清水理史の「イニシャルB」

USBケーブル1本でiPhoneも操作できるリモートKVM、GL.iNet「Comet Q」を試す
2026年10月5日 06:00
今やリモートKVMの定番メーカーになりつつあるGL.iNetから、新製品となるComet Q(GL-RMQ1)が登場した。
最大の特長は接続方式にある。操作対象となるデバイスと接続するのは、USB Type-Cケーブル1本のみ。これで、Windows PC、Mac、iPhone、Androidをリモート操作できる。その実力を検証してみた。
手軽さは文句なしだが万能ではない
最初に断っておくと、本製品は非常に手軽で便利だが、すべての機器で使えるわけではないし、誰が使っても便利な製品でもない。
本製品の特徴は「USB Type-C 1本でつながる」ことだが、実は、それ以外の接続には対応していない。つまり、USB Type-Cだけでディスプレイ、キーボード、マウスを制御する必要があるため、接続先のデバイスが映像出力対応の「USB Type-C Display Alt Mode」をサポートしていないと意味がない。なので、古いPCなど、HDMI経由でのディスプレイ出力が必要なデバイスの制御には向いていないことになる。
ということで、接続先のターゲットとなるデバイスは、Windows搭載のノートPCやミニPC、MacBookやMac mini、そしてiPhone、iPad、Androidスマートフォンということになるのだが、このスマートフォンを制御できる、しかもケーブルを1本つなぐだけで、という点こそが、既存のリモートKVM製品との最大の違いになる。
「いやいや、ポケットに入れて持ち歩けるスマートフォンをどうしてリモート操作する必要があるのか?」
そんな疑問も当然だ。なので、具体的な利用ケースも広いわけではない。例えば「iPadなどをデジタルサイネージや店舗システムなどとして活用しており、その設定や制御をリモートで行いたい」「スマートフォンアプリからしか設定できないBluetooth機器が離れた拠点に設置されており、現地のスマートフォン経由でリモート操作したい」「複数台のスマートフォンを使ったUI検証や接続検証が必要だが、実機を直接操作するのではなく手元のPCから切り替えながら操作したい」など、スマートフォンが離れた場所に固定されている、もしくは近くてもあえてPCから操作したいというケースがあてはまると考えられる。
PCの場合であれば、シンプルにケーブル1本で自宅のPCをリモート操作できるので汎用性が高いが、スマートフォンの場合は、具体的な用途が思い浮かびにくいのが難点だ。
コンパクトで設定も簡単
それでは実機を見ていこう。本体のサイズは70×70×22mmと、非常にコンパクトだ。デバイスと接続するためのUSB Type-Cケーブルも本体に付属しており、使わないときは背面に収納できるように工夫されている。
インターフェースは、デバイス接続用のUSB Type-Cケーブルの反対側に電源供給用のUSB Type-Cコネクタが用意されており、Comet Q本体への給電に加え、パススルーで同時にデバイス側にも給電可能になっている。こうした工夫はありがたい。
また、前面はタッチ対応のディスプレイとなっており、接続状況の確認やWi-Fi接続設定などが可能になっている。
ネットワーク接続はWi-Fiで、Wi-Fi 6に対応し、2.4GHz帯と5GHz帯の両方が利用できるが、最大速度はいずれも最大286Mbpsとなる。アンテナ1本のシングルストリーム構成で40MHz幅ということになる。
使い方は非常に簡単だ。つないで、ディスプレイに表示された指示に従うだけでいい。Comet QをデバイスのUSB Type-Cポートにつなぐと、電源が自動的にオンになり、初期設定の案内が表示される。ここで、セキュリティ用のピンコードと、Wi-Fi接続を設定すればひとまず完了だ。画面に表示されたIPアドレスで、同じネットワーク上のPCのブラウザーでアクセスすればリモート操作用の画面が表示される。
インターネット経由での制御が必要な場合は、同社のクラウドサービスを利用するか、TailscaleまたはZeroTierを使うことになる。同社のクラウドサービスであれば、あらかじめGoogleアカウントなどでサインインしておき、デバイスに表示されたコードを入力するだけで設定できる。中間サーバーを経由する方式も提供されるので、デバイスが設置されたネットワーク環境を問わず、リモート操作可能だ。
リモートKVMは、複数機器で使い分けようとすると、ケーブルの抜き差しが面倒に感じられるのだが、本製品はUSB Type-Cケーブル1本、それも本体内蔵のケーブルでサッとつなげられるので、非常に便利だ。複数台のデバイスで使い分けたいときは特に便利と言える。
