INTERNET Watch Title

Click


【不定期連載】

使ってみました!インターネットショッピング決済技術

第12回「SET」

 新聞などで、インターネット決済に関する記事を見ない日は少ない。セキュリティの問題、新しい電子決済サービスなどさまざまだ。新しい決済サービスは多数生まれているものの、現状でこれがスタンダードと言えるものはまだない。
 このシリーズでは、現在実用化されている決済サービスの信用性や「本当にお金を払ってまで使う価値があるの?」といった不安要素などを検証し、さまざまな支払い方法(決済技術)を体験レポートする。

 さて、12回目の今回はインターネット上でも安心してクレジットカードを利用できる手段、SETを紹介する。

SETと従来のカード決済の違い

 SET(Secure Electronic Transaction)は、VISA、MasterCardなどが考案した、クレジットカード決済を安全に行なうためのプロトコルだ。'97年5月にVer 1.0が発表された。

 クレジットカードは、SETが誕生する前からネットワーク上での決済で多く利用されてきた。初期の頃はWeb上や電子メールなどを使い、カード情報をそのまま送るといった極めて原始的なものだった。現在では、安全性の観点から、カード情報を送るときはSSLを代表とする暗号化処理を行なっているところが多い。しかし、現在のクレジットカード決済では、購入した加盟店に対して商品の注文情報を伝えるのと同時にクレジットカード情報も伝えてしまう。そのため、よく知らない店などでは、加盟店よりクレジット情報が流出するのではと心配になる。また、利用方法も、申し込みのつどクレジットカード情報を送付する場合や、あらかじめクレジットカードを登録して会員になっておき、その会員番号で商品を申込む場合など、利用するサイトによりまちまちだ。

 SETを利用した場合は、加盟店では商品の注文情報とクレジットカードの有効、無効の判定を処理し、クレジットカード番号そのものは扱わない。一方で、クレジット会社には決済情報のみが届くようになっており、購入商品の明細は知らせない。また、SETに対応しているサイトならば、「ワレット(Wallet)」と呼ばれる電子財布ソフトを使ってどこでも同じ手順で買い物ができるようになる。ただし、現状ではワレットがまだ統一されていないため、一部を除くと、ワレットはサイトごとに用意する必要がある。

 このようにSETは、インターネット上で行なうクレジットカード決済の安全性の確保や手続きの不統一などを解決すべく誕生したのだ。

 技術的には公開鍵暗号や電子証明書、ハッシュ関数などを応用した本人認証、電子署名などの技術が使われた「ワレット」を使うことにより、クレジットカードの正規の保有者であることを証明しつつ、成りすましや改ざん等がされていない正しい情報であることを証明し、ネットワーク上での安全性を高めている。
 SETを採用しているショッピングサイトには、通産省のEC実験として運営を開始した「メディアポート日本(MPN)」やJCBの「J-Mall」などいくつかある。今回は、SETの規格化に関わっているVISAの日本御本家、住友VISAが運営している「V-Mall」を使ってみた。V-MallではSET決済のほか、加盟店によっては、銀行振込や代金引替えなど他の方法でも利用が可能。'98年11月現在、加盟店数45店舗。

V-Mall専用の環境をセットアップ

利用開始までの流れ

 1.住友VISAカードを取得
 2.電子証明書及び電子財布ソフトの申込み
 3.電子財布ソフトのインストール、初期設定
 4.V-Mall会員の登録

■住友VISAカードを取得

 V-Mallでクレジットカード決済をする場合、必ず「住友VISAカード」を持っていなければならず、他のVISA提携カードは使えない。通常、クレジットカードの取得には約1ヶ月程度かかる。ここではクレジットカードの取得は割愛し、すでにカードを持っていることを前提に書くことにする。

■電子証明書及び電子財布ソフトの申込み(経過時間:0日)

 SETを利用するには、電子財布ソフト「vWALLET」とクレジットカードの保有者本人であることを証明する電子証明書が必要だ。そのためクレジットカード番号や暗証番号などを住友VISAへ連絡する必要がある。しかしインターネット上のWebサイトからクレジットカード番号などを送ったのでは、SETを使う意味がない。V-Mallでは、安全対策のために電話で申込みを受け付けている。

 フリーダイヤル「0120-844-037」にダイヤルし電子証明書を申込む。音声ガイダンスに従い、サービスコード「31」、クレジットカード番号16桁、暗証番号4桁、生年月日8桁、そして自宅電話番号を入力する。手順はとても簡単だ。また、V-Mallでクレジット決済する場合は専用電子財布ソフト「vWALLET」が必要となるので、CD-ROMも同時に申し込む。

■電子財布ソフトのインストール(14日)

 申し込みから10日後に「電子証明書取得用パスワード通知書」、14日後には電子財布ソフトvWALLETが入っているCD-ROMが届いた。届いたら、CD-ROMの中に入っている「V-Mall.exe」を起動し「Try V-Mall」を見てみよう。SETの安全性やどのように利用するのかを知ることができる。分かりやすく紹介されているので、ひととおり読んでみることを勧めする。

