清水理史の「イニシャルB」

WAN/LAN 10GbpsのWi-Fi 7ルーターなのに5万円切り! エレコム「WRC-BE100XS」は余計な機能を削る一方で、IPIPの固定IPに対応!

ELECOM 「WRC-BE100XS」

 買ってびっくり。まさか、筆者宅で使っているASAHIネットのIPIP方式固定IP接続サービスに対応しているとは……。

 エレコムから登場した「WRC-BE100XS」は、トライバンドのWi-Fi 7、WAN/LAN共に10Gbps対応という同社のハイエンドモデルだ。最大の特長は、トライバンド10Gbps対応で実売価格が5万円を切るコスパの高さだが、機能的にはシンプルで、ある程度、割り切った使い方になる。その実力を検証した。

IPIP方式の固定IPで使えるぞ!

 先日、フレッツ 光25Gの取材でASAHIネットを訪れた際(「『フレッツ 光25G』の実測値は16.7Gbps! 『やってみてわかったこと』を大切に技術者視点で最前線を走るASAHIネット」)にも、興奮して早口で一方的にまくし立ててしまったのだが、なんと、今回取り上げるエレコムの「WRC-BE100XS」は、ASAHIネットのv6コネクト環境で提供されているIPIP方式の固定IP接続サービス(IPv4 over IPv6)に対応している。

IPIP方式による固定IP接続サービスに対応。IPIP手動とHB46PPの両方に対応する

 筆者が知る限り、家庭向けの製品でこの方式に対応しているWi-Fiルーターは、これまでLinksysの「Velop WRT Pro 7」のみで、あとは法人向けのルーターしか対応していなかった。Velop WRT Pro 7はWAN側2.5Gbps対応なので、実質的に10GbpsでつながるIPIP方式対応家庭用Wi-Fiルーターは存在しなかったことになる。

 更新に少し時間がかかっているそうで、本稿執筆時点(2026年8月31日)では、まだASAHIネットの「IPv4 over IPv6接続(IPIP)対応ルーター情報ページ」に掲載されていないのだが、実際に筆者宅の環境で接続できることを確認できた(アイオーデータのWN-7T100XXRも対応していると推測されるが、未確認)。

 しかも、JAIPAが主導する「IPv4 over IPv6(標準プロビジョニング方式/HB46PP)」に対応しており、面倒な手動設定不要で、自動的に固定IPで接続できる。

 もちろん、10G回線でIPIP方式の固定IP接続のユーザーは、決して多数派ではない。しかしながら、こうしたニッチな用途にも対応する仕様で製品をリリースする姿勢は高く評価したい。

 というか、製品情報ページにも特に記載が見当たらないが、こうした工夫はもっと宣伝してもいいと思う。必要としている人は必ずいるので。

5/6GHz帯は2ストリーム対応

 というわけで、個人的かつニッチな話題から入って申し訳ないが、前掲のIPIP対応の話を差し引いても、本製品はなかなか「いいところを突いた」製品だと思う。

 まずコスパがいい。ここ数年、エレコムはTP-Linkとも勝負できるようなコスパ戦略を打ち出してきているが、本製品の実売価格は2026年8月31日時点で4万8804円と、5万円を切っている。

 トライバンド対応で、かつWAN/LANともに10Gbps対応の製品は、各社のハイエンドクラスとなっており、TP-Linkの「Archer BE805」が実売5万3000円、バッファローの「WXR18000BE10P」が実売5万4499円、ASUSの「RT-BE18000」が実売5万9991円、7月に値上げが発表されたNECプラットフォームズの「Aterm 19000T12BE」が9万7879円と、5万円以上が相場となっている。

WAN/LANともに10Gbps対応

 もちろん、安い理由はある。前掲の4製品はいずれも5GHz帯と6GHz帯が4ストリーム対応となる。つまり、5GHz帯で最大5764Mbps、6GHz帯で最大11529Mbpsを実現できる。

 これに対して、エレコムのWRC-BE100XSは、5GHz帯が最大2882Mbps、6GHz帯が最大5765Mbpsといずれも2ストリーム対応となる。2.4GHz帯は最大1376Mbpsで4ストリーム対応なので、5GHz帯と6GHz帯のストリーム数が少ないことになる。

 PCやスマートフォンも基本的に2ストリーム対応なので、最大速度は変わらないのだが、同時接続という点では4ストリーム対応製品に比べて不利になる。つまり、本製品は5/6GHz帯であまり多くの台数をつながない、と割り切ったユーザーに対して、安価で製品を提供しようという狙いになる。

