テレワークグッズ・ミニレビュー

第168回

ネジザウルスはもういらない!? エンジニアがJIS規格を無視して作った“なめない”ビットの秘密を探る

人気のネジザウルスの出番をゼロにする工具とは!?

 ネジの頭の溝(+とか-のところ)が削れてつぶれてしまい、ドライバーで回せなくなることをネジがなめると言うが、そんななめたネジを緩める専用工具として、圧倒的に有名なのが「ネジザウルス」だ。ペンチの刃先をネジの頭がつかみやすいような形状にした工具で、ドライバーでは回せなくなったネジをつかんで回すことができる。

もっとも有名な「ネジザウルス GT」。かなり前に買ったものなので汚れていて申し訳ない
刃先の形状が独特で、垂直にネジの頭をつかんで回しやすい形になっている

 ペンチタイプの「ネジザウルス GT」に加え、以前レビューしたバイスプライヤータイプの「ネジザウルス VP」(※関連記事参照)などもあって、工具としては驚異的にヒットした製品となっている。

バイスプライヤータイプの「ネジザウルス VP」、こちらの※レビューも参照してほしい

 だが、今回はそんな人気のネジザウルスを不用にすると豪語するなんとも挑戦的な工具が新たに登場したので、それをレビューしてみたい。

身内の謀反? ネジザウルスを不用にするネジザウルス

 それが、電動インパクトドライバーなどに装着して使うプラスドライバービットで、その名も「ネジザウルス ZERO BIT」。そう、名前から分かるとおり、ネジザウルスシリーズを作る株式会社エンジニアが自ら作った製品なのだ。

 一見すると普通のプラスビットのように見えるが、これだとネジをなめること自体が少なくなるそうで、ネジをなめないからネジザウルスの出番がゼロになる。それでつけられた名前がネジザウルス ZERO BIT、というわけだ。自社製品を不用にする工具だというのだから、なかなか自虐的にも思えるが、ユーザーにとってもそもそもなめない方がいいのは当然なので、気になる人も少なくないだろう。

 DIYはそれなりに得意な筆者だが、ことトルクの強い電動ドライバーだと、ネジを締め切った瞬間などに、その衝撃で刃先がカムアウト(ドライバーの先がネジから外れてしまうこと)してなめてしまうことはやりがち。

 そんなわけで以前にもカムアウトしにくいビットをレビューしたことがあって(※関連記事参照)、たしかにビットが変わるとカムアウトのしにくさは変わるのは体感済み。

 例えばアネックスの「ダイヤモンド龍靭ビット」。これは刃先にとても細かいダイヤモンドの粒子がついていて、それがネジにかみ込むことで、カムアウトしにくくするという。

 実際に使ってみても、ネジがグッとかみ込むような感じがあって、まるで強力な磁力があるかのようにネジがビットの先端にくっつく。そして電動インパクトドライバーなどで使ってみても、その摩擦でカムアウトを防いでくれる印象だ。

アネックスの「ダイヤモンド龍靭ビット」もカムアウトしにくくオススメだ
ダイヤモンドの粒子がネジにかみ込む、とのことだが目視ではよく分からない
磁力の効かないステンレス製のビスでもご覧のとおりガッチリとかみ込む

 先日メイカーズの電動ドライバーをレビューしたが(※関連記事参照)、その際も、電動ドライバーに付属していたビットからダイヤモンド龍靭ビットに変えたところ、劇的に作業性がアップしたので、かなりオススメできるビットだと思っている。

 とはいえ、新製品でカムアウトしにくいビットが出たと言うならぜひ試してみたいところだ。

普通のビットとネジザウルス ZERO BITはどこが違う?

 と、いうわけでネジザウルス ZERO BITを入手した。ネジをなめにくい理由は、刃先の形にあるらしい。詳しく見てみよう。

 ネジの頭の形は規格で決まっていて、一般的に「プラスドライバー」と言われて想像するのがJIS規格でH形(フィリップス)と呼ばれるもので、サイズによって1番から4番まである(他にさらに細いS型や、十字ではなく、さらにその間に細い刻みの入ったZ型:ポジドライブなどもある)。

 そしてその刃先の形状も細かく規定されていて、ドライバーの先端も、ネジの溝もそれに合わせて作られている、というのが基本。

プラスドライバーの形状はJIS規格で決められている

 だが、ネジザウルス ZERO BITはその規格を無視して設計している。

 パッケージの説明を見ると分かりやすいが、ドライバーの刃先をネジの溝に入れたときに、通常だと側面に少しすき間ができるのに対して、ネジザウルス ZERO BITではそのすき間がほとんどない。これによってネジがなめにくくなる、ということらしい。

