清水理史の「イニシャルB」

エントリーWi-Fi 7ルーターの熱い戦い! 「小型・低価格」を突き詰めたエレコム「WRC-BE36GS」の高い完成度
2026年10月13日 06:00
Wi-Fi 7ルーターのエントリークラスの争いが熱い。TP-Linkがベストセラーの「Archer BE220」にホワイトモデルを追加したかと思えば、エレコムは「小型化」というアプローチでエントリークラスに新製品となる「WRC-BE36GS」を投入してきた。実売価格も税込で1.1万円前後の争いとなっており、両者一歩も引かずという状況になっている。今回はエレコムの「WRC-BE36GS」の実力を検証してみた。
安さ「も」あきらめないエレコム
個人的に高く評価していたエレコムのエントリー向けWi-Fi 7ルーター「WRC-BE36QS」が販売終了となった。
2882+688Mbps対応で、時に実売1万円を切る価格設定でありながらWAN側2.5Gbps対応というスペックを持った製品だった。2026年9月時点では、まだAmazon.co.jp向けの「WRC-W701-B」は販売継続を確認できており、同時点でWi-Fi 7ルーターの最安値(実売9780円)の座をキープしているが、量販店向けのモデルが販売終了になったことで、今後の販売状況は不透明だ。
同製品は、TP-Linkのエントリーモデル「Archer BE220」(実売1万900円)と激しい価格競争を繰り広げてきた製品だったので、「残念だが、退場することになったか……」と個人的に惜しんでいたのだが、どうやらそうではなかった。
2026年9月、エレコムはWi-Fi 7ルーターのエントリーモデルとなる新製品「WRC-BE36GS」をリリースした。
本製品の実売価格は、税込で1万1350円(2026年9月時点)。この時点での価格では、前述のArcher BE220より数百円高く、最安の同胞WRC-W701-Bより1000円以上高いが、バッファローのWSR3600BE4P(実売1万3286円)よりも安く、新製品ながら調査時点では3番目に安い価格を実現している。
実は、まだ発売前だが、TP-Linkは、ベストセラーのArcher BE220のホワイトモデル(Archer BE220W)の発売を予定しており、高い無線性能+低価格(執筆時点では実売価格は不明)に加えて、「カラバリ」という新しい付加価値で勝負してきた。これにより、再びTP-Linkとエレコムによるエントリーモデルの新たな戦いの幕が開くことになる。
見ている分には面白いが、どちらの担当者とも気が休まることはなさそうだ。
バッファロー製品も視野に入れたコンパクトサイズ
今回登場したエレコム「WRC-BE36GS」の特徴は、サイズがコンパクトな点だ。
これは、明らかにバッファローのWSR3600BE4Pを視野に入れた改善だろう。36×128×160mm(幅×奥行き×高さ)というサイズは、Archer BE220(52.5×155×170mm)より小さく、現状コンパクトさで高い評価を得ているバッファローのWSR3600BE4P(43×133×148mm)に高さは劣るものの、幅と奥行きは小さくなっている。
このうえバッファローにまで戦線を広げなくてもいいのに……と思わなくもないが、それだけ気合が入った新モデルということなのだろう。
実際、本製品はかなりコンパクトだ。エレコムのWi-Fiルーターはハイエンドモデルともデザインが似ているので、サイズ感がわかりにくいのだが、手のひらサイズと言ってもいいほどのサイズで、重量も軽い(340g)。側面に壁掛け用の穴もあるので、壁掛けで利用することもできる。
デザインもシンプルでロゴも控えめになっているため、インテリアと並べても違和感のない製品を探している人にとってもメリットがある。
ただ、残念ながら、今回の新製品は有線LANポートが全て1Gbps対応となっている。前述した従来モデルのWRC-BE36QSは、WAN側が2.5Gbps対応となっており、1Gbps以上の回線での利用も視野に入る点が特長だったが、今回は割り切って1Gbpsのみとなっている。
1Gbps以上の回線となると、現状は10Gbpsが主流になっているので、高速な回線接続は上位モデル(WRC-BE72XSDやWRC-BE100XS)に任せて、エントリークラスは1Gbps対応に専念しようということなのだろう。
背面のインターフェースには、有線LANポートに加え、物理スイッチが多く搭載されているのも本製品の特徴だ。昨今は、物理スイッチを排除する傾向があるが、本製品には「ルーター/AP/中継機」の切り替え、「EasyMesh/離れ家/NORMAL」の切り替えスイッチがあり、さらにWPSボタン、リセットボタンも背面に搭載される。コンパクトサイズという制約の中で、物理ボタンをしっかり残していこうという姿勢が伝わってくる。初心者にとって、簡単とは言っても、設定画面でのモード切替などは敷居が高い場合がある。
さらに、スペック表を見ていて気付いたのだが、本製品のアンテナはもちろん内蔵であるものの、5GHzが送信3本×受信3本、2.4GHzが送信2本×受信2本(要するに5本)となっている(バッファローWSR3600BE4Pも同じ構成)。しかも、詳細は後述するが、この影響か性能も高い。
サイズをコンパクトにする一方で、物理ボタンやアンテナといったユーザーの利便性、快適性に影響する部分に妥協していない点は高く評価したい。
| 価格 | 1万1350円 |
| CPU | - |
