清水理史の「イニシャルB」

ASUSの2.5Gbps対応Wi-Fi 7ルーター「RT-BE3600J Pro」、実力はもちろんコスパもいい約1.6万円

ASUSのRT-BE3600J Pro。リーズナブルな価格の2.5Gbps対応Wi-Fi 7ルーター

 高性能だが価格が高い。そんな、少し前のASUS製ルーターのイメージがガラリと変わりつつある。ASUSから登場した「RT-BE3600J Pro」は、2882+688Mbpsのデュアルバンド対応で、WAN/LAN共に2.5Gbpsに対応したWi-Fi 7対応メッシュルーターでありながら、実売価格が1万6990円(2026年9月下旬時点)とリーズナブルな注目の製品だ。相変わらずの多機能さで、できないことを探す方が難しい製品を実際に試してみた。

意外に選択肢が少ないWAN/LAN 2.5Gbps対応デュアルバンドモデル

 ASUSから登場したRT-BE3600J Proは、有線がWAN/LANともに2.5Gbpsに対応したデュアルバンドのWi-Fi 7メッシュルーターだ。

 実はこのWAN/LANともに2.5Gbps対応でリーズナブルなWi-Fi 7製品というのは、選択肢が多くない状況で、ざっとライバル製品を上げると、Amazonのeero 7(実売2万3560円。2882+688Mbps)、TP-LinkのDeco BE25(実売1万6800円。2882+688Mbps)、Archer BE260(1万6929円。4324+688なので無線性能はこちらが若干上)などとなっている。

 「2Gbps以上の回線や2.5Gbps対応のNASを接続したい。できればメッシュも。ただ、あまり費用はかけたくない」という、なかなかワガママなニーズに応える製品となっており、メーカーとしては市場規模がつかみにくいわりに、コストダウンが求められるという「難しい」クラスと言える。

 そして、この分野には、コスパで定評があるTP-Linkがすでに2モデルも製品を投入しており、後発では戦いにくい。そこに、あえて、しかもTP-Link製品と真正面から斬り合うような実売1万6990円という価格で製品を投入してきたのだから、ASUSの気合が伝わってくる。

 「RT-BE3600J Pro」という型番の「J」はおそらくJapanということなのだと想像できるが、本製品はアンテナ内蔵、シンプルなデザインという日本市場で受け入れられやすい要素も兼ね備えている。

 ASUSのWi-Fiルーターは、どちらかというと「俺様」的なイメージで、ROGシリーズなどはまさにそのものだが、「とにかく最高のものを作ってやったから、黙ってコレを使え。アンテナでかくても、むしろそれがいいだろ」という、いい意味で上から目線の製品が多かったのだが、本製品もそうだが昨今はデザインを控えめにしたり、価格を抑えたりと、戦略的な背景が製品に反映されている印象がある。

 そんなASUSはイヤだ、と思う古くからのファンもいるかもしれないが、個人的には、本製品の登場で、いよいよASUSがネットワーク機器で本気で日本市場のシェアを取りに来た、という印象だ。

2882+688Mbpsのデュアルバンド

 それでは製品を見ていこう。本製品は、Wi-Fi 7に対応したメッシュルーターだ。同社のメッシュ製品はZenシリーズが受け持っているが、その流れを汲むようなシンプルなデザインで、アンテナは内蔵され、ロゴやLEDなどもあまり目立たないデザインになっている。今回はホワイトモデルを購入したが、ブラックモデルのカラバリがあるのも特徴だ。

正面
側面
背面

 背面側は、前述したように有線LANは2.5Gbps×2となっている。メッシュルーターでは珍しくないが、WAN/LAN共通ポートで、左右どちらがWAN、LAN、という区別はなく、接続すれば自動的に判断される。あとは電源コネクタと、物理的なパワースイッチがあるだけとシンプルだ。

 WPSボタンやリセットスイッチが見当たらないことに気づいた人もいるかもしれないが、これらは底面に用意されている。WPSボタンを目立たない場所に配置することに違和感があったが、確かに自分の使い方を考えても、最近はWPSで接続する機会がめっきり減っている。接続するときは、製品に同梱されているQRコードを読み込む方が楽だし、早いからだ。もうWPSボタンは目立つ場所にある必要はないのかもしれない。

 Wi-Fiのスペックはデュアルバンドで、5GHz帯が2882Mbps(2ストリーム)で、2.4GHz帯が688Mbps(2ストリーム)となっている。個人的には、Wi-Fiは空いている6GHz帯も使える方がいいと思っているが、6GHz帯は長距離や遮蔽物がある環境に弱いので、コストを抑えられるデュアルバンドは現実的な解と言えるだろう。

