16日、総務省で利用する携帯電話事業者を変更しても、同じ電話番号が継続して利用できるようになる「番号ポータビリティ(MNP:Mobile Number Portability)」に関する「携帯電話の番号ポータビリティの在り方に関する研究会(第3回)」が開催された。前回消極的な姿勢を見せていたキャリア各社は依然として慎重な姿勢を維持したものの、研究会全体としては、MNP導入へ前向きな方向を示した。
まず冒頭に総務省から、英国のMNP導入に関する資料が披露された。経済的側面からMNP導入によってもたらされる成果を評した内容となっており、キャリアが負担するMNP導入コストよりも、企業を含めた各ユーザーにとって、周囲に番号を通知する必要がなくなるなどの利益が勝ると試算された結果、MNP導入の一因になったという。
資料の中で利益部分は、「MNP無しでもキャリアを変更するユーザーの便益」「MNPがあれば変更するユーザーの便益」「電話を発信するユーザーの便益」と分類されており、導入費用は約364.8億円必要だったものの、全体的には約188.2億円の便益が見込まれた。なお、英国の資料だけが示されたのは「英国の通信事業を監督する電気通信省のWebサイトで公開されていたから。他国の状況は調達中」(総務省)とのこと。
このデータが示されると、キャリアを含めた各出席者から「日本でも同様の試算をやるべきではないか」との意見が相次いで出された。出席者の中には「MNPを導入している諸外国は、すべて黒字との試算」「携帯電話の先進国である日本でなぜMNPが導入されないのか」と指摘があり、日本でも導入すべきとの意見に勢いが見られた。
さらに、これまでの研究会で示された資料では、日本のMNP導入には900~1,500億円のコストがかかるとされているが、これに対してアジアネットワーク研究所の会津 泉氏は「諸外国では、数億円~数百億円という試算。日本ではなぜこんなに高くなるのか」とその内訳を求めたが、数値に基づいたデータがあらかじめ用意されておらず、キャリアや総務省からは明確な反論や意見は示されなかった。
約2時間催された研究会の中で、MNP導入の是非について、出席者から明確な反対意見はない。しかしNTTドコモやKDDI、ツーカーセルラー東京は、いずれも足並みを揃えて「MNPには反対ではない。しかし多大な投資に見合った効果が得られるか。誰にも利用されないという結果にならないか。無駄な投資は避けたい」としており、導入に真っ向から反対するのではなく、慎重な検討を求める姿勢を強調。
またNTTドコモでは「ユーザーの意向をきちんと把握するために、アンケートの分析を進めるほか、諸外国の実績も分析すべき。もちろん試算の結果がマイナスだからといって、導入しないということにはならないし、MNPでキャリア間の競争が促進されるだろうという予測には、異論の余地はない。しかし、必要なコストと発生する利益はきちんと比較すべきだ。まずは、どうしてMNPを導入するのか、目的をはっきりさせたい」と主張。さらに番号通知サービスについては「MNPの代替というわけではない。より利便性の高い機能を低コストに実現できるようにするための施策の1つ」とした。
このほかボーダフォンからは、もしMNPが実現した場合、それまで利用していた事業者から新たに契約する事業者へのデータ受け渡しの手順といったフローが提出された。
出席者が用意した資料には、MNP導入によって誰もが同じ電話番号を継続して利用できるようになった結果、電話番号から個人を特定できるようになるとの指摘や、MNP実現の際に必須と思われるユーザー情報を管理するデータベースの運用についての意見もあった。
キャリアが慎重な姿勢を見せてはいるものの、今後は「MNP導入」を前提に詳細なデータを踏まえて、具体的な導入時期や方法などについて議論されることになるようだ。
関連情報
■URL
総務省
http://www.soumu.go.jp/
NTTドコモ
http://www.nttdocomo.co.jp/
KDDI
http://www.kddi.com/
ボーダフォン
http://www.vodafone.jp/
ツーカーグループ
http://www.tu-ka.co.jp/
・ 番号ポータビリティの研究会、キャリアの消極姿勢が目立つ(2003/11/25)
( 関口 聖 )
2003/12/16 19:10
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