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そんな使い道もあるのか! GIGABYTE「AI TOP ATOM」は手が届く価格で、手のひらに乗る新しいAIスパコン
AI研究者・白井暁彦氏が語る、本機が拓く新たな可能性
- 提供:
- 日本ギガバイト
2025年12月16日 06:00
GIGABYTEから、AI用途に適した小型スーパーコンピューター「AI TOP ATOM」が登場した。NVIDIAの「DGX Spark」をベースにしたもので、最新のBlackwell GPUと128GBのユニファイドメモリと合わせて、大規模なAIモデルに対応できる性能を持つ。
それでいて筐体はコンパクトで、サイズは150×150×50.5mm、重量は1.2kgと、手のひらに乗るサイズ。消費電力も240WのACアダプターで動作する程度で、一般的にイメージするスーパーコンピューターより圧倒的に小さく、取り回しがいい。価格も60万円前後からと、これまでのAI向けスーパーコンピューターと比べれば破格だ。
今回は「AI TOP ATOM」について、AICU Japanの代表でデジタルハリウッド大学特任教授のAI研究者「しらいはかせ」こと白井暁彦氏に試用していただき、お話を伺った。実際の使用感に加え、11月に行われたコンテンツやエンターテインメント産業向けのイベント「Inter BEE 2025」の「AI Street - AI Ignites Creation -」に本機を展示した際の、来場者からの反応も聞くことができた。
小さくとも使いやすく汎用性の高いマシン
まずは、本機のスペックを確認しよう。
| OS | NVIDIA DGXBase OS、Ubuntu Linux |
| プロセッサー | Arm 20コア(Cortex-X925×10、Cortex A725×10) |
| チップセット | NVIDIA GB10 Grace Blackwell Superchip |
| メモリ | 128GB LPDDR5x unified system memory(256bit、273GB/s) |
| SSD | 最大4TB(PCIe Gen5) |
| 映像出力 | HDMI 2.1a×1 |
| 有線 | 10Gbit Ethernet |
| 無線 | Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4 |
| インターフェース | USB 3.2 Gen2x2 Type-C×3、NVIDIA ConnectX-7×1 |
| 電源 | 240W ACアダプター |
| サイズ | 150×150×50.5mm |
| 重量 | 1.2kg |
わかりやすいよう、本機をPC的な視点から説明すると、20コアのArmプロセッサーとBlackwell GPUを搭載したコンパクトなマシンとなっている。一般的なPCよりも高速かつ大容量なメモリを搭載し、AI向け機能を高めつつも、価格とサイズを抑えた製品と言える。
スーパーコンピューターというと扱いづらそうに思うかもしれないが、基本的にはUbuntuで動作しており、ACアダプターとキーボード、マウス、モニターを接続すれば、デスクトップ環境として利用できる。USBポートも豊富なので、各種デバイスの接続にも困らない。
より高いパフォーマンスを求める場合は、「NVIDIA ConnectX-7」により、本機を2台連結して動作させることもできる。コンパクトで省電力なので、2台構成で動かす環境も整えやすい。
また「AI TOP Utility」というGIGABYTEの独自AIツールも搭載。AIモデルのファインチューニングや推論、展開などを直感的なインターフェースで可能にする。
安い! 消費電力が少ない! 熱くない! 静か! しかも小さい!
白井氏に「AI TOP ATOM」についての印象を聞いたところ、最初に出たのは価格の話だった。
生成AIを使った業務は、生成を繰り返して質を上げていく、あるいは「当たり」が引けるのを待つという作業になりがちだ。大手企業が提供するAIサービスやクラウドサービスは利用するほどコストがかかるが、そうなると、仕事が完成するまでの費用の見通しが立たない不安がある。
ローカルで動作するAIマシンなら使い放題にできるが、初期投資としては高額なGPUやAI処理チップを搭載したサーバーマシンが必要になるため、100万円では収まらない額になりがち(まともなAI推論用途サーバーは300万円ぐらいから)。大学の研究室単位で導入するのも簡単ではない。現在はAI需要によるハードウェアの奪い合いが過熱しており、さらに入手が難しくなると見られている。
「AI TOP ATOM」は、それに比べて価格が数分の1になるので、導入障壁は大きく下がる。「固定資産として買えるので、ランニングコストを読みやすい」というのが大きなメリットになるという。
ランニングコストと言えば電気代も無視できない。スーパーコンピューターを動かせば相当な電気代が発生する。AICU Japanが入居するシェアオフィスには他組織のものも含めたAI研究用のコンピューターが何台も導入されており、今夏は、冷却したくても供給電力不足のためエアコンを動かせないほどだったという。