ASUS RT-BE3600J Pro スペック
価格1万6990円
CPU1.5GHz クアッドコア
メモリ512MB
無線LANチップ-
対応規格IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b
バンド数2
最大速度(2.4GHz)688Mbps
最大速度(5GHz)2882Mbps
最大速度(6GHz)-
チャネル(2.4GHz)1-13ch
チャネル(5GHz)W52/W53/W56
チャネル(6GHz)-
ストリーム数(2.4GHz)2
ストリーム数(5GHz)2
ストリーム数(6GHz)-
アンテナ内蔵×4
WPA3〇
メッシュAiMesh
IPv6〇
IPv4 over IPv6(DS-Lite)〇
IPv4 over IPv6(MAP-E)〇
有線(LAN)2.5Gbps×1
有線(WAN)2.5Gbps×1
有線(LAG)-
引っ越し機能-
高度なセキュリティAiProtection
USB-
USBディスク共有-
VPNサーバー〇
DDNS〇
リモート管理機能〇
再起動スケジュール〇
動作モードAP/Mesh/Router
ファーム自動更新〇
LEDコントロール〇
ゲーミング機能-
サイズ(mm)140×70×140

過剰に思える機能も削らないASUS

 いや、しかし、ASUSの設定画面はいつ見ても驚くのだが、機能が多い。さすがに本製品はスイッチ制御のVLANなどは省略されているが、前述した2.5Gbpsの有線LANを2本ともWAN側として使う「デュアルWAN」にも対応する。このクラスの製品に「いるかなぁ」とも思うのだが、まあ使える機能は削らないというのがASUSのポリシーなのだろう。

PC向けの設定画面。かなり多機能で使いこなすのが難しいほど
このクラスには過剰と思われるデュアルWANも削られていない

 他社製品だと有料のサブスクになる高度なセキュリティ機能「AiProtection(トレンドマイクロの技術を利用)」ももちろん搭載されており、無料で利用できる。本誌のような商用媒体では触れにくい「AdGuard」のサービスをDNSとして利用することもできるし、トラフィックアナライザーでデバイスごとの接続先やアプリの使用状況をチェックすることもできる。

他社製品ではサブスクとなるセキュリティ機能も無料で利用可能
AdGuardもDNSとして設定可能

 スマホアプリの「ASUSルーター」アプリも利用可能で、リモートから本製品の状態を確認したり、再起動したり、設定を変更したりすることも可能だ。Dynamic DNS、静的経路設定、VPNクライアント/サーバー、VPNフュージョンなども利用できる。要するに、使いきれないほどに機能が多い。

普段は直感的で使いやすいスマホアプリを使うのがおすすめ。リモート設定もできる

 機能が多すぎるから初心者におすすめしにくいか? というと、そうでもない。ウェブブラウザー経由のPC向け設定画面の機能の多さに戸惑う人は、アプリを使えばいい。通信状況をグラフィカルに確認することや、ペアレンタルコントロールなどの設定も簡単にできる。

 言い換えると、マニアはPCからウェブブラウザーで設定した方がいいケースもある。例えば、本製品は接続した回線のインターネット接続方式を自動的に判別できるが、残念ながら筆者が使っているASAHIネットの「v6コネクト」には標準では対応していない。アプリ経由では、DS-Liteを手動で設定できないのだが、ウェブブラウザーで設定画面にアクセスすれば手動でAFTRの設定ができる。アプリによる設定とウェブブラウザー経由での凝った設定をうまく使い分けている点も面白い。

WAN側DS-Liteの手動設定はウェブブラウザーでのみ設定可能。アプリとウェブブラウザーでユーザーや用途をうまくすみ分けている印象

 なお、しつこいようだが、ぜひ「IPIP固定方式」に対応して欲しいことも重ねてお願いしておく。ここまでやっておきながら、使えない機能があるなんて、ASUSらしくないでしょ。

パフォーマンスも問題なし

 気になるパフォーマンスも優秀だ。以下は、木造3階建ての筆者宅の1階に本製品を設置し、各階でiPerf3による速度を計測した結果だ。

RT-BE3600J Proベンチマーク結果
通信1F2F3F入口3F窓際
上り1260Mbps621Mbps387Mbps176Mbps
下り1960Mbps846Mbps518Mbps359Mbps

※サーバー:MINISFORUM MS-01 Core i5-12600H/RAM64GB/1TB NVMeSSD/10Gbps SFP+/Proxmox 9.1 LXC(Ubuntu 24.04)
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows 11 24H2

 有線2.5Gbpsの恩恵で、1階の近距離は1.96Gbpsを達成できている。全体的に上りが低いのは利用したクライアント側の性能(送信電力)なども関係するが、下りに関しては全体的に優秀な結果が得られた。

 距離が遠く、遮蔽物も多い3階も入口で518Mbps、最も遠い窓際で359Mbpsと高い速度を実現できているので文句のない印象だ。ASUS製品の中では、アンテナも内蔵でスペックも抑え気味なので、性能面で若干心配だったが、本製品は性能面の不満もない製品と言える。

結構お買い得

 Wi-Fiルーターは多くのメーカーが値上を発表しており、全体的に価格が上がっているのだが、本製品はそんな状況下で相対的に「お買い得」になった注目製品のひとつと言える。WAN/LAN 2.5Gbps対応で、使いきれないほどの機能が搭載されていることを考えると、コスパはかなりいい。

 本製品は、AiMeshによって既存のASUSルーターと組み合わせたメッシュも簡単に構築できるので、すでにASUSルーターを使っている人向けの追加用としてもリーズナブルな製品となっている。もちろん、本製品を2台使ってもかまわない。個人的にもおすすめできる製品のひとつだ。

清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中