ネジザウルス ZERO BIT
パッケージには「ネジザウルスの出番ゼロ!!」と強気の文字
パッケージ裏の説明。ネジザウルス ZERO BITは奥まで刺さってすき間ができないとのこと

 実際に一般的なビットと比較してみたのが以下の写真だ。

軸径がほぼ同じだったドライバービットと比較。左はパナソニックの電動ドライバーに付属していたもので、右がネジザウルス ZERO BIT

 ネジザウルス ZERO BITは軸径が少し細身なので、手持ちのビットの中から最も軸径が近いビット(パナソニックの電動ドライバーに付属していたもの)を並べてみたのだが、溝の深さ、刃先の厚み、先細になっていくところの角度、いずれも見た目にはほとんど同じように見える。ただし唯一明確に違うのが先端だ。一般的なドライバーは、先端部分もゆるくテーパーになっているのに対して、ネジザウルス ZERO BITはその部分を裁ち落としたようになっている。

明確な違いは先端部分。右のネジザウルス ZERO BITは先端が平らに削り落とされている
先端の違いは明確だが、それ以外は目視で分かるような大きな違いは見られない

 おそらくだが、先端をわずかではあるが削り落とすことで、例えばネジ側の溝の奥にサビなどが詰まっている、あるいはネジの溝の精度が低いような場合でも、ドライバーの刃先が本来の深さまで入る、ということを狙っているんじゃないかという気がする。

 そこで実際にネジにビットを挿してみて、密着感や斜め方向の遊びの具合を確認してみたのだが、ビットをネジに挿しただけだと、どのビットでもそれなりに遊びはあるし、それはネジザウルス ZERO BITも同程度で、ほとんど違いが分からなかった。

 ただ1点、明確に違ったのは、ネジをはめた時のかみ込み具合だ。

 他のビットだとグッとネジに押し込むと、多少なりともネジの溝にかみ込むような感じがあって、ネジが簡単には外れず保持することができる。だが、ネジザウルス ZERO BITはその感じがまるでない。おそらく先端を削り落としていることで、接触面積が減っている、というのが原因だと思う。

 加えて、ネジザウルス ZERO BITは、まったく磁力を帯びていないこともあって、先端でネジを保持する、というのがほぼできない。マグネタイザーなどで磁化したほうが使い勝手はよくなりそうだ。

ネジザウルス ZERO BITはネジを保持する力がほとんど無い。これぐらい斜めにしていればかろうじて保持するが、垂直にするとネジが落ちてしまう
磁力も無いので、鉄のネジがくっつくこともない。マグネタイザーで磁化したほうが使い勝手はよくなりそうだ

 そこで、続いてマクロレンズを使って実際にネジにはめたところのすき間を撮影してみることにした。

 すると、確かにネジザウルス ZERO BITは、わずかではあるがネジの溝の外側のすき間が少ない印象だ。手で触ったときの遊びの具合はほとんど違いが感じられなかったのだが、写真で見比べると、わずかだが外側のすき間に違いがある。

 これがビットによっても結構違って、先に比較で使ったパナソニックの電動ドライバーに付属していたビットはここのすき間が大きく、アネックスのダイヤモンド龍靭ビットだとそれよりはすき間が小さいが、比較すればわずかにネジザウルス ZERO BITのほうがすき間が小さい。

 そこでドライバーの王道、PB SWISSと比較してみると、さすがはPB SWISSという印象ですき間は小さい。ただ、それと比較してもネジザウルス ZERO BITは肉薄するレベルになっていた。

マクロレンズでネジの溝とのすき間をチェック。写真右手前を少し持ち上げてネジの遊び分だけ左後ろに倒れたような状態で撮影しているが、十字の溝の右側のすき間を見ると、明確に違いがある
こちらはダイヤモンド龍靭ビットとの比較。こちらの方が差は少ないが、それでも若干ネジザウルス ZERO BITのほうがすき間が小さく見える
ドライバーの王道、PB SWISSと比較。PB SWISSに迫るネジザウルス ZERO BITもなかなか

使うと実感するカムアウトのしにくさ、その秘密は?

