清水理史の「イニシャルB」

コンパクトだからこそのメリットとデメリット、TP-LinkのUSB Type-C対応Wi-Fi 7アダプター「Archer TBE6500U」
2026年9月7日 06:00
TP-Linkから、USB Type-C接続のWi-Fi 7トライバンド対応アダプター「Archer TBE6500U」が登場した。特徴はPCに接続しても邪魔にならないコンパクトなサイズだ。しかし、このコンパクトさは、必ずしも本製品のメリットとはなっていない印象だ。その実力を検証してみた。
Wi-Fi 6→Wi-Fi 7のアップグレードに
TP-Linkから登場した「TBE6500U」(通販サイト向け型番。量販店向けの「Archer TBE400U」と同等製品)は、USB接続のWi-Fiアダプターだ。筆者はAmazon.co.jpで購入したが、実売価格は2026年8月末時点で7700円だった。
かつては家庭用のWi-Fiルーターとセット販売されることもあったUSB”無線LAN”アダプターだが、最近はどちらかというと、組織でのニーズが高まっている。組織内のアクセスポイントのWi-Fi 7化が進む中、Wi-Fi 6以前の世代の古いPCをWi-Fi 7対応にアップグレードすることで、Wi-Fi 7ならではのMLOなどの機能を活用し、効率的なネットワークを構築しようという狙いだ。
現状はバッファロー「WI-U3-2900BE2」(実売8080円)、エレコム「WDC-BE28TU3-B」(実売9480円)なども販売されているが、TP-LinkからはWi-Fi 7対応だけでも今回の「Archer TBE6500U」(TBE400U)のほか、デュアルバンド対応の「Archer TBE230U」(実売6300円)、ハイパワーモデルの「Archer TBE400UH」(実売8100円)がラインアップされている。
毎度のことながら、「そんなに細かいニーズの違いがあるのかなぁ?」と心配になるほど豊富なラインアップだ。
| 製品 | Archer TBE6500U(TBE400U) | Archer TBE230U | Archer TBE400UH |
| 実売価格 | 7700円 | 6300円 | 8100円 |
| 対応規格 | IEEE802.11be/ax/ac/n/a/g/b | ← | ← |
| バンド数 | 3 | 2 | 3 |
| 最大速度(2.4GHz) | 688Mbps | ← | ← |
| 最大速度(5GHz) | 2882Mbps | ← | ← |
| 最大速度(6GHz) | 2882Mbps | - | 2882Mbps |
| ストリーム数(2.4GHz) | 2 | ← | ← |
| ストリーム数(5GHz) | 2 | ← | ← |
| ストリーム数(6GHz) | 2 | - | 2 |
| MLO | MLSR 2.4+5/MLSR 5GH+5GL | ← | ? |
| USB | Type-C/Type-A | ← | Type-A |
| アンテナ | 内蔵 | 内蔵 | 外付け |
| サイズ(mm) | 72×24×10.8 | 72×24×10.8 | 107×30×17.7 |
| 付属品 | - | - | 台座 |
本体はコンパクトで邪魔にならないが……
さて、今回のTBE6500Uの特徴だが、コネクタにUSB Type-Cを採用していること、サイズがコンパクトであることの2つが挙げられる。
本製品は、同社が「デュアルコネクタ」と呼ぶ構成になっており、本体に搭載されるUSB Type-CコネクタでPCに接続できるほか、樹脂ケーブルで接続されたUSB Type-A変換コネクタを利用して、旧来のUSBポートにも接続可能となっている。
「C」でも「A」でもつながることは確かにうれしいが、このアダプターが樹脂ケーブルでつながっている必要があるのだろうか? と疑問に思う。Type-Cで接続すると、ぶらりと垂れ下がり、ノートPCを少しでも浮かせると、樹脂についた曲がりグセのおかげで、隙あらばPCの下へともぐりこんでくる。
USB Type-Cコネクタの位置と本体サイズもおそらく賛否が分かれる。今回、手元にある2台のPCにつないでみたが、PC側のType-Cポートが2つ並んでいる場合、その間の距離によっては本製品が干渉し、片方が使えなくなる。
具体的には、2つのコネクタ間の距離が8mm前後の場合、片方に本製品をつなぐともう片方のポートにケーブルをつなげなくなる。一方で、10mmあると、クリアランスがギリギリ確保でき、もう片方のポートにもType-C充電ケーブルなどを接続できる(ケーブルのコネクタサイズにもよるが……)。
素人考えだが、本製品のUSB Type-Cコネクタを左右どちらかに数mmずらし、非対称にしてくれれば、こうしたケースも回避できたのではないかと思える。USB Type-Cなので表裏どちらの向きにつないでもいいのだから、干渉しそうな場合は裏返すことで、隣のポートとの間隔を確保しやすくなる。
また、筆者の環境だけかもしれないが、本製品をUSB Type-Cポート接続すると、USB 2.0で接続されてしまう場合がある(手元にあるAMD Ryzen AI MAX+ 395環境、Intel Core Ultra 5 226V環境のどちらも同じ)。後述するベンチで、いくらやっても300Mbpsくらいしか出ないので「おかしいなぁ」と悩んだ挙句、USBの接続状況をチェックしたら最大480MbpsのUSB 2.0接続となっていた。
困ったことに、つなぎ直しても、再起動してもType-CだとUSB 2.0接続をかたくなに堅持する。一方で、前述したUSB Type-Aアダプターを使ってUSB Type-Aポートにつなぐと、USB 3.0(5Gbps)で接続できる。
USB Type-Aでつなげば遅くならないし、ポートのクリアランスも気にしなくていい、アダプターが本体下部に回り込むこともないのだが、まったくもって本製品の良さが生きてこない。