 次にvWALLETのインストール。「V-Mallショッピングをする前に!」でインストール手順や電子証明書の取得方法などを確認してから、「住友vWALLETをインストールしてみよう!」を選択、ソフトの利用許諾や保存場所の確認など、画面の指示に従い設定していく。

 なお、現在V-Mallで利用できる電子財布ソフトは、住友クレジットサービスが配布している「VeriFone vWALLET Version 2.1」だ。もしバージョンの古いものや他社が配布しているvWALLETがインストールされている場合は、削除を薦めている。しかし実際には別のSET対応サイトを利用することもあるだろう。この点について、V-Mallヘルプデスクに確認したところ「J-MallのvWALLETは同じソフトでも利用できるが、メディアポート日本の電子財布ソフトとは共用できない」とのこと。最悪の場合、削除する必要もあるという。複数の電子財布ソフトをインストールする場合は、それぞれの電子財布ソフトが干渉することも考えられるので、個々に問い合わせるしかないようだ。

■電子証明書を取得(14日)

 vWALLETが実行できることを確認したら、カード情報を入力していく。まず、新たにワレットを作成し、利用者名と好きなワレット用パスワードを入力後、保存する。さらにそのワレットにカード情報を入力し、登録する。すると電子証明書を取得するためのWebサイトが表示されるので、登録情報を確認しOKボタンを押す。
 ここで、インターネットを経由して電子証明書を取得するためのメニューがWWWブラウザーに表示されるので、画面の指示に従いながら、電子証明書を取得しよう。まず、自動的にWWWブラウザーと連動してvWALLETが動き出し、電子証明書取得に必要なパスワードとメールアドレスを要求してくる。郵送されてきた「パスワード通知書」に記載されているパスワードとメールアドレスを入力すると、約2分程度でパソコン内のvWALLETに電子証明書が入る。vWALLETの証明書に電子証明書の情報が表示され、「現在有効」と書かれたアイコンが表示されていれば登録完了だ。

   Setp1.ワレットの作成
   Setp2.クレジットカード情報の登録
   Step3.電子証明書の取得


 パスワード通知書に記載されているが、電子証明書の取得パスワードには有効期限がある。これを過ぎるとパスワードが無効になり、再度申し込みをしなければならないので、電子証明書は早めに取得しよう。

■V-Mall会員の登録

 いよいよV-Mallでショッピング! といきたいところだが、V-Mallで商品を購入するには、Web用の会員登録が必要だ。これは、SET以外の決済でも同様だ。ただし、どんな商品があるかを見るだけならゲストでの入場もできる。

 V-Mall会員は入会無料で、Web上から必要事項を入力すればすぐに登録できる。V-Mallは加盟店により、SETでの決済のほか銀行振込や代金引換えなどでも利用できる。いずれの支払い方法も、V-Mall会員のみが利用可能だ。ここで一点気にかかったことがある。会員情報更新の部分だけが、SSL処理されていないことだ。個人情報の保護に敏感になっている人も多いだけに、早期の対応を望みたい。

商品を購入してみる

V-Mallでの商品購入の大まかな流れ

 1.商品を選ぶ
 2.申込み内容と金額を確認し、支払い条件を選択する
 3.利用明細の確認

商品を選ぶ

 V-Mallでは、店舗一覧から商品を選ぶ方法と、商品名や価格帯から検索して選ぶ方法がある。今回は加盟店の商品を集めた「人気商品」コーナーから、お米とソーセージを買ってみた。V-Mallは画面から商品を選んでいき、最後にまとめて支払いをする、「バスケット方式」と呼ばれるものだ。

 まず「新潟くみあい」のお米を選択し、ショッピングバスケットに入れる。選択した内容と数量を入力する画面に変わり、バスケットの中に入っていることが確認できる。次にハウステンボスのソーセージをバスケットの中に入れる。確認画面にはソーセージが表示されるので数量を確認し、バスケットの内容を確認する。するとバスケットには、ソーセージしか入っていない。お米はどうしたのか?と新潟くみあいのバスケットを見てみると、こちらには入っている。

 CD-ROMの説明では、ひとつのバスケットのように説明されていたのだが、どうやら複数のバスケットがあるようだ。よく探してみると「全バスケット一覧」で各バスケットを一覧できた。それでも結局、商品の購入は加盟店ごと別々に行なわなければならない。インターネット上の多くのショッピングモールで使われている「バスケット方式」は、まとめて決済できるところが多い。今回のように、別々の支払いになるのは少々面倒である。




■申込み内容と金額を確認し、支払い条件を選択する

 各ショッピングバスケットから「お買い上げ」を選択すると、お客様情報入力画面に移るので、請求先や届け先、支払い方法を選択する。選択内容に誤りがないかの確認画面が表示され、良ければ「確認ボタン」を押す。するとvWALLETが自動的に起動される。起動したら、利用するワレット用のパスワード入力を行なう。vWALLETが利用できるようになると、商品の内容と金額がvWALLETに表示されるので再度確認し支払いに同意する。約30秒ほど待つと、最終的な支払先の確認が表示される。これ以後はキャンセルできない。