| メモリ | - |
| 無線LANチップ | - |
| 対応規格 | IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b |
| バンド数 | 2 |
| 最大速度(2.4GHz) | 688Mbps |
| 最大速度(5GHz) | 2882Mbps |
| 最大速度(6GHz) | - |
| チャネル(2.4GHz) | 1-13ch |
| チャネル(5GHz) | W52/W53/W56 |
| チャネル(6GHz) | - |
| ストリーム数(2.4GHz) | 2 |
| ストリーム数(5GHz) | 2 |
| ストリーム数(6GHz) | - |
| アンテナ | 内蔵(5GHz×3+2.4GHz×2) |
| WPA3 | 〇 |
| メッシュ | EasyMesh |
| IPv6 | 〇 |
| IPv4 over IPv6(DS-Lite) | 〇 |
| IPv4 over IPv6(MAP-E) | 〇 |
| 有線(WAN) | 1Gbps×1 |
| 有線(LAN) | 1Gbps×3 |
| 有線(LAG) | - |
| 引っ越し機能 | 〇 |
| 高度なセキュリティ | - |
| USB | - |
| USBディスク共有 | - |
| VPNサーバー | - |
| DDNS | - |
| リモート管理機能 | - |
| 再起動スケジュール | - |
| 動作モード | ルーター/AP/中継機 |
| ファーム自動更新 | 〇 |
| LEDコントロール | - |
| ゲーミング機能 | - |
| サイズ(mm) | 36×128×160 |
1Gbpsの壁はあるが性能は上位モデルも上回るレベル
気になる性能だが、非常に優秀だ。Wi-Fiのテストはテスト時の周囲の状況や利用する機器によって変わるので一概には言えないが、今回、木造3階建ての筆者宅での計測結果はかなりよかった。
| 通信 | 1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 |
| 上り | 946Mbps | 871Mbps | 579Mbps | 385Mbps |
| 下り | 945Mbps | 901Mbps | 881Mbps | 477Mbps |
※サーバー:MINISFORUM MS-01 Corei5-12600H/RAM64GB/1TB NVMeSSD/10Gbps SFP+/Proxmox 9.1 LXC(Ubuntu 24.04)
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
本製品は前述した通り、有線LANが1Gbps対応なので、1階での結果は下り945Mbps前後と1Gbpsの有線がボトルネックになってしまうが、距離が離れても、この速度が落ちにくい。2階で901Mbps、3階の入り口でも881Mbpsと1Gbps有線に近い速度を実現できているうえ、3階端でも477Mbpsと非常に高速な結果となった。
正直、3階の結果は、より高いスペックの上位モデルでもなかなか実現できない値で、テスト時の環境が非常に良かった結果と仮定しても、優秀な値となっている。また、筆者のテスト環境では上りの速度が遅くなる傾向があるのだが、その差も小さい。念のため、日時を変えて複数回計測したが、安定して高い値を実現できている。
前述したように、5GHz帯で3本のアンテナを利用できていることが大きく、筆者宅のような上下方向でも最適なアンテナを使い分けることができることが影響していると考えられる。同社のグループ企業のDXアンテナの技術などが生かされている可能性もありそうだ。TP-LinkのArcher BE220もエントリークラスの製品としてはベンチ結果が優秀だが、本製品の結果はかなり優秀だ。
機能がシンプルな点をどう考えるか?
ということで、今回エレコムのWRC-BE36GSをテストしてみたが、価格も、サイズも、性能も、かなり優秀な製品と言える。
使いやすさも問題なく、既存のWi-Fi環境から設定を引っ越しすることができるうえ、インターネット回線も自動的に判別できるなど手間なく設定できるようになっている。筆者宅のASAHIネットの回線はDS-Liteは接続可能だったが、残念ながらIPIP固定は非対応だった。上位モデルのWRC-BE100XSが対応していたので「もしかしたら……」と期待していたのだが、さすがに1GbpsモデルでIPIP固定設定は省かれたようだ。
機能的にはWi-Fiでインターネットに接続するという基本的に不足はなく、MLOも標準で有効化されているが、Dynamic DNSやVPNサーバー機能、USB共有などの機能は省かれている。またスマートフォン用の専用アプリやリモートからの設定にも対応しない。
セキュリティ機能は、子どもの接続を制御する「こどもネットタイマー3」は利用できるが、より高度なセキュリティ機能となるF-Secure SENSEを利用したい場合は、実売価格で2000円ほど高い「WRC-BE36GSD(量販店または同社オンラインストアで購入可能)」を購入する必要がある。
なので、基本的に本製品は、インターネット接続とWi-Fi接続という基本的な機能をコンパクトな本体に収め、なるべくやすい価格で提供する製品と位置づけられる。多くの機能を求めない初心者層におすすめできる製品と言えるだろう。




