|
商品用タグは3つのサイズがあり、それぞれ金属用も用意された。なお、いちばん小さいサイズのタグは十分な読み取り距離が得られなかったという
|
NTTデータは30日、報道関係者向けに無線ICタグ(RFID)に関するセミナーを開催し、2003年9月に丸紅やスーパーのマルエツらと共同で開始した実証実験の手応えについて語った。食品流通分野におけるRFIDの利用事例として、物流の効率化やトレーサビリティの確立などとともに期待されているレジにおける商品の一括精算だが、現行のRFID用周波数を使ったタグでは実用化までにはさらなる技術検証が必要になりそうだ。
この実験では13.56MHzを使った電磁誘導方式のタグが使われたが、すでに23日に同社が発表しているように、商品を買い物カゴに入れたままの状態でまとめて読み込む場面では大きな課題が残った。入っている商品が少なく、タグの貼り付け位置や読み取り方法を一定にした場合は、バーコードをひとつずつ読み込む現在のレジのオペレーションに比べて効果が見込める結果となったが、「13.56MHzは正直言って実用レベルではない」(NTTデータの宮代透氏)。電磁誘導のエネルギーは金属や水に吸収されてしまうという性質があり、レトルト食品などのアルミパックに貼り付けたタグが読み取れないためだ。
これに対処するため、実験では金属対応の厚みのあるタグも用意し、単品の状態では金属パッケージであっても読み取り可能であることが確認されたものの、例えば、ポテトチップスなど金属を含むパッケージの商品がカゴの中に1個あっただけで、すべての商品のタグに影響が出てしまうという。箱の材質や内容物、温度などはタグの読み取り距離にほとんど影響しないことがわかり、「13.56MHzの場合は、(課題は)金属の影響のみ」に絞られたが、食品ではアルミパックを使った商品が多い。「レジ一括精算はぜひやりたいが、1、2年では難しい」(宮代氏)という。
一方、食品の履歴や安全性の表示など消費者向けのアプリケーションでは、興味深いデータが得られた。実験の対象となった107種類の商品のうち加工食品77アイテムについて売上個数のデータを比較したところ、実験店舗となった店舗での売上個数は週平均1,490個となり、近隣の同規模3店舗における同アイテムの平均である週704個の2倍に達した。
実際には、スーツ姿の買い物客が多く確認されたとしており、流通関係者と思われる利用も少なからず影響した模様だ。とはいえ、店頭端末に商品のタグをかざすことで消費者が産地や製法、安全性、賞味期限、企業情報などを閲覧できることによる効果もあったものと思われる。どういった情報を閲覧した消費者が実際にその商品を購入したのかなど、詳細なデータは分析中だという。
米国ではウォルマートや国防総省がRFIDの導入を発表しているが、これは誤配や欠配による損失が問題となっている米国において、物流を効率化するのが大きな目的だという。一方、もともと日本ではこのような問題はほとんどないことから、「米国のソリューションをそのまま日本に持ってきても成功しない。単なる効率性ではなく、消費者のニーズをつかんでいくというマーケティングの視点が視点が必要になる」(NTTデータの吉川明夫氏)としている。
関連情報
■URL
NTTデータ
http://www.nttdata.co.jp/
・ NTTデータと丸紅など、スーパーのマルエツでRFIDのフィールド実験(2003/09/19)
・ マルエツでのRFID実験、タグの一括読み取りなどに課題(2004/01/23)
( 永沢 茂 )
2004/01/30 21:11
- ページの先頭へ-
|