インタビュー
“スマートホーム=リモコンがたくさんある家”から脱却へ!? 「IPv6で拡がるAIホーム」の世界とは
共通規格「Matter」の動向・技術について「Internet Week 2026」で講演
2026年11月6日 06:55
照明やエアコン、鍵など、お家のあれこれをスマートフォンで操作できるのは便利だけれど、メーカーごとにアプリが増えて、使い分けが面倒。「自宅をもっと快適なスマートホームにしたい」と思いながら、何を選び、どう組み合わせればよいのか迷っている方もいるのではないだろうか。
そんな身近な悩みを解決してくれるかもしれない共通規格が「Matter(マター)」だ。異なるメーカーのスマートホーム機器を連携させるための規格で、その通信を支えるのがIPv6。さらにAIとの組み合わせによって、家の中の機器や暮らしがどう変わっていくのかにも注目が集まっている。
「Internet Week 2026」のカンファレンスプログラム「C2 IPv6で拡がるAIホーム — Matterの国内外動向と技術」(11月25日 10:00~11:30 リアル会場開催)では、スマートホームをめぐる国内外の動きから、その裏側を支える技術までを取り上げる。ネットワークや情報システムの担当者はもちろん、「自分の家でも使ってみたい」「AIホーム、ちょっと気になる」という方にも触れてほしいテーマだ。
企画担当の中川あきら氏(一般財団法人インターネット協会(IAjapan)/JPOPF運営チーム(JPOPF-ST)/株式会社JPIX)と、講演者の新貝文将氏(X-HEMISTRY株式会社)、川島正伸氏(NECプラットフォームズ株式会社)、奥村耕平氏(NECプラットフォームズ株式会社)に、同プログラムの見どころなどを聞いた。
「Matter」の通信はIPv6を前提に設計
──まず、「Matter(マター)」とは何でしょうか? スマートホームの使い方が、どう変わるのでしょうか?
新貝氏:一言で言うと、Matterは「メーカーが違っても、スマートホーム機器同士が同じ言葉で話せるようにする共通規格」です。
これまでは、照明はA社のアプリ、鍵はB社のアプリ、エアコンはC社のアプリ……と、機器ごとに操作する場所がバラバラで、せっかく「スマート」にしたのに、かえって手間が増えてしまうことがありました。Matter対応の機器なら、メーカーを問わず、Apple、Google、Amazonといったお好みのプラットフォームから、1つのアプリでまとめて使えます。
策定しているのは、Connectivity Standards Alliance(CSA)というグローバルな標準規格団体で、世界の大手テック企業や家電メーカーなど1000社以上が参加し、2022年に最初の仕様が公開されました。PCやスマホ向けのアプリケーションが、OSごとに作り方が違っても、通信はインターネットの共通規格の上で動いているのと同じで、Matterは「スマートホーム機器同士の会話のルール」をインターネット技術の上に作り直したもの、とも言えます。
そして、ここがInternet Weekでこのテーマを扱う理由でもあるのですが、Matterの通信はIPv6を前提に設計されています。Wi-FiやThreadといった無線の違いを吸収して、どの機器も同じIPネットワークの一員として扱う。この設計が、スマートホームの世界的な広がりと、AIとの結び付きの土台になっています。
今、スマートホーム、IPv6、AIが交わり始めた
──今、Internet Weekでスマートホームを取り上げるのは、なぜでしょうか?
中川氏:スマートホームって、昔から期待されながらも、用途やメーカーごとに規格が乱立し、リビングのリモコンや各社のスマホアプリが増えるだけで、「スマート」というより「リモコンがたくさんある家」になってしまうこともありました。
ですが今、世界中の家電業界をはじめ家具や警備業界など幅広い業界が、上述のとおり、つながり始めました。
スマートホーム、IPv6、そしてAIが交わり始めた今こそ、このテーマを扱う絶好のタイミングだと思い、企画しました。
──今回は、どのような専門家が、どんな視点からMatterを紹介するのでしょうか?
中川氏:スマートホームやMatterのリアルな最前線をお話しいただくなら、「この方たちしかいない!」と、すぐにお名前が浮かんだ3名の専門家にお願いしました。
グローバル動向・ビジネス・技術など、それぞれ異なる視点から、Matterの現在とこれからを深く掘り下げていただきます。
──技術の仕組み以外にも、Matterならではの面白さはありますか?