 以上、刃先の形を比べてみたが、確かに一番力がかかりやすい十字の外側部分がしっかり使えていそうというのは分かった。

 ただ、それがどれぐらい影響するのか、実際に使ってみることにする。マキタのペン型ドリルドライバーにネジザウルス ZERO BITを付けて、木工用のネジ、コーススレッドをねじ込んだり抜いたりを繰り返してみた。

 すると、なるほど、確かにカムアウトしにくい印象がある。明確な違い、と言えるほどではないが、ネジを回したときに、ドライバーを外に追い出そう、カムアウトさせようとする力が、一般的なビットと比べて弱い印象がある。イメージとしてはヘックス(六角)やトルクス(星形)のレンチに近い感じだ。

コーススレッド(木ネジ)を木材にねじ込んでみると、たしかにカムアウトしにくい印象。ダイヤモンド龍靭ビットのようにガッチリかみ込んで外れない、というより、そもそもカムアウトしようとする力、押しつけている手を押し返す力が弱いような印象

 特にねじ込むときより緩めるときのほうが、押しつける力が弱くなって、カムアウトしがちなのだが、そういったときでもカムアウトしなかった。ただし押しつける力をわざと弱くしていけばカムアウトはするので、カムアウトしようとする力が全くないわけではない。

 使ってみて気になった点がもう1つ。それがビットをネジの頭に差し込もうとしたときに、一般的なプラスドライバーだと、先端が溝に引っかかれば、ネジの十字の角度がそろっていなくても、スッとちょうどいい向きに回転して滑り込んでくれるが、このネジザウルス ZERO BITは、その感じが弱くて、ネジの溝にひっかかってくれずに外れてしまうことが何度かあった。ちゃんと十字の向きをそろえて入れれば問題ないが、このあたりもヘックスやトルクスの使い勝手に近い。

普通のプラスドライバーだと、このように先端を引っかけてからドライバーを垂直にすると、溝に自然と収まっていく感じがあるが、ネジザウルス ZERO BITだとそれが弱い印象

 こうしたことを踏まえると、もしかしたらドライバーの十字のネジと引っかかる部分が、より垂直に近い角度になっているのかも知れない。と、思いながらネジに差し込んだ時の写真を見ていると、外側はすき間が少ないのに対して、内側のへこみの部分はむしろすき間が大きいように見える。

よく見ると、十字の外側はネジザウルス(写真右)のほうがすき間が小さいが、十字の内側の部分はパナソニック(写真左)のほうがすき間が小さく見える。ドライバーの十字のくぼみ部分の深さがネジザウルスのほうが深いのかもしれない

 プラスドライバーの先端は、先端が先細になった円柱に、4方向から溝を掘った形になっているわけだが、この溝が若干深く、形状も違っているように見える。そう考えると、ネジを回転させようとしたときに、斜めに接する部分をあえて削り落とすことで、カムアウトしにくくさせている、というのがこのビットの設計思想なのかもしれない。だとすれば、ネジとの接触面積は減るので、ネジにかみ込む感じが薄いのも納得だ。

写真の台形に描いた部分が、ネジザウルス(写真左)のほうがより底辺部分が狭く、側面が平行に近いような気がする、が、気のせいかもしれない
そこで、上の写真で台形の底辺に当たる部分をノギスで実測したところ、パナソニック(左)が1.1mmに対してネジザウルス ZERO BIT(右)は1.0mmとその差0.1mm。「10%も違う」とも言えるし、「誤差の範囲」とも言えるしなかなか難しい

 と、ここまでいろいろ書いてきたが、いずれもあくまで筆者の推測だ。いろいろ実測もしてみたが、先端が削られている以外は、そこまで大きな違いは見つけられなかった。

 ネジザウルス ZERO BITを使ってみての印象だが、確かにカムアウトしにくい印象だ。より正確を期すなら、プラスドライバーで特有にある、回した時にドライバーをカムアウトさせようとする力が、ネジザウルス ZERO BITでは弱い(完全にないわけではない)、という言い方が、最もしっくりくる。

 ただ、一般的なプラスドライバーにある、先端さえ引っかかれば十字と自然に勘合してくれるところは、実は使用感にかなり貢献しているとも実感した。ネジザウルス ZERO BITでは、この部分が弱くなっていて挿し込み時にうまく刺さらないことがあって、一長一短があるなぁというのが正直な感想だ。

 だが、常に他のメーカーにはない製品を作り続ける株式会社エンジニアの姿勢はとても感じられたし、まさかビット1つでここまで考察することになるとは思いもしなかった。ぜひ工具マニアの人には一度試してもらって、プラスドライバーの奥深さを楽しんでみてほしい。

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