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海底ケーブルは「P(ペタ)bpsの時代」へ、NECが大容量化などの取り組みを説明
課題となっている「海底ケーブル切断問題」にも言及
2026年9月25日 08:00
NECは、海底ケーブル事業への取り組みについて説明した。
同社の鹿島崇宏氏(海洋事業開発統括部 ディレクター)は、「これまでは、容量拡大のために多芯化を図ってきたが、これが限界に達し、マルチコアファイバーの時代が訪れており、いよいよ1P(ペタ)bpsの時代に入る。NECは大容量化技術の開発と商品化では、他社に先行している。この強みを生かしたい」と述べた。
また、新たに発表した光海底ケーブルシステム「Petal」では、1秒間にペタビット級の超大容量データを通信可能となることも明らかにした。
世界約25%のシェアを持つ3強ベンダーの一角
海底ケーブルは、全世界で約500本が敷設されており、総延長距離は約150万kmに達する。大陸間通信の99%を海底ケーブルが担っており、AIやクラウド、データセンターなどの通信帯域需要により、世界的な通信トラフィックが増加。海底ケーブルに対する高いレジリエンスと信頼性へのニーズが急速に高まっているという。
ここ数年で市場規模も急速に拡大しており、2025年度以降は、年間5000億円の市場規模で推移するとの予測がある。とくに、北米と欧州を結ぶ大西洋横断ルートは、世界有数のデジタルハブを結ぶ重要な通信インフラであり、さらなる通信容量の増加と効率化が求められている。また、昨今では、アジアやアフリカの経済成長にあわせた海底ケーブル需要が伸長しているという。
NECは、仏アルカテル、米サブコムとともに、世界3強ベンダーの一角を占めており、現在、約25%のシェアを持つ。1964年に海底ケーブル事業に参入し、2000年には主要製品の開発・製造・敷設工事までを担うトータルサプライヤーとして事業を展開したものの、2000年以降のITバブルの崩壊に伴い、海底ケーブル事業が大きく停滞した。
国内ベンダーでは三菱電機や富士通が事業から撤退する一方で、NECは、一時は200人以上の陣容を誇った体制を20人規模にまで縮小し、エンジニアは3人だけという体制にまで縮小したものの事業を継続。その後、需要の回復に伴い、NECの海底ケーブル事業も復活。2008年にはケーブルを国内生産するOCCの経営権を取得した。2010年にはNEC初の太平洋横断光海底ケーブルの敷設を行ったほか、2021年には北大西洋横断ケーブル敷設に参入。これまでに、地球11周分にあたる約45万kmの敷設実績を持ち、中継器では7000台以上の導入実績がある。
なお、NECでは、海底ケーブルを敷設するための敷設船は、固定費や維持費がかかることからチャーターする形で調達し、利用をしていたが、今後は自ら保有する方針を打ち出している。導入時期については現時点では未定としているが、「造船所が混みあっており、建設にも時間がかかる。一般的に完成するまでに3~4年を要する。自社保有するには、最短で見てもそれぐらいの時間がかかるだろう」とした。総務省では、海底ケーブルの敷設船を確保するため、調達費用の約半分を補助する方向で検討しており、これを活用したいとの意向も示している。
海底ケーブル市場全体を見ると、アジアおよび太平洋への敷設が約45%を占めており、2025年~2032年には、これが約53%にまで拡大するとの予測がある。NECは、海底ケーブルを福岡県北九州市で、中継器を山梨県大月市で製造し、そこから調達し、敷設できる「地の利」があり、アジアという拡大市場を控えていることが、事業拡大には追い風となっている。
現在では、NECが、国内唯一の海底ケーブルサプライヤーである。
政府では海底ケーブル事業で、世界35%のシェア獲得を目指しているが、この実現はNECの海底ケーブル事業の成長戦略次第ともいえる。
海底ケーブル切断問題では修繕費負担を公平に
一方、課題となっているのは、紛争地域などを中心に、事故を装って、海底ケーブルを故意に切断する事象が発生している点だ。
「海底ケーブルのサプライヤーとして、できることには限りがある」としながら、「どんなにケーブルを頑丈にしても切断される可能性は捨てきれない。陸上に近い部分では、3~5メートルという深い場所に埋設するといったことも行っている。さらに、ケーブルに近づく不審な船舶を監視して、警告を行うといった対策も必要である」などとした。
