インタビュー

エンジニアに必要な「術」とは――AI時代こそ、基礎と現場と人に学ぼう

11月19日~27日に開催のイベント「Internet Week 2026」の狙いについて聞いた

「Internet Week 2026」プログラム委員会・委員長の吉浜丈広氏(中)、副委員長の武井滋紀氏(右)、副委員長の石原匠氏(左)

 30回目を迎える「Internet Week 2026」のテーマは、「AI時代を生き抜く術(すべ)を学べ」。今回はプログラムを「ベーシック」「最新動向」「実践」の3カテゴリに分け、参加者が自分の経験や関心に合わせて学べる構成となっている。

 AIによって情報収集やコードの作成が簡単になっていく中、技術者にはどのような力が求められるのか。長年蓄積してきた知見を、次の世代へどうつないでいくのか。プログラムの企画に携わるプログラム委員会の吉浜丈広氏、武井滋紀氏、石原匠氏に、今年の狙いや注目トピック、会場で人と出会う意味を聞いた。

若手にも入りやすく。30回目を機にプログラム構成を見直す

──Internet Weekは今年で30回目ですね。これまでの積み重ねを、今年はどんなふうに次の世代へつなげたいと考えていますか?

武井氏:これまでは、ジャンルごとにセッションを組み立ててきました。ただ、それぞれがサイロ化することで、かえって若手が入りにくくなっていないか、内輪の人たちのためだけのセッションになっていないか、ということを意識して、今年のプログラムを編成しました。

吉浜氏:ネットワーク、セキュリティ……といった、分野ごとに分けていたプログラム構成を見直し、分野を横断することを意識して作りました。これにより、より広い視点から知見をお届けできると考えています。

石原氏:30年間積み重ねてきた知見を、単に残すのではなく、今の環境に合わせて更新しながら次の世代へつなげていくことが大切だと思っています。若手の立場としても、先輩方から学んできた原理原則や経験を受け取りつつ、「これからの現場ではどうするか」を一緒に考えるInternet Weekにしたいですね。

AIを使うだけでなく、自分で考え、判断し、実践する

──今年のテーマは「AI時代を生き抜く術を学べ」です。この「術」とは、どんな力なのでしょうか?

吉浜氏:AIの活用はもはや当たり前となり、避けては通れない時代になりました。だからこそ、今あらためてAIを正面から取り上げるべきだと考え、このテーマを掲げました。

武井氏:IT分野では、これまでも数々の技術革新がありました。その都度、エンジニアはスキルや知識を身に付けて、自分のものにしてきました。ここでいう「術」は、そうした新しい技術を「取り込む力」ではないかと考えています。

石原氏:AIによって、調べたり、コードや設定を書いたりすることは格段に簡単になりました。一方で、出てきた答えが正しいのか、現場で使えるのかを判断する力は、むしろ重要になっていると個人的には思います。「術」とは、AIを使うテクニックだけではありません。技術の本質を理解し、自分で考え、判断し、実践する力だと考えています。

──プログラムでも、やはりAIが大きな注目トピックになりますか?

石原氏:そうですね。やはりAIは大きな注目トピックです。ただ、AIそのものだけでなく、AIOps、セキュリティ、インフラ、運用組織など、AIが実際のインターネットの現場に入ってきたときに何が変わるのかを幅広く扱っています。

 一方で、PQC、ルーティングセキュリティ、DNS、IPv6など、インターネットを支える技術もしっかり取り上げています。新しい技術を追うだけでなく、それを支える基礎や実践まで一緒に学べるところが、今年のプログラムの面白さだと思います。

吉浜氏:テーマにも掲げているAIを軸に、これまでと何が変わるのかを扱うセッションなどは、やはり皆さんも関心があるのではないでしょうか。

基礎からでも、気になる最新技術からでも。「どこから学べばいい?」に応える

──今年は「ベーシック」「最新動向」「実践」の3カテゴリになりました。それぞれ、どんな内容なのでしょうか?

