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セブン&アイ、ネット通販事業に本格参入
2009年12月7日 20:40
セブン&アイ・ホールディングスは7日、今後成長が期待されるネット通販事業に本格参入すると発表した。これを受けて、7日付けで同社傘下の事業会社「セブンアンドワイ株式会社」を「株式会社セブンネットショッピング」に社名変更して、8日午前0時(7日深夜24時)から通販サイト「セブンネットショッピング」を開設する。
「セブンネットショッピング」では、これまでセブン&アイ・ホールディングスの各事業会社が個別に取り組んでいたインターネット通販事業を統合。セブン&アイ・ホールディングスでは、IT/サービス事業領域の「流通クラウドポータル」構想を実現するための第1歩として「セブンネットショッピング」を位置づけて、同サイトに顧客属性情報や商品情報、コンテンツ情報を蓄積して、グループ内で情報を共有する。
また、セブン&アイグループが持つ商品開発力・販売力を、Yahoo! JAPANが持つ集客力を相互に連携させたメディア連携戦略に加え、エイベックス・グループなどコンテンツプロバイダーとの間でコンテンツ制作機能を相互に提供しあうコンテンツ連携戦略などを進める。
サイトは、「ショッピング」と「こだわり専門店」、「みんなのクチコミ」、「わたしの便利帖」の4つで構成。「ショッピング」では当初、11カテゴリ500万アイテムの商品を取り扱う予定で、2011年末には1000万アイテムにまで取り扱い数を拡大する。また、「こだわり専門店」では、「スタジオジブリ」や「avex SHOP」など32の専門店が開設して、2011年末までに300まで店舗数を増やす予定だ。
「みんなのクチコミ」では、消費者同士によるコミュニケーションが可能で、投稿されたクチコミ情報も確認できる。今後はクチコミ情報をもとにしたオリジナル商品の開発も進める。このほか、「わたしの便利帖」では買い物情報を一元管理できる。
ITサービス分野での売上1000億円を目標に
7日には、都内のセブン&アイ・ホールディングス本部ビルにて記者発表会が行われた。グループの中間持ち株会社で、IT関連事業を統括する株式会社セブン&アイ・ネットメディア代表取締役社長の後藤克弘氏がまず登壇。コンビニエンスストア、スーパーストア、レストラン、スーパーマーケット、百貨店、金融と並ぶグループ主要事業領域の1つ「IT/サービス」を拡大させるため、株式会社セブンネットショッピングを含めた傘下企業の再編・統合を進めていると説明した。
後藤氏は「グループのシナジーを最大化させ、“店舗とネットの融合”を目指す。使い古された表現ではあるが、これをなしえた企業はいまだないと考えており、大きな志をもって進んでいる」と、その位置づけを強調する。
セブンネットショッピングでは、これまで「セブンアンドワイ」で手がけてきたネット書店事業をベースに、食料・日用品を取り扱う「イトーヨーカドー ネット通販」を統合。さらに「セブンドリーム・ドットコム」からも一部の通販事業を引き継いだ。
また、「ネット通販事業」以外の拡大も目指す。具体的には、ネットで受付をして店舗から商品配送するといった「店舗ネットサービス事業」、店頭のATMやコピー機を使って商品・サービスを提供する「情報端末サービス事業」もあわせた3つで、“ネットと店舗の融合”を進めるという。
売上高の目標は2012年度で1000億円(セブン&アイ・ネットメディア全体)。後藤氏は「ネットの世界は日進月歩で市場が変化していくため、1000億円達成の時期を正確に予測することは難しいが、この数字を達成できなければ、市場では勝負できない」との強い意志も示している。
「流通クラウドポータル」実現のための第一歩に
一方、株式会社セブンネットショッピングの代表取締役社長 鈴木康弘氏からは、通販サービスの詳細が語られた。従来取り扱っていた書籍・CD・DVDに加え、新たに食品・日用品・ゲーム・おもちゃ類を取り扱うことで11カテゴリ500万アイテムの品揃えになった点をまず強調した。なお送料は注文金額1500円以上で無料となる。
鈴木氏は「今後も取扱商品は増やして行く計画で、2010年末には医薬品やファッション、2011年末にはチケットや旅行関連もラインアップし、1000万アイテムの実現を目指す」とし、総合的なネット通販サイトへのシフトを明確に打ち出した。
通常のショッピングとは別扱いとなる、「こだわり専門店」の出店も積極的に行う。「ネットではこれまで買えなかった商品を販売する」(鈴木氏)ことが大きな狙いとなっており、例えばスタジオジブリの関連グッズ全般を購入できるサイトはセブンネットショッピングが初めてという。「こだわり専門店」は当初32店舗からスタートするが、2011年末には300店舗にまで拡大する考え。オリジナル商品の開発・販売も視野に入れている。
また鈴木氏は「もはや流通は(企業の意向だけから発案する)“川上発想”から、お客様を巻き込んでの“川下発想”に移行した」とも指摘。「みんなのクチコミ」を通じて消費者の声を集め、やはりオリジナル商品の開発につなげたいとしている。
そして鈴木氏はセブンネットショッピングが「流通クラウドポータル」実現のための第一歩だと説明している。「クラウドは曖昧な意味に捉えられがちだが、我々は『ネットの向こう側にあるIT資産の活用』と定義し、あらゆるパートナーと業界の垣根を越えて、資産やノウハウを共有しあうためのポータル(玄関口)になりたい」と、その狙いを語る。より具体的にはセブンネットショッピングを中心に、広告メディア、コンテンツプロバイダー、メーカー・生産者、セブンアンドアイグループ会社が相互に連携しあう関係を目指す。
Yahoo! JAPANとの協力を例にとった場合、これまでは「Yahoo!ショッピング」からセブンアンドアイ各社サイトへの集客のみにとどまっていた関係を「Yahoo! ID」や「Yahoo!ウォレット」による決済手段の提供にまで拡大。一方でセブンアンドアイ側はYahoo! JAPANに対し、プライベートブランドなどで培った商品開発力を提供し、オリジナル商品作りなどを支援する。
メーカーや生産者との連携については、セブン-イレブンなど店頭での商品陳列以前に、セブンネットショッピングでまず販売する体制作りを目指す。ここで一定の実績を得た商品を今度は店頭に陳列させ、販売拡大につなげたいという。「マイナーリーグからメジャーリーグへの昇格のようなもの」と鈴木氏は表現。メーカー側も、ネットという新しい販売機会を得られる仕組みだ。
最後に鈴木氏は「『流通クラウドポータル』は、まったく新しい小売業のかたちを目指すためのもの。 これからも新しい展開を目指していくが、まずはそのスタートラインに立てた」と、セブンネットショッピングの位置づけを語った。