切断や損傷した海底ケーブルの修繕には、数千万円から数億円のコストがかかるという。切断が発生すると、光ファイバーのなかで送られている監視用信号(OTDR)が、監視システムによって確認でき、数10cm単位でどこで切断しているのかを知ることができるという。NECが所有している海底ケーブルのルート図に沿って、切断した場所まで船で移動し、海底のケーブルを引き上げ、船上でケーブルの修理を行い、融着し、海底に再び降ろす。修理そのものは数時間で終了するが、切断地点までの移動に時間がかかったり、深海では海底ケーブルを引き上げるだけで1日かかったりする。
なお、NECでは、発注先との契約内容の見直しにより、引渡し前に故意の切断があった場合などには、NECが全てを負担しなくていいように公平な取引を進めている。
「NECの海底ケーブルは、25年間という長期寿命があり、その点でも強みがある」とも語った。
海底ケーブルは、外装ケーブルとして、500mまでの海中に敷設するDA(ダブルアーマード)ケーブル、2000mまでのSA(シングルアーマード)ケーブルの2種類がある。また、非外装ケーブルとして6000mまでのLWS(ライトウェイトスクリーンド)ケーブル、8000mまでのLW(ライトウェイト)ケーブルを用意している。浅瀬の場合は、船舶のいかりなどに引っかかって、ケーブルの切断や損傷がないように、頑丈な外装ケーブルを使用する一方、深海ではこうした影響がないため、軽量の非外装ケーブルを利用することになる。
「ケーブルを太くすると頑丈にはなるが、材料によるコスト増や、移送時や敷設時の容積増、重量増にもつながってしまう。とくに、一隻あたりのケーブルの積載距離はケーブルの太さで決まるため、ケーブル径が大きいと海洋工事の効率が下がる。現在の太さであれば、5000トンの敷設船で、7000~8000kmのケーブル敷設が可能になる。一隻の船で、一度に太平洋を横断することを前提にすると、現在の径を太くすることができない」と指摘する。
海底ケーブルの敷設プロジェクトは、数100億円規模の事業となるが、そのうち海洋工事の費用が30%~40%を占めているという。そのため、敷設船を一度出航させるだけで敷設を完了させたいという要望が強い。結果として、ケーブルの太さを変えずに、伝送容量を拡大するという技術が重要になる。そうしたニーズに応える技術革新が進んでおり、ケーブル一本あたりのキャパシティは、2000年の2.5Tbpsから、2020年は240Tbpsと、20年間で100倍に拡大しているという。
「従来は通信キャリアによる敷設だったが、2017年以降にハイパースケーラーが参入してから、容量拡大のための多芯化が急速に進み、NECは、そこで強みを発揮してきた。だが、ファイバー本数が限界に達しており、今後はマルチコアファイバーが導入されることになる。これによって、ペタビット級の伝送容量へと拡大することになる。ここにNECは強みを発揮できる」とした。
太さを変えず、マルチコア化により拡大するニーズに対応
NECでは、2023年に実施したGoogleによる太平洋横断ケーブルプロジェクトにおいて、2コアファイバケーブルを一部に採用。さらに、NECでは、2026年9月22日に、Meta Platformsが推進する世界初の商用ペタビット級光海底ケーブルシステム「Petal」の構築において、協業することを発表したが、ここでは、全面的にマルチコアファイバーケーブルを採用することになる。
「Petal」は、米国とフランスを結ぶ総延長約7000kmの大西洋横断の光海底ケーブルシステムで、2029年に運用を開始する予定だ。
Metaがケーブルシステムのオーナーとしてプロジェクトを推進。NECが2コア海底ケーブルシステム全体を設計および構築。住友電工が2コアファイバーを提供する。
1本の光ファイバー内に、光信号の伝送路を2本設けた2コアのマルチコアファイバーとし、ファイバー数は、24ファイバーペア(48心)で、全てに2コアのマルチコアファイバーを用いた48コアペア構成とする。ケーブルシステム全体を2コアで結ぶのは今回が初めてとなる。
また、中継器には、省電力化技術と、48アンプペアを実装した高密度実装技術を採用することで、片側の局舎からの給電で稼働する。
NECと、Meta、住友電工は、世界初の大洋横断24ファイバーペアの光海底ケーブルシステム「Anjana」を共同で構築した経験があるが、Petalは、さらに2倍の伝送容量を実現し、世界初のペタビット級光海底ケーブルシステムとなる見込みだ。
NECが大西洋横断ケーブルの敷設プロジェクトに関わるのは4本目となる。
一方、NECでは、2022年時点で、4コアのマルチコアファイバーの開発に成功しており、これを商品化することで、容量を4倍にするとともに、1ビットあたりの敷設コストを4分の1にすることが可能になる。
「NECは、マルチコアファイバー技術により、大容量伝送を実現し、AI時代の通信需要に対応することを目指す」としている。












