立ち上げられ、担当する論点について議論されているというわけだ。最終的に、青少年インターネット環境整備法の改正の議論に集約されるため、総務省のWGの議論の結果をこども家庭庁のWGに報告する等の協力を図りつつ、検討を進めている最中だ。

 こども家庭庁は、青少年インターネット環境整備法などの法改正やこども保護の在り方など法律やこどもに関することについて検討しており、総務省はプラットフォーム事業者やOS・端末側の技術的対策、年齢確認厳格化などの通信・デジタル技術寄りの実務的課題を中心に議論していると考えれば分かりやすいだろう。

 こども家庭庁では、定期的に中高生にヒアリングする機会も設けており、当事者であるこどもの意見も入れて検討を進めている点も特徴的だ。現行法の見直しのポイントとしてはこども家庭庁WGの中間整理報告書に示されているが、法目的等の見直し、適切な保護に向けた見直し、ガバナンスの強化となっており、それぞれの観点から議論を進めている。

 こども家庭庁が求めるものは“こどものウェルビーイング”、つまり「身体的心理的社会的に将来にわたってこどもが幸せ」という意味だ。

 「インターネットは社会のインフラであり、こどもたちにとっても社会とつながる大切なもの。こどもをそこから完全に切り離すことが良いのか、慎重に議論が必要。一方で、複雑化・多様化するリスクから守ることも大切であり、こどものウェルビーイング実現のためにはどうバランスを取っていくかが大切」(関根氏)。

SNSの「一律の年齢制限」について、こども家庭庁のWGの方針は

 こうした経緯で進められていた2省庁それぞれのWGにおける議論だが、総務省のWGでは「一律の年齢制限は望ましくない」との考えが示された。

 一方、こども家庭庁のWGでは、6月の骨子案の段階では年齢制限についての言及は特にしていなかったが、中間整理報告書では「一定年齢未満の者のSNS利用を制限する法的な制度の是非は政府において引き続き議論」という方針が示された。これによって「やはり年齢制限はあるのか」「一律の年齢制限に向かう諸外国の動向が影響したのでは」との憶測も呼んだ。

こども家庭庁の「青少年インターネット環境整備法の在り方等に関する検討ワーキンググループ」が7月に取りまとめた中間整理報告書の概要(「中間整理報告書 参考資料」より)。SNS利用の年齢制限については「一定年齢未満の者のSNS利用を制限する法的な制度の是非は政府において引き続き議論」と明記された(中間整理報告書本体では「諸外国において一部導入されている一定年齢未満の者によるSNS等の利用を制限する法的な制度の是非については、こどもの保護の観点とこどもの権利利益との適切なバランス、国際的な議論の動向、こどものSNS利用に伴う被害を含めた実態、制度の実効性やサービスの多様性等を踏まえながら、政府において引き続き議論を重ね、我が国の実態に即したこどもの保護の在り方を構築していくことが重要」という記述)

 しかし、改めて何らかの方針転換がされたわけではないという。こどもにとってSNSが居場所になっている場合等も考慮し、一律の年齢制限については引き続き議論をしていくという考え方も変わらないとしている。

 「我々は全てのこどものウェルビーイングの実現を目指している。一律に利用を制限することがいいことなのか? 段階を経て使っていくことも大事ではないか。保護と活用のバランスを考慮しながら検討してきており、今後も引き続き議論をしていく」(関根氏)。

 諸外国では年齢規制への流れが続くが、「諸外国の事例を参考にしつつも、我が国の実態に即した保護の在り方を探っていく」(関根氏)という。今後も、こどもの権利利益と保護の適切なバランスを重視していく方針だ。

「5つのリスク」のうち、現行法で対応できているのは1つだけ

 OECD(経済協力開発機構)の整理によると、こどものインターネット利用を巡るリスクは、「コンテンツリスク」「コンダクトリスク」「コンタクトリスク」「消費者関連リスク」「横断的リスク」の5つに分類できる。

多様化・複雑化するリスクに対する現状の制度(「中間整理報告書 参考資料」より)

 「コンテンツリスク」は、こどもが受動的にアダルトサイト等の有害な情報等に触れるリスクのことで、対策としては、現行の青少年インターネット環境整備法で定めている「フィルタリング」がある。しかし、こどもを巡るリスクはそれだけではない。

 「コンダクトリスク」は、こどもがこどもに対してネットいじめや誹謗中傷などの有害な行為を行うリスク。「コンタクトリスク」は、大人と接触してこどもがセクストーションなどの被害に遭ったり、闇バイトなどの犯罪へ関与することになったりするリスクだ。

 「消費者関連リスク」は、オンラインゲームに関する課金トラブルなど、消費者関連トラブルのリスク。「横断的リスク」は、長時間利用、低年齢化、アルゴリズムによる心身への影響(依存、精神疾患、脳の発達への影響、学習能力への影響など)、性的ディープフェイクなどが含まれる。

 全体的に、受信リスクだけでなく、こどもからの送信をきっかけとしたリスクも含めていることが特徴だ。このような、現行の青少年インターネット環境整備法で対応できていないリスクに注目し、どのように対処すべきかについて議論している最中なのだ。

 「従来の『有害情報をフィルタリングする』という発想から、『SNSなどサービスそのものの設計・運営にも事業者責任を求め、こどものウェルビーイングを守る』という方向へ、大きく転換しようとしている」と関根氏は説明する。「こどものインターネットの利用環境が大きく変わってSNS中心となったことで、リスクも多様化・複雑化しており、青少年インターネット環境整備法の制定当時とは事情が変わっている。抜本的な改革が必要」。