その点でも「AI TOP ATOM」は優秀だ。1台当たり最大240Wで収まり、既存のスーパーコンピューターの数分の1になる。実際に、フル稼働中の本機に触れてみたが、熱いと感じはするが持てないほどではない。
元々の発熱が小さいこともあり、本機に内蔵されている冷却ファンの騒音もかなり小さい。スーパーコンピューターとしては比較できないほど静かで、他の機材が動いている研究室内では、耳を近づけてやっと音が聞こえる程度でしかなかった。
もちろん、本体のサイズが小さいことも重要だ。従来のAI向けスーパーコンピューターは、サーバーラックに積むか、あるいは大型のタワー型PCのような形状になる。本機は机に置いて使っても場所を取らず、騒音も気にならないし、必要なときは簡単に持ち運べる。場所を取らないということは、置き場所を選ばないということでもある。
安くて、発熱と消費電力が少なく、動作音も静か――つまりエコで、そして小さい。まるでファストフードの売り文句のようになったが、従来のAI開発用スーパーコンピューターでは望むべくもなかったこれらの要素を持ち、十分なパフォーマンスも備えることで、「AI TOP ATOM」は従来のスーパーコンピューターにはない用途を拓き、可能性を大きく広げる。
ローカルAIをエコに動かせると用途が広がる
「AI TOP ATOM」の用途を考える上で重要なのは、エコで小さいこと、そしてローカルでAIを動かせることだ。
ローカルでAIを動かせる強みは、著作権が絡むコンテンツを扱う際にあると、白井氏は言う。例えば漫画家がAIを活用しようとすると、出力される画像を制御し、再現性を持たせなければならないので、AIの学習が必要になる。しかし著作権の扱いに慎重になるべきデータを外部に持ち出すのは難しい。
そこで「AI TOP ATOM」を導入すれば、AIはネットワーク不要でローカル動作できるので、データ処理を内部で完結できる。著作権が絡むコンテンツは映像やテキストなどさまざまあるので、ローカルAIだからこそ活用できる現場は意外と多い。NASにあるデータを読ませることもできるし、本機のSSDをファイルサーバーとして扱うこともできる。
ローカルでAIを動かせるということは、ネットワーク環境がない、あるいは不安定な環境でもAIを動かせるということでもある。
例えば、大きな災害があった時。災害対策本部の議事録や災害情報などのデータを市民が確認するには、情報を文字起こしして整える必要がある。この仕事をAIが担えれば情報整理は格段に進むが、災害の現場でインターネット接続が生きている保証はない。電気すら十分にない可能性がある。
「AI TOP ATOM」なら、各種データを最大4TBの内蔵SSDに集約したうえで、AIをローカルで動かせる。消費電力は最大240Wなので、車などから電源を取ることもでき、動く災害対策本部のような用途としても使えるポテンシャルがあると、白井氏は語る。
Inter BEE 2025に白井氏が出展した際には、デジタルサイネージの関係者から注目されたという。ローカルでAIが動くエッジデバイスとして、通りかかった人をAIが認識し、その人に適した映像を流すようなインタラクティブ性をもたせるなど、よりリッチな表現力を持つデジタルサイネージを、ネットワーク接続不要で稼働できる。ユーザーと会話する接客AIやバーチャル店員なども実現できるだろう。
マシンとしてはメジャーなUbuntuを搭載し、USB端子でカメラなどのデバイスも接続できるので、用途に合わせてカスタマイズもできる。本体は小さく、エコで静かなので、設置場所に悩まされることもない。これまでにないインタラクティブなデジタルサイネージを、省スペース、あるいは高い可動性を備えて、安価に構築できる。
また、Inter BEE 2025というイベントの特性から、放送関係者からも反応が良かったという。移動中継車で電源は取れるので、本機を積んでの移動も簡単だ。ネットワークがない場所でAIを活用できるという特徴が、中継やロケーション撮影の現場で重宝する場面も多そうだ。
予算的にも導入しやすい「万能マシン」
Ubuntuを搭載し、従来のAIスーパーコンピューターと比べて安価なことから、「AI TOP ATOM」は教育機関や企業の研究室に、ファイルサーバーも研究用マシンも兼ねる万能マシンとして利用しやすい。「実験的に使いたい、部署ごとに配置したいという小回りが利いて、新しいことをやりたい人が手に入れられるソリューション。その時に100万円を切るのは大事で、稟議を通しやすくなる」と、白井氏は述べた。
「今の時代、コンピューターサイエンスを学ぶ学生には、機械学習くらいは経験しておいてほしいと思っているが、1人1台用意するのは難しい。本機なら複数人が同時に使い、ある程度スケーラビリティがある状態で機械学習のタスクを回せる」。学生がAIを学ぶ環境として考えると、「AI TOP ATOM」はUbuntuで動作するため、複数人でリモートでアクセスして使えることが大きな利点となる。128GBの潤沢なメモリで安定動作するし、20コアのArmプロセッサーでパフォーマンスも高い。
