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孫正義氏「固定電話事業の開始で独占市場に乗り込む」


 ソフトバンクと日本テレコムは、日本テレコムが12月1日より開始する固定電話サービス「おとくライン」に関する記者会見を開催した。会見ではソフトバンク・グループ代表兼日本テレコム取締役会議長の孫正義氏がサービスの詳細について説明を行なった。


長い間独占されてきた固定電話市場に乗り込む

NTT東西の独占市場に乗り込む
 孫正義氏ははじめに日本の固定電話市場について「基本料金1.8兆円、通話料金1.4兆円の巨大な市場だが、まったく競争がないままにNTT東西の独占状態で長い間放置されてきたのが実情」と指摘。この市場で基本料収入を獲得すると同時に、NTT東西への接続コストを“ゼロ”にすることで新たなビジネスモデルを確立するとした。

 接続コストの削減は、NTT交換局内に日本テレコム独自の交換機を設置することで実現する。これまでの電話サービスでは、発信者側がNTT東西の交換機を経由し、相手先のNTT交換機へ着信することで、NTT東西への接続料を2回支払う必要があったが、日本テレコムの交換機を利用することで、相手先へ着信する際のNTT接続料のみが課金され、接続料が1/2へ削減される。さらにNTT側からおとくラインへ発信する場合には、「NTTと同額のアクセスチャージをいただく」ことで着信時の収入を獲得、これを合わせることで接続料を事実上“ゼロ”とする仕組みだという。

 ナンバーポータビリティにも対応するため、すでにNTTの電話サービスを利用しているユーザーは同じ番号でおとくラインを利用できる。従来はマイラインで「市内通話」「近距離市外」「長距離市外」「国際」「携帯」と区分されていた通話をすべておとくラインで一本化することですべての通話を収入にできるほか、ユーザーにとっても請求書を1つにまとめるといったメリットが発生するという。

 プッシュ回線、キャッチホン、ナンバーディスプレイやダイヤルインといったNTT東西のオプションサービスは、おとくラインでも同等のサービスを同額で提供する。孫氏は「オプションサービスはソフトウェアの開発だけですむので非常にメリットが大きい。BBフォンでは付加サービスの収入がゼロだったが、ここが新しく入ってくるのは大きなビジネスチャンスだ」と語った。


収益増のポイントは「基本収入」と「接続料ゼロ化」 自前の交換設備をドライカッパでユーザーと接続

自前の交換設備によって接続料の“ゼロ”化を図る NTT東西と同等のオプションサービスも用意

他社のADSLサービスは「受け入れ体制はあるが接続協定次第」

おとくラインのサービス特徴
 おとくラインのメリットとしては「NTT東西より基本料金が200円安い」「通話料が市外通話の場合で法人が最大55%、個人が最大50%割引」「施設設置負担金(電話加入権)が不要」「工事一時負担金が月額105円での支払いが可能」「請求書の一本化」などが挙げられた。このうち施設設置負担金が不要な点について孫氏は「これが足かせになって若い世代は携帯電話に流れてしまっているが、我々はそもそも請求しないことで入り口のハードルが一気になくなる」とし、新規ユーザー獲得の強い武器となることを示した。

 11月末まで行なわれるキャンペーンでは、指定した一般加入電話の電話番号3つへの通話料金が1年間無料になる。孫氏は「IP電話では加入者同士無料だが、電話回線が全体で6,000万あるうち、最大手の我々でも約400万程度で、なかなか無料になる相手が見つからない」とした上で、「3つまで電話番号が無料になるのは、IP電話以上の価格破壊のメリットだろう」との自信を見せた。

 ADSLサービスはYahoo! BBが利用できるほか、他のADSLサービスも「NTTと同様に広く開放し、(Yahoo! BBのみ利用できるなど)閉じるようなことはしない」とコメント。また、おとくラインの回線仕入れはタイプ2で行なっているが、ADSLサービス自体はタイプ1で契約できるという。

 ただし、実際に他のADSLサービスを利用するためにはADSL事業者とNTTとの接続協定を結ぶ必要があり、孫氏は「我々は事業者と話を進めていくつもりだが、ADSL事業者から“接続したくない”と言われてしまっては実現できない」との事情を明らかにした。接続協定が実現できれば、ADSLの同日工事といった対応も進めていくという。


料金設定は「いざとなれば1日で変更できる」

おとくラインについて語る孫正義氏
 本サービスへの設備投資は「IP電話にほぼ匹敵する効率の良さ」と前置いた上で、「直接的な費用は数百億程度」とコメント。ただし、Yahoo! BBではユーザーが機器を取り付ける必要があり、そのためのコストやユーザーサポートといった費用が発生していたが、おとくラインでは局側で工事を行ない、ユーザーの手間をわずらわす部分がないため、結果的に獲得コストも抑えられるという。

 さらに、主要な販売代理店には設備投資の一部を負担してもらうシステムも採用。すでに包括的提携を発表しているベルシステム24との新サービスに向けたシステム構築費592億円にも「かなりの部分で今回の設備投資負担額が含まれている」という。これによって日本テレコムの設備投資はさらに減少可能となる見込みで、孫氏は「Yahoo! BBでかけた何千億のコストに比べれば軽微ではないか」との考えを述べた。

 独自交換網を構築することで、おとくライン間、またはおとくラインとBBフォンとの間では接続料がまったく発生しないことになるが、現状のところ通話料金は一般加入電話と同等に設定されている。孫氏は「ユーザー間の通話メリットはまだお話できない」とコメントしたが、「いざとなれば料金は1日で変えられる。通話料金やオプションサービスの料金も戦略的な変更は検討している」とした。

 孫氏はおとくラインのメインターゲットとして法人顧客を想定。一般ユーザー向けには「従来からBBフォンを提供しており、その品質には自信を持っている」とした上で、「今までは障害時などにNTTの電話回線へ迂回していたが、これを日本テレコムの回線に迂回することが可能になるほか、法人顧客のように寸断も許されないユーザーに対して安心して使っていただける」点を強調した。

 今後は個人向けサービスでバックボーンのIP化を図るほか、キャンペーンも競争の状態を見ながら随時新たなものを展開していく方針。契約数の目標などは「最初の数カ月はやってみないとわからない」と慎重な姿勢を見せつつも、「積極的にユーザーを獲得していく」という意気込みも示された。


関連情報

URL
  ニュースリリース
  http://www.softbank.co.jp/news/newsrelease/2004release/040830_0001.html
  関連記事:ソフトバンク、NTT網に依存しない独自網による固定電話事業を開始
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/08/30/4423.html
  関連記事:ソフトバンクBB、ベルシステム24との包括提携で顧客サポートを強化
  http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2004/07/20/3958.html
  関連記事:平成電電、国内3分6.8円で通話できる電話サービス「平成電話」
  http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2003/0402/hdd.htm


( 甲斐祐樹 )
2004/08/30 19:56

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