中川氏:Matterは、世界中のさまざまなプレーヤーが協働して作り上げている仕組みです。
その規格の策定にあたって、「どこまでを協働し、どこから競争するのか」という構造が、すごく面白いポイントなんです。参加される皆様が、それぞれの立場から「自分ならどう関われるか」を考えるヒントにしていただけたらうれしいですね。
帰宅後、自宅のリモコンの数を数え始めたくなる?
──今年のInternet Weekのテーマ「AI時代を生き抜く術を学べ」にはどのようにリンクしていますか?
中川氏:Matter自体はAI専用に作られたものではありませんが、今のスマートホームはAIと組み合わさることで大きく進化しようとしています。
IPv6で動くMatterという基盤の上で、AIが私たちの暮らしにどう溶け込んでいくのか。「Matter×IPv6×AI」を感じ取っていただける内容です。
──このプログラムは、どんな方に特にお勧めですか?
川島氏:ホームネットワークやIPv6に携わっている方にはもちろんお勧めです。
それだけでなく、Matterはグローバルに進むスマートホームの共通プラットフォームづくりという、インターネットの大きなトレンドの1つです。「Internet Weekに参加するなら、知っておいて損はないテーマ」だと思っています。
国内外の動向から具体的な技術解説まで幅広い内容になっていますので、専門知識がない方にも入りやすい内容ですので、どなたでもお気軽にご参加ください!
──このプログラムを通じて、どんな変化や対話が生まれるといいと思いますか?
奥村氏:これまで普及に時間を要してきたスマートホームとIPv6が、AIという新たな触媒を得て、今まさにグローバル規模で化学反応を起こしています。
参加者の皆様の思考においても、この化学反応が生まれたら最高だなと思っています。そして、帰宅してから自宅のリモコンの数を数え始めていただけたら……企画者としては、かなりうれしいです。
住宅フィジカルAIは、AIホームが一丁目一番地
──最後に、AIホームのこれからが気になっている方や、参加を迷っている方へ、メッセージをお願いします。
新貝氏:Appleの新スマートホーム戦略として発表された「HomeView」をはじめとして、海外ではMatterをインフラとして活用するAIホームの競争が活況を帯びてきています。住宅フィジカルAIは、AIホームが一丁目一番地なので注目です。
川島氏:Matter×IPv6×AIによる最新トレンドを把握できる絶好の機会です。これらを網羅的に把握できるプログラムはこれ以外に存在しないと断言できます。仕事、プライベートのいずれにも役立つ知識を学びましょう。
奥村氏:Matterをさまざまな視点から紐解いていき、MatterやAIホームをより身近に感じていただくきっかけとなれば幸いです。セッション後には、MatterやAIホームへの見方がこれまでとは大きく変わっていることでしょう。
中川氏:お仕事で受講される方が多いと思いますが、まずは「自分の家が、これからどんなAIホームになっていくんだろう?」という、身近でワクワクする自分事として、覗いてみてほしいです。
「IPv6」と聞いて「えっ、うちIPv4しかないんだけど……」という方にも、安心していただけるカラクリをご用意しています。ぜひ、その仕組みに「なるほど!」と納得しながら、楽しく学んでいただければと思います。会場でお会いしましょう!
──ありがとうございました。
- 11月25日(水)10:00~11:30 リアル会場開催
「C2 IPv6で拡がるAIホーム — Matterの国内外動向と技術」
「Internet Week」は、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が主催する、インターネットの技術や最新動向を語るイベント。30回記念となる今年は「AI時代を生き抜く術を学べ」をテーマに開催される。
会期前半の11月19日・20日・23日が「オンラインWeek」としてオンライン開催、後半の11月25日・26日・27日が「カンファレンスWeek」としてKFC Hall & Rooms(東京都墨田区横網1-6-1)でのリアル会場開催となる。基本料金1万6500円で、ハンズオンプログラム(1プログラムあたりオプション料金3300円)と懇親会(参加費5500円)を除く全てのセッションに参加可能。同イベントの公式サイトで参加申し込みを受け付けている。
なお、30歳以下の学生は基本料金が無料。また、初めてInternet Weekに参加する人を対象に、オンラインWeekの全セッションとカンファレンスWeekの1つのセッションに参加できるお試し料金(4950円)も設定されている。
INTERNET Watchでこれまで掲載したInternet Week関連記事のバックナンバー(2009年以降)は、下記ページにまとめている。






