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米Amazon.com、噂のサーチエンジン「A9」をテスト公開


A9の検索結果画面。吹き出しで表示されているのが、Alexaからの情報
 米Amazon.comは15日、同社の完全子会社であるA9.comが開発したサーチエンジン「A9」の公開テストをひっそりと開始した。AmazonもA9も公式にコメントはしておらず、インターネットビジネス業界で著名なジャーナリストのブログを通して発表するという手段を選んだ。

 A9は、Amazonが2003年に設立した子会社で、著名なアルゴリズム研究者である元米Yahoo!のUdi Manber氏を招いて検索技術の開発を進めている。Amazonの書籍を全文検索できる「Search Inside the Book」技術もここで開発された。A9がサーチエンジンを開発していることは噂として広く知られていたが、それがどのような技術で、どのような戦略や目的の下に開発されているのかは、これまで知られていなかった。

 テスト公開された「A9」は、Web検索を完全にGoogleに任せた上で、これに独自の機能とわかりやすいインターフェイスを備え、さらにAmazonとの連携を強めているのが大きな特徴だ。Googleによって提供される検索結果には、A9独自の機能としてAlexaの情報を表示できるようになっている。検索結果の各項目の横にある「Site Info」にマウスポインタを合わせると、Alexaに登録されているそのサイトの基本情報を表示。トラフィックのランキングやサイトが開設された日時、実際にそのサイトを閲覧した人が見た他のサイトの一覧などを確認できる。なお、AlexaもまたAmazonの完全子会社であり、Googleとの提携の下で独自のサーチポータルを開設している。

 Googleによる検索結果の右隣のコラムには、同じキーワードによるAmazonの書籍検索結果が表示される。書籍名でヒットする場合もあるが、それ以外にも自動的に書籍の中身まで検索し、「Search Inside the Book」サービスによって書籍中で該当するキーワードがハイライト表示される。この検索結果をクリックすると、Amazonの該当書籍ページが表示される。

 いちばん右側のコラムには「Search History」があり、Amazonのアカウントを持っていれば、24時間以内に検索に利用したキーワードの一覧が表示される。これにより、どのPCからでも自分の検査結果を簡単に呼び出せる。ヒストリーは、削除したり、パスワードがなければ表示しないよう設定することも可能だ。

 インターフェイスとして興味深いのは、Googleの検索結果と、Amazonの書籍検査結果のコラムの幅が自由に調整できる点だ。ユーザー個々の情報に対する考え方によって、画面のインターフェイスを大幅に変更できるわけだ。さらに、いったんA9のトップページにアクセスしなくても、Webブラウザのアドレスバーに「A9.com/キーワード」などの形式で入力することで直接検索でき、一種のショートカットを提供している。

 A9はまた、「A9 Toolbar」も発表した。A9をツールバーから簡単に使えるようにするもので、他社が公開しているツールバーとよく似ているが、自分のアカウントでログインすることで他のPCでもヒストリーを表示できるなどの利便性を持たせている。さらに興味深いのは、自分が訪問したサイトのメモを残せる「Diary」機能だ。同じWebサイトを再び訪問するとそのメモが表示されるもので、自分のアカウントでログインすることでどのPCからでも利用できる。


 A9の公開に際しては、AmazonもA9自身も公式なコメントを発表していない。そのため、現時点で完成度はかなり高いものの、このサービスがアルファテストであるのかベータテストであるのか、その段階について知ることはできない。また、このサービスを正式なサービスとして公開する意思があるのか、どのようにビジネスとして利用しようとしているのかについても正確なところはわからない。

 その代わりにA9は、著名なジャーナリストが開設しているブログを通して“非公式”にA9を公開する方法を選んだ。そのジャーナリストとは、カリフォルニア大学バークレー校ジャーナリズム大学院客員教授のJohn Battelle氏である。Battelle氏はWired Magazineの共同創設者として有名であるほか、ハイテク業界紙「The Industry Standard」を発行している出版社の創設者でもあり、インターネット業界に大きな影響力を持っている。

 Battelle氏のブログによると、Amazonは1カ月前にA9を同氏に見せており、その時にUdi Manber氏にインタビューを実施し、ハイテク業界誌「Business2.0」で記事にしている。通常、Business2.0で記事の全文を読むには有料会員でなければならないが、このインタビュー記事に限っては無料で読めるようになっている。A9がブログで公開されたことにより、A9はまたたく間にブロガーの間で話題を呼び、広く知られることとなった。Amazonの一連の広報戦略は著しい成功を収めたと言えるだろう。


関連情報

URL
  A9
  http://a9.com/
  John Battelle氏のブログの該当記事(英文)
  http://battellemedia.com/archives/000576.php
  Business2.0のUdi Manber氏のインタビュー記事(英文)
  http://www.business2.com/b2/web/articles/0,17863,611251,00.html
  関連記事:連載 そこが知りたい!検索エンジンの裏側 第15回
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/column/kensaku/1007.htm


( 青木大我 taiga@scientist.com )
2004/04/16 12:46

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