iPhoneの制御に挑戦。快適だが細かな不満も
実際の使用感もいい。例えば、以下は、接続される側のComet Qをauひかりの10Gbps回線、接続する側のPCをフレッツ 光クロス回線に接続し、ストップウォッチを動かしながら撮影した写真だが、遅延は0.2秒ほどとなっており、ほとんど気にならない。
接続時の設定は解像度が「2560×1440/60fps」で品質は「Lossless」、検証時の接続方式はP2P(インターネット上の中間サーバーを介さない状況)となっており、この状況で200~300kbps前後、60fpsで安定して通信できていた。
このあたりは既存製品でのノウハウが生きている印象で、実際にiPhoneの画面もきれいに表示されるし、操作しても違和感がない。もちろん、実際の使用感は、ネットワーク環境次第なので何とも言えないが、高速な回線と混雑してない時間帯なら、かなり快適に操作できる印象だ。動画や簡単なパズルゲームを利用しても、違和感はない。
ただ、iPhoneの場合、リモート操作するには事前の設定が必要になる。具体的には、「設定」の「アクセシビリティ」で「タッチ」から「AssistiveTouch」と「オンスクリーンキーボード」をオンに設定する。また、これは状況次第だが、画面の自動回転をロックしておくことをおすすめする。自動回転が有効になっていると、画面上の座標を正確に把握できないケースがあり、リモート操作画面でマウスを動かした方向と、画面上でポインターの動く方向が反対になる場合がある。
試用前は、「リモートから画面ロックどうやって解除するんだろう?」と疑問だったが、iPhoneの画面が消えている状態でも、リモート操作画面でマウスカーソルを動かすと自動的にロック画面が表示され、Face IDの代わりに、コードでロックを解除できた。もちろん、コードはPCのテンキーから入力可能で、さっと操作できる。
最初に苦労したのは、iPhoneアプリの終了や切り替えだ。当初は、マウスでポインターを画面の一番下からグイッと上にドラッグするという、iPhoneでのいつもの操作をしていたのだが、何のことはない。「AssistiveTouch」が有効になっていると、画面上にボタンが表示されるので、これをマウスでクリックすれば、「ホーム」への移動、通知センターの表示、さらには音量ボタンの操作、スクリーンショットなどの操作ができる。
なので、アプリの操作に関しては、「ほぼ」困らない。
もちろん、完璧ではなく、制限される機能もある。例えば、筆者が使ってみた限りでは以下のような点が課題となった。
- Amazon Prime Videoなどの保護されたコンテンツは表示できない
- アプリがFace ID認証を要求する場合に解除できない
- リモートクリップボードからの貼り付けに日本語は対応しない
- キーボードの配列がPCと合わない(iOSでハードウェアキーボード設定が表示されない)
基本的なリモートからの画面制御という点での完成度は高いが、制御側のデバイスの制限だったり、日本語環境での制限だったりと、細かな使い勝手の部分で課題はある。仕組み上、どうしようもない部分もあるので、利用者も「直接操作と全く同じことができるわけではない」という点は意識しておくべきだろう。
一点突破の発想がすばらしい
以上、今回はGL.iNetのComet Q(GL-RMQ1)を使って、実際にiPhoneをリモート操作してみた。コンパクトでケーブル1本でつながること、設定が簡単で誰でもすぐに使える点などは本当によくできている。
GL.iNetはトラベルルーターなど、他社が手掛けないニッチな分野の製品を開発しているが、ニッチな分野だけに製品への強いコダワリを感じさせる仕上がりになっている。実際に必要かどうかにかかわらず、思わず筆者が買ってしまうのも、こうした開発者側の意気込みが感じられるからなのだが、ただ、まあ、実際に使ってみると荒い部分を感じるのも事実だ。
ちなみに、手元にあったNintendo Switch 2も、一応、接続してみたが、そもそもSwitch 2がドック経由でのUSB Type-C映像出力に対応していないので、これは無理だった。つながったとしても、それこそ、冒頭で触れたように、具体的な活用シーンが思いつかないが……。
いずれにせよ、本製品は、そもそもクラウドファンディングで立ち上がった企画であり、製品として非常にチャレンジングな挑戦と言える。個人的には、そこを応援するつもりで購入したが、興味のある人は買ってみるのも悪くないだろう。








