欧州議会はコンピュータで実行可能な発明、いわゆる「ソフトウェア特許」に関する欧州指令(ディレクティブ)に関する投票を行ない、賛成361票、反対157票、棄権28票で、数多くの修正の後、限定的にソフトウェア特許を認める決定を下した。
欧州指令は発効すると、加盟国は一定の期限内に自国法令を適合させる必要があるので、実質的に域内における法制を決定づける制度といってよい。影響力が大きいだけに、各国関係者や各種団体は24日の投票までロビー活動に余念がなかったようだ。その結果、19日に100カ所以上に関する補正案が提出されることになるなど、ロビー活動はかなりの激しさを伴うものであったと推察される。
現在、欧州議会の主要国が加盟する欧州特許条約に基づいて欧州の特許を審査する欧州特許庁では、実務上コンピュータ関連の発明やソフトウェア特許が、形を変えて認められていると言われる。その歴史は1990年代にさかのぼることができるが、それ以後も、ソフトウェア自体を不特許事由としている欧州特許条約を改正しようとする動きは頻繁にあったが、改正には至っていない。今回の指令は、条約は変えずに実態を反映させるものであり、反対の急先鋒である団体なども一定の理解を示していると言われている。
指令の中身は、最後の補正によってかなり制限された。例えば、欧州特許で必須の要件とされる「技術的寄与」に関する問題では、その意味を厳格に解釈すべきことが指令に盛り込まれた。これは、ビジネスモデル特許を極力排除しようという考えが根底にある。例えば、単にコンピュータ、ネットワーク、プログラム可能な装置などを使用するだけという特徴は技術的寄与に該当しないことが確認された。
また、ネットワークを介したコミュニケーション、通信などでの情報交換の際に使用する技術については、たとえ文言上特許権侵害に当たるとしても、侵害と見なさないことが確認された。
また、ソフトウェア特許の改正を受けて、発明を発表してしまったときに救済される規定である新規性喪失の例外(グレースピリオド)を導入することも盛り込まれている。米国や日本などでも形は異なるが、一定の要件を満たせばこの例外規定が認められている。従来、欧州はこの例外をほとんど認めてこなかった。この点が欧州内の発明活動を阻害しているのではと指摘する声もあったほどだ。この点については、条約などとの兼ね合いもあり、最終調整に入っているという。
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■URL
EU on-line(複数言語対応、日本語非対応)
http://europa.eu.int/
( Gana Hiyoshi )
2003/09/30 15:13
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