■利用明細の確認

 商品の申込み後、確認のメールが届く。メールには商品名と問合せ先が記載されているが、金額などはない。vWALLETでは購入履歴から決済内容の確認ができるほか、利用明細から「確認ボタン」を押すと、「商品発送済み」など、加盟店の処理状況が確認できる。またV-MallのWebサイトにある「お買物履歴」からも確認できる。

高信頼のカード決済手順

 SETを利用したクレジット決済は、従来のやり方よりも通信の安全性や本人の認証などセキュリティ面では優れている。また、決済の履歴を専用ソフトで管理できるメリットもある。しかし、ワレットや電子証明書など、事前に準備することが多い。さらに、ワレットがバージョンアップした場合や電子証明書の有効期限が来た場合、再度インストールの必要があり面倒だ。

 また同じSETであっても、V-Mallとメディアポート日本のように、モールごとにワレットや電子証明書の種類が違うことも、分かりにくい。一部のモールを除き、ワレットはサイトごとに用意する必要があるのだ。さらに、登録できるクレジットカードも限定されている。V-Mallの場合、住友VISAカードのみ。J-MallはJCBカード会員のみ。メディアポート日本ではMPNサイバーカード、ミリオンカードVISA、メディアカードVISAの3種類だ。モールによりまちまちだが、モールごとにクレジットカードを作らなくてはならないのはやはり面倒なものだ。

 発表された当初、新聞や雑誌などを賑わせたSETだが、実際に使ってみたところでは、最初の設定に手間がかかる割には画期的なメリットが感じられない。商品も数量は揃っているようだが、どこのデパートでも手に入るギフト的な商品が多く日常的に購入するものが少ない。クレジット決済の安全性が売りのSETだが、私自身、今までクレジットカードを不正利用されたことがないので、少なくとも現時点では従来のやり方でも十分ではないかと感じた。

 今後、クレジットカード会社やモールに関係なく、ワレットや電子証明書などが統一された、真の意味での統一規格が望まれる。これに関しては「サーバー管理型SET決済システム」の実証実験が'99年半ばより行なわれる予定で、徐々に解消されると思われる。

SET(V-mall)スペック

●利用準備に必要なもの
 1.住友VISAカードを所持している

●利用に必要なもの
プラットフォーム:
 1.Windows 95またはWindows 98を使用している
 2.Internet Explorer 3.02以上またはNetscape Navigator 3.01ja以上

費用:年会費0円(但しクレジットカード維持費は別途必要)
利用技術:SSL、SET

◎評価基準(三段階評価)

設定の簡便 :1/2
  ○基本的に設定はなく、日本語環境でSSL及びCookie対応のWWWブラウザーさえあれば、即利用できる。ただし、Mac OSでIEを利用した場合はトラブルが起こりやすいようだ。

安全性の配慮★★1/2
  ○WWWブラウザーでCCSにログインや支払いをする場合は、SSLを利用しているので見られる可能性は低い。
  ○セキュリティ担当者によりユーザーID、パスワードの流失時に対する対策がなされている

利用金額  :★★1/2
  ○クレジットカードの限度額

使いやすさ :★★1/2
  ○最終的に専用ソフトで支払いを確定するので、間違えて申込むといったようなトラブルは少ないだろう。
  ○専用ソフトで利用履歴や加盟店の申し込み状態の確認などができるため、管理がしやすい。
  ○唯一の難点は、購入までの確認回数がWebと合わせ4回もあるのと、サーバーへの確認に若干時間がかかることだ。

('98/2/3)

[Reported by Watcher小林(chibiayu@sag.bekkoame.ne.jp) ]




第1回「TSM(トッパン・セキュア・モール)」
/www/article/970509/ec.htm

第2回「BitCash」
/www/shopping/bitcash.htm

第3回「アコシス」
/www/shopping/acosis.htm

第4回「First Virtual Internet Payment System(ファーストバーチャル)」
/www/shopping/fv.htm

第5回「QQQ Members Commerce System(サンキューシステム)」
/www/shopping/qqq.htm

第6回「CyberCash(サイバーキャッシュ)」
/www/shopping/cyberc.htm

第7回「Smash(スマッシュ)」
/www/shopping/smash.htm

第8回「P-Click(ピークリック)」

/www/shopping/pclick.htm

第9回「コンビニ収納代行システム」
/www/shopping/wellnet.htm

第10回「WebMoney」
/www/shopping/webmoney.htm

■第11回「Cyber Chip System(サイバーチップシステム)」
/www/shopping/ccs.htm

INTERNET Watchホームページ


ウォッチ編集部INTERNET Watch担当 internet-watch-info@impress.co.jp