これまでのスーパーコンピューターは、学生がふだん見ることのないサーバールームに設置されることも多かった。しかし、「AI TOP ATOM」なら、研究室のデスク上などに置いておける。「学生にとっては、動いている実機を実際に目にできることも大切」だと、白井氏は言う。
また、内蔵SSDが最大4TBあるため、ファイルサーバーとしても活用できる。これ1台あれば、日常業務から研究まで使えるということで、さまざまな観点から導入を検討できるだろう。
最先端GPU搭載のPCと比べると及ばない面はあるが……
なお、パフォーマンスについては、「過度に期待してはいけない」とも白井氏は述べた。
性能面の目安としては、ComfyUIのサンプル画像生成が、1枚に1秒強かかるという。白井氏が注目する動画生成において、単体GPU製品であるGeForce RTX 5090(を搭載したハイスペックPC)と比べて出力速度は落ちる。これはソフトウェア側がまだ「DGX Spark」に最適化されていないことに加え、スペック上でもGPU性能とメモリ速度でGeForce RTX 5090が上回るためだ。
とはいえ、十分に実用的なパフォーマンスであり、GeForce RTX 5090はGPUだけで「AI TOP ATOM」に近い価格になるし、人気の高さから入手もしづらい。パフォーマンスだけを単純に比較するものではない。
「AI TOP ATOM」の強みは、これまでに述べてきた価格やサイズ、エコであること、そしてUbuntuを搭載し複数人で安定して利用できることだ。
また、128GBの大容量メモリを活用できる点も大きい。例えばローカル動作できるLLMとしてはかなり巨大な部類となる「gpt-oss-120b」は、VRAMが32GBのGeForce RTX 5090では動かせないが、「AI TOP ATOM」ならば余裕で動き、40トークン/秒を超える高いパフォーマンスを出せる。
ComfyUIにおける動画生成も、「大容量メモリを生かして、今後はより長時間の動画生成も可能になるかもしれない」と白井氏は言う。「AI TOP ATOM」を含む「DGX Spark」ベースのマシンはまだ登場から間もなく、現在も世界中の開発者により、日々ソフトウェアの最適化が進められている。パフォーマンス向上に加え、用途もさらに広がっていくだろう。
加えて「AI TOP ATOM」には、強力なローカルAIソリューションを構築できる「AI TOP Utility」が搭載されている。GIGABYTEが手掛けてきた「AI TOP」シリーズのマシンに採用されてきた実績のあるAIツールで、マシンの状態の管理や、AIのチューニングを行う統合ツールとなっている。本機を使って何ができるかを指し示してくれるもの、とも言えるだろう。
研究室からエッジまで、幅広い可能性
小型のAI向けスーパーコンピューターという、これまでにないコンセプトで登場した「AI TOP ATOM」について、白井氏へのインタビューは、実際に触っての感想、機能・性能の評価、そこから考えられるユースケースなど、さまざまに視点を変えながら展開した。
ここまでは主に本機の特徴に着目して話を進めてきたが、最後に、白井氏が語ったユースケースをまとめておこう。
制作・開発現場:少ない投資で構築できるローカルAI環境
映像コンテンツ、マンガやアニメーション、ゲームなど、さまざまな制作・開発の現場において、ローカルAI環境を構築できる。従来であれば100万円を超える初期投資が必要で、騒音や発熱、安定した電源供給を考えればスタジオ内の設備も相応のものが求められたが、「AI TOP ATOM」では、金額面でも設備面でも大幅にハードルが下がる。
研究機関:サーバー兼研究用の万能マシン
大学や企業の研究機関において、研究用マシンとしてだけでなく、サーバーのリプレイス時などに導入を検討することも可能で、金額的に稟議も通しやすい。AI研究を行いたくても予算的なハードルで見送っていた組織や、実験用に少ない予算で環境を構築したい組織にとって、非常に魅力的な選択肢となる。
自治体:BCP対策にもなる「動く災害対策本部」
ローカルでAIが動き、消費電力も小さいことで、まったく新しいことができる、という期待も大きい。白井氏が語った、車に載せて活用する自治体の「動く災害対策本部」のような使い方はその一例だが、ロケ撮影の現場、中継現場などでの活用の可能性も見えた。
エッジ端末:より高度な処理、リッチな体験を実現
カメラと組み合わせたデジタルサイネージでの活用など、「AI TOP ATOM」のようなサイズでAIが動くパッケージが利用できることで、これまでにないデータ処理やユーザー体験の提供が可能になるだろう。白井氏によれば、6Gなど通信技術の研究者の反応もいいという。
以上は、限られた取材時間で語られた一例に過ぎない。AIと一口に言っても用途は千差万別だが、「AI TOP ATOM」は、さまざまな用途に対応できるだけでなく、これまでは導入が難しかった現場に入り込めるポテンシャルも持つ。何ができるかは、使い手のアイデア次第だ。