こどもたちはどう考えている? 中高生らにもヒアリング

 こども家庭庁では、前述のように、定期的にこどもたちの声を聞く機会を設けている。今回の議論に際しても、骨子を中高生に分かりやすく解説したうえで、意見を聞いている。

 こどもから出た意見は、当事者ならではのものが目立つ。例えばペアレンタルコントロール機能は、大人にとってはこどもを保護するものだが、こどもからは「プライバシー保護の必要性」という声が上がる。必要性は認めつつも、何を閲覧したか親に知られたくないというわけだ。また、自分たちにリテラシーが必要なことを理解しつつ、「大人もリテラシーがないといけないのでは」という意見も出た。

 「ショート動画を自分では見るのをやめられない」という意見もあったという。「おすすめ機能や無限スクロール等のサービス設計そのものが長時間利用や情報の偏りにつながる」との意見や、生成AIによる偽情報への懸念の声も挙がった。

 スマートフォンやインターネットの使い方のルールは、家庭によって異なる。そのため、例えば、ゲームの利用時間を制限する家庭もあれば、無制限の家庭もあり、それによって、友達と同じゲームを遊んでいても進行度に差が出てしまう。それに対する不満があり、「国が一定のルールを決めてくれたほうが公平」という意見もあった。

 「年齢制限はあってもいい」という意見もあったが、「制限はあってもいいが、自分の年齢は(制限を)やめてほしい」という傾向も見られる。

事業者の責務を増やし、規制や行政措置・罰則も検討

 こども家庭庁では、事業者の役割やステークホルダーを増やしていく方針で議論を進めている。現状は携帯電話会社がフィルタリングの提供義務・説明義務を持つが、SNS等プラットフォーム事業者にも一定の責務を持たせ、役割を果たさせる方針だ。

 「今後、WGの議論を継続し、事業者に対する規制のポイントを具体化していく。実効性のある制度にしなければならないので、行政的な措置、罰則なども検討する」(関根氏)。リスク評価、保護措置、透明性の確保および技術の進化を踏まえた継続的な改善を事業者に対して求めていく予定だ。

 「OSに搭載されているペアレンタルコントロール機能は有効だが、それだけでなく、利用するアプリ側においても保護措置は重要。OS側でもアプリ側でも保護措置を用意してもらうことが大事」(関根氏)とも。

 大きな課題となるのが、年齢確認だ。現状は自己申告制だが、今後は厳格化を求めていく。OSベンダーでもあるAppleとGoogleは、アカウントに紐付けられた生年月日に基づいて、「年齢範囲」の情報をアプリ事業者に提供できるAPI連携機能を提供している。例えば、このようなOS側の情報を利用する方法も考えられるが、プライバシー保護との両立が可能かについて検討中だ。

 憲法で表現の自由が定められていることもあり、これまでは民間の自主的な取り組みを尊重してきた。引き続き自主的な取り組みは尊重しつつ、こどもがリスクに遭わないようにしていくためにはどうすればいいのか、行動規範を示していく。「これまでもさまざまなステークホルダーによってリテラシー向上に向けた取り組みや啓蒙啓発はしてきたが、国が一定の考え方を示したり、そうした考え方をまとめていくためにも官民で連携する仕組みも必要ではないか。官民連携協議会を作ることも検討する」(関根氏)。

レコメンデーション、無限スクロールは有害性がある可能性

 現行法の見直しのポイントの1つとして、「現行の青少年有害情報の例示の範囲についての対応(機能、設計(例:アルゴリズム)を含む)」が挙げられている。こども家庭庁でも、SNSでのアルゴリズムによるレコメンデーション、無限スクロールなどは、有害性を持つ可能性がある機能の例としてとらえている。

 一方で、年齢や発達段階に応じて有害性は変わるため、一概に有害とはとらえていない。「リスクにつながりうる機能の1つではある。しかし、サービスごとに多様な性能設計があり、年齢や発達段階に応じてもリスクの程度は変わるので、ある機能について一律に有害という評価ができるかは疑問が残る」(関根氏)。

保護者へ、目安となる行動指針を示していく

 保護者のリテラシー向上も目指すが、保護者がこどもやインターネットとどう向き合えばいいのか分からないのが実態だ。そこで保護者向けに、こどものインターネット利用に対する考え方、年齢に応じたリスク、適切な対処などについての基本指針を示していく。これを法律にも位置付け、官民連携の中で議論して見直しもする。

 ただし、リスクに対する考え方、ペアレンタルコントロールの必要性、トラブルの相談先などは示すが、最終的な方針は家庭ごとに決めてもらう。「年齢や発達段階に応じたこどもの保護の在り方について、リスクや対策の考え方を示すことで、保護者を含めた関係者が共通の方向性の下で取り組むことができるようになる」(関根氏)。

こどものウェルビーイングを基準に基本方針を作る

 こども家庭庁は、あくまでこどものウェルビーイングを基準に置いている。「こども若者★いけんぷらす」などのこどもが意見を言える場を設けてはいるが、こどもの意見はもっと幅広く聞くべきと考え、「幅広いこどもの意見を聞くために、引き続き方策を模索していきたい」(関根氏)考えだ。

 「日進月歩のこの時代に、こどもの保護政策をいかに適切なかたちで出していけるのかが今のミッション。一度改正してもすぐに時代が先に行くので、今後、世の中に遅れない仕組みにしていきたい。」(関根氏)

 WGでの議論で年内に方針を固め、来年の法制化を目指している。

高橋 暁子

ITジャーナリスト/成蹊大学特別客員教授。SNSや情報リテラシー教育が専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい。『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α新書)、『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)ほか著書多数。https://akiakatsuki.com/