ELECOM WRC-BE100XS スペック
価格4万8804円
CPU-
メモリ-
無線LANチップ-
対応規格IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b
バンド数3
最大速度(2.4GHz)1376Mbps
最大速度(5GHz-1)2882Mbps
最大速度(5GHz-2)-
最大速度(6GHz)5765Mbps
チャネル(2.4GHz)1-13ch
チャネル(5GHz-1)W52/W53/W56
チャネル(5GHz-2)-
チャネル(6GHz)1(191)~93(283)
ストリーム数(2.4GHz)4
ストリーム数(5GHz-1)2
ストリーム数(5GHz-2)-
ストリーム数(6GHz)2
アンテナ内蔵×8
WPA3〇
メッシュEasyMesh
IPv6〇
IPv4 over IPv6(DS-Lite)〇
IPv4 over IPv6(MAP-E)〇
有線(LAN)10Gbps×1+1Gbps×4
有線(WAN)10Gbps×1
有線(LAG)-
引っ越し機能〇
高度なセキュリティ-
USB-
USBディスク共有-
VPNサーバー-
DDNS-
リモート管理機能-
再起動スケジュール-
動作モードルーター/AP/中継機
ファーム自動更新〇
LEDコントロール-
ゲーミング機能-
サイズ(mm)70×240×266.7

機能的にもシンプル

 こうした発想は機能面にも表れている。もともとエレコムのWi-Fiルーターはシンプルな機能が特徴ではあるが、本製品にはUSBポートやVPNサーバー機能、リモート管理機能などは搭載されない。一応、ペアレンタルコントロール機能で、MACアドレスごとに利用時間を制限することはできるが、付加機能はほとんどなく、基本的にはインターネット接続やWi-Fi接続という基本機能のみが提供される。

ペアレンタルコントロール機能は搭載されるが基本的な機能はシンプル

 言い換えれば、こうした基本機能の範囲と考えられるなら、冒頭でも触れたIPIP接続にも対応するという姿勢で、まさに「Wi-Fiルーター」としてインターネットやWi-Fiでつながることに特化した製品になっている。

 個人的には、LEDの消灯機能とか、DHCPサーバーでのDNSサーバー手動設定とか、欲しい機能はいくつかあるが、普通のユーザーなら本製品で不満を感じることはないだろう。

5GHzと6GHzの使い分けが必要

 気になるパフォーマンスだが、十分な印象だ。以下は、筆者宅の1階に本製品を設置し、1~3階でiPerf3の速度を測定した結果となる。

 本製品は標準で2.4GHz帯、5GHz帯、6GHz帯、さらにMLO用のSSIDが個別に設定されており、ユーザーが意識的に接続する帯域を選ぶ方式になっている。今回は6GHz帯のSSIDと5GHz帯のSSIDでの測定結果を掲載する。

WRC-BE100XS(5GHz)ベンチマーク結果
通信1F2F3F入口3F窓際
上り1490Mbps493Mbps312Mbps137Mbps
下り1480Mbps467Mbps353Mbps182Mbps
WRC-BE100XS(6GHz) ベンチマーク結果
通信1F2F3F入口3F窓際
上り1930Mbps264Mbps15.9Mbps18.3Mbps
下り1970Mbps617Mbps142Mbps57.2Mbps

※サーバー:MINISFORUM MS-01 Core i5-12600H/RAM64GB/1TB NVMeSSD/10Gbps SFP+/Proxmox 9.1 LXC(Ubuntu 24.04)
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2

 結果は、1階の近距離は6GHz帯で2Gbps近い速度が出ているので十分な印象だが、6GHz帯は距離や遮蔽物の影響を受けやすいため、3階以上では速度がかなり落ちる。近距離は6GHz帯、長距離は5GHz帯(もしくは空いていれば2.4GHz帯)と使い分けるといいだろう。

 なお、本製品だが、6GHz特性が水平方向に強い印象がある。筆者宅での検証では1階の棚の上(1.7m前後)の場所に本製品を設置した。こうした使い方の場合、本製品よりも低い場所に設置したPCから通信すると上記のように1.9Gbps前後となるが、PCを少し上げて(例えばPCを持って立った状態)計測すると、2.5Gbps前後まで速度が向上する。

 上記のベンチの結果でも3階で6GHz帯の速度の落ち込みが大きいので、6GHz帯は近距離向けと割り切り水平方向に強くなるようにアンテナが配置されているのかもしれない。本製品で「電波が弱い(遅い)」と感じる場合は、置き場所を工夫してみるのもひとつの手だ。

難点は本体サイズ

 ということで、今回はエレコムのWRC-BE100XSを実際に検証してみたが、IPIP方式対応のおかげで個人的にも重宝しているし、パフォーマンスが劇的に高いというわけではないが、帯域を使い分ければ快適に使えるので、コスパという観点で見ても人に薦めやすい製品となっている印象だ。

 唯一の難点は、本体が大きいことだろう。ハイエンドクラスのWi-Fiルーターではサイズが大きくなることは珍しくないが、本製品は70×240×266.7mmとなっており、結構大きい。縦置きなので設置面積はさほど要求されないが、奥行きと高さはそれなりに確保する必要がある。

 昨今は、Wi-Fiルーターも値上がりが激しいので、このクラスの製品が5万円以下で買えるのがいつまで続くかわからないが、10G環境のトライバンドルーターとして考えると、有力な候補と言っていいだろう。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中