USB 2.0接続に関しては相性の問題もありそうだが、シンプルにドライバーの不具合のような気もする。少なくとも、この点は改善を望みたい。
6GHz帯のベンチ結果が良くない
本製品は、Wi-Fi 7ことIEEE 802.11beに対応した製品で、2.4GHz、5GHz、6GHzのトライバンドに対応する。通常の単一リンク接続では、このうちいずれか1つのバンドを利用する。一方、MLO利用時は複数リンクを確立できるが、本製品は1基の無線部でリンクを切り替えるMLSR方式で、STR方式のように複数リンクで同時送受信するものではない。現行の公式案内で対応する組み合わせは、2.4GHz+5GHzと、5GHz High+5GHz Lowで、6GHzを含むMLOには対応していない。
前述したように、本製品には類似品としてArcher TBE230Uというデュアルバンドの製品があるので、本製品は同等のコンパクトサイズなのに6GHz帯を使えるというのが、TBE230Uに対してのアドバンテージとなる。
だが、この「6GHz帯を使える」というメリットは、実質的には近距離でしか生きない。以下は、本製品を5GHz帯と6GHz帯で接続したときのiPerf3の結果だ。比較対象としてPC内蔵無線LAN(Intel BE201)の結果も掲載する。なお、今回は、前述したUSB Type-C接続でUSB 2.0になってしまう問題を解消できなかったので、USB Type-Aで接続した。
| 計測場所 | 1F | 2F | 3F入口 | 3F窓際 |
| PC内蔵(6GHz) 上り | 2110 | 906 | 325 | 72.7 |
| PC内蔵(6GHz) 下り | 2120 | 1130 | 407 | 62.8 |
| PC内蔵(5GHz) 上り | 1610 | 691 | 302 | 293 |
| PC内蔵(5GHz) 下り | 1790 | 1080 | 465 | 352 |
| TBE6500U(6GHz) 上り | 1090 | 168 | 72.9 | 73.5 |
| TBE6500U(6GHz) 下り | 854 | 35.8 | 32.3 | 8.08 |
| TBE6500U(5GHz) 上り | 1190 | 471 | 113 | 78.6 |
| TBE6500U(5GHz) 下り | 1010 | 333 | 97.6 | 31.1 |
※単位:Mbps
※サーバー:MINISFORUM MS-01 Corei5-12600H/RAM64GB/1TB NVMeSSD/10Gbps SFP+/Proxmox 9.1 LXC(Ubuntu 24.04)
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
※アクセスポイント:Unifi U7 Pro XGS
1階、つまり同一フロアの場合、5GHz帯と6GHz帯の性能は5GHz帯がやや上回ったが、誤差の範囲と考えられる。本製品は5GHz帯も6GHz帯も2ストリーム対応で使用帯域幅も160MHz幅までなので、スペック上の最高速度はどちらの周波数帯も2882Mbpsと同じだ。このため速度的な差はほぼない。つまり、本製品で6GHz帯に接続すれば、5GHz帯の混雑を避けつつ同等の通信速度を得ることはできる。
ただ、もしかすると筆者の検証環境の影響が大きいのかもしれないが、2階以上、つまり距離が長く、遮蔽物も存在する環境になると、6GHz帯の速度低下が非常に大きくなる。
もともと、6GHz帯は5GHz帯よりも周波数が高く、距離や遮蔽物の影響を受けやすいのだが(PC内蔵無線LANでも、6GHz帯は3F窓際の速度が低い)、それにしても速度の落ち込みが大きい。
これは筆者の推測だが、本製品はコンパクトなサイズという物理的なメリットを手に入れた一方で、内部のアンテナ配置に大きな制約を受けていると考えられる(本検証はUSB Type-A接続で行っているが、USB Type-Cだと表裏どちらの向きでも接続できる。もしかすると、その向きも影響するかもしれない)。
ただでさえ遠くまで届きにくい6GHz帯で、しかもアンテナに制約があるとなれば、長距離での速度の落ち込みが激しくなるのも納得だ。冒頭のラインアップの話に戻るが、わざわざハイパワーモデルと銘打った「Archer TBE400UH」をリリースした理由も見えてくる。
ということで、筆者の検証結果で考えると、近距離なら6GHz帯を使えるメリットはあるが、距離が離れるケースでは、5GHz帯を使った方がいいということになる。いろいろな場所で使う可能性がある家庭用というよりは、席に近く、見通しもいい天井にあるアクセスポイントと通信する環境、つまりオフィスでの6GHzオフロード用して使うのが向いているのではないかと思える。
実用的なコンパクトさを追求してほしい
以上、TP-LinkのUSB Type-C接続Wi-Fi 7アダプター「Archer TBE6500U」(TBE400U)を実際に使ってみたが、いろいろ欲張ったわりに、強みを発揮できる場面が限定されてしまっている印象がある。
コンパクトさを目指したのはいいがアダプターが邪魔だし、USB Type-C接続もいいが接続先のPC環境の差を吸収しきれていない、その結果、本来コンパクトであることのトレードオフである無線性能の低さが逆に目立ってしまっている。
検証環境との相性の問題もあるが、USB 2.0接続という非常に見分けにくいトラブルが発生するのも、製品の印象を悪くする要因のひとつとなってしまった。
ここはひとつ、実用的なコンパクトさ、というのは「こういうものだ」と胸を張って言えるような製品でリベンジしてほしい。もちろん、他メーカーでもかまわない。本製品は挑戦的な製品ではあるが、改良すべき点がまだまだあることも気づかせてくれた製品と言えそうだ。






