インタビュー

インフラ障害対応をコンテストの問題で学ぶ――AI時代こそ「自分で考え、確かめる力」を

「Internet Week 2026」でハンズオンプログラム

 「何かがおかしい。でも、どこから調べればいいのか分からない」。ネットワークやサーバーの運用に関わり始めた人なら、そんな戸惑いを感じたことがあるのではないだろうか。知識を実際の障害対応につなげるには、手を動かしながら考える経験が欠かせない。

 一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が主催するイベント「Internet Week 2026」が11月19~27日に開催される。今年のテーマは「AI時代を生き抜く術を学べ」。

 Internet Weekは、インターネットの構築・運用・開発などに携わる人々が、技術や最新動向を学び、議論し、交流を深めるイベントで、今年で30回目の開催となる。各分野のメンバーで構成されるプログラム委員会が企画し、全体のバランスを考え、インターネットの今を俯瞰できる内容となっているが、今年は「ベーシック」「最新動向」「実践」という3つの入り口から学べるプログラムを組み立てている。

 今回は、その「実践」に位置付けられるハンズオンプログラム「H3 インフラトラブルシューティングハンズオン — コンテストから学ぶ人材育成の事例」(11月23日 13:00~14:30 オンライン開催)を紹介する。企画を担当する吉川知輝氏(一般社団法人Home NOC Operators' Group)に狙いを聞いた。

吉川知輝氏(一般社団法人Home NOC Operators' Group)

「正解」だけでなく、「そこに至る考え方」を学ぶ

──まず、このハンズオンを企画した背景を教えてください。

吉川氏:技術が急速に進化しても、現場では「何かがおかしい」「原因が分からない」という状況に向き合う力が重要です。限られた情報から原因を切り分け、解決に導く力ですね。

 「ICTトラブルシューティングコンテスト(ICTSC)」は、学生を中心に、こうした実践的な問題解決能力を競い、高め合う場として10年以上にわたり開催されてきました。今回は、その過去問題を題材に、参加者の皆さんにも実際の環境へ接続し、ログを読み、コマンドを実行しながら挑戦していただきます。

 狙いは、単に正解を知ることではありません。状況をどう整理し、どこに着目し、どの順番で原因を切り分けるのか。その思考プロセスを、手を動かしながら体験してもらいたいと考えています。

自分で挑戦し、解説を聞き、修復まで体験する

──当日は、どのような流れで取り組むのでしょうか。

吉川氏:まず、障害が仕込まれた環境に接続して、自分で問題に取り組んでもらいます。ログやコマンドの結果から、「自分ならどこから調べるか」を考え、原因を調査するところが最初のステップです。

 その後、問題作成者が、問題の狙いや想定していた調査・解決のプロセスを解説します。最後には、その解説を参考にしながら、実際に障害を修復するところまで体験できる構成にしています。

──基本的な知識があれば、運用経験が少なくても参加できますか。

吉川氏:はい。ネットワークやサーバーの基本的な用語や仕組みを知っている方であれば参加できます。高度な運用経験が必要というわけではありません。若手技術者や学生の方には、知識から実践へ進む入り口として活用してほしいですね。経験のある方にも、「自分ならどう解くか」「別の切り分け方はないか」という視点から楽しんでいただけると思います。

問題を作る学生と、現場を知る技術者が学び合う

──講演者の選定で重視したことや、注目してほしい点はありますか。

吉川氏:ICTSCの競技運営や問題作成を実際に経験してきたメンバーに登壇してもらいます。学生自身が問題を考え、競技環境を構築し、参加者に解いてもらうところまで深く関わっていることは、ICTSCの特徴の1つです。

 「なぜこの障害を題材にしたのか」「どこに気付いてほしかったのか」といった、問題作成者ならではの視点も伝えたいと思っています。問題を解くことに加えて、トラブルシューティングの問題をどう作るかを知ることで、障害対応を一段深く考えていただければうれしいです。

 切り分けには、必ずしも1つの正しい順番があるわけではありません。参加者の皆さんがどう考えたのかも共有できればと思っています。実務経験のある方には、問題の実務性や教育的価値についても率直な意見をいただきたいですね。学生が作った問題に経験豊富な技術者が挑戦し、技術者から学生へフィードバックが返る。そんな対話も、人材育成につながると考えています。

AIの答えを判断するためにも、自分で確かめる力を

──Internet Weekの今年のテーマ「AI時代を生き抜く術を学べ」とは、どうつながりますか。

吉川氏:AIによって、設定例の生成やログ解析、障害原因の候補提示など、運用のさまざまな場面が変わりつつあります。一方で、AIが答えを提示してくれる時代だからこそ、その答えが妥当なのかを判断し、「実際に何が起きているのか」「次に何を確認すべきか」を考える力は、むしろ重要になると思っています。

 トラブルシューティングの本質は、コマンドの暗記ではありません。限られた情報から仮説を立て、ログやコマンドで確認し、その結果に応じて次の行動を決めることです。AIを使いこなすうえでも、この思考力は不可欠です。ハンズオンを通じて、技術者として自分で考え、確かめる力をあらためて体験してほしいですね。

若手もベテランも、気軽に「腕試し」を

──最後に、参加を検討している方へメッセージをお願いします。

吉川氏:特に、知識は勉強しているけれど、実際の障害対応にはまだ自信がない学生・若手技術者の方にお勧めです。若手育成や社内研修に携わる方にも、ICTSCの問題を実践的な教育教材としてどう活用できるか、という視点で見ていただければと思います。

 ぜひ、気軽に腕試しのつもりで参加してください。正解できるかどうかだけが目的ではありません。分からないところで悩むこと、ログやコマンドを試すこと、他の人の考え方を知ること、解説を聞いて「ああ、そこを見るのか」と気付くことも、大切な学びです。

 一番は、「トラブルシューティングは面白い」と感じてもらえることです。原因を1つずつ切り分け、自分の仮説が当たり、解決できた瞬間には、技術者ならではの面白さがあります。「面白かった」「難しすぎる」「もっとこうした方が実務的」といった意見も、ぜひ聞かせてください。それが次のICTSCをより良くする力になります。皆さんと一緒に、手を動かしながら楽しめることを期待しています。

 知識を障害対応につなげたい方も、いつもの調べ方を見直したい方も、コンテストの問題を通じて、自分なりの「次の一手」を考えてみませんか。

──ありがとうございました。

「Internet Week」は、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が主催する、インターネットの技術や最新動向を語るイベント。30回記念となる今年は「AI時代を生き抜く術を学べ」をテーマに開催される。

会期前半の11月19日・20日・23日が「オンラインWeek」としてオンライン開催、後半の11月25日・26日・27日が「カンファレンスWeek」としてKFC Hall & Rooms(東京都墨田区横網1-6-1)でのリアル会場開催となる。基本料金1万6500円で、ハンズオンプログラム(1プログラムあたりオプション料金3300円)と懇親会(参加費5500円)を除く全てのセッションに参加可能。同イベントの公式サイトで参加申し込みを受け付けている。

なお、30歳以下の学生は基本料金が無料。また、初めてInternet Weekに参加する人を対象に、オンラインWeekの全セッションとカンファレンスWeekの1つのセッションに参加できるお試し料金(4950円)も設定されている。

INTERNET Watchでこれまで掲載したInternet Week関連記事のバックナンバー(2009年以降)は、下記ページにまとめている。