吉浜氏:プログラムの焦点によって3つに分けています。「ベーシック」は押さえておくべき基礎知識、「最新動向」は最新情報の共有、「実践」は現場で役立つ実務寄りの内容です。

武井氏:ジャンルにとらわれず、自分のレベルに応じて幅広く見ていただきたいと考えています。ジャンルを起点に選ぶ視点から、レベルや活用に応じて選ぶ視点へ変えています。

 幅広く学びたいなら「ベーシック」、今の変化を知りたいなら「最新動向」、特定の分野について実務に即して学びたいなら「実践」という選び方ができます。

石原氏:若手の立場から見ると、Internet Weekには長年蓄積されてきた知見がある一方で、「どこから学べばいいのか」が分かりにくい部分もあったと思います。

 そこで、「ベーシック」で原理原則を学び、「最新動向」で今起きている変化を知り、「実践」で現場での使い方を学ぶ、という入り口を分かりやすくしました。自分の経験や関心に合わせて、必要なところから入ってもらえればと思っています。

──必ずベーシックから順番に、というわけではないんですね。

石原氏:自分自身もそうですが、若手は新しい技術に興味を持ち、そこから「これを理解するには基礎を知らないといけない」と気付くことが多いと思います。逆に、基礎を学んでから、実際の現場でどう使われているのかに興味を持つこともあります。

 3つのカテゴリを自由に行き来しながら、自分に足りないものや、次に学びたいことを見つけてもらえるといいですね。

武井氏:1つのジャンルについて、カテゴリを行き来しながら一通り学ぶこともできますし、普段触れ合っていないジャンルの「ベーシック」を見て、知見を広げることもできます。

 あるジャンルだけでなく、隣のジャンルや分野の知識も幅広く得られることは、Internet Weekの特色です。ぜひこの特色を生かして、いつものセミナーとは違う何かを見つけていただきたいと思います。

吉浜氏:普段の担当分野にとどまらず、隣接する分野にも触れることで、より広い視野と知見を持ち帰っていただきたいですね。例えば、「ベーシック」で基礎を押さえてから「実践」のセッションを聞くと、理解が一段と深まると思います。

会場で聞ける、壇上では話せないこと

──ウェブやAIで簡単に情報を得られる今、会場に足を運んで、人と話すことにはどんな良さがありますか?

吉浜氏:登壇者の方も、壇上ではなかなか話せないこともあるんですよね。会場で直接言葉を交わすことで、そうした本音や現場のリアルな話に触れられるのが、対面ならではの価値だと思います。

石原氏:情報を得るだけならウェブやAIでもできる時代ですが、現場での失敗や工夫、悩みといったリアルな経験は、人との対話から得られることが多いと思います。

 特に若い方には、Internet Weekを学ぶだけの場所ではなく、人と出会い、自分の世界やコミュニティを広げるきっかけにもしてほしいです。

武井氏:特定のジャンルのイベントにだけ参加していると、そのジャンルの人たちだけの内輪の視点に陥ってしまいがちです。現実にはさまざまなジャンルが結び付いていますので、1つの分野に閉じず、幅広く知見を広げることも重要だと考えています。

──最後に、参加を検討している方へメッセージをお願いします。

吉浜氏:今年はプログラムを大きく3つのカテゴリに分けたことで、それぞれがどのような方に向けた内容なのか、分かりやすくなったと思います。また、これまで以上にジャンルの横断を意識してプログラムを作りました。

 「この分野はよく知らないから」「あまり興味がないから」と敬遠していた方にも、きっと新しい発見があるはずです。ぜひ興味の赴くまま、気軽にご参加ください。

石原氏:Internet Weekは、すでに詳しい人だけのイベントではありません。分からないことを学びに来たり、気になる技術を見つけたりするところからで大丈夫です。

 特に若手の方には、セッションを聞くだけでなく、ぜひ会場でいろいろな人と話してみてほしいです。自分もコミュニティでの出会いから多くのことを学んできました。Internet Weekを、新しい技術や人と出会い、次に学びたいことを見つけるきっかけにしてもらえたらうれしいです。

──ありがとうございました。

「Internet Week」は、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が主催する、インターネットの技術や最新動向を語るイベント。30回記念となる今年は「AI時代を生き抜く術(すべ)を学べ」をテーマに開催される。

会期前半の11月19日~23日が「オンラインWeek」としてオンライン配信、後半の11月25日~27日が「カンファレンスWeek」としてKFC Hall & Rooms(東京都墨田区横網1-6-1)でのリアル開催となる。基本料金1万6500円で、ハンズオンプログラム(1プログラムあたり3300円)と懇親会(5500円)を除く全てのプログラムに参加可能。参加申し込みは、同イベントの公式サイトで受け付けている。

なお、30歳以下の学生は基本料金が無料。また、初めてInternet Weekに参加する人を対象に、オンラインWeekの全プログラムとカンファレンスWeekの1つのプログラムに参加できるお試し料金(4950円)も設定されている。

INTERNET Watchでこれまで掲載したInternet Week関連記事のバックナンバー(2009年以降)は、下